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少女漫画と小説の感想ブログです

最終巻は 同居モノ・病気モノ・幼なじみモノと作風がカラフルだよ☆ ついていけないよ★

恋降るカラフル~ぜんぶキミとはじめて~(9) (フラワーコミックス)
水瀬 藍(みなせ あい)
恋降るカラフル(こいふるからふる)
第09巻評価:(2点)
 総合評価:★★(4点)
 

最高で最幸の完結巻!「たくさんの人と出逢って いっぱいの愛をもらって あたしは今ここに立ってるの」。ついにスタートした麻白と青人、2人きりの生活。同居を許してもらうために、青人が麻白パパに送った手紙の内容は・・・? 無防備な麻白に振り回される青人だけど、
2人で過ごせる時間は最高の宝物・・・▽一方、麻白の親友・姫乃が倒れ――!?絶対にみんなで幸せになる! 感動の完結巻!!

簡潔完結感想文

  • 1か月限定の同居をして恋は愛に変わった。夫婦になった2人の姿の未来予想図。
  • 読者には唐突な姫乃の病気設定。自由と「つがい」にして、自由の過去を帳消し。
  • 作者が注力したのは麻白の心を濁らせないこと。話の矛盾など気にしなければOK。

線はないけど、最初から考えていた設定ですので、の 最終9巻。

絵は綺麗なのに、話が全く伴っていない。

どうして作者は ここまで長編を作るのが苦手なのだろうか、と唖然とした。それが姫乃(ひめの)と自由(みゆ)のカップリングである。「THE 少女漫画」の本書では「友人の恋」も絶対で彼らも永遠に幸せになることは理解できる。問題は その描き方だ。再読で私が気づいた姫乃と自由が互いに惹かれているという伏線は、『4巻』の 姫乃が失恋して彼女を気遣う自由が優しさを見せた1回だけ。作者は、この結末や姫乃の設定を最初から決めていたようだが、そうなら そこから徐々に2人の距離を近づける描写を織り込むべきだった。

だが どうやら1つの恋を単線で走らせる事しか出来ないらしい。ヒロイン・麻白(ましろ)と青人(はると)の恋に動きがあると それだけしか描けないから、姫乃たちの伏線どころか、姫乃たちの出番すら無くなる。10年も漫画を描いていて これは どうなのだろう。本書の作者コメントの中で「ヒーロー以外を幸せにする隙が無い」という自分の傾向を認めているが、作品内で複数人を同時に動かす能力がないのではないか。それによって作品に奥行きが生まれなくて、描写がないまま作者の脳内設定が急に登場するから読者は戸惑うばかりである。その唐突な設定についていける若いリアル読者たちが支持しているのだから、それでいいのだろう。

姫乃の病気設定は かろうじて伏線があるような気がする(留年していること、スポーツをする描写がないこと)。だが、自由が本当は姫乃の事を想っていて、幼なじみの2人が急に「運命の恋」や「奇跡」を語るのには唖然とするばかり。
なぜなら自由は『8巻』で麻白に2回目の当て馬行動をしたから。1回目は麻白が本気にしなかったことで作品上 無かった事になった自由の恋心だが、今回は これまでの当て馬のようにウソや冗談としないまま、有耶無耶にしたまま自由の恋心は宙ぶらりんになった。青人が麻白を助けに来るかの賭けで負けたことで、自由は踏ん切りがついたと思われるが、麻白を想っていた気持ちは本物。なのに そこから(推定)1か月で、幼なじみの姫乃のことをずっと想って生きていたと言われましても…。姫乃の病気設定だけで戸惑っていたのに、自由の気持ちを歪めてきたことに気を失いそうになった(苦笑)

本書では過去の改変が可能。自由が当て馬だった過去も消滅し、読者は徒労感を覚える…。

作者は自分が望むクリーンな世界のために男たちの恋心を徹底的に焼却処分する。麻白の幼なじみ・橙太(とうた)の恋も、そして自由の恋も。そして女性と遊び回る自由の設定も改竄され、ずっと姫乃のために生きてきた一途な幼なじみを偽造する。もう何でもありである。
この結末を用意するなら、なぜ自由を『8巻』で もう一度 当て馬役を命じたのかが疑問である。姫乃の病気設定は作者の当初からの構想に会ったらしいので、完全な思いつきでもない。自由の遠回りに一切 意味が見い出せない。『8巻』で青人に完敗した自由に勘付き、今度は姫乃が彼に優しく接するとか、そんな1コマがあれば自由の心情の理解の一助になるが、そんなものはない。あるのは姫乃が入院したことで、自由のスイッチが入るという安直な流れ。
最終巻では2つの結婚式が見られる。その どちらも華美な言葉を並べ、読者に感動しろと言わんばかりだが、感動させたいのなら話の流れをブツ切りにするのを止めて頂きたい。

本書における「運命」とは作者の意思でしかない。それを再確認した近年まれに見る酷い最終巻であった。


局、よく分からない理由で転校してきた麻白は、再び親の都合で転校させられそうになる。青人との恋も遠距離になってしまう危機だが、そこで青人が提案したのは2人での同居・同棲だった。
麻白の母は3学期中に出産するという。ということは、遊びに帰った夏休み中には妊娠していたことになる。そんな素振り全くなかったけど、本書に整合性を求める方が愚かというもの。

祖母が娘の住む島へ行くのは1か月だけということもあり、青人の提案は了承される。未成年同士の同居になるが、親は難色を示さない。というか青人側の家族の描写すらない。好きな人との同居という少女たちの夢を叶えようとする展開だが、最低限のリアリティは欲しい。

