《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

男子高校生4人が わちゃわちゃすることが本編なので、勉強も部活もバイトも 何もしません!

虹色デイズ 2 (マーガレットコミックスDIGITAL)
水野 美波(みずの みなみ)
虹色デイズ(にじいろデイズ)
第02巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

夏樹、智也、剛、みんなの恋がそれなりに進展しつつある中、恵一に告白する女子が出現!? ドキドキ高まる学校祭、テニス対決、などなど盛りだくさんの第2巻! 【同時収録】一人でできるもん

簡潔完結感想文

  • ザ・日常回。恵一が恋をしない理由とは? 性癖も性格も最後まで変わらない恵一。
  • 早くも両片想いが成立しそうだが、奥手×鈍感は ここからが死ぬほど長いよ…。
  • 番外編・読切が半分を占め 本編は半分ほど。その割に時間の流れが早く高2の夏突入。

1話につき1人以上の新キャラが投入される 2巻。

学校イベントや新キャラが続々と投入されてネタの枯渇回避を図るのは ますます白泉社っぽくなっている。季節も一気に夏に突入し、『2巻』で早くも高校2年生の7月。ここまでの2巻で7か月が経過しているということは、彼らは4巻で高校3年生に、そして6巻辺りで卒業する計算である。
高校2年生と言うのは高校生活、少女漫画でのゴールデンタイムなので、この時期を もっと じっくり・ゆっくり描いても良かったのではないか。それをしなかったのは恵一(けいいち)と彼のヒロインの女性との関係を描くためなのかもしれないが、高校生活後半に色々と詰め込み過ぎた感もある。本書は少女漫画の中で最も高校3年生の描写が多いのではないか、と思う。

そして早くも『2巻』で鈍感ヒロインである杏奈(あんな)が夏樹(なつき)への気持ちを自覚し始めた気配はあるが、彼らが行動に出るのは随分と先。奥手 × 鈍感は ある意味で最高で最低な組み合わせである。ここからはミリ単位の気持ちの変化が楽しめるようになる☆

今回、夏樹(なつき)が来年の約束をしているが、この段階で作者は どこまで描くつもりだったのだろうか。もし しっかりと卒業まで描くというのなら、彼らの将来の選択肢が広がるような経験をさせてあげてほしかった。キャラを大事にする割に彼らの将来が普通すぎた。もうちょっと早い段階でフラグを立てて、彼らが自分の道を選ぶエピソードは挿入できなかったのだろうか。もっと1人1人に向き合って進路指導をして欲しかった。


して早くも『2巻』にして本書には若者らしい疾走感が欠如しているように感じた。一度そう思うと彼らは あれこれ言い訳を作って、何もしない自分を納得しているように思えたのだ。恋愛に関しても、全力疾走するというよりは妨害・阻害するものばかりが目立っていた気がする。全体的にパッションを感じられない。暑苦しくなくていいから、どこまでも湧き上がる感情に翻弄されて欲しかった。

各キャラに熱を感じられず最初に設定された部分以外に この人たちの良いところは どこなのだろう、と疑問に思ってしまう。絵と同様に、万人に受けるが癖のない薄味といった印象が続き、好きなエピソードとか台詞とかが浮かんでこない。
それは人と人の距離感が変わる瞬間が描かれていないからだろう。4人は最初からグループになっているし、恋心に関しても あっという間に その人を好きになるし、その割に長い間 距離が縮まらない。学校イベントに頼って何とか物語は動いているが、それが枯渇した時に本書はどうなってしまうかを考えると恐ろしい。

そして今回、夏樹と恵一(けいいち)が「何かをしない理由」に友情を挙げていることが気になった。夏樹は高校では部活動に入らなかったのは、皆との時間が楽しかったからと言っている。その気持ちは分からないでもないが、結局、彼らは一緒に過ごすことを目的として何もしていない。剛(つよし)以外は定期テストの最高得点が20点前後だったり、勉強もせず、部活やバイトもせず、ただただ享楽的に過ごしているようにしか見えない。
逆に剛は勉強もしっかりしているし、自分の好きなことを追求し、個人の時間を大切にしている。だからといって友情を ないがしろにしている訳でもなく、彼は低い体温で青春を謳歌しているように見える。
それに比べると他の3人は、学校から帰って1人の時間に何をしているかが全く見えてこない。それが彼ら個人の無味無臭感を増させる。夏樹であれば 女ばかりの母姉との家庭内での話とか読めるかな、と思った話が描かれていない。これは作者が「4人」でいることに固執していることが原因に思える。思い切って個人回は1人に焦点を当てれば その人の背景を際立たせるようなエピソードが作れただろう。全15巻+1という永遠にも近い時間をもらったのに、誰のことも深く理解できなかった気持ちが残る。
少女漫画ではバイトも部活もしていないヒーローと言うのは結構いるが、本書は その部分が悪目立ちしている。ヒロイン目線で男性が美化されていないからか。そして主人公がヒロインなら四六時中 恋のことを考える恋愛脳で それが一途にも見えるのだが、本書の場合は恋をしたい、という割に具体的に動かないで右往左往しているから情けなく映る。

