春木 さき（はるき さき）
ちっちゃいときから好きだけど（ちっちゃいときからすきだけど）
第07巻評価：★★（4点）
総合評価：★★（4点）
翔（しょう）と同じ美術学校に通う諸見里（もろみざと）さんから突然ライバル宣言されたつばさ。台風の夜につばさは兼城（かねしろ）くんと、翔は諸見里さんと二人きりになってしまい――!? ちゃんと翔のこと信じてるから大丈夫、…だと思うんだけど!? 兼城くんのつばさへの想いもさらに加速！ 目が離せないキュンキュン幼なじみラブ♪
簡潔完結感想文
- 彼氏以外の男と どんなに多くの時間を過ごしても結局 彼氏に許されて終わり。
- ヒロインをフラフラした女性にしないために女性ライバルに彼氏のいる設定を。
- 深夜に会いに来たと思ったら、その後はなぜか会えない設定。忙しいね（嫌味）
当て馬と女性ライバル どちらも足踏みの現状維持を お伝えする 7巻。
『6巻』で つばさ と翔（しょう）の久々の長時間デートが お送りされたが、『7巻』は それ以前の当て馬・兼城（かねしろ）を含めた三角関係に逆戻り。しかも兼城は つばさ と「友達」状態を維持して今回は何も手を出してこないという内容の無さ。例え『7巻』が世間で発売されなくても この作品において問題はないだろう。それぐらい虚無の期間が続く。
もしかしたら作者としては女性ライバル・諸見里（もろみざと）の存在が以前の内容とは違うと思っているのかもしれないが、そんなのは誤差範囲である。諸見里が翔に めちゃくちゃなアプローチをするとか全て計算高く行動しているのならともかく、ぼんやりと翔に寄りかかるだけでハッキリとした行動を取らない。兼城が動かないなら、せめて諸見里を動かして読者に読み応えを提供する責任があるのではないかと思うが、作者には そんな使命感は無いらしい。
今回も つばさ の脇の甘さで翔には言えないような兼城との秘密が出来る。つばさ の考えの甘さで この繰り返しにうんざりする読者の批判を かわすためか、諸見里に彼氏を用意して つばさ よりも悪女を用意するのが いやらしい。最底辺を用意してヒロインを悪くならないようにするような作品が私は嫌いだ。それに そろそろ読者も つばさ の、作品の頭の悪さには気づき始めている。この学校という作品世界で上位2人の男子生徒を手玉に取ることしか作品の目的はなくなっている。これだけ連載の枠を貰っていても以前とは違う展開を用意できない時点で、この作品の伸びしろは もうない。それは作者の作家としての伸びしろだっただろう。ここで成長できれば良かったのだが…。
今回は翔との予想外のお泊り回の次に、兼城とのお泊り回を用意しているのだが、そうしたところで この三角関係が息もつかせぬ展開になる訳ではない。つばさ は おバカだからこそ、翔への10年間の気持ちを簡単に終わらせないのは明らかだ。せめて翔との関係が幼なじみでしかなかった頃に一進一退の攻防が見られれば良かったが、作者は さっさと（雑に）2人を両想いにしてしまっている。
また翔の美術予備校を絶対に会えない理由として使っているが、『7巻』1話目では夜11時に翔が つばさ に会いに来ている。以前も書いたが24時間 何かに拘束されている訳ではないし、お互い会いに行ける距離なのだから、2人の すれ違いの演出は嘘くさいだけである。序盤は そういう近すぎる距離が描かれていたのに、中盤から不自然に会えない2人ばかりを描いていて納得できない。
しかもわきが甘くても 会えない時間が長くても結局つばさ が翔に許されるというのもパターン化している。同じことを繰り返す内容で退屈が増幅される。厳しいようだが出涸らし、という言葉が適当なのではないか。
翔と予備校が一緒の女性・諸見里に宣戦布告をされて気になる つばさ。だが翔を信じようと つばさ は詮索も行動もしない。だが諸見里を気にしないようにすることで、翔との約束も忘れてしまった つばさ は翔と一緒に帰れる日にバイトを入れてしまう。
