《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

タオルを巻いたまま入浴するヒロインの謎行動と、ヒーローの服が一瞬で脱げる謎現象。

制服でヴァニラ・キス(4) (フラワーコミックス)
夜神 里奈(やがみ りな)
制服でヴァニラ・キス(せいふくでヴァニラ・キス)
第04巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

ノーデレ男子・万里が無意識に心愛への想いを強めていく中、メガネイケメンの四谷も万里に興味津々! ついに心愛を巡って万里vs四谷の恋の火花が散る! そして万里が心愛を四谷の前から連れ去り、2人は一夜を一緒に過ごすことに・・・。そこでまさかのハプニングが起こり、心愛は万里と×××を一緒に・・・!? Sho-Comi掲載時に読者からの反響が大きかった「お泊まり編」を収録! ますます加速するおもしろさ、ドキドキ×衝撃×キュンキュン連載です!

簡潔完結感想文

  • 約束したから ずっと待ってる当て馬と、約束もしていないのに急に現れるヒーロー。
  • 帰る電車がないと一泊する男女と、タクシーを使って現場に乗り込む兄。粗が目立つ。
  • 友達でしかないことが切ないはずなのに、友達を裸に剥き、キスマークをつける矛盾。

ロインと読者がドキドキする展開を優先し続ける 4巻。

きっと自分が10代で、雑誌掲載をリアルタイムで読んでいる読者ならば熱中しただろうな、と思う予想外の展開の連続だった。次はどうなってしまうの⁉ と気にかかる お話を用意することは本当に大変で、作者はそれを毎回クリアしているとは思う。
…とは思うのだが、どうしても私には本書の展開は支離滅裂に思えてしまう。毎回ドキドキのシチュエーションに持っていくために力技で飛び越えていく細かい疑問は尽きないし、恋愛面・感情面でも「なんで?」と思う部分が多い。特にヒーロー・万里(ばんり)が格好つけているが色々と最低な行為に走っていることに評価を下げざるを得ない。

今回、読者を笑わせにかかっているのかと思ったシーンはドキドキの混浴シーン。

なんじゃそりゃ!?と思わず笑ってしまう4コマならぬ4ページ漫画。服の構造どうなってんだ!?

万里が露天風呂に落ちた途端、彼のシャツのボタンは一気に取れたとしか思えない描写に笑ってしまった。ここで女性の方、心愛(ここあ)が万里の服に手をかける描写でもあれば、彼女がボタンを外したと思えるのだが、それもなく、勝手に はだけていく服(笑)
『3巻』収録の番外編でも、どう考えても「テレポートする服」というのが登場したが、本書の服は何かマジカルなパワーが秘められているのかもしれない(笑)

他にも心愛の自宅から彼女が いつも通学で使っている駅まで2時間以上かかっていたり(駅が同一というのは推測だが駅の構造は同じ)、心愛たちが帰れないから一泊すると言っている場所に、心愛の兄がタクシーで乗り込んできたりと疑問や矛盾点が多い。特に後者は、万里が本当に帰宅しようと思えば帰宅できるということを証明してしまっており、宿泊が万里に下心があってのことだと邪推させる根拠となってしまっている。


泊り回はヒロイン・心愛の視点だけで考えるとドキドキの連続なのだが、万里のことまで考えると彼はどういうつもりで行動しているのかが全く分からない。彼の行動は全て中途半端で、少しも格好良いとは思えない。婚約や結婚という言葉を使って悪行を帳消しにしているようだが、彼は友達でしかない女性が酔ったのをいいことに、性的暴行を加えた、とも読めてしまうからだ。

描写においても内容においても そういう隙が多くて楽しめない。

特に万里においては、以前も書いたが、他者の気持ちを推し量れない障害を持っているとしか思えない面があり、その万里の特性を利用して、両想いの成立を阻害しているように思えて気分が悪い。
自分で決めた順番でしか物事を解決できない万里だから、彼のルールが理解できない心愛は振り回される。それは少女漫画ヒロインにとっては とても都合の良い設定ではあるが、では そんな万里が格好良いと思えるか、というと否なのである。

