《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

元カノを名乗る女性 VS. 自称・彼の運命の人。思いこんだら試練の道を行く 劇場型ヒロイン。

恋降るカラフル~ぜんぶキミとはじめて~(2) (フラワーコミックス)
水瀬 藍(みなせ あい)
恋降るカラフル(こいふるからふる)
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★(4点)
 

「神様 やっぱり あたしの運命の人は青人くんです」。麻白が恋した男の子はやっぱり青人だった!思わず青人に告白した麻白だけど、その答えは?さらに、文化祭で麻白と青人は一緒に校内を回ることに・・・!4年前より優しくて、4年前よりかっこいい青人にドキドキな麻白。急接近する2人。だけど思わぬ事件が!?初恋の人にもう一度恋をしていくピュアな麻白の気持ちと、その想いを感じてだんだん変わっていく青人。読んだらキュンキュン間違いなしの等身大ラブストーリー、2巻が登場です!

簡潔完結感想文

  • 打たれ弱いが、告白後はグイグイの肉食ヒロイン。損なシンデレラ役を演じて好感度アップ。
  • 同性ライバルにも手を貸すのはヒロイン特有の慈愛かと思いきや、全ては自分の恋愛のため!?
  • なぜならヒーローがトラウマを解消しなければ恋愛は進まないから。本当に したたかなのは誰?

気で嘘をついたり、平気で盗み聞きをする主役カップルって どうなの? の 2巻。

「運命の恋」を描いた本書。『2巻』ではヒロインが自分から動いていく姿が何回も見られた。特に序盤での告白には驚き、周囲に助けられるだけではなく、自分から動いていける性格だと知り好感を持った。
4年前の運命的な出会いの後、再会した第1話から既に両想いが確定しているような気がしてならない麻白(ましろ)と青人(はると)の2人。作者は両想いまでに様々な障害を用意する。『2巻』では恋愛に躊躇する青人が、封印していた恋を解禁していく様子が描かれる。これは いわゆるヒーローのトラウマで、本来なら最終盤に解決される問題。だが それを惜しげもなく早い段階で解決していっていることから本書の展開の早さが よく分かる。

ここでは青人が恋愛を遠ざけていたトラウマが、麻白が他人のために動いたことで解決した、という流れが綺麗だった。本書の胸キュンポイントや読んでいて楽しい点は「無自覚」だと思う。トラウマの解消も、麻白が狙ったものではなく、たとえライバルでも同じ恋する者同士、痛いほど気持ちが分かるから、ライバルの気持ちを成仏させようとした。そのことが無自覚に連動して青人のトラウマの解消となり、自分の恋愛成就に一歩近づくことになった。
また青人も、自分は恋をしないと意識しつつも、麻白を好きな気持ちは膨れ上がり、無自覚に嫉妬をしたり、彼女のピンチを助けたりと自覚する心よりも身体が先に動いている。これが『1巻』のテスト勉強の時のように、その人の心に手が触れるか触れないか絶妙な距離感を演出している。

ただ、『2巻』で明らかになった『1巻』での再会後からの青人の嘘については疑問が残る。嘘をついた理由が幼稚で自己中心的で あまりヒーローに似つかわしくない。『1巻』の感想文でも書いたがヒロイン・麻白は本書において最強のヒロイン。4年前の運命的な出会いを妄信しているから、気持ちが揺らぐことはない。青人教の熱烈な信者といってもいいだろう。だから そんな彼女に ちょっとした障害を設置することによって、彼女が少しでも落ち込んだり、恋愛成就を遅らせるために作者は様々な手段を講じている。青人の嘘も その一つだろう。それは分かるのだが、ちょっとした障害の割に、青人の実直で純情な性格が疑われるような嘘であるから気になって仕方がない。作品も麻白も青人が嘘を ついたことを問題視しない。ここをスルーしてしまうことが残念だし、嘘をつくにしても もうちょっと理由を考えるべきだったのではないか。
それは麻白が人の秘密の会話を盗み聞きしたシーンでも感じた。青人と麻白に純愛をさせたいのなら、この行動は選ぶべきではなかったのではないか。しかも余計な口出しをする麻白は、自分が青人を好きだから、人の会話に介入する権利があるという理論も意味不明だった。話の流れは上手いと思うが、どうしてもヒロイン・ヒーロー偏重の物語に感じられ、作者の過剰な愛を感じて居心地が悪い。

