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少女漫画と小説の感想ブログです

黒と白に挟まれてヒロインの心はオセロゲーム状態。でも振り回される自分大好き★☆

黒崎くんの言いなりになんてならない(2) (別冊フレンドコミックス)
マキノ
黒崎くんの言いなりになんてならない(くろさきくんのいいなりになんてならない)
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

「屈辱的なこと、命令してやろうか」球技大会での優勝と引き替えに、「黒悪魔」こと黒崎(くろさき)くんの言うことをきくことになった由宇(ゆう)。停電した学園寮で…。白王子とのデートの最中に…。黒悪魔の支配はどんどんエスカレート! ついに観覧車の中で由宇は…!?

簡潔完結感想文

  • 日常回の勉強回の中に、非日常のスリルと微エロで読者の心拍数を高める。胸キュン優先主義。
  • 黒が気に入る あの子に白がちょっかいを出し、それを黒が制止して白が…、という無限コンボ。
  • 無防備な状態だと手を出さないが反抗されると燃える黒崎は やっぱりSというよりMなんじゃ…。

ラフラするのが三角関係ヒロインの宿命、の 2巻。

ヒロイン・由宇(ゆう)の精神が反応するのは白河(しらかわ)、肉体が反応するのは黒崎(くろさき)といったところか。どちらの自分に正直になるか、彼女はまだ決められない。

皆が憧れる男性から秘密のアプローチ。読者の自己承認欲求を満たす胸キュン場面の連続が大ヒットの要因!?

いよいよ『2巻』からは巻き込まれ型ヒロインの本領発揮である。主人公の由宇に黒と白の王子が交互にアタックしてくるという夢のような展開である。ただし この時点では由宇も王子たちも自分の本心に気づいていない(黒は分かってるかもだが)。
この『2巻』でハッキリしているのは、男性同士の静かな戦いである。黒悪魔または黒王子こと黒崎は恐怖政治で周囲を委縮させる自分に反論してくる由宇の事がお気に入り。彼は口では由宇に厳しいことを言いながら、実は負けん気の強い状態の由宇に激しく罵倒されたい特殊な性癖の持ち主(というのが私見)。
黒崎が由宇と知り合って以降 変わったことに気づくのが、黒崎の幼なじみの白王子こと白河。彼は黒崎の お気に入りである由宇に ちょっかいを出して、黒崎の反応を楽しんでいる。白河にとって由宇が大事なのではなく、彼女を見つめる黒崎の視線や感情を乱したいだけ。だから白河は傍から見ればスキンシップのような行動を由宇にして、元々は白河に惹かれていた由宇の心を搔き乱す。物語を一番混乱させているのは白河である。そして この時点では白河の黒崎への気持ちは由宇が邪推した通り「BL」に近いのではないか。白河が望むのは平静を失う黒崎を見ること。静かなライバル関係にある2人の争いの中心に由宇がいる。

白河が由宇に接触することを黒崎は好まない。あの鋭い目つきで由宇を見つめ、そして顔の傷のような白河の変化一つで自分が見ていない光景が手に取るような千里眼を発揮する。だから白河に傾きそうになっている由宇を察知すると自分の存在をアピールするような乱暴な言動で彼女を縛り付けようとする。こうして由宇にとっては謎の黒崎の論理によって彼女はセクハラめいたことをされ続ける。男性側が誰も本心を話さないから由宇は目まぐるしい展開に巻き込まれるだけとなる。

そんな黒崎の反応が面白くて、白河のスキンシップはエスカレートし、それを見た黒崎が間に割って入るという無限コンボが始まる。翻弄される由宇は精神的に疲労困憊となるし、彼女は2人の男性との関係で湧き上がる自分の気持ちにも翻弄される。無自覚に男性の戦いのトロフィーとなる由宇だが、それが読者 はたまた由宇の自尊心を満たしているのは間違いない。口では困ったようなことを言いながら、夢のような高校生活となっていることは否定できないだろう。