万里の言動全てが実は心愛を想ってのことだった、という胸キュンで一貫してればいいのだが、言葉では綺麗に修飾しながら、やっていることは性欲に負ける ただの年頃の男子というのがミスマッチなのだ。そこがリアル、という声もあるだろうが、結婚やら婚約やら心愛を大切にすると言いながら、よくよく考えると心愛のことを大事にしているとは思えない。

特に告白に関しては、あれだけ同級生に順番を間違えるなとか、心愛のことを大切にしろと言われて、彼も知識を入れているのに、いざ彼女の香りや肉体を前にすると、理性が吹き飛ぶという流れが残念すぎた。
ある意味では「完璧男子」のクールな仮面を壊したと言えるが、こんな欲望に染まった万里は見たくない。
唯一反論できるとすれば、万里は性欲ではなく四谷への嫉妬や対抗心で、心愛を急いで自分のものにしようとした、という点だろう。だが、それでも心愛を大事にしないことには変わりない。そして ずっと万里は嫉妬や対抗心で動いている節があり、今回もそれを補強した形になってしまっている。嫉妬で万里の心に火を点けるのは、なんか違う。心愛が万里の心を溶かしていくのが見たかった。

心愛が万里を変えるのではなく、ただ心愛が愛される逆ハーレム漫画になってしまったため、折角の告白や両想いシーンでもカタルシスを感じない。心愛は万里の告白を待っているだけだし、万里は告白の前に しょうもない嘘はつくし、性欲に屈するしで何を考えているのか分からない人間になってしまった。

上述の服のシーンもそうだが、感情面でも行動面でも話の流れがスムーズではなく、描きたいシーンを詰め込んで飛び飛びになっている印象を受ける。特に万里という人間の一貫性の無さ、行動原理が理解できない部分が大きいように思う。


谷(よつや)は万里に宣戦布告をし、公式に三角関係が始まる。
心愛は四谷からキスマークを付けられており、その秘密を万里に話す、と四谷から脅迫されてしまう。彼にデートを提案され、きっぱりと行かないと断る心愛だったが、四谷は来るまで待つ、と答える。頭の弱い幼稚な人間は狡猾な男性に言いくるめられてしまう。

当日、待ち合わせは午前9時なのに、午後8時を過ぎても四谷は待ち合わせ場所の駅のホームにいた。四谷の本気度が表現された場面だ。しかし気になるのは6時過ぎに家を出た心愛が、おそらく毎朝 通学に使うこの場所に到着したのが8時半になろうかという時なのである。家から駅まで2時間もかかるの⁉ ということは、毎朝6時半の電車に乗る心愛は4時半に家を出るの⁉と疑問が尽きない。作者の頭の中ではどういう設定なのだろうか。
おそらく到着が8時半なのは、この後の家に戻れなくなる展開のためだと思われるが、そこに辻褄を合わせたら、その前の描写と辻褄が合わなくなったのだろうか。作者の想像力が色々と足りないと思うことの多い作品である。

心愛の手を引く四谷を止めるのは万里。どこから現れたのか、なぜここにいるのか意味が不明だ。誰か教えて下さい。

そして万里は心愛と一緒に電車に乗って走り去る。読者がドキドキする展開の連続なのだが、意味は不明。次回のお泊り回が成立すれば細かいことは どうでもよいのだろう。


里は、『3巻』の花火大会で心愛にキスをしたから、本物の彼女になったと思っている。「男女が そういう行為をした」から「責任を取るのが当たり前」だという。心愛に対しても「好きだとか そんな言葉では足りない」。