麻白の引越しの理由も よく分からないし、こういう場面が描きたい、こういう試練が切ない、という思いだけが先行していて、作品と距離を取って読んでいくと、腑に落ちない点が たくさんあるように感じる。

恋に障害が必要だったから作者はヒーローに嘘をつかせる。フツーに嘘をつく人間を好きになれませんが…?

校で出会った青人が4年前の初恋の人だということが判明。一気に運命の恋になる。
青人が嘘をついたのは、麻白に戸惑っていたから。青人は「フツー言えないでしょ」というが、フツーに嘘をつく、人の気持ちに配慮できない人だと私は幻滅した。麻白を無駄に悲しませた張本人が、自分の気が向いた時だけ彼女に優しくする。これには青人が、星森ゆきも さん『ういらぶ。』のヒーロー・凛(りん)のような自作自演男に見えてしまった。

麻白は、青人が過去を割り切っているように「見えて」、麻白の好きな人を自由だと「思われて」しまい落ち込む。確認も訂正もせず自分だけで結論を出して「運命の恋なんて終わってたんだ」とヒロインらしい憐憫に浸る。
だが周囲の人に励ましの言葉や勇気を貰って即、回復。そして麻白は動く。ドアが閉まりかけた電車に駆け込んで、電車内で告白をする。彼女の気持ちは動き出した。


れにて めでたしめでたし、と思いきや、青人は麻白の告白を断る。「誰とも つき合うつもりない」。
両想いにはなれなかったが、この告白で2人は4年分の想いを交換している。麻白はずっと青人を想っていたことを伝え、そして青人は4年前の約束を守れなかった日のことを話す。4年前、青人はカゼを引いて待ち合わせの場所に行けなかった。確かに青人は、自分の服を脱いで濡れた麻白を拭いたりしてカゼを引く可能性は高かったと言えよう。

青人への電車内での告白は噂になる。だが青人が誰ともつき合わないのは有名で、クラスメイトたちもフラれているので大きな騒ぎにはならない。ちなみに この時、話し掛けてくれているクラスメイトは『1巻』で豪遊していた女性2人組と同一だろうか。まだ話し掛けるぐらいの仲でいるのだろうか。


かし人の言葉に左右されるヒロイン気質の麻白は、まだ青人のことを好きでいることが「迷惑」ではないか と言われ、周囲と自分の気持ちの持ちように差があることを知る。でも麻白は青人をあきらめることを全く考えていない。青人教の青人様は絶対神だからである。

そんな時、麻白は体育の授業中に怪我をして、青人に お姫さまだっこで運んでもらう。そして保健室に養護教諭がいないから手当てをしてもらう、までが少女漫画のデフォルト展開。少女漫画読者が好きな展開を詰め込んでいる読者サービスなのかもしれないが、既視感たっぷりで やはり工夫を感じない。長編を任され、人気作家になったのだから、作者らしい表現に挑んで欲しい。

この保健室での会話で青人からも好きでいることは迷惑じゃないと お墨付きをもらい、麻白の恋は宝物のままになった。この辺りの麻白はグイグイと自分で青人に切り込んで、自分の気持ちを安定させている。


いては文化祭回。麻白は好きでい続けるが、現状維持で大満足。

準備の段階では、薄情な都会の人から仕事を押しつけられるシンデレラ・麻白。だが その後、青人との接触という ご褒美が待っていた。麻白は現状維持で満足という割に再度 告白したり、どうにか青人を落とそうという肉食の一面が見え隠れする。

文化祭当日も、担当時間を強引に交代させられそうになり、困ってる人を放っておけないヒロイン・麻白は承諾しそうになるが、それを青人が拒絶する。心根の優しい麻白と、麻白のことばかり よく見ている青人という一石二鳥の展開。だが、麻白が人に自分の意見を言わずに、周囲が助けてくれるという「姫ポジション」に辟易する場面でもある。

