《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

交際から1か月 経っても周囲や私が落ち着かないのは 君が1等級の明るさの流れ星だから。

流れ星レンズ 2 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
村田 真優(むらた まゆ)
流れ星レンズ(ながれぼしレンズ)
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

凛咲と夕暮くんは、つき合い始めて1か月。放課後デートしたり、奇跡みたいに幸せな毎日だけど…。凛咲のクラスメイト・蜂野くんのせいで、2人の恋に初めての危機が! 凛咲の初恋の続きは、どうなるの…? 【収録作品】candy CAT

簡潔完結感想文

  • 定期連載スタート。そこで登場するのが新キャラ。毒舌ドS美少年クラスメイトが急接近!?
  • 「君の誇りを汚すものから君を守っていたい」「少年らしさは傷口だけど 君のKNIFEさ」。
  • 最初から人を優先する凛咲は聖女。その聖女パワーは蜂野の真意を見抜き、彼のために動く。

じ流れ星に目を奪われた者同士、の 2巻。

いよいよ『2巻』収録分から定期連載が始まる。白泉社作品などと違って、仕切り直しのリセット機能は働かず、このまま交際編が続いていく。しかし主人公たちは中学生設定だし、掲載誌は「りぼん」だし、もう既に終わったキス以上の進展が ほぼ望めない中での交際編である。少女漫画としては進展する要素が乏しい中で、どう面白くするかが連載作家としての力量を問われよう。

そして定期連載だからこそ出来るのは、新キャラの投入。今回は蜂野(はちの)という謎めいたクラスメイトが登場する。ヒーロー・統牙(とうが)とは違うタイプの男性キャラを配置して、ヒロイン・凛咲(りさ)と どういう関係になるのかが読者の目を奪わせない。『2巻』は巻末に別の読切短編が収録されていることもあり、蜂野が物語を引っ掻き回す。

ネタバレになってしまうが、蜂野が当て馬になりそうで ならない所に作者の賢明さを感じた。作品人気を出すためなら統牙に負けないぐらいの男性キャラを用意して、三角関係にするのが手っ取り早かったはず。だが凛咲と統牙の交際は まだ開始から1か月。そこで当て馬に心を奪われていては凛咲への風当たりが強くなってしまう。だから蜂野は当て馬に収まらず、悪意(と幼稚さ)を持って凛咲に近づくキャラに設定したようだ。そして本人が認めたくないだろうが、年齢的にも「中二病」をこじらせてしまっているように見える。

統牙と蜂野が凛咲を巡って争う場面に見えるが、真相は違う。蜂野は悪意と好意の集合体。

『1巻』の短期連載3話の後の続編2話は、2人の交際の学校内の余波を描いた作品だったが、この「蜂野編」とも言える話も その延長線上にある。続編は男女それぞれの集合体としての反応を描いていたが、今回は蜂野という個人が、まさに蜂のごとく、毒針を持って凛咲たちに近づいていく。時に悪意を剥き出しにしてくる蜂野に対して2人は どう対応するのかが焦点になる。

その構図を理解すると面白いのだが、それが判明するまでは蜂野が正体不明に感じられ、物語に不穏な空気が漂う。そして互いに相手を大事に想う余りに、時に神経質に、時に感傷的になる2人の様子は少々 鬱陶しい。思春期で上手く自分の心をコントロールできない繊細さ、と考えればいいのだが、一事が万事、物事を大袈裟に捉える様子は読んでいて疲れる。特に統牙への悪評を自分の力で払拭できない力不足を感じる凛咲は湿っぽい。

ただ最初から地味めの凛咲は自分を持っている。それは派手めの統牙と交際しても変わらない美質。彼に寄り掛かるだけでなく自分で考え、行動できる人。それがラストで描かれている。ただ そういう凛咲の美質を知った時、統牙の目の上のたんこぶ である蜂野が本物の当て馬になりそうな予感もする。この『2巻』は少々長い、蜂野の自己紹介であっても おかしくはない。


際後から1か月、2人の交際は学校の教師たちからも認識されるようになり、2人の見た目や性格の違いから統牙が凛咲を脅して交際している という あらぬ疑惑まで出される。こういう教師は頭の固い世間の象徴だろう。

この頃、凛咲は統牙としたいことがある。それがデート。そのことを打ち明けようと勇気を持って統牙の前に出ると、彼もデートをしようと提案してくれた。そうして思いがけず放課後デートが始まる。告白の時もそうだったが、彼らは阿吽の呼吸を持っているように見える。統牙は察しが良いところがあるが、それゆえに不必要に傷つくような展開が なければいいのだが…。

デートと言っても放課後に ただ歩くだけ。2人はお互いの家のある方向ではなく、第3の道を行く。知らない道も統牙と歩けば楽しい未知。そんな感想を持つ凛咲に統牙は改めて休日デートを提案する。

