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少女漫画と小説の感想ブログです

俺がお前を好きなのは、俺以外のことを一途に想い続ける聖母だから、という袋小路

ケダモノ彼氏 3 (マーガレットコミックスDIGITAL)
藍川 さき(あいかわ さき)
ケダモノ彼氏(ケダモノかれし)
第03巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

大嫌いだったはずの義姉弟で同級生の圭太が、自分にとって大きな存在になってきていると気がついたひまり。徐々に2人の距離は縮まり…世間は、夏休み突入! 佐伯からお誘いもあり、ひまりの恋が大きく動く夏になる予感!!

簡潔完結感想文

  • あの子が表情を輝かせて話すのは俺以外の男性と、という男性たちのジェラシー。
  • 2人の男性からの花火大会の誘い どちらを選ぶかが本書の答え。本編終了、以下 蛇足。
  • 絶対に血が繋がらない姉弟だが、血が繋がる可能性のある姉弟よりも答えを先送りする。

のことを好きになる お前は、俺の蛙化現象の対象になる、の 3巻。

ヒロインを巡る男性たちの静かなバトル、両片想いの成立など面白さのピークを迎える『3巻』。ここから三角関係の終焉に1巻分、現在の家族の形態への対処に1巻分を費やせば全5巻という本書に適当な長さが導き出される。それが全13巻まで続くのだから、ブームに乗っかった設定が当たると見返りは大きいことを実感する(または失望する)。

これまでの感想文で、ヒロイン・ひまり の逃げるけど逃げられるのは嫌というダブスタや、大賀見(おおがみ)の、彼の母親の浮気による心の傷を癒すことで接近した元カノによる浮気など、行動に矛盾が多く見られた本書だけれど、『3巻』の巻末に収録されている番外編(3編中の1つ目)を読んでいて、大賀見の中にある矛盾に思い当たった。

それが大賀見は、ひまり が4年以上 佐伯に一途なところが好きなのだが、自分を好きになる ひまり は女性は浮気するという大賀見の不信感を増強させる結果になる、という点。

俺様ヒーローの根底にある女性不信。自分が傷つかないように相手を傷つける

上述の通り、大賀見は母親と元カノの2人の女性の浮気によって女性を信じられなくなった。ひまり は当初、男性不信という設定だったが(やや崩壊ぎみ)、1話では大賀見もまた女性不信から出発している。だから裏切られても傷を負わない程度の女性関係を築いてきた大賀見だったが、父親の再婚によって小学生時代から好きだった ひまり と再会する。ひまり の佐伯への変わらない想いに大賀見は自分のトラウマを克服する活路を見い出しただろう。この世には純粋で一途な女性もいるのだ。そう 大賀見には思えたはず。

だが その先に矛盾が待ち受ける。大賀見が願う、佐伯ではなく自分を好きになれよ、という願望の実現は、大賀見の 女性の心は移ろうものという偏見を補強させる。つまり、ひまり が大賀見に好きと言うことは、大賀見の中の聖母・ひまり像が崩壊することを意味する。
これを蛙化現象と言わずして何というのだろうか。

…が、作品は そんな大賀見の自己矛盾を無視する。ひまり の大賀見への恋心により大賀見のトラウマが再発動するという展開は読んでいて爽快感が見いだせない内容だが、作品を続けるために取り上げていい命題だと思う。浮気と心変わりは似て非なるものだから問題ないのだろうか。でも きっと佐伯を好きだった ひまり の心変わりは、いつか大賀見を不安にさせる気がしてならない。

でも結局、王道の三角関係が続くだけ。作者が大賀見が行き着く この矛盾に思い当たっているかも怪しいところ。良くも悪くもライトな作風だから多くの人に読まれる作品なのだろう。

それにしても ひまり はクラス内でのポジションや、今の家庭を最優先にすることなど世間体を あまりにも重視し過ぎている。なぜか ひまり は保守的な考えに引っ張られ過ぎていて、その性格を作品は利用して ひまり の葛藤を恋愛の障害とする。早くも両片想いが成立したのに、いつまでも決着が付かないのは ひまり の心の問題でしかない。それを丁寧に解いていけば まだ説得力が生まれるのだが、そうしないから作品が間延びしていく。

以前も書いたけれど、ひまり が どうして そこまで家庭を大事にするのか、現状を優先するのか、という背景が見えてこない。もう少し母親への愛情を感じられるような、いつも母を気遣っているシーンなどを用意できないものか。ここから ひまり の心理的障害がメインになるなら、その部分を ちゃんと補強すべきだっただろう。
まるで実の きょうだい だと悩む近親愛みたいな深い悩みは私には いまいち伝わらなかった。現状に問題があるなら それをクリアするために動けばいいのに、ひまり は問題と対峙しない。

ここからの ひまり は、逃げるのがヒロインの お仕事、を体現するだけの存在に成り果てる。


賀見に避けられた途端、彼のことを意識し始める ひまり。この時 怪我をしたため、ベッドに お姫様抱っこで運ばれた次は自宅に おんぶをして運んでもらう。これまでは怒りや拒絶の反応だった彼との身体的接近や密着が気恥ずかしさに変わる。

こうして大賀見は自分が少なからず ひまり に受け入れられていることを知りグイグイと距離感を近づける。以前は佐伯と喋る ひまり の中に恋心を見つけ焦燥していた大賀見だったが、今は逆。佐伯が、大賀見と喋る ひまり の中に情愛が滲んでいることを察知する。