彼女がグイグイといくのは青人にだけ。文化祭を一緒に回ることを提案し、コスプレデートのような時間を過ごす。少女漫画の文化祭はコスプレをするためにあるといっても過言ではない


んな幸福なひと時を破壊しに現れるのが、青人の「元カノ」的存在。いよいよ第三者の障害の登場である。ここから、現れては1巻以内に消える障害となる人々が順次 投入され、物語は単調になっていく。
しかも前述の通り、麻白は世界最強の恋愛少女だから、ライバルが持ち込んだ ちょっとした障害を簡単に蹴散らす。ライバルたちが陰湿に何回も嫌がらせをする展開も読んでいられないがされるザコ扱いなのも歯ごたえが無い。

今回のライバルは青人の元 同級生の高梨(たかなし)。彼女を見ただけで青人は緊張感を漂わせる。麻白も青人に線引きをされ、それだけで泣いてしまう麻白。グイグイの積極性は見せるのに、打たれ弱い

学校内で高梨と再会した麻白は、彼女が青人の「元カノ」だということを聞かされる。しかも その恋は部活の先輩から青人が彼女を奪略した形だという噂を耳にする。

それが気になり、高梨と連れ立って消えた青人の後を追う自称「運命の人」。人の話を盗み聞きする行為は卑怯だと思うが、もっと卑怯な「元カノ」がいるので帳消しにされる。
だが高梨は青人を人への自慢の種にしか考えていなかった。そのことが怒り心頭に発した麻白は、青人を好きだから、という無理矢理な理屈で、2人の間に割って入る。

麻白のストーカー理論。いや、これは青人だけじゃなく高梨さんの話でもあるんだけど…。

青人が麻白の味方をしたことで、高梨は恥辱にまみれ、撤退する。
そこで重い口を開き、青人が話したのは、高梨の嘘に巻き込まれて、部活で嫌な気持ちをした中学時代のこと。そこから青人は女性との関係を鬱陶しく思い、恋愛を自分から遠ざけていた。
このように『2巻』は青人の再会までの4年間のことが少しずつ埋められていく。過去を知り、問題を解決することが麻白の想いが成就する近道なのだろう。

しかしメタ的に考えると本書のサブタイトル「~ぜんぶキミとはじめて~」は、麻白だけでなく青人にも適用される。純愛が大好きな作者が青人に元カノを作らせる訳がない。そこもまた恋の障害にドキドキできない点である。


白はヒロインだから、ライバルの高梨も気に掛ける優しさを見せる。恋する者同士、高梨の青人への想いが本物であることを見抜いた麻白は、もう一度 青人と高梨を引き合わせる。でも さっき2人の会話を邪魔したのは お前自身じゃないのか…??と思わなくもないが。作者はヒロインを徹底的に良い人に描きたいのだろうが、汚れてしまった私などには架空の生物のように現実感がない。

しかも再びメタ的に考えると、少女漫画的に大事なのは、高梨の未練を断ち切るのではなく、高梨問題を解決することで青人をトラウマから解放するのが目的だろう。恋愛を封印している青人の心境が変わる事によって彼の恋愛解禁が目前になる。
ヒロインの麻白は そおの恐るべき嗅覚で、自分の恋愛成就のために必要な手続きを終わらせようとしたのであろう。高梨の手を取る振りをして、その後の漁夫の利を狙っている。怖ろしい女やで、ほんまに。…なんちゃって☆

まぁ、麻白が正しい行動をしたことが、恋愛成就の道を切り拓いたのでしょう。情けは人の為ならず。

この麻白の無自覚の行動は、青人の恋心に火をつけた。

この学校の後夜祭には「キャンプファイヤーの恋のジンクス」がある。火が消える時 一緒にいて最後の花火を2人で見れたら結ばれるという。だから自分のトラウマが解消した青人は そのジンクスを知らないであろう麻白を後夜祭に誘う。
麻白は いつだって無自覚に愛されヒロインなのです☆