原作:ひねくれ 渡・作画:アルコ(ひねくれ わたる・アルコ)
消えた初恋(きえたはつこい)
第04巻評価:★★★★☆(9点)
総合評価:★★★★☆(9点)
「ひどいよ井田くん 青木くん、ふるえて泣いてるよっ」 玉砕覚悟で告白した青木だが、井田からは「付き合ってみるか」と、まさかの返答が…! ところが、男子高生同士の恋愛はトラブル続きで、クリスマスを前にふたりは絶交し!? 一方、橋下さんとあっくんは、クリスマス効果で進展の予感。 男子同士の「お付き合い」、始まっちゃいました。
簡潔完結感想文
- 交際の(非)公表を巡って絶交の危機。でもクリスマスは復縁の絶好の機会。
- あだ名を巡る攻防戦。恋愛成就の先輩・青木を見習って橋下さんは奮闘する。
- 恋愛精神年齢が 小学校3年生の青木 VS 幼稚園児の井田の真剣交際が可愛い。
2人の初めての共同作業はケーキ入刀ではなくケーキ販売、の 4巻。
完全な両想いという記念すべき巻だが、まずは おそらくオリジナルの考察である2人の「恋愛精神年齢」について。
『2巻』の感想文で、本書は恋愛において生まれたての赤ん坊である井田の成長記録だと思う と書いたが、今回、現時点での井田の精神年齢が分かる描写がある。
『4巻』後半で、井田は自分の「好き」の表現方法が幼稚園男児(推定)と同じレベルにあることを自覚する。ここまで約5か月ほど「好き」の概念を学んできた井田は、ようやく自分の中にも「好き」を発見する。この時点では片思いからの年月が長い青木の方が恋愛の先輩っぽくなっているが、果たして本当にそうなのだろうか。
そこで今回は『5巻』で明らかになる2人の誕生日データを使った科学的な(?)検証をしてみたい。『5巻』によると青木 想太(あおき そうた)の誕生日は04/10で、井田 浩介(いだ こうすけ)の誕生日は03/08である。つまり2人は同学年だが年齢差は1歳近くあることになる。
どうも青木は恋愛面で井田の先輩面をすることで、彼にペースを握られないように虚勢を張っている節がある。それに加えて『5巻』で実際に誕生月に差があることが発覚し、いよいよ自分を大人とする一方、井田を「お子ちゃま」扱いする。
だが そもそも青木の初恋の相手は高校入学後に出会った橋下(はしもと)さんである。『1巻』冒頭の1年生の時のバレンタインデーの回想で、青木は橋下さんが あっくん に渡せなかったカップケーキを貰って彼女に ときめいており、「あの日からずっと… バカみたいだけど本気で好きだったんだ…」と心情を吐露している場面から ここが恋に落ちたタイミングと考えて良いだろう。
と、ここで井田に視点を移すと、彼が恋心を自覚した『4巻』終盤は高校2年生の1月と推定される。つまり単純計算で井田 浩介「16歳10か月」の時である。再び青木に戻ると、高校1年生のバレンタインデーは青木 想太の「16歳10か月」なのである。よって この2人は同じように奥手なんじゃないか、というのが今回の結論である。青木は結局 自分の誕生日が早いことをアドバンテージにしているだけで、井田を決してバカに出来ない状況にあるのが現実だ。
そもそも自称・恋愛の先輩である青木も、いざ井田と交際することになっても何の具体的なアイデアも展望も持っていないのである。そこから推測するに彼の恋愛レベルは小学生ぐらいではないか。そういえば青木のトラウマは小学校3年生の時である(『6巻』)。そこで恋愛精神年齢が止まっていると考えるのは間違いでは ないだろう。あっ でも同じく『6巻』では謝り方が小2だったので、小2かもしれない…。 ただし、時が止まっているからこそ青木は純真で、井田の言葉じゃないが、私も そこが本当に可愛いと思う。
でも小3(青木)が幼稚園児(井田)に大人ぶっていると思うと青木の アホ可愛さは極まっている(笑)
