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少女漫画と小説の感想ブログです

名は体を表さない。泣いてた天使がホラ悪魔、微笑む天使のウソ悪魔 『ユニバーサル・バニー』

黒崎くんの言いなりになんてならない(4) (別冊フレンドコミックス)
マキノ
黒崎くんの言いなりになんてならない(くろさきくんのいいなりになんてならない)
第04巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

「由宇(ゆう)ちゃん、僕の家の別荘に来ない?」恋人同士になった白河(しらかわ)くんに誘われてお泊まり旅行☆ 彼氏が彼女を旅行に誘うってそーゆーコト…だよね? だけど、だけど、だけど、とんでもない姿で黒崎(くろさき)くんとはち合わせちゃって…!! 別冊フレンドで大人気! 見たことないほどドSで悪魔な黒崎くんと24時間ドキドキラブ☆ 黒崎くんの言いなりになりたい? 梶(かじ)くんが主役のSPショートも収録♪

簡潔完結感想文

  • 1巻丸々お泊り回。前巻は猫が重要な役割だったが、今回は犬で2人の距離が接近!?
  • 少しずつ皆の厚化粧が溶けていく。黒の中にある白、白の中にある黒が混乱を生む。
  • 胸キュンのための不自然さ爆発。お風呂で遭遇も2回目。『L♥DK』も2回だったなぁ…。

もが嘘をつく関係は夏休みまでであることを祈る 4巻。

『4巻』のラストで ようやくヒロイン・由宇(ゆう)の浮ついた気持ちに決着が付く(気配が見えてきた)。これで1学期から始まった寮生活、黒崎(くろさき)に振り回されるだけ日々も終わりを告げるか。今回で なぜか自分に近づいてくる白河(しらかわ)の本心が見えて来て、各人が少しずつ自分を偽ることを止めてきたように見える。
それは まだまだ話が続くということでもあるのだが…。2学期からリスタートするのだろうが、色々とこじれている登場人物たちが、素直に告白する訳もないだろうから、ここからも長期戦となるだろう(結果的に全19巻だ)。振り回されるだけの1学期から、主体的に動く2学期と 、ほぼ同じような内容が もう1ターン恋の鞘当てが行われるのである…。

『4巻』のラストで黒崎と白河という名前自体がミスリーディングなことが判明し、内面における黒と白は逆転する。ということは、由宇は純白のヒロインらしく白いものに惹かれていく、ということか? 白王子だと思っていた白河にどす黒いものを感じて、逆に黒崎の潔白さが分かり始める。そんなイノセントな性格が純愛になるかというと甚だ疑問だが、肉体的接触ばかりの乱れた関係性が少しずつ漂白されていくのだろうか。はやくもダラダラとした感じだが、その辺のバランス感覚は気になる所。


だ少女漫画では中身の無い作品ほど、肉体関係の匂わせしがちで、通常なら長期作品なら交際中の10巻前後で関係性が一歩進むドキドキの精神状態が語られる。少女漫画あるある としては、1回目は絶対に未遂で終わるのが お約束。その内容が本書では『4巻』にて一度 描かれる。キスも受け入れられないような あやふやな恋心なのに性行為には及ぶことに満更でもないヒロインはビッチの匂いが漂う。そして完読すると、本当に正式交際が始まる10巻以降で性行為を匂わせるだけの1冊があるから頭が痛い。意図的ではなく描くことないから2回も同じような描写をする漫画は大抵つまらない。賢い作者なら内容に重複が無いようにマクロの視点で作品を組み立てるが、本書の場合は胸キュン第一主義なので読者をドキドキさせることなら何度でも再放送する。

再放送と言えば、この『4巻』では『1巻』に引き続き2回目の お風呂での全裸遭遇がある。こういう場面こそ読者が見たいし胸キュン場面にもなるのは分かるが、基本的に同じことの繰り返しで新鮮味が薄れている。そういえば同じ「別冊フレンド」の渡辺あゆ さん『L♥DK』でも2回お風呂 de 遭遇があったなぁ。順番も家(寮)→旅行に行った露天風呂と同じ。「別フレ」で何百万分も売れる作品には同じ勝利の方程式が適用されているのだろうか…。