その後、どうしても会いたくなって夜11時過ぎに連絡と逡巡していると翔からメールが届く。そこで次のデートの約束をして、翔の自分への気持ちも再確認できて めでたしめでたし。それにしても1話の内容が薄すぎる。ゴールがないからエンドレスに翔との距離が縮んで遠ざかり、その逆に兼城との距離が遠ざかり縮んでいく、の繰り返し。
その振り子運動の法則通り、約束していたデート当日に つばさ はバイト先の人手不足を埋めるためにドタキャンをする。責任感が強いのだろうけど、翔との約束を反故にする理由としては弱い。つばさ が断れない理由が もう少し欲しい。
その後、つばさ のバイト先を翔が初めて訪ねる。この時、翔は予定していた美術館に行った後かと思ったら、食事後に行くという。台風の接近が分かってるのに変なスケジュールだ。店内では つばさ のいない場面で男たちが彼女を巡り火花を散らす会話をして、三角関係が継続していることが分かる。
台風の接近は恋の嵐の到来を予感させる。
翔は美術展で諸見里と偶然 会い、一緒に展示を見る。ここも台風接近で閉館が早まっている。この日の翔は美術館→つばさ のバイト先の順に回れば、つばさ を無事に帰宅させられただろう。翔自身も諸見里を自宅まで送るが、そこで停電を怖がる彼女から家に誰もいなくて不安だから一緒にいてくれ、と懇願される。これはもう「据え膳」確定だろう。
一方、つばさ のバイト先は店長の体調不良と台風の接近で店じまいを早める。兼城は店長の看病をするということで、つばさ だけが帰宅するが、財布をバイト先に置き忘れ、ケータイは家に置いたままなので、バイト先まで戻る。その途中で雨が降り出し、つばさ は足止めされる。お話のためとはいえ つばさ に忘れ物や落とし物が多くて嫌になる。店のキッチンで財布が見つかるのは兼城の仕業かと思ったが、財布だと窃盗のようになるし、つばさ本人もキッチンでカバンを落としたと言ってるから彼女の責任なのだろう。なぜキッチンにカバンを持ち込むのかは謎過ぎる。
こうして それぞれに帰れない一夜が始まる。『6巻』のツアーで手違いがあって帰れない、に引き続き、台風で帰れない。似たような話が続きますなー。
台風の夜、翔の方は諸見里の家族が帰ってきて、翔は無事に家に帰る。
だが つばさ は兼城と2人お店の客用のソファで それぞれ眠ることになった。その夜、語り合うが つばさ は改めて兼城を友達認定する。その後、兼城は先に眠ってしまった つばさ にキスをしようとするが、もう気軽には出来ない。彼女にとって自分は「友達」だから。しかし遊び人の兼城がキスを出来ないことが、本気の証明になる。
嵐の一夜が明け、店長の体調も回復し、つばさ は帰宅する。昨夜、お店に泊まったことは翔に言えない新しい秘密になる。つばさ はメールで全部を洗いざらい話してスッキリするが、翔は複雑な気持ちを抱えていた。そのことに つばさ が気づくのは友人たちとの会話で、立場を逆にして考えた時。報告をメールで済ませたことも反省材料となる。
そして近づく2回目の文化祭（『1巻』では学園祭という呼称だったのに なぜか変更されている。こういう部分も作者を好きになれないさー。）。
つばさ のクラスはタコス屋を出店することになり、バイトの関係でタコスに詳しい つばさ と兼城がクラスを導く役割を担う。そのため2人は長時間一緒にいる、という2人の接近には十分な理由である。あぁ、翔との片想いも このぐらい時間をかけて丁寧に気持ちの重なりを表現して欲しい、と思ってしまう。
文化祭当日 つばさ は多忙で翔に会えない。だが物陰から翔が引き寄せてくれて少しだけ2人の時間を確保できた。そこで つばさ は台風の日の夜のことを ようやく翔に直接 謝罪する。そこで翔は寛大な態度を見せてくれ つばさ は落ち着く。多くの女性が翔を狙っている環境で、その彼を独り占めすることで彼女の承認欲求は満たされる。講談社ヒロインって成長しないよね、という偏見が私の中で また育っていく。
