
青木 琴美(あおき ことみ)
カノジョは嘘を愛しすぎてる(カノジョはうそをあいしすぎてる)
第15巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★★(6点)
クリプレと理子のコラボで武道館ライブは最高潮に盛り上がる。理子としては、Mash&Co.で、いつか武道館ライブをするのが夢だが、音楽番組のえらいプロデューサーに、お金をもらえるミュージシャンとしか、プロとしては組むべきではないと、説得される。幼馴染とうたうのが楽しい理子にとっては、苦渋の選択となり、悩むのだが!? ライブ後の打ち上げで、先輩ミュージシャンのシバケンとLINE交換をした理子。理子的には、ただの社交辞令だと思っていたのだが、アキが意外と嫉妬しちゃって!?
簡潔完結感想文
- 1巻 丸ごと武道館公演後の数時間を描く。華やかなステージの裏の幾つかの惨めさを描く。
- 音楽的三角関係は秋 ⇔ 理子 ⇔ 心也。恋愛的三角関係は秋 ⇔ 理子 ← シバケン って図式?
- なぜか心変わりをする長浜と二股していた茉莉に対して、よく分からない一途さを貫く理子。
1巻につき理子と秋が1回キスをするノルマ、の 15巻。
理子(りこ)がCRUDE PLAYの武道館公演のゲスト出演をした『14巻』が陽ならば、今回は陰。何度も指摘しているけれど作者が描きたいのは成功の裏にある惨めさ。1巻丸ごと武道館公演後の数時間を描いていて、そこに蔓延する惨めさで雰囲気は暗め。1巻の内で何人の惨めさを描いているのだろう。ただ群像劇になり過ぎていて何が描きたいのかが よく分からない。今回は秋(あき)の精神状態が良いから心也(しんや)が裏ヒーローとして鬱々としている。
以前の成功体験である生放送での自作自演ハプニングの後も そうだったけれど、作者は すんなりと理子の飛翔を描いてくれない。これまでの作品でも恋愛の成就の裏にある(主にヒーローの)葛藤や苦しみを描いてきたけれど、今回は芸能界の成功の裏にある それを描きたいようだ。ただ そういう作者の方針が読者の期待とのテンポのズレに繋がっているように思える。基本的にウジウジしている。
それでも最低限 読者が読みたい場面を作り出すために理子と秋は1巻につき1回キスしている気がする。そのノルマを達成することと引き換えに自分の描きたいように描いているかのようだ。
ただし理子の秋への恋の落ち方は あまりにも早いため彼らが本当に想い合っているようには見えない。だからキスが幸福な場面ではなく一層ノルマに見えてしまう。理子はなぜ秋を嫌いにならないのか の方が不思議に思う。
恋愛面で読者が読みたいシーンの創出のために秋の仮想敵として用意されているアイドル・シバケンが用意されているように思うけど、シバケンが理子を気に入る理由も よく分からい。ビジュアルや性格が秋に似ていて、シバケンという人の魅力が出ていない。これらは音楽界ではなく少女漫画ヒロインとして理子の付加価値を高める意図があるんだろうけど、丸ごとカットしても作品上 問題がない。だからシバケンのシーンが不必要に多い今回は いらないシーンの連続とも言えてしまう。
作品的には理子たちのMUSH&Co.は、名実ともに第二のCRUDE PLAYになるのかという問題に直面している。
CRUDE PLAYはデビュー時にエアバンド状態になる選択をして、その苦しみがデビューから7年が経過した現在も継続している。潔癖な秋は自分が裏方に回ることで その苦しみから逃れるが、道化になって芸能活動をしなかったため幼稚な部分が残っているように思える。
そして事務所の後輩バンドであるMUSH&Co.は理子の実力によってCRUDE PLAYのようなスターへの道が開かれようとしているけれど、それは彼らの苦悩を辿る道でもあった。そしてCRUDE PLAYではボーカル・瞬(しゅん)が看板でありながらソロ活動をしてこなかったけれど、MUSH&Co.は最初から理子が独り歩きしている状態。だからデビュー直後からメンバーは それぞれに悩みを抱える。ただの高校生の部活であれば仲間たちと横一線でいられたのに、実力と商業主義の芸能界では それが難しい。多くの人の目に留まるほど お遊び感覚ではいられない。そういうプロの世界に理子は直面していて、仲間たちと道を違えることを含めて将来像を考えなければならない。16歳、おそらく高校2年生の理子にとっては少し早い進路の悩みとも言える。