黒崎の裸に目を奪われる前に、水深どうなってんだよ!? と余計な考えが浮かぶ残念な想像力。

の巻では、作者の想像力を疑うような描写が幾つかあったが、その1つが上記のお風呂の場面。

温泉で鉢合わせする由宇と黒崎だが、この場面で黒崎は へそ下まで湯に浸かっているが、彼の長い足を考えればへそまでは110~115cm(それ以上?)あってもおかしくない。でも その深さだと推定される温泉で由宇は座って お湯を満喫している。局部は出さないまま、2人を接近させるための胸キュン場面なんだろうけど、あまりにも整合性の取れない状況設定に白ける。

もしかしたら底の深さが場所によって大分違うのかもしれないが、黒崎基準で、へそ下まで浸かるような水深は一般的には立ち湯と呼ばれるものだろう。こういう細かい部分で私は作者を信頼していない。ベテラン作家さんなら絶対、変だと思い描かないような状況を描いている。


た『4巻』は丸々 お泊り回なのだが、その出掛ける際の描写にも疑問が残った。
暇な高校生たちは夏のお出掛けにわざわざ通勤時間帯の電車に乗る。その お陰でヒロインは男性から守ってもらえる胸キュン場面を演出している。一方で満員電車なのに目つきの悪い黒崎の周囲には誰にもいない、という過剰な演出が見られる。更に痴漢騒ぎでは黒崎が、足で手すりを蹴っているが、この時は満員電車なのに半径1メートルに誰もいなくなる。なんだかチグハグな描写で話が入ってこない。

それに満員電車の中で車内で蹴りを繰り出すような男性は、それだけで恋愛対象どころか、人間として評価しない。これは逆ギレした痴漢からブスと言われたヒロインの名誉を守るため、とも取れるが、それにしても乱暴で前後の描写との整合性もない。こういう胸キュン第一主義は いかにも「別冊フレンド」である。


の発端は夏休みに白河の別荘に由宇が誘われたことから始まる。お泊り回ですね。登場人物の誰かが金持ち設定だと簡単に お泊りできるのは便利なところ。結果的に同級生の男女6人の お泊り回になり、別荘内で男女の思惑が交錯していく。

上述の痴漢騒ぎでは由宇のヒロイン力、そして由宇を守る黒崎のナイトっぷりが発揮される。だが由宇を守ったはずの黒崎はスルーされ、由宇は白河との距離が近くなる。

到着した別荘で、由宇は そこで飼われている大型犬に懐かれる。これはヒロインの特別感の演出だろう。そして その犬に懐かれた お陰で白河と黒崎の過去を知る別荘の管理人から彼らの幼い頃の写真を見せてもらう。どんどん由宇は2人に関わり始める。

犬に懐かれすぎて服が汚れた由宇は、別荘の温泉に入る。そこに乗馬を終えた黒崎が入浴。スクール水着は着ないが全裸はOKの黒崎です。
彼は由宇がいることに気づいても動じない(若干瞳孔が開いたか)上述の通り、深さの設定が変な温泉で2人はイチャイチャし始める。そこへ白河も入浴してきて、全裸の男女が3人集まる。

ここは黒崎の機転で、彼が白河の行動を誘導する。白河には2人でいる所や裸を見られずに済む。この場面も白河よりも黒崎の方が優れているというエピソードになっているのかな(そこまで考えてなさそうだが…)。

そういえば由宇の厚化粧設定は、すっかり由宇だけが気にしている部分になりましたが、スッピン=彼女の本心とすれば、黒崎にだけは本当の自分を見せていることになる。ここで白河に存在がバレないのも、由宇の本当の素顔を彼は見る資格がないからなのだろう。そこは作者は注意深く扱っているようで好感が持てる。