そして いよいよ始まる同棲。麻白は料理は得意。そんな家庭的な麻白に惚れ直す直人。まぁ彼自身も料理できるのだけど。

同居生活の中で麻白は、父親の説得のために、青人が婚姻届を送り付けていたことを知り、その事実に青人の覚悟と愛を感じ、麻白は満たされる。
うーーん、良い話なの、これ? 彼女側の両親に いきなり婚姻届を送るって むしろ失礼な気がする。せめて同封の手紙があって、若いながらも必死な青人が見えてくれば良いのだが、青人が手紙を書いた事実は確認できない。ってか、本書発表の時(2022年04月まで)は麻白は結婚可能だけど、男性の青人は この時点でも無理なのに。このぐらいの青人の覚悟、という話なんだろうけど、自分の進路に自営業の麻白の家を念頭に経営や経済学を専攻しようとしているとか、青人は結婚しか見えていなくて怖い。

これにより恋が愛に変わったらしい。交際後の半年間で安定した時期なんて短いものでしたけどね。

寝ぼけた麻白が無自覚に青人の布団に入り込み、その後、麻白が自分の髪を触る青人に気づく。そこから燃え上がる2人。だが そこへ電話が鳴り、未遂に終わる。色々な意味で麻白の純潔は守られまくる本書です。

彼女の左手の薬指に指輪をはめ、親には婚姻届を送付。青人はなぜ そんなに結婚にこだわるのか謎。

語も終わりが見えたので、ここから急に姫乃と自由のカップリングに舵を取る。

麻白にかかってきた電話の内容は姫乃の入院。雨に濡れた姫乃が肺炎を起こしかけているという。自由は病気のことを以前から知っていたらしいが、『4巻』で姫乃が雨の中、飛び出した時、見送っていましたよね…?? 本当、物語に整合性がないというか、人の行動に筋が通ってないというか、再読すると疑問符が浮かぶ欠点の多い作品である。

どうやら姫乃は心臓関係の病気らしく、手術をしなければならない。だが胸に残る傷を気にして、姫乃は手術をしない。ウェディングドレスを着たいから手術をしないが、手術をしなければドレスは着れないというジレンマを抱える姫乃。

そこで麻白は祖母宅にあるウェディングドレスを着てもらうことを思いつく。おそらく母の持ち物だがなぜ祖母宅にあるのかは説明されない。作者は細かいことなど気にしない器の大きい人なのである。麻白は ちょっと古いドレスを「直してアレンジ」するという。料理に加えて、裁縫、そして運動と麻白さんは何でも出来ますな。


レス姿の姫乃の隣に立つ新郎に選ばれるのが自由である。
姫乃の命の危機に自由の中にずっとあった(という設定の)恋心に火がつく。えっと、あなた つい先日、麻白をさらう、とか言ってたよね(絶句)

そして始まる擬似結婚式。自由は姫乃にプロポーズをして、擬似ではなく本物さながらの心境で式に挑む2人。ここも綺麗な言葉で修飾しているけれど、中身は空っぽ。

少女漫画的には、自由が覚悟を決めたことで、本当に当て馬を卒業するということなのだろう。少女漫画において結婚は絶対であるから、これにて全てを水に流す、という手打ちの儀式なのだろう。
上述の通り、女好きの自由の設定も改変される。綺麗な身体でないと、永遠は手に入らないということか。恋の終わりを知るような読者のことなど念頭に置いていないのだろう。

『8巻』で男女の意識が芽生えた麻白と自由の関係も一切のフォローはなく、改めて「友情」にフィックスされる。またもや麻白に都合の良すぎる世界が繰り広げられ辟易とする。

こうして生きる目的が出来て、姫乃は手術を決意する。自由はこれまでずっと姫乃のために生きていた、という物語が あっという間に上書きされ、2人は誓いのキスをする。「オレ お前の となりだけは あきらめたことないよ」という台詞が寒々しい。作品内の事象を作品が否定してしまったら何も残らないじゃないか。

しかし この結婚式、簡素とはいえ かなりの金額をつぎ込んでいるように思えるが、本書の世界には お金なんて存在しないのだろう(青人は経済学を学ぶらしいが…)。

この姫乃の設定は、次回作『きっと愛だから、いらない(未読)』に持ち越されると考えていいのだろうか。しかし作者がちゃんと病気に向き合う覚悟をもって作品に挑んでいるのか、今から心配である。ただの設定で終わってなければいいが…。


終回は それから約3年後。麻白の妹の杏(あんず)が喋るようになっている頃、麻白たちは結婚式を挙げる。
なんと一足先に自由と姫乃も結婚しているらしい。少女漫画雑誌の中でも「Sho-Comi」は結婚率の高さ、そして結婚年齢の低さがダントツではないか。

結婚式を挙げる舞台は麻白の地元の島。そこで2人は もう一度出会う。にしてもドレスアップした自分や友人とブルーベリーを食すなんて、麻白はやっぱりバカなの…(笑)?

ヒーロー・青人以外の麻白への恋心は全部 消滅させたのでライバルも当て馬も皆、友達になれる。男女間でも友情は成立し、そして友情は永遠。青人以外の男からの恋心なんて汚物に等しいのあろう。そんな歪んだ価値観が作る綺麗な世界のお話でしたね。

ラストは そこからまた数年後、今度は2人の間に新しい命が生まれ、息子と家族3人、いつまでも幸せに暮らしましたとさ…。