辿り着いたのは街中のオープンスペース。着席して飲食しようとするが凛咲は財布を持っていない。統牙が奢ると言っても凛咲は返却することで頭がいっぱい。この辺は律儀な凛咲らしい。人を自然に助けられても、自分が借りを作るのは苦手なのだろう。やや しつこいぐらいに借りを早く返したい凛咲に統牙も早々に折れる(不毛な会話を終わらせたい)。2人は それぞれに互いのアイスを注文する。統牙が選んだ凛咲のアイスは「いちごみるく」、その逆は「チョコミント」。これが互いのイメージなのだろう。なんだか分かる気がする。


が いざ実食、というところで、生徒の見回りをしていた凛咲のクラスの担任の男性教師に確保され、車での連行を強制となる。だが これは若くて柔軟な この担任による、他の教師から見つける前に彼らを逃亡させるという助力でもあった。
統牙と一緒なら教師の運転で3人でドライブも楽しいもの。統牙の存在は日常の全てを非日常に一新させるパワーがある。

ただ この担任教師も多くの教師と同じく統牙との交際が凛咲に どう影響が出るかを心配している。その一例がピアスだろう。中学生にして公然と大きなピアスをしている統牙は生徒の中でも目立つ。教師陣は、凛咲が彼に恋するあまり同化しようとする、というのが不安なのだろう。その心配も分かる。まだまだ幼い彼らだからこそ、そういう行動を愛の証明にしようとしてしまうことは ままある。だが『1巻』の感想文で書いた通り、凛咲は携帯電話やピアスなど統牙の装飾に合わせない 良い意味でのマイペースを堅持する。それだけの強さがある。惹かれるのは外見だけじゃないから。


咲のクラス内に新キャラが現れる。転校生ではなく これまでもクラス内には いたのに作品内には いなかった人だ。その登場のキッカケとなるのは席替え。凛咲の前の席になったのが新キャラ・蜂野 真(はちの まこと)だった。見た目も優しそうで超頭いい、という立場的には統牙の正反対の人と言える。

だけど蜂野は ちょっと凛咲にだけ周囲の人とは態度が違う。蜂野は時々 毒舌&ドS。そして どうやら統牙に敵意を持っていて、凛咲が統牙と一緒にいることで彼女が「毒化される」と思っている。その言葉に棘を感じた凛咲が統牙を擁護するような言葉を並べると、蜂野は統牙と その仲間を頭弱そう で くだらない、大っ嫌いと言い切る。
その統牙を選んだ凛咲もまた同罪らしい。ただ後の彼の様子を見る限り、蜂野は凛咲のような清楚系の人間を実は自分がコントロールしたいと思われる。自分の獲物を横取りされたから統牙を恨んでいるとも考えられる。この辺が恋愛フラグのような気がするが、蜂野が当て馬になることはなかった。
ただ この時の蜂野の台詞、真相が分かってから読み返すとドSというよりツンデレが正解なのだろう。上述の蜂野の峠への感想は「頭が弱そうで 私以外の仲間と楽しそうに つるんでる あんたなんか大っ嫌いなんだからねッ!!」と訳すのが正解だろう(笑) 行間を読めば、彼の気持ちが見えてくる。

蜂野は凛咲のように「境界線」を越えない自分を誤魔化し 統牙に責任を押し付ける 本物の「中二病」。

咲から見た蜂野は頭が すごくよい、孤高の人。表面上、人当たりは良いが、その実 誰とも仲良くしない。そんな人に無関心そうな彼から統牙への厳しい評価を受けて、凛咲は どうにか統牙の名誉を回復しようとする。だが何を言っても逆効果になりそうで上手く言葉が出てこない。

その膠着状態を打破するのが、廊下で教室内の2人の話を聞いていた統牙本人。凛咲を蜂野から遠ざけ、そして蜂野にも牽制をする。

その後の統牙との2人での会話でも凛咲は上手く言葉が出ない。2人の交際における、そもそもの2人の差異は蜂野によって浮き彫りにされた。きっと凛咲側が何を言っても統牙へのフォローにしかならないが、その前に統牙は自分の確かな価値観を凛咲に示す。それが凛咲が好きと言ってくれること以外 興味がない。世間の声など無価値であるということだった。
自分の彼への愛情が統牙を支えていることを知り、凛咲は感動する。ちょっとしたトラブルの中にも彼のことが好きになる。好きすぎて泣ける、のである。


日、凛咲は風に誘われて屋上への階段を上がる。すると普段は鍵がかかっているドアが開いており、屋上には蜂野がいた。面倒くさい教師から隠れるため、蜂野は凛咲の手を引き、屋上に隠れる(凛咲が返事をしちゃってる時点で隠れられないと思うが隠れられる謎展開…)。

蜂野の慣れた様子から どうやら彼は昼休みなどに教室にいないのは ここに来ているからだと凛咲は察する。会話中、統牙の名前を出すと蜂野から頭の中あいつだけだろ、と嫌味を言われる。だが それは紛れもない事実で、それが凛咲の幸福である。だから彼女は蜂野に満ち足りた笑顔を見せる。そうして蜂野の仕掛けた罠に自力で抜け出す。蜂野は凛咲の強さの一端を見たのではないか。