また2人は同性だからこそ恋人と友達とライバルの要素を兼ね備えているようにも見える。特に青木は、上述の通り井田よりも先行しているという認識で余裕のない自分の余裕を保とうとしているが、恋愛感情を理解した井田は強力なライバルだろう。大器晩成の井田の成長速度は 止(とど)まることを知らない。今回の井田の恋心の自覚は、小3青木の大ピンチの始まりかもしれない。
『4巻』で印象的なのは青木の涙と井田の笑顔。これまで何回も泣いてきた青木だけど、おそらく今回が初めての嬉し涙である。それは井田が 「青木が ちゃんと好きだ」と言ってくれた両想いの涙である。ずっと読者は青木の長所も困難も努力も見てきたから、本当に良かったね、と こちらも涙を流したくなるほど嬉しい。井田は青木にとって自己肯定感を回復してくれた世界で たった一人の人間である。その人と想いが通じる喜びは いかほどのものか。
青木は元々泣きやすい人で、何かといえば泣いている。むしろ今回の両想いの涙は これまでで一番 控えめかもしれない。涙を含め、井田との恋愛において青木の性格が女性に寄ってないか、と思う部分もあるが、それは二重の意味で差別になるだろう。1つは青木に対しての差別。青木が涙もろく恥ずかしがり屋であることは彼の特性である。それを一方的に否定してはいけない。同性を好きでも、子供っぽくても青木は青木だろ、と考えた方が良い。それに泣くのが女性、泣かないのが男性という偏見も2つ目の差別である。青木が表情豊かに、自分の考えが すぐ態度に出ちゃうような人だから井田は彼を好きになったのである。青木らしさを私が奪ってはいけない。
一方、井田が よく笑うようになったのは青木の愛おしい所を見つけたからだろう。彼は青木が「照れたり焦ったりしてんの」が「可愛い」と思うらしい。そういえば『2巻』の勉強会で始めて井田が青木を可愛く思えたのも照れた表情だった。やっぱり「かっけー」とか「可愛い」とか思うのは恋のはじまりだったのだ。その感情に井田が名前を付けるまで長い時間がかかっただけで、彼は割と早く恋に落ちていたと言えよう。自分が何で青木と一緒にいるのが楽しいと思うのか、なんで これまで以上に笑うのか、その全ての答えは「好き」に集約される。
ずっと井田は青木にとって完璧な王子様に見えたが、『4巻』では彼の短所も出てきた。
1つは絶交の きっかけ にもなった愚直なところ。人によって態度を変えたりしないのが井田の良い所だが、嘘をつけないことで騒動が大きくなった。これは彼のマイペース過ぎるという欠点ともリンクしている。青木が世間の「普通」を臆病なほど気にするのに対し、井田は世間の「普通」を全く気にしない。その価値観の相違が絶交の原因となる。
また空気を読まないことで あっくん に迷惑を掛けたシーンもあったし、嘘がつけない井田を心配して幼なじみの豊田(とよだ)がフォローに回る場面もあった。井田だって誰かに助けられることも当然ある、という井田の人間宣言的な内容が新鮮に映った。
少女漫画の「冬の3大イベント」と言えば、クリスマス・初詣・バレンタインデーらしいが(©岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』)、そのどれも素直に やらない所が、原作者の「ひねくれ」ている部分だと思う。でも ひねくれているからこそ、本書は記憶に残る。
私は本書に限っては いわゆる「両想い編」の方が好きだ。以前も書いたが「片想い編」は ややゴチャゴチャしている。そして最後まで面白いのは「両想い編」も ずっと予想外の展開が用意されていることと、井田の成長速度が止まらないからである。最後まで制作陣が青木たちに寄り添おうと彼らの事を真剣に考えてくれたのが伝わるから作品は幸福感で満ちている。
相手に対して真摯に考えて行動するのは作中の青木と井田も同じである。彼らは「両想い編」でも衝突を繰り返すが、それは自分のことよりも相手のことを優先するから起こる衝突である場合が多い。そういう自分を一歩引いた姿勢が基本にあるから、衝突しても読者は嫌な気分にならない。