ただ ひまり は自分の学校内のポジションを優先する人だから大賀見との距離の近さが噂になると また彼との距離を遠ざけようとする。世間にどう思われようと「姉弟」として仲良くするとか、そういう意思の貫徹が出来ない人間なのだ(最後まで変わらない)。
ひまり は大賀見との接近と見えないように佐伯を隠れ蓑に使い、またも大賀見が報われないポジションとなる。この行動は佐伯側の焦燥も関係しているだろう。事実、佐伯は夏休みに ひまり を遊びに誘う。

男性の捕食者の性質を利用して、他の男性と喋る姿を見せて自分への興味を刺激

休み、ひまり はファミレスでのバイトを開始。大賀見は男性恐怖症(という忘れ去られた設定)を持ち出し、ひまり が辛い思いをするのを回避しようとするが、その過保護は上手く伝わらない。過保護だから大賀見は変装して言い訳して ひまり の様子を見にファミレスに潜入する。そこでナンパしてきた男性客への対応に困っている ひまり の姿を見るが、そこに現れたのは佐伯だった。偶然 居合わせたというが、大事な場面は必ず誰かが見ている、というのが本書の狭い世界である。

ナンパ男たちが もう二度と ひまり の前に現れないように大賀見は彼らに制裁を加える。これは彼らのせいで佐伯がヒーロー行動を取った事への逆恨みもあった。しかし この乱闘騒ぎが問題になり、大賀見の偵察が ひまり に露見してしまう。大賀見は隠密行動の失敗に凹んでいるが、ひまり は彼もまたヒーロー行動をしてくれたと認知する。


った地に戻って来て初めて ひまり は、以前 実父と3人で暮らしていたアパートを見に行く。しかし そこは取り壊しが決まっており、ひまり は大切な思い出が壊される思いを抱く。その落ち込みを察知するのは同居というアドバンテージのある大賀見。大賀見が嫌いだった時も、今の家族の幸福を最優先にする ひまり は この悲嘆を抱えてしまうが、大賀見が その悲しみの捌け口に なってくれる。これは ひまり の家族問題であり、そこに大賀見が介入したことで彼は正ヒーローになったということか。事実、ここから潮目が変わる。

ひまり は大賀見の不器用な優しさを完全に理解し、彼の素顔の魅力に気づかされる。そして この感情が今の家族の幸福を壊すものだということも見通す。


の日は花火大会で、大賀見は泣き顔を隠すための時間稼ぎ、という口実で ひまりを誘う。同時に ひまり に佐伯からの誘いのメールが来るのだが、ひまり は大賀見を選ぶ。もう この時点で ひまり の意思は決まっている。この日が大賀見 > 佐伯 となったターニングポイント。決め手は やはり同居、ということになる。

2人は手を繋いで花火を見るが、その2人のことを佐伯が目撃する(恒例の偶然の目撃である)。その2人に佐伯は声を掛け、ひまり は大賀見と繋いでいた手を振り払う。恋愛八方美人である。
佐伯はメールを無視されたこと、大賀見はメールを無視したこと、そして ひまり は二股状態になっていることを理解する。最初に動いたのは大賀見。彼は ひまり を連れて歩き出し、その後 彼女に自分への恋心を確認する。しかし改めて問われて自分の恋心を知った ひまり は逃亡。しかし帰る家は同じなので大賀見に壁ドンをされ逃げ場を失う。


直になれない ひまり は「好きになるワケない」「大キライ!!!」と わめいて大賀見を傷つける。だが大賀見も少し成長したようで ひまり に当たり散らすのではなく自分の素直な想いを伝え、強引ではなく逃げる選択肢を与えた上でキスをする。

だが ひまり は今の家族の存在を思い出し、それを優先する。世間体を第一に動く人間で、自分の芽生え始めた恋心を封印することを決める。例えば2人が血が繋がっている可能性があるなら悩んで封印しようという気持ちも分かるが、ひまり は そうではないのに、解決に動こうとしない。そこが歯痒い。

「番外編」…
大賀見が小学4年生の頃、両親の夫婦仲が険悪になり大賀見がストレスを抱え、その発散先に ひまりが居た。その頃の ひまり は父親が健在で幸福の中に居た。そして別クラスだった5年生を経て6年生になり大賀見は またストレスを ひまり に発散しようとするが、彼女は佐伯を好きになっており、そして強くなっていた。その要因に父親の事故死があると知り、大賀見は ひまり の父親の遺品を壊してしまった罪悪感を抱えて生きる。それから ひまり が引っ越し、高校入学で再会する。大賀見は少しは強くなったのだろうか。

「番外編」…
中学時代、モテるけれど その分 女性に振り回されている大賀見と、そんな彼に甲斐甲斐しく尽くす元カノ(当時は彼女)の話。元カノは大賀見の両親の離婚の原因が母親にあることを知りながら自分も浮気をしていた。それが大賀見の女性不信を強める。だが ひまり は ずっと佐伯が好きらしく、大賀見は そこに女性の中にある永遠不変の愛を見る。しかも自分に反論してくるような強気な一面もあり(当初は…)、大賀見は自分を好きにならない ひまり に欲情を掻き立てられる。

「番外編」…
本編中にありそうでない同居ハプニングを描く。サービス サービス!