だが、それは全て万里の中の理論。それを心愛に直接 言わないから彼女が苦しむ。自分が彼女を苦しめていることを万里は気づきもしないのだろう。完璧王子かもしれないが、恋愛オンチというより、他者のことを考えるという知性や感情が欠落している。


終点までノンストップの電車に乗り、終電も終わってしまったため、2人は万里の家・東雲(しののめ)の常宿に無理を言って泊めてもらっている様子。少女漫画では、こういう場合、部屋が1部屋しか残ってないなどの説明があるが、本書は説明も理由もない。お泊り回がしたいので、泊まらせる、ただそれだけ。

2人は緊張し、ぎこちない。心愛は先に部屋の風呂を使うが、そこに用意された飲み物(アルコール度数12%)を不用意に飲んでしまう。もう、ツッコむ気にもならない。
酔っぱらった心愛は、身体が熱くなり淫乱モード突入。ここで上述の、万里の服のボタンが一瞬でとれる謎の現象が起こる。

泥酔し、舌足らずな口調で万里に迫る心愛だが、心愛のしたたかさを知ると、どれも計算し尽された演技に見える。


愛の身体を拭いていた万里は心愛の首にキスマークを見つけてしまう。四谷がつけたものと知ると万里は彼への対抗心で万里は自制心を失くす。そうして2人はベッドになだれ込み、愛撫を始める。

とても淫靡なシーンだとは思うが、万里が感情よりも本能に、下半身に正直な人にしか見えなくなり、一層 作品への好感度が下がる。万里も、性欲に自分が負けたことへの言い訳が酷い。

もちろん、これは泥酔した心愛が、翌朝、自分の純潔が汚された、と衝撃を受ける、ヒロインの為のシーンなのだろうが、結局、万里も泥酔した女性に性的行為をするような男にしか読めない。

そして帰れない設定の2人だが、地元からは、妹の宿泊を知ってしまった心愛の兄がタクシーで2人の現場に乗り込もうとしている(どうして兄にバレてしまったのかなどは不明。細かいことは どうでもいいのだろう)。兄が妹を思い、大金をかけるのなら、万里も心愛の誠実さを示すためにタクシーを使うべきなのだ。
こうして万里の評判は地に落ちるが、心愛の兄も、軽口を言うタクシー運転手に対し、後方から座席を蹴るなど素行が悪い。嫌な世界観だな。何も憧れないなー、と冷ややかな目で作品を見るばかり。


朝、心愛は体中のキスマークを見て赤面する。心愛は『3巻』での花火大会のキスの意味も聞かないし、今回のキスマークや昨夜の出来事も万里に聞かない。自分の一大事なのに何も聞かない そのメンタルの強さは意味が不明だ。

そうして昨夜のことを保留にしたまま、2人はのんびり観光して帰る。いくら好きな相手とはいえ自分の泥酔中に肉体関係を迫ってきた相手と一緒にい続けるメンタルが不思議。

しかし、一夜を共にした万里は自分の感情を解放し、心愛と手を繋ぎ、表情も柔らかい。そして立ち寄った教会で、その日の朝に売店で買ったという指輪を心愛の左手の薬指にはめる。

そこへ乱入してくる心愛の兄。兄は一晩中 妹を探してホテルに聞き込みをしていたらしい。ここにも心愛を溺愛するイケメン男性が1人。これで本書のイケメンは計10人でしょうか。全5+1巻の物語でイケメンが10人は密度が濃すぎだ。


は少女漫画において親族との面会は婚約を意味すると思っているのだが、本当に婚約して驚くのが本書である。

18歳になったら籍を入れ、心愛を嫁に貰うという。もう義理の両親と祖父母には了承を得ている。そして万里は、「僕は昨夜 君を汚した」と話す。
こうして2人は「好き」と言ってもらう前に、結婚を約束する関係になった。

万里の この発言が理解不能。誰か頭の悪い私に 万里の心の流れを教えて下さい(ほとんど嫌味)