自分の本心を言わない男性2人に、意地っ張りな女性が1人。この恋の決着は なかなか付かない。実は不器用な生き方しか出来ない3人だから、恋に気づくのが遅すぎたり、恋を伝える言葉を持たなかったりと決定打に欠ける展開が続いていく。


私には全く理解できない黒崎の言動だが、再読時にはside:黒崎で読むと少しは彼が可愛らしく見えてくる。ずっと顔はクールのままだが、由宇のためなら何でもしようとしている。衆人環視の中、密かに白河と手を繋ぐ由宇にも気づいているし、彼女が白河とデートしていると知れば必死で捜索する。更には由宇が弱っている時には一切手を出さないで いつも優しく、彼女の精神力が回復すると、わざと彼女が反論しそうな言葉を投げかけて会話のラリーを楽しむ。実は彼女の精神状態をしっかりと見極めているのが黒崎という人だということが分かる。逆に白河は由宇を暗闘の駒としてしか見ていないようで心がない。

黒と白に挟まれ、赤面したり蒼白になったり忙しい由宇だが、黒と白もまた黒の中に白があり、白の中に黒がある。そんな決着のつかないオセロゲームが延々と続くのであった…。


校1年生の1学期の中間考査が終わった。黒崎のテスト結果は学年1位。ちなみに この学校は「まぁまぁの進学校」らしいので井の中の蛙という訳でもない。
『1巻』の感想文で述べた通り、作者は黒崎に全部を乗っけて、薄っぺらい内容をカバーしようとしている。それは由宇の厚化粧と似た構図だ。今回は英語ペラペラという設定も乗せてきた。黒崎の特徴を列挙したら とんでもない量になるだろう。

由宇は中学時代は そこそこの成績だったが、自分の生き方を変える努力に時間を費やしたため、成績は135番。少女漫画は女性の扱いが悪い。この世界には男女の格差が明らかにある。勿論、80%ぐらいの確率で男性が優性とされる社会である。これは(努力なしで)上位存在から認められるヒロインという展開が都合が良いのだろう。

そこで始まるのが勉強回。理系は白河が、文系は黒崎が担当し、クラスメイトたちと勉強会が始まる。白河に勉強を教わりながら、黒崎が女生徒と話すことが気になる由宇。勉強中に白河に手を触られても、黒崎の時とは感覚が違うと本能が悟る。

そんな2人の様子を察知した黒崎は、停電に乗じて由宇に ちょっかいを出す。この辺は いかにも刹那的な胸キュンを求める「別冊フレンド」という感じ。周囲に人がいる中での2人だけの情事。胸キュンというより特殊な性癖にしか見えないが。

今度は そんな2人の様子に白河が気づき、由宇にちょっかいを出し始め、彼女をデートに誘う。


強回の次はデート回である。白河の美貌に街中の女性たちが赤面。はぁ…、毎度毎度 背景に入れてくれて ありがとうございます。そうやって自分の生み出した男性を作品内で自画自賛する行為自体が虚しい。

ファストフード店で由宇は他の客のジュースを浴びるが、神対応で生来の聖母気質を見せる。自分以上に他者を気遣える由宇を白河は見直す。黒崎への嫌がらせのつもりが、ミイラ取りがミイラになるんですね。分かります。ベタな展開です。
そんな由宇のために白河が高価な服を買ってあげる。悪目立ちする黒崎よりは目立たないが、彼も高スペック&良家の子息であることが窺える。

そんな2人のデート風景を黒崎が見て、動く。


の後、由宇たちは海辺で語らう。黒崎に先んじて由宇の心を奪うためだけに、心無いキスを提案する白河。この時点では、白河が本気で由宇を相手にしている訳ではない。後の彼ならキスしとけば良かったと思うかも。恋愛でも黒崎に先行されて、白河は全てにおいて後れを取る運命なのか。

