《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

光を放つ君の側にいると、日陰者たちだった私や彼にも 眩しいほどの世界が広がる。

流れ星レンズ 3 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
村田 真優(むらた まゆ)
流れ星レンズ(ながれぼしレンズ)
第03巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

初めての彼氏・夕暮くんとつき合ってから、幸せいっぱいな凛咲。唯一の問題は、夕暮くんのことを敵視する蜂野くんの存在で…!? 凛咲の親友・ゆっこの恋物語や夕暮くん視点の番外編も収録!

簡潔完結感想文

  • 越境経験者が、尻込みするドSを憧れの人の前に連れて行き、同じ地平に立たせる。
  • 彼のことが好きすぎるヒロインだが、色々と面倒くさい性格で作品が湿っぽくなる。
  • 後半は side-B と友達の恋愛と読切短編。凛咲も蜂野も なぜ公立中学校を選んだのか?

局、三角関係の当て馬が覚醒したのか しないのか、の 3巻。

少しずつ作品世界が広がっていく様子が楽しめる。
本書のヒーローは統牙(とうが)は太陽(作品的には流れ星か?)だ。誰もが その輝きに目を奪われ、その存在を無視できない。ヒロイン・凛咲(りさ)が その太陽の側にいられるようになり、「地味め」の彼女の学校内の知名度はグッと上がる。自分から光を放てない月のような存在でも、太陽が適切な距離にあると、その星自体が輝いているように見えるからだろう。

一緒にバスケをすれば仲良し、そんな中学生男子たちの単純さが良い。内容が重くなり過ぎない。

それは彼女という地位でなくても変わらない。統牙の仲間たちが一目置かれるのも統牙という太陽を中心にしているからだろう(彼らの場合それでなくても一軍の容姿を持っているが)。そして今回、念願かなって統牙の視界に入れた蜂野(はちの)もまた太陽によって独自の輝きを周囲に知られることになる。統牙の強すぎる光は、蜂野の性格の悪さをも消し飛ばすのかもしれない。そういう意味では統牙は太陽と言うより、シミ・皺を軽減する「女優ライト」と言った方が的確かもしれない(笑)

そして光は色々なものを際立たせる。凛咲にとっては それは毎日だったり、世界だったりするだろう。もう慣れたはずの学校生活も彼がいるだけで特別になる。そして光のお陰で世界を遠くまで見渡せるようになる。これまでの活動範囲は せいぜいが学校内と学区内だけだったが、今回は少し遠い街に出掛けている。これは世界の広がりそのものだろう。
そして総勢11人と言う大人数での お出掛けも これまでは見られなかったこと。凛咲が『1巻』で憧れていたような1軍女子の立場を手に入れ、1軍男性と休日に出掛けるという、1話では夢だった世界に足を踏み入れている。

連載形態の影響で あっという間に交際して話が続くのか心配したが、こういう広がる交流や世界は清々しいものだった。

ただ統牙の言葉じゃないが、凛咲が割と「めんどくさい」。人に気を遣い過ぎて自分のしたいことを優先しなかったり、失敗を引きずったり、統牙を崇めすぎて自分を卑下したりと ウジウジし過ぎている。それを全面的にフォローする統牙が格好良ければ作品的には問題ないのだろうが、暗い というより湿っぽい凛咲の放つオーラは読んでいて疲れる。凛咲は色々と気づく繊細さがあるからエピソードが出来るのだろう。ただ陰気さとのバランスが いまいち取れていない。もうちょっと強い人かと思っていたが弱さが目立ってきたように思う。もうちょっと嬉しかったことだけを覚えていてはくれまいか。


野が統牙の視界に入りたくてたまらない、という過去の自分と同じなことを発見した凛咲。だから凛咲は蜂野を統牙の前に連れていく。
こうして統牙たちが いつも放課後で過ごすようなことに蜂野は巻き込まれる。凛咲は ここで あれこれ口を出さない。統牙の前に連れて行き、彼に凛咲が自分の考えを伝えた時点でバトンタッチされているのだろう。どこまでもヒロイン中心なのではなく、互いに役目を果たす、という感じの距離感が良い。

