《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

先輩バンドの お仕事を見学した後、彼氏と並んで歩く新人歌手(2回目★)

カノジョは嘘を愛しすぎてる(18) (フラワーコミックス)
青木 琴美(あおき ことみ)
カノジョは嘘を愛しすぎてる(カノジョはうそをあいしすぎてる)
第18巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

自分の音がたまらなく好きな気持ちと どうしてこんなふうにしか弾けないんだろうって 嫌になって 逃げ出したいくらいの気持ちがあって でもどこかで認めてほしくって 誰に 誰にって 君に認めて欲しくて なんで こんな熱狂の中で 僕はなんでこの音はクリプレじゃないって思うんだろう

簡潔完結感想文

  • いつだって相手が奏でる音は自分が出せない音。代役を経て再び愛憎が渦巻く秋と心也。
  • 終盤の理子の役割は、純粋の名目で秋以上に空気を読まないこと。今回は良かったが…。
  • まさに衝撃のラスト。少女漫画における遠距離恋愛の危機と同じようなクライマックス。

者の中の男尊女卑が爆発する 18巻。

少女漫画の生命線である恋愛感情の変化が1mmも感じられないから、もはや本書は少女漫画ではないのだろう。敢えて少女漫画的要素を模索するならば、衝撃のラストの1ページが、一般的な作品の遠距離恋愛危機に相当するのではないか。
やっぱり作者が描きたいのはCRUDE PLAYの来し方行く末。だから そのCRUDE PLAYの崩壊危機は恋愛の終わりと同じ危機感で描かれる。ハッピーエンドを含めて一度はお別れを予感させながら よりよい関係を築くという流れは まんまカップルのそれである。

オリジナルメンバーで音を楽しむ中、秋だけが苦悶の表情を浮かべる理由は…

男という存在を尊く描き、女を軽視するのは過去作でも見られた作者の広義の男尊女卑だと思った。いつだって作者の描くヒーローは特別だ。今回のヒーローであるはずの秋(あき)は やや幼稚な部分が見えるけど才能は絶対的。そこに今回の表紙である瞬(しゅん)や心也(しんや)が加わったトリプルヒーロー体制が見える。彼らの懊悩する姿こそ作者の描きたいもの。だから念入りに悩みの種が描かれる。

秋と心也の心情の描写が丁寧な本書は、作曲を通して両想いを確認したはずの2人が再度 相手へのコンプレックスを再燃させている。根本は好きなんだけど すれ違ってばかりという2人の関係性は少女漫画的なのに、肝心のメインの恋愛は何も変わらないし何も伝わらない…。


み多き秋にとって理子(りこ)との恋愛は悩みの種にもならない。いつの間にか理子は感情と思考が直結しており裏表のない純粋な存在となる。それは思考力がないことと同義になりかねず、これまで通り女性の描き方に問題があるように思えてしまう。

今回、理子はCRUDE PLAYの微妙な空気を直感的な行動で打破したという功績もあるけれど、その前の一連の行動は深い思慮の無い作者の描く女性キャラらしい行動と思わずにはいられない。

まずライブ会場に行くために失礼な態度で仕事場を切り上げたことが問題だし、そのライブ会場を後にする時に理子は秋と並んで出待ちのファンの前に現れる。これはカップル双方とも自分の立場を分かっておらず軽率だ。これまで覆面作曲家だった秋は出役に慣れないけど、理子はプロ意識が またもや低い。少し前にアンチの存在を確認したばかりだというのに反省も成長もない。CRUDE PLAYの仕事を見学して終わった直後に秋と並んで歩くのは、デビュー前の『7巻』で深夜3時のラジオ見学終わりで秋と合流したのと似た状況。純粋という名の頭からっぽだからプロ意識なんてないのだろう。

役割があるとはいえ勝手に押しかけてきておいて、CRUDE PLAYの豪華バスに乗って帰京したのも読者をアンチ化させる。今、寺田(てらだ)が理子を再炎上させようとするなら、寺田側に立つ人間も多いのではないか。
理子のウザさは この後も続く…。


の代役を知り東京から香川の会場に飛んだ理子は初めて秋の演奏を聞き感動で震える。

そんな理子の背中を見て心也は会場を後にする。心也の心配をするのは高樹(たかぎ)の役割となる。高樹は心也のいないCRUDE PLAYは空中分解すると考えていた。それは舞台上で初めて脚光を浴びる秋も同じ。秋は心也が嫉妬するほど作曲者しか出せない音を響かせているけれど、その作曲者は心也の演奏を念頭に置いている。秋は冷静に彼我の演奏スキルの差を痛感し、幸福でありながら惨めだった。秋は自分の技術を理解しながら舞台に立った。そして それを心也に見て欲しかった。心也に届かない、認められない。それが秋の苦悩となる。

だから秋の中に解散という言葉が浮かぶ。本来のCRUDE PLAYに戻っても心也の音がなければ それは別物。オリジナルメンバーのCRUDE PLAYは もはや秋の考えるバンドの姿ではない。


演後、心也は長浜(ながはま)にキスをして、秋は理子にキスをする。それだけで1話が終わる。シャワー室から秋が出てくるのを待つ理子の表情が好きじゃない。理子にとっての秋の重要性が いまいち伝わらないから彼女の思いの強さも分からない。

長浜も高樹のように経験則や深い洞察による言葉を持たないから自分の身体を投げ打って心也を慰撫しようとしているだけに見える。そして心也が衝動的に暴力的に長浜を扱おうとするのに対し、自分の恋愛感情を吐露して好きだから どうなってもいい、という予防線を張って自分の価値を保とうとしている。長浜の作中の扱いは可哀想になる。

そして茉莉(まり)は秋が出役になったことと、その会場に秋が理子を招待したと勘違いして またメンタルを病む。この人も秋への想いの強さや、秋のどこを好きになったのかが分からないから ここまで追い詰められる原因が伝わらない。


イブ会場から出るバスに秋は理子と並んで乗ろうとする。そこに心也が登場して男女から先輩後輩へと見え方を変えさせる。秋だけでは至らないところを心也は分かっている。心也は体調不良だと公表しているのに、それをおしてファンの前に出てフォローをしている。そもそも体調不良なのだから心也がバスに乗る必要性はないのだけど、このバスに乗せないと心也はバンドと一緒に行動しなくなることが高樹には分かっているのだろう。

この会場で最注目を集める秋と一緒に並んで歩いてしまう思考力ゼロの直情女

瞬の父親は峠を越し、意識を回復する。メンバーを乗せた大型バスは瞬の父親が入院する東京の病院に到着する。瞬だけがバスを降りる予定だったが、秋たちメンバーと高樹も見舞いに同行する意思を見せる。その物音で理子も目を覚まし、ならばと起きているのに出てこないでいた心也に声を掛け同行させる流れを作る。これは理子がいなければなかった未来で、香川に押しかけただけの理子がメンバーとバスに乗っている意味なのだろう。ただ厚顔無恥というか、選ばれた人しか乗れない特別な仕様のバスに平気で乗っているのは場違い感がある。こういう部分が やっぱり好きになれない。

病室に到着し一夜で憔悴した母に愕然とする瞬。それに追い打ちをかけるように親族は瞬に跡取りとしての責務を押し付ける。後継者の不在は会社の経営にも影響が出るため親族は瞬に明確な答えを強制する。
瞬は その後、眠る父親と面会。そこで自分の心を伝えようとしたところに父親が目を覚まし、彼だけは どんな時も味方であることを改めて実感する…。