それにしても理子の髪形が ますます変になっている。横に膨らんでいくのは まだ分かるけど、いよいよ縦に膨らんで頭頂部から前髪が生えている。こうなってしまうセンス…。


また やっぱり女性の中で理子だけを正しく描く感じが好きになれない。今回は長浜(ながはま)が理子に対して勝手に嫉妬を覚えている。これは直接 攻撃するかしないかの違いはあるけれど、寺田(てらだ)と同じような精神状態だ。しかも長浜は秋と交際する理子を邪魔するようなタクシー同乗事件(『7巻』)を起こしながら、キス1つで心也に心変わりしている。茉莉(まり)を含めて三者三様に理子への対抗心から歪んで自滅していく女性たちに比べると理子は相対的に美しい存在となる という図式なのか。
たった2回のチャンスで理子は業界内の注目の的になる。
観客席で武道館のステージに立つ理子を見ている祐一(ゆういち)は彼女に置いていかれる気がして、更に自分の存在価値に疑問を持つ。その祐一の言葉に理解を示しつつも蒼太(そうた)は音楽を諦めない。自分より上手い奏者は星の数ほどいても、それが自分の行動を否定する材料にはならない。その言葉は祐一よりも隣で聞いていた秋に刺さっている。
理子は飽くまでソロ活動ではなくバンド活動を念頭に置いていた。その気持ちを知った祐一たち10代の若者は奮起する。理子はバンドを最優先にしているようで、心也ではなく秋の曲を歌いたいという誘惑に負けているし、既にソロ活動も同然の状態でブレているように見える。
やはり業界で需要があるのは理子だけ。その現実をテレビ局の音楽畑で長年 働いてきた女性プロデューサーは突き付ける。そして仲間と音楽をやるなら彼らの音を磨く必要があること、それが出来ないなら早めに切り捨てることを助言される。理子のような才能は仲間と一緒に活動するのも 活動を止めるのも どちらも苦難の道であると教える。
高樹がオファーを断りづらい この女性プロデューサーの手で理子の前に道は作られ、かつてのテレビ番組「堂本兄弟」を念頭に置いた架空の音楽バラエティへの出演が決まる。そこで理子は仲間ではない者が奏でる音で歌うことになる。
自分の進むべき道への心の整理が付かないまま理子はトップアイドル・シバケンと再会。相変わらずシバケンは自分の不愉快を説教に変換している。秋と同じような不器用さを爆発させているシバケンだが、秋と同じように一気に距離を詰めて連絡先を交換する。ただし連絡先を交換してもシバケンに自分からコンタクトを取らない。理子の頭は それ以外のことで悩むことがいっぱいなのだし、秋のことが好きな一途な存在で、アイドルという肩書に惹かれるような軽薄な女ではない。理子が その秋の どこを好きかは よく分からないのだけど…。
心也は理子の魅力を最大限に引き出す楽曲と機会を与えた秋にコンプレックスを覚える。秋を尊敬する気持ちと嫉妬する気持ち、それらは関わる度に増幅していく。
その心也に長浜(ながはま)は理子への接し方を再度 注意される。秋と理子の間に割って入ろうとした長浜は、今度はアンチ化しかねない観客の前に立った理子を放置したりと配慮が足りない。今の長浜は、理子が秋の恋人であることよりも心也に大事にされていることの方が羨ましい。けれど仕事に私心を持ち込んだことで再度 心也に幻滅されてしまう。


そして心也は理子を労おうとして楽屋を訪れた際、彼女が秋の曲を歌って輝いている場面に遭遇してしまう。理子は自分を奮起させるために歌っていただけなのだけど、その時に無意識の選曲が秋であったことが心也を傷つける。
そんな精神状態の時に高樹に秋の曲を盗んだことがバレてしまう。高樹は飽くまでビジネス優先。理子が歌う曲が心也の作曲でも秋のでも どちらでも構わない。期限内に答えを出すのは心也に委ねられた。
今回のライブでの敗者は寺田(てらだ)も同じ。理子を炎上させようとした計画は失敗に終わり、SNSで自分に賛同していた人たちも今度は寺田を誹謗中傷してきた。個人を特定され顔写真も出回り、寺田は惨めになる。
寺田のSNS上での誹謗中傷被害を知り、蒼太は彼女に寄り添おうとする。蒼太は寺田が自分を少しも好きでないことに早々に気づいていた。けれど蒼太は傷ついている寺田を放置できない。
また しばらく出番のなかった茉莉(まり)はメンタルの不調からは立ち直っているものの、今度は歌姫であろうとして自尊心を こじらせる。
「番外編 ファンの夢じゃない、自分の夢なんだ」…
プロ意識の高いトップアイドル・シバケンは自制して美人に目を奪われないようにしている。そんなシバケンの恋の相手は彼のルールの抜け穴だった。