本心はともかく表面上は素敵な男性2人が1人の女性を取り合う構図。誰の気持ちも理解できないけど…。

それを阻止するのが黒崎。彼は2人を尾行していたらしい(必死か)。
黒崎は由宇を拉致し、お決まりのジンクスがある観覧車に乗る。黒崎に接近され「誰が主人か 身体に覚え込ますか」という黒崎の言葉を聞き、由宇はキスを予感し観念する。だが唇に何も触れない。

自分がキスを待ち望んだ格好になり由宇は恥ずかしさで赤面。そうして由宇が黒崎に文句を言い抵抗してから彼は ようやくキスをする。自分が由宇を苦しめているという実感がキスの情動を湧かせるのだろう。変態である。それに黒崎の発言がキモい。漫画として狙い過ぎだし、黒崎の由宇への愛情表現が不器用という域を超えている。エロ漫画・成人作品かと思うような言動にドン引き。黒崎にとっても、作者にとっても どこからか借りてきた言葉にしか読めない。お手軽な胸キュンは もう結構ですので。

しかし少女漫画において観覧車は絶対的な存在。ジンクスが成立したということは結末も決まった。決まったのに残り17巻も続く…。


の日を境に黒崎が気になる自分の中の気持ちに気づき始めた由宇は、黒崎と距離を置こうとする。そのために食堂に顔を出さずに、栄養状態が悪化。
更には再度 白河からキスを要請される。だが由宇の手は無意識に彼を拒絶して、白河の顔に傷をつけてしまう。

こうして肉体的にも精神的にも疲弊した由宇は、いよいよ倒れる。その由宇のピンチを助けたのが黒崎。やはりヒーロー。しかし黒崎は弱っている由宇には何もしない。むしろ優しい。彼が欲情するのは自分が罵倒されている時だけだから(笑)

そんな彼の様子に物足りなくて、由宇は自分から黒崎に手を伸ばす。白河を拒絶したては、黒崎を望んでいるのか…。


崎は由宇が嫌がる事だからキスをする。黒崎は そんな自分の性癖を認めているらしい。要するに以前の寮やクラスでの恐怖政治と同じく、恋愛面においても恐怖や上下関係でしか人との関係が構築できないのだろう。言うことを聞かせることが黒崎にとって他者との自然な関係であって、由宇とはそんな関係を望んでいる。それは黒崎にとっては最上級の人間関係だが、彼のこの特殊な理論を理解することが出来ないと、ただのクレイジーな人である。

だから服従を求める彼に対抗するために、由宇は自分の髪を切り、2人の関係を「おあいこ」だとする。まぁ詫びのために自分で髪を切るのと、いきなり相手の髪を切る暴力とでは対等にならないと思うが…。

そして黒崎への反抗心を よみがえらせる。それがまた黒崎の欲望に火をつけるとも知らずに…(黒崎の事だから床に落ちた由宇の髪を集めて良そうだなぁ…)。

由宇は白河へのケジメとして、やはり洋服代を返却することにする。そのためにバイトの面接に向かう。
その帰路、白河に会い、顔の傷について謝罪する。白河は由宇の髪の変化に気づき、公園で長さを整えてあげる。白河にそんな優しさを見せられて、彼への好意が恋だと思い直し、由宇は告白を決意する。


節は移ろい男女合同の水泳の授業。読者の誰もが望むであろう黒崎の水着姿だが、潔癖症だからか、それとも更衣室に溢れる男の裸に嫌悪したのか黒崎は授業に参加しない。これ、きっと作品的に黒崎様にスクール水着など着せられない、という配慮なのではないか。自前の水着ならまだしも一般人と同じ格好をしたら、これまで築いてきた黒崎ブランドに傷がつく。裸OK、スク水NGが黒崎のライン。

授業中、足をつった友達の救助に向かう由宇だったが、強くしがみつかれて身動きが取れない。そのピンチを救うのはやはり黒崎。由宇の正義感、そして黒崎のヒーロー的活躍が一気に見られる胸キュン場面。
溺れたクラスメイトを お姫さまだっこで保健室に運ぶ黒崎。そんな彼に胸キュンしたのは溺れた本人で…⁉