男子たちは男子で距離の詰め方がある。一緒にバスケをすれば、それだけで友達、という いい意味での単純さが清々しい。

それにしても粗野を嫌う蜂野の性格や家庭の背景からして彼が公立中学校を選ぶ選択肢はしないと思うが、地元の中学に来たのは何か事情があるのだろうか。もしかしたら受験に失敗して治安の悪い公立中学校に行くことになった不満が、その代表格に見えた統牙への逆恨みになった、という ありがちな設定だろうか。

凛咲と統牙が男女間の交際なら、蜂野と統牙は同性間で、仲良くなれないと思っていた境界線を越えて、その思い込みを壊していく交流になっていくのだろう。
こうして統牙への敵対心を解消した蜂野。だが彼は自分を越境させてくれた凛咲に感謝以上の気持ちを持つ。やっぱり当て馬なの!? と結局、統牙の落ち着かない日々は続くようだ(しかし当て馬を宣言した割に蜂野は当て馬の役目を果たさない。天邪鬼め。)。


れから数日、蜂野もまた凛咲と同じように、統牙の周辺にいることで他の生徒から認識しされ始め、にわかに蜂野人気は高まる。

こうして蜂野問題が一応 片付き、2人は穏やかな交際に戻る。
そして蜂野問題で棚上げされていた休日デートが週末に実行されることになる。凛咲の目下の悩みは統牙と手を繋ぐかどうか。初めてのことで緊張する気持ちもあるが、いつも精神的に統牙に手を引かれているような気がするので、その行為が甘えにも思える。初めてだから手を繋ぐのもドキドキするのは分かるが、短期連載でキスまでしている2人なのに今更、という構成上の問題が出てくる。キスをハッピーエンドの証明のように使ったのだろうが、その後の続編でも学校内でキスしたりしているから、今回 手を繋ぐことを議題にするのはチグハグな感じがする。

好きすぎて泣けるほどの感受性は凛咲の個性だが、些細なことでも考えすぎてしまうのは欠点でもある。

ただし、今回も統牙が友達たちに遊びに誘われ、凛咲も親友の ゆっこ が彼氏とのデートがドタキャンになったことで、2人は彼らを優先し、みんなで遊ぶことになる。統牙も凛咲も いい子という描写なんだろうけど、恋人を最優先しない態度だと その内 喧嘩になりそう。それに作品がデートするする詐欺になっている。初デートという特別イベントを先延ばしにして、読者の楽しみにさせる戦法なのだろうか。


うして週末も お預けとなってしまいそうな手繋ぎ。それは凛咲に後悔を湧き上がらせた。実は この日の昼休みに統牙は手を差し出してくれたのだが、上述の悩みもあり逡巡してしまった。どうせ週末には するだろうと自分でも お預け状態を楽しんでいた凛咲だったが、チャンスを自分から棒に振ると次の機会はなかなか訪れないものだと痛感する。

遠慮なく掴んでいいという統牙の言葉を思い出し、凛咲は統牙を追いかける。どうにか会えた統牙に凛咲は手を繋ぎたいと伝える。ちょっと意地悪されてからの不意打ちで胸キュンは高まるのだった。また凛咲は ちょっと躊躇った後に すぐに行動するというのが良い裏切りになっているように思う。統牙への疾走が彼女の願望の強さになっている。

しかし よく分からないのが この日の時間経過だ。通常の下校の時間に週末の予定を立てていたのに、凛咲が家に帰るのは日が暮れてから。そして統牙に追いつくのは星のきらめく夜になっている。時間経過は学校内で統牙たちと何時間も喋っていたと脳内補完できなくもないが、そこから一度は逆方向に別れて帰ってから、統牙を追いかけても まだ統牙が そこら辺の道に歩いている、というのが謎だ。
この時点で凛咲は統牙の自宅を知らないから、道で会うしかないのだろうが、ちょっと人の動きが変だと思う。家に帰ってから携帯電話に連絡を入れて会うことは可能だろうが、そうすると凛咲に生まれた衝動的な欲求が演出的に薄れるのだろう。確かに時間的には夜になった方がロマンチックな感じだけども。


して日曜日、女性5人(全員同じ顔に見えるなぁ…)と男性5人+蜂野で集合する。
女性たちがナンパされそうな所に、超絶イケメンがビジュアルだけで威圧するという場面は少女漫画のお約束。でも本書の場合、言っても中学2年生でしょ、というガキっぽさが拭えないのが残念なところ。