『3巻』では黒崎との距離が猫で縮まったように、白河との距離は犬で縮まる。一緒に散歩した白河は、不覚にも由宇の包容力に段々と惹かれていく。そして写真撮影のために触った由宇のスマホの中に黒崎の盗撮画像を発見する。以前も書いたが、由宇はこの画像1つで友人も恋人も裏切っている。

夕食のバーベキューでは由宇を下げて、黒崎の完璧さを演出。また黒崎の特技が増える。何がしたいんだ、この漫画。そして由宇は このバーベキューで燃料として使う新聞紙の中から黒崎の関連したらしき事件が掲載された新聞記事を見つける。
うーーーん、不自然。この別荘には管理人がいて約2年前の新聞紙を使うような家に見えない。それに その部分だけ燃え残るって…。


してクラスメイト梶(かじ)の恋を通して、「体は正直」というのが本書に共通する恋愛観だということが分かる。
要するに身体に接触してドキドキしたら恋、しなかったら友達という肉体優先主義らしい。そして由宇は黒崎にしかドキドキしていないことから、答えは早くも出ている。

由宇は肉体関係に進むことを仄めかされた白河の部屋に行く前に、黒崎に壁ドンをして接近し、逆に彼に肩に彼の歯型をマーキングされてしまう。その時、確かに由宇の肉体は高鳴りを覚えた。彼の前に別の男性に抱かれる。うん、いんらん ですね。

そんな自分の身体の声を聞いた由宇は、白河の部屋には入れない。由宇に そう告げられた白河は呆気なく別れを提案する。黒崎にキスをされても怒らないが、由宇がモノにならないと分かったら即座に彼女を切り捨てる白河。性格に問題のある男性に振り回される日々が続く。
この場面で、由宇が持っていた過去の新聞記事が白河の部屋に入り込むが、新聞が落ちる描写もなく、不自然な流れになっているのも気になるところ。話の作り方が下手すぎないか…。


日、白河は由宇に何事もなかったように自然に接する。だが、黒崎は白河の不自然さを見抜く。どうも白河は多少 苛立っているらしい。

別れ話が出るような段階で、彼女の強さに惹かれ始めたり、そもそもの交際への疑問を持ち出す。

結局、白河と2人で乗ったボートで由宇は彼の本心、そして黒崎の過去を語る。白河は由宇が黒崎を好きだと推測する。だが由宇はこの期に及んで否定。
そこから白河は由宇を黒崎から遠ざけるために黒崎の過去を語る。由宇が読んだ新聞記事は、黒崎にケンカに負けた多数の人間が復讐のために家に押しかけてきたというのが真実だった。
黒崎の過去を知って由宇を委縮させるのが目的らしいが、由宇はその脅迫に屈しない。さすがヒロイン。

ここで由宇は ようやく白河の言動に疑問を持ち、彼の目的を知りたいと願う。そこで語られる白河の本音。由宇との関係は、は黒崎の執着する由宇を自分のモノにしたら面白いという考えで実行されるゲームだった。だが白河は別れを取り消し、関係性を継続するという。
白河の方が黒悪魔だったという名前によるミスリード。黒崎も白川も、そして自分の気持ちも分からなくなる由宇。

彼らとは あまりにも見ている景色=価値観の違う2人とは距離を置こうとする由宇だったが、2人の乗馬姿を見て、勇気を持って挑戦する。最初は怖くて目をつぶるだけだったが、黒崎の優しい助言もあり、落ち着いて行動して獲得したのは、2人と同じ目線の高さ。更には黒崎の優しさに気づき…⁉

この乗馬の挑戦で由宇の勇気を示し、そして目線が同じになることで黒崎を新しい視点から見るという表現は好きです。


スペシャルショート 梶くんの場合」…
梶が黒崎に懐くようになるまでの経緯が語られる。でも、1話の噛んだガムを吐き捨てる梶との整合性は ますます取れないような気がする。メインの3人以外では梶は優遇されている。由宇の友達の芽衣子(めいこ)やタラコちゃんなんて最後まで友人枠という役割しか与えられない薄っぺらさだもの…。