交際後、2人は学校の屋上で お昼ご飯を一緒に食べるようになる。これが学校生活での唯一の変化だろう。屋上を選んだのは、単純に ここが人目につかない場所だから。だからこそ2人きりで ゆっくり話せて楽しい。教室という閉鎖性がないのが青木にとっても気が楽なのだろうか。
井田は教室で食べてもいいが、青木は自分たちの関係が急激に近くなったこと=交際や恋愛関係をクラスメイトに知られたくない。これは周囲に「好き」を言えない彼の性格と、周囲とは「好き」の種類が違う彼らの交際の二重の意味があるのだろう。トラウマがあった青木にとって他生徒の目は恐怖。不自由な交際にも見えるが、私は慎み深い彼らの交際が大好きだ。彼らは自分たちの最低限の幸福を守れればいい、という態度で多くを望まない。そこが自分がいかに愛されるかしか考えない恋愛脳ヒロインとは違う部分である。
だが始まったばかりの2人の交際に早くも問題が噴出する。自分たちの交際を秘匿したい青木の主義に反して、井田はバレー部仲間に自分たちの交際を既に話してしまったのだ。井田にとしてはバレー部仲間への信頼もあったのだろうが、彼らの事をよく知らない青木から見れば自分への配慮に欠ける井田の行動。だから彼は「絶交」を宣言する。
クリスマス直前に絶交してしまった2人。青木は今年は井田と過ごすかもという甘い期待があって、恒例の姉夫婦が営むケーキ屋の手伝いを辞退していた。だが結局、絶交により暇になり手伝うことにする。
デートもクリスマスも理想通りにはいかないと落ち込む青木だが気持ちを切り替えて売り子に徹する。そこへ来店したのが橋下さんと あっくん。2人ともケーキを買いに街に出て偶然 会い、あっくん が この店に誘導した。そこで橋下さんは青木が井田とケンカを知る。絶交後の井田の放置を知った橋下さんは井田に電話し、話を盛って青木の窮状を伝えて、彼の現在地を伝える。橋下さんは青木の一番の応援団だが、少し過保護である。
帰宅ラッシュの時間帯になり、青木一人で手が回らなくなったピンチに駆けつけるのが井田サンタ。ここから彼らは協力してケーキを売り捌く。仕事内容を伝える時に敬語になっちゃう青木に、井田への後ろめたさが滲む。
絶交を一方的に宣言したのに、自分を捜してくれた井田に青木は感謝する。井田は青木の姉のペースに巻き込まれたのだが、こういう時でも彼は「いいよ 面白かったし」と言ってくれる度量を持つ。青木は「ふるえて泣いて」はいなかったが、その情報がなくても井田は青木に会いに行こうとしていたという事実にキュンキュンする。
青木姉は井田から弟たちの関係が「友達」だと聞かされ、絶交中であるという認識。そして井田はバレー部仲間にも彼なりに友達だと誤魔化したという。井田は青木の意向を確認せず独断に走ったことに対して頭を下げる。交際初心者の井田は、交際とは2人の関係であり、2人で歩むものと理解したのだろう。それは青木も同じ。井田との合流前、青木はケーキ選びが発端で目の前でケンカするカップルを見て、ゆっくり自分たちの意見を擦り合わせる大切さに気づく。絶交は、自分の意見に沿わないからといって性急すぎたという反省が彼にもある。
帰り際、井田は青木の姉からケーキをワンホール貰う。本来は青木の分だが、手伝ってくれた井田が優先される。最後に青木の姉は井田に「想太 根はいい子だからさ 仲良くしてあげて」と子供っぽい弟をフォローする。でも その青木の良さは井田は既に「知ってます」。高校2年生の2学期、井田は それをずっと見てきたのだ。
律儀な井田は青木から横取りする形になったケーキを気にして、井田の家族は出掛けているから、それを青木に返還しようとする。ここで井田の家族構成が両親と井田の3人だと判明する。井田のマイペースは一人っ子の産物なのか。
ならば、と青木は2人でケーキを食べることを提案する。井田は部活帰り、自分も労働の後で お腹が空いたクリスマスに、目の前にケーキがあるのだ。こうして2人は公園の東屋で並んでケーキを食べる。好物を目の前にして青木の目は輝くが、こういう喜怒哀楽のハッキリした性格が井田は好ましいと思われる。つまり動物的で、井田的には犬に似ていると思っていると推測される。