集合して初めて男性陣は この日が凛咲と統牙の初デートになるはずだったという事実を知り、彼らを2人きりにさせる。これは意外な展開ではあるものの、こうなるなら最初から遠慮すれば、と思わなくもない。特に ゆっこ は最初から知っていたんだから集団での遊びに専念すべきなのではないか。それに凛咲も思っているが、せっかく みんなで という気持ちに切り替えたのに、彼女の苦労が水の泡である。

これによって みんなとどんな遊びにも対応できるようにパンツスタイルを選択した凛咲の気遣いは裏目に出る。思いがけなく統牙と2人きりになると、自分の格好が統牙の「彼女」として隣に立つには相応しくなく思える。集団でなら気づかなかったことに気づいてしまう。そして凛咲は その後も自分の中で失敗したと何度も思う羽目になる。

まぁ少女漫画の落ち込みなんて その後の挽回のための前振りである。統牙は凛咲のために彼女が好きそうなクマの風船を貰ってきてくれた。そして数々の失敗も統牙の言葉で変換すれば挽回される。凛咲のミスは統牙のミスでもあるのだ。
しかし そうやってフォローされても凛咲は落ち込む。もっと統牙の隣に立つべき自分でいたいと志を高くする。それは立派な心掛けだが、こうなると いつまでも凛咲が心から楽しめる日なんてこないんじゃないかと心配になる。

一方、蜂野はトモと2人きりになる。ちなみにトモには彼氏がいるという設定が『1巻』の続編で あったはずなのだが、別れている。そんな移り気なトモが次に狙うのが難攻不落の蜂野。彼の毒舌を聞いても全然ヘコたれないトモは この後もずっと蜂野に まとわりつく。当て馬に恋人候補が早くも現れる。作者は蜂野に どんな役割を担わせたいのかが謎。


「night sky passport」…
初恋を知らなかった統牙が、凛咲と出会う1話での統牙側の行動を描いた作品。初対面の印象や夜の校舎を歩いたこと、一緒に自転車に乗ったことなど、彼の方が徐々に凛咲に惹かれていく様子を描く。
統牙視線だから ということもあるが、凛咲は内面的には内気かもしれないが、決して外見は「地味め」ではない。むしろ昔の少女漫画の お嬢さまっぽい。そういう意味では やはり「境界線」は凛咲が一方的に感じている格差であって、統牙の方は凛咲を合う合わないという見方をしていないことが分かる。

「sparkling chocolate」…
ゆっこ こと南 由里子(みなみ ゆりこ)とハル こと本田 晴一(ほんだ はるいち)が交際することになる小学校6年生のバレンタインを描く。ハルの前では素直になれないことが ゆっこ の悩み。どれだけハルが優しくしてくれても、チョコ1つ渡せない自分。そんな葛藤を乗り越えて ゆっこ は一歩前に踏み出していく。本書は女性の方が積極的で人に体当たりする勇気があるように見える。

名前だけは出ていたハルの顔を始めてみたが、蜂野のような統牙のような、つまりは基本的に全員 同じ顔に見える。本編の外にいるキャラなのだから もっと冒険した容姿にすればいいのにと思った。それにしても小学校にして制服がある学校ということは私立の学校なのだろうか(制服の公立高校も地域によっては多いみたいだが)。色々と謎である。

「瞬間ピンク」…
中学2年生の上野 玲奈(うえの れいな)は同じクラスの徳井 慶壱(とくい けいいち )が好き。本編の凛咲とは違う活動的な人だが、困っている人は見過ごせないのは同じ。1年前の遊園地の遠足で義侠心を発揮した玲奈は、経緯を追求せず乱闘騒ぎを起こした教師から叱責された。だが それを庇ってくれたのが優等生の慶壱だった。
玲奈は それから1年後の同じ日の今日、慶壱に告白することを決めていた。だが友達の残飯(笑)を食べたため気分が悪くなる玲奈。その異変に気づくのは慶壱。

疑問なのは この看病の際の2人きりの時に告白すればいいのに、集合時間間際になって彼を必死に探して告白すること。ドラマチックな演出なんだろうけど、看病中は告白できない理由を作れなかったのか。ここが謎の遠回りになっている。『2巻』収録の短編に続き、元気なヒロインと理知的で落ち着いているヒーローの組み合わせだ。結局、人気が出たのは統牙みたいな ちょい悪な人なので、あんまり読者には求められないタイプなのだろうか。