現状維持が最優先。本当は恋も蛇足なのだけど、少女漫画連載なので仕方なく という感じの低体温。

本書は基本的には ずっと同じ空気感が続く。後付けのトラウマや家庭問題を出されるぐらいなら、こういう雰囲気も悪くない。でも彼らの誰かしらが新しいことへ挑戦するなどのアクセントがあれば良かったが、最後まで変わらない。結果、彼らも作品もダラダラとしたように見えてしまう。『1巻』の感想文でも書いたが、4人いるのだから、恋愛の速度も時間差にすれば良かったのに、横一線を続けようとする。たった数日で急に顔つきが変わるような、そういう成長を見てみたかった。

キャラが好きなら楽しめるが、それ以外の人には どこを褒めればいいのか分からない作品になっている。


2年生に進級した4人。なぜか この学校はクラス替えがないらしく、そのまま持ち上がりになる。恵一の片倉(かたくら)兄弟は、恵一の担任を兄がやるとか、なんだか疑問が多い(そういう学校も あるんだろうけど)。そういえば片倉兄弟の次男なのに なんで恵一という名前なのだろうか。

夏樹は杏奈(あんな)と『1巻』の勉強回の際に連絡先を交換し、彼女との接点を少しでも増やそうと同じ委員会に入る。どうせなら一緒にバイトをすればいいと思うが、本書の4人はバイトも部活もしない。北海道という土地柄もあるんだろうけど、4人は比較的 広く立派な家に住み裕福な生活をしているように見える。まぁ現実感に重きを置かないのも、純粋に世界観を楽しむためなのだろう。ただ夏樹と杏奈の連絡先交換のキュンキュンする場面は描いて欲しかった。

序盤は1話ごとに新キャラが増えていく白泉社方式なのか、今回はバスケ部の「たいぞー」が登場する。恵一は運動神経抜群という設定で、彼は色々な部活に顔を出し(迷惑が掛からない時に)、身体を動かしてストレスを発散しているらしい。

この回では夏樹には杏奈、智也(ともや)には まり、剛は ゆきりん と交流し、それぞれ一進一退の恋模様が見られる。その点、恵一の「運命の人」はまだ現れていないので、彼は することがないから運動をしている。

だが そんな恵一に告白する女子生徒が現れた。しかし よく知らない生徒から告白され、恵一は自分を知ってもらうために性癖を発表する。それにドン引きした相手は告白を撤回し逃亡。恵一は自分が知ろうとしない興味のない人には手を出さないし、楽しめないという抑止力なのだろうか。
そして他の3人の存在が恵一の恋愛観にも影響しているらしい。「適当に つき合うなんて できない」らしいから、恵一は一切の遊びを していないということなのか。確かに恵一は これまでも性的嗜好が合致した女性と交際していただけで、遊びの恋愛はしていない。ただ恋人に求めるものが自分との相性というと聞こえはいいが、自分の悦楽が最優先であるとも言える。そういう種類のマッチングアプリなんか使ったら、恋心よりも先に身体が動きそうで信用ならないけど。

そんな話を聞いた たいぞーが恵一の悩みの要旨を曲解して他の3人にメールして3人が恵一を心配する。その様子を見て、恵一は安堵し、そして自分が、他の3人が自分との交流以外の時間や世界を持っていることが さみしかった ことを理解する。こういう恵一の末っ子っぽいところは、最後まで変わらない彼の性格か。