美味しいものを、幸福を、一緒の時間を2人で分け合うことが交際の意味であろう。最初の映画デートも良かったが、このクリスマスで2人は真の恋人同士になった気がする。
ケーキを食す前に青木は絶交を解除する。青木は井田が どうしてバレー部仲間に交際を公表したのか、彼の性格を理解している。理解できるだけの想像力と知性が青木にはある。それに青木が絶交と言ったのは、自分のせいで井田がバレー部仲間に差別されるかもしれないという恐れからだった。
加えて青木には自分の厄介な恋心に井田を巻き込んだと思っているから、そこに後ろめたさがある。「普通」とは違うから堂々とできないことに落ち込む青木を井田は励ます。逆に井田も まず相手のことを心配する青木の心の動きを ちゃんと分ってる。だから それ以後は、2人は笑顔で過ごす。特に井田は青木をからかっては大笑いし上機嫌を隠さない。そんな井田のテンションの高さに、こんな男2人のクリスマスは黒歴史になるというが、井田はそうは思わない。井田は青木といるのは楽しい。楽しい記憶が後悔に変わるはずない。
『3巻』の初デートでは青木は井田が つまらなそうに見えて、付き合っているという実感はなく、付き合ってもらっているという負い目があり、彼の負担になる自分が惨めで悲しかった。でも今回、井田は自分から「楽しい」という言葉を使ってくれた。それが どれだけ青木の心を軽くしたことか。2人きりで過ごす2回目の機会。そこに着実な変化が見られるのが嬉しい。
どういう訳か、この学校は12月の終わりまで学校があるようで、クリスマス後も学校生活がある(25日が大掃除なのかもしれないが)。
朝、井田が青木からの絶交宣告に落ち込んでいたことが、井田の幼なじみ・豊田によって間接的に知らされる。過去、豊田とケンカしてもマイペースを貫いていた井田が、今回の絶交ではヘコんだ。そして交際発言の撤回をしようにも井田は嘘をつくのが苦手で、その様子から全ての事情を察した豊田が井田を救って、なんとか誤魔化したのが真相らしい。豊田様様である。青木にとって親友が あっくん、異性の恋の相談役が橋下さんで、井田は親友が豊田、異性の友人がココロという構図か。本書は2人の交際後も それぞれに世界があって、相手の世界に過剰に干渉しない距離感が良い。交際もイチャイチャしないし、公私の分け方が折り目正しい。
もう一つのクリスマス話として あっくん と橋下さんの顛末が語られる。青木姉の店でケーキを買った2人は、その後一緒にイルミネーションを見に行く。
2人の関係は振った/振られたとなったが、あっくん は その大らかさから橋下さんに普通に接する。それが彼女には嬉しい。そして あっくん も自分と積極的に話す橋下さんの強さと本気を実感しただろう。
橋下さんはあだ名で呼ぶことを目標にして、青木を見習って あっくん と呼びたいが羞恥が勝って言えない。そこで彼女に慣れさせるために、あっくん も橋下さんをあだ名で呼ぶことを提案してくれた。ここは高校入試の日、受験票を忘れた橋下さんを、俺も!と元気づけてくれた あっくん を思い出す(『2巻』)。本当に素敵な人なんだよなぁ。
あっくん は橋下さんに「はしもっつぁん」という あだ名をつけるが その呼び方は橋下さんには不服。青木になりたいが、異性としても見て欲しいという欲深さが橋下さんにはある。そこで青木の発案した あっくん が橋下さんを女性として意識する作戦が決行される。ただ2つの作戦でキュンキュンしたのは橋下さんだけ。確かに この時の あっくん はナチュラルに格好いい。
そこに あっくん に恨みを持つ上級生の男子生徒が登場して、あっくん の危機回避の機転を井田が無駄にしてしまい事態が悪化する。その結果あっくん は上級生に吹っ飛ばされてしまう。はしもっつぁん のビンタの時 同様、あっくん はよく飛ぶ。