だが心愛は、関係者全員に自分がHしたことを触れまわったことが恥ずかしい。恥ずかしいから逃げる。
それを追いかける万里。追いついた万里は心愛に、指輪は昨日 何時間も迷って買ったものだと正直に話し、そして「君を愛してるんだ」と初めて好意を口にする。

ただ、ここも四谷への嫉妬と同様に、万里が自分の気持ちを話すのは、兄という外圧があるからした行動のように読めてしまう。万里側の行動には自分の気持ちが溢れてしまって、という感覚が全く無いのが残念。偽装交際は義母のためだし、嫉妬でしか動かない。性欲で動いた結果、結婚を考える、と心愛のことをまるで考えていない行動しか浮かばない。

だいたい万里は、告白前まで自分は心愛に友達だとしか思われていない、と思っている。なのに彼女を汚し、指輪を買い、婚約まで話を進める。コイツ、本当にどうなってんだ!? と大事なことを話さない/聞かないまま進む物語に呆れるばかり。


うして聞きたかった言葉を聞けて、心愛も初めて自分の気持ちを彼に伝える。
心愛は自分の勝利が見えて初めて万里に告白するのが惜しい。こういう話では心愛が先に告白して欲しかったなぁ(冗談にしてしまった告白はしたけど)。女性側に都合の良い夢物語に終始していて、かえって白ける。

万里は人間嫌いで潔癖症だから「君以外の人間と裸で抱き合うなんて行為は絶っ対にできない」「君が嫁になってくれないと 僕は一生結婚できないだろうな」という。

これは浮気をしない、というか出来ないという万里の設定で、生涯ただ一人の伴侶として心愛がいるということだ。これによって2人は永遠の愛を確かめた。
そして後者の台詞は『2巻』で万里がアキに言った台詞として紹介されていたのに似ている。万里の思考はいつも極端だが、結婚話をチラつかせては女性を口説いているように見える。


敵な言葉で心愛に結婚を了承させる万里。そして了承させてから、実は昨夜はHをしていないと白状する。えっ、計算なの? 女性に純潔を失わせたと思わせて、結婚する方向に話を進めて、事実を言うというのは卑怯過ぎないか?

兄に嘘を言う理由もメリットもないし、自分の願望達成のために周囲を巻き込んでるし、全然 格好良いと思えない。心愛のことを考えているようで、結局 万里は自分を中心でしか物事を考えられないし、話を進められない人間ではないか。

ただ結婚が決まってからも心愛の兄が障害として立ちはだかる。心愛は『兄に愛されすぎて困ってます』状態。だが元甲子園球児の投げる球、いや玉子を受け止めることで万里は兄に認められる。登場する心愛の唯一の親族によって、2人の婚約は公認された。未成年が勝手に話しを進めるあたり「Sho-Comi」らしい非現実感だなと思う。


が その日、東雲家では万里の義母・アキが再び倒れてしまった…。
入院するアキの前に現れるのは、万里の実父が事故死した時点での配偶者・仁科(にしな)ミカ。

芸能プロダクションを営む彼女は、万里を芸能界で売り出す代わりに、アキの心臓を治療する病院を紹介するという。だがアキはそれを拒む。だから自分の手術前に、生きている間に息子たちの結婚式を挙げようと計画を立てる。こういう擬似結婚式も「Sho-Comi」は好きですよね。

万里が結婚可能年齢に到達してないため(2022年からは心愛も)今回は「婚約式」という形式で2人は挙式する。この話は東雲家は了承しているが、心愛の森永(もりなが)家は何も言ってこないのも謎。空手部員をはじめとした9人のイケメンも大集合して参列するが、両親はいない。もはやファンタジーだから細かいことは気にしないのだ。

婚約式が開かれるのは、万里の思い出の遊園地(だと思われる)。
だが、万里は式に現れず、メールで中止を要望。そして「僕のことは忘れてくれ」という…。ドラマティック!