こうして蜂野は凛咲に興味を持つ。そして そうなると統牙にとっては厄介な存在となる。蜂野は凛咲に対しても反省した態度を見せ、当たりが柔らかくなる。距離を詰めてくる蜂野に凛咲の方は頑なな態度を保つ。蜂野が壁ドンをして彼女の自由を奪っても、凛咲は統牙のことを悪く言った人と急に仲良くは出来ないとハッキリと言う。

極端すぎて理解不能な蜂野の態度に凛咲は息苦しさを感じる。凛咲から一連の流れを聞いた統牙は蜂野の性格を理解したらしい。クールな男性たちのクールな頭脳戦が始まりそうである。そして統牙は凛咲の心が晴れ渡るように楽しいデート構想に話題を転換する。この2人の精神年齢的には統牙の方が やっぱり上なのかな。


日、下駄箱前で2人の男性は会話を交わす。統牙を揺さぶりにかかる蜂野。最初は冷静だった統牙だったが、蜂野が凛咲の髪や首に触れたという事実だけど事実ではない行為を知り、激昂する。一瞬、険悪になる2人だが、統牙の乱暴は凛咲の評判に響くという蜂野の言葉で、統牙は蜂野に掴みかかった手を下ろす。

統牙は声を掛けてきた凛咲に事実を確認する。蜂野が凛咲に触ったのは、教師から隠れる際の動作の一つだった。それを重大事項のように勘違いした統牙は自分が冷静ではないことを自覚する。そして その怒りの発火点は、凛咲への独占欲である。ただ それを知られるのは恥ずかしいので彼女には黙っている。その沈黙が距離が生んでしまうのだが。

蜂野に誘導されて自滅した形になった統牙は反省する。そして凛咲も蜂野を責めたりしない。キレさせようとして なかなかキレない2人に蜂野は苛立つのではないか。
そんな しつこい蜂野から凛咲を守るのは やはり統牙。蜂野を撤退させ、凛咲と改めて2人で話す。どうしても統牙を傷つけたという感触が残る凛咲に統牙は彼女に持ち物を出させる。そして凛咲の自習用のノートに自分の名前を加え、それを愛の証とする。その喜びと、統牙を安心させたい気持ちで凛咲は彼を抱きしめる。お互いのノートに自分の痕跡を残し、彼らは離れていても自分が側にいるという意識を交換したと言えるだろう。


野の真意が分からない凛咲は彼を観察する。すると彼が嫌いなはずの統牙を見つめていることに気づく。自分に興味があるような振りをしているが、凛咲は自分が統牙の「彼女」になったから蜂野の視界に入ることになったと推理する。その推理は当たっており蜂野は嫌でも視界に入る目立つ彼から、自分は認識すらされていなかった現実を不満に思っていたことが明かされる。凛咲に ちょっかいを出すことで統牙の目の上のたんこぶ になりたかったらしい。つまりは構って欲しくて間接的に意地悪していただけなのだ。凛咲と蜂野は同じ星に魅了される 似た者同士で、凛咲が統牙の お気に入りになったことを蜂野は妬んでいる。

凛咲は蜂野も自分と同じように統牙の視界に入りたいことを知り、お節介を焼こうとする…。

「candy CAT」…
16歳の小林 麗(こばやし うらら)は めんどくさがりで何事にも無関心という説明的な自己紹介から始まる1編。麗は ずっと日陰にならなくて快適な お昼寝が出来そうと目星をつけた場所には先客がいた。麗を猫だと間違えて声を掛けた男子生徒と交流し、アメを貰う。その出会いが印象的で、彼のことが気になった麗は校内放送で彼を呼び出す。

日なたでお昼寝をしたり、気分屋で時に大胆なことをする麗は まさに猫のような性格。そんな彼女の呼び出しに応え、近藤 春(こんどう はる)は麗と再会する。麗は人に関心がない上に、彼は特進クラスで互いに認識してなかった。ちなみに本人は無自覚だが麗は学校で評判の美少女だという設定である。
2人の会話は どこかチグハグだが温かい。だから麗は寝てしまう。目を覚ますと大嫌いな日陰になっていたが、春の制服やベストが麗に掛けてあったので寒くなかった。

麗は春に会いたくて仕方ないが、試験期間に入るため、会えない日々が続きそう。だから春に よく懐いていた、猫の「ナーちゃん」に道案内を頼む。だが せっかく会えた春は麗を拒絶。麗は2週間、春と目が合ってもフルシカトされる。

そんな心が寒い毎日の中、今度は春が校内放送で麗を約束の場所に呼び出した。そこで春は学年6位の成績を取ったことを知らせる。春は自分といることで「美人で余裕があって かっこよくて 人気もあ」る麗の価値を下げたくなかった。自分が不釣り合いだと感じた春は、彼女に見合う人間になろうと努力していたのだ。こうして誤解が解けることで2人の交際は始まる。毎日が暖かい、麗かな春、の始まりとなる。

この短編も男女の配置こそ逆だが、本編と同じく住む世界が違う者たちが、交際していく話である。また女性が無自覚にモテているのも共通点だろう。特進クラスで成績が悪い方だった春が6番になるのには どれだけ努力したのだろうか。そして その原動力にこそ麗への深い愛を感じる。成績が全てではないが、こういう愛の証明もあっていいと思う。