こうして あっくん は怪我を負う。左頬は彼の急所か。保健室で橋下さんは あっくん の手当てをする。ここで あっくん は照れ隠しで橋下さん に あだ名をつけたことを白状する。本当は橋下さんの希望通り美緒(みお)という彼女の名前で呼ぼうとしたが、お互いに照れて、その妥協案として「はしもっつぁん」が採用されたのだった。こうして あだ名が再度 変更されることになり「みおちゃん」となる。あっくん に自分の願望をしっかり言える橋下さんは確かに強くなった。
最後に橋下さんの話を青木に転用する構成も憎い。「想太」という名前は青木にピッタリだ。その名の通り彼は想像力が豊かな男性である。だから青木は空気が読めるし、人の気持ちが分かる。逆に暴走してネガティブ妄想するのも想像力の産物だろう。
年が明け、青木は井田と初詣に行った。だが2人きりの時間は短く、井田のバレー部仲間、ココロたちと合流し、青木は自分の友達扱いを気に病む。そして井田から好きと言われていない関係を改めて不安に思う。そんな青木の状況を横で聞いていた豊田は井田に報告する。豊田は便利な男だ。こうして豊田からの忠告で改めて井田は「好き」という感情に向き合う。
初詣の時の自分の対応の過ちを知った井田は、お詫びに青木に改めて2人で過ごすことを提案する。場所は家族が誰もいない井田の家。そのシチュエーションに青木は動揺するが、井田はやっぱり冷静。青木が気を遣わなくて済む、とだけを考えている。
井田の家で2人は格闘ゲームをして過ごす。勝負に一喜一憂する青木の姿を見て井田は またも上機嫌。そして勝負に固執する青木がコントローラーの交換を巡ってお茶を溢してしまい、濡れた服を井田は交換する。この時、井田はいきなり服を脱ごうとするが、青木が それを制止する。俺の前で服を脱ぐな、と赤面した顔を覆う。青木にとって井田の裸は性的対象という意味なのか。
だが井田が着替え終わるまで顔を伏せる青木を再度 井田は からかう。その井田の大笑いに青木の堪忍袋の緒が切れる。ここで再度 交際における2人の温度差が問題となる。胸が苦しくなるほど恋をしている自分に比べて、井田は平然としている。青木は井田の不誠実をなじり、そして家を辞去する。
それから1週間、彼らは会話もしない。絶交 再び、である。豊田は自分の忠告が2人の関係を悪化させたと詫びるが、井田は わざと青木を怒らせる自分に失望していた。そこで豊田は 井田の行動と幼稚園児や小学校低学年ぐらいまでの男児が好きな子をいじめてしまう行動との類似性を教える。こうして井田は かなり幼稚ながら「好き」が育っていることを知る。
犬の散歩帰り、井田は自宅前に青木を発見する。青木は1週間の特訓により前回 負けたゲームでのリベンジを果たしに来たのだった。井田が からかうのなら、自分が強くなるしかないというのが青木の結論。天然の井田と一緒にいる覚悟は こうして固まった。
また一回り強くなった青木にはご褒美が待っていた。それが井田からの「青木が ちゃんと好きだ」という言葉。井田の青木への からかいは、彼のリアクションが見たかったから。青木の反応を見ると井田は胸が苦しい。それが ただの友達とは思えない感情であることを井田は愚直に伝える。
ずっと聞きたかった言葉を聞けて青木は少し泣く。それに井田の言葉はいつだって真摯で、費やした時間の長さも彼が真剣に考えてくれている証拠であると青木も理解している。井田の突然の告白に青木は振り回されないように さっそく強くあろうと振る舞う。恋愛面では自分が上手、という先輩風を吹かせるが、愚直な井田の言葉は青木から冷静さを奪う。
でも考えてみれば、相手の動揺が可愛いと思う感情って「ドSヒーロー」に繋がるんじゃないだろうか。井田の からかい は、今は子供の意地悪レベルだが、その内 青木の心臓に手を当てて「お前 上手(うわて)とか言ってんのに、こんなにドキドキしてんの? 可愛いな チュッ」とか言い出すんだろうか。見たいような見たくないような…。