いても運動系の話で、この回は男子オンリーの「虹色日和」というカテゴリー。女子オンリーのは下記の「Rainbow Girl」となっている。

河川敷のテニス部のラケットを借りテニスコートで遊んでいたら大学生の集団に場所とラケットを取られてしまい、それを取り返すために勝負となる。その大学生の中には夏樹が中学生のテニス部時代の先輩がおり、図らずともその先輩の恋敵になってしまった夏樹は ちょっとしたトラウマになるぐらいの扱いを受けた因縁があった。テニス自体は好きな夏樹は運動神経抜群の恵一とペアを組み、勝負をする。

夏樹は「これが いい」のかもしれないが、こういう毎日だから彼らに成長を感じられないのだ。


いては本編に戻って学校祭回。夏(7月)は北の大地(北海道)では学祭シーズンだという。この回ではクラスメイトの千葉(ちば)ちゃんが初登場する。

夏樹は杏奈と2日目に一緒に回る約束を取り付けていたが急遽、夏樹が2日目に女装コンテストに出場することになってしまう。自分の不用意な発言で剛に学祭実行委員を 押しつけてしまった夏樹は、彼の命令に逆らえず、女装をする。相手役は男装の千葉ちゃん。

クラスの期待を背負ってしまい夏樹は杏奈に一緒に回れなくなったと報告する。すると杏奈は いつも通りクールな対応だったが、実は無意識に楽しみにしていた自分に杏奈は気づく。徐々に気持ちは動いているようだ。そして杏奈は夏樹の出場を知らないが、彼が千葉ちゃんとコンテストに向けた練習をする様子を見て、胸が ざわつく。

案外、杏奈はライバル女性の存在で すぐに恋心に気づきそう。だが悲しいかな夏樹はモテない。

当日になってスケジュールに余裕が出来たため、再度 杏奈を誘う夏樹だったが、杏奈は塩対応。どうやら杏奈は自分の感情に振り回されているらしい。そして まり から杏奈が行方不明になったことを聞かされ、夏樹も捜索に出る。
杏奈は自分の初めての感情を恵一に相談し、彼に話すことで少し整理がつく。すれ違ってしまった2人だが本音を話すことで仲直り。夏樹は来年の学祭でのリベンジを申し出て、杏奈も それを了承する。未来の約束が出来たことで杏奈のストレスも軽くなる。本書は、本当に来年の学祭も描くことになるが、作者は有言実行、連載継続をするために、こんなセリフを言わせたのだろうか(笑)

「Rainbow Girl」…
これまで登場した主要女性キャラ3人による女子会編。ここで まり と ゆきりん は初対面となる。ゆきりん がマイペースで万能だから良かったが、まり は同性であっても 取っつきにくいだろう。一応 この後も交流は続くが、まり を苦手としている人が出てきても おかしくはないが、本書はそういうザラついた気持ちは描かない。女性陣も男性陣と同じく性格が違っても一緒にいられる、という話なのだろう。ただ そういう内面の掘り下げが無いから本書は現実感が薄く、浅いように見えてしまう。まり が それぞれ苦手とする人と打ち解けるようなエピソードがあれば距離感の変化が如実に分かるが、そういうこともなく、杏奈を手放したくないから嫌い・苦手な人と行動するだけになっている。仲良しグループは、それ以上でも それ以下でもなく、ただ存在するだけなのである。

まり は性格に難があるが、杏奈の一言で面白いように操作されてる。オラついている男性と 彼の性格を熟知するカップルに見えなくもない。

妄想の中では杏奈のが一番 面白かった。でも絶対に ゆきりん が考えそうなネタで、杏奈っぽくないのが気になる。「邪眼」的な発想は杏奈のモノではなく、作者や ゆきりん の考えだろう。

「一人でできるもん」…
田崎 順平(たさき じゅんぺい)は大学進学のために地元を出て1人暮らしを始める。反対する母親に真っ当な生活を送ることを約束して出てきた。当初は真面目に自炊をし、授業に出て、友達・中川(なかがわ)も出来たが、その友達にサークルの楽しさを教えてもらってから生来の自堕落が顔を出す。

金欠と それを補填するバイト、無理がたたって栄養不足になり倒れてしまう。だが高熱でも この家には自分1人。それを助けるのは友達、という話。少女漫画で一切 恋愛の要素が無いのも珍しい。

『1巻』収録の短編といい、生活が変わる中での生き方が描かれている。そういうテーマが好きだったのだろうか。この話も事実の羅列だけで、オッと目を引く部分がない。もうちょっと中川との友情エピソードを入れられなかったか。あと田崎の顔は まんま夏樹である。