《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

雑誌モデル・歌舞伎役者・ファミレス店員・看護師、子供の お仕事体験と 大人のセクハラ報告書。

花になれっ! 6 (マーガレットコミックスDIGITAL)
宮城 理子(みやぎ りこ)
花になれっ!(はなになれっ!)
第06巻評価:★☆(3点)
 総合評価:★☆(3点)
 

またしても、花音の代役をするハメになったもも。しかし、ニセモノである事がマスコミにバレてしまい、大騒ぎに! 有名な歌舞伎一家であるあげはの家に匿ってもらうが、そこにはあげはの兄・白羽と黒羽という、美形の双子がいて…!?

簡潔完結感想文

  • 花人の設定は もうないも同然だけど、華やかな世界でセクハラを受ける日々が描かれる。
  • 再会すれば即 仲直りとなり、作品側が安直な展開を隠さない。男を切らさないヒロイン。
  • 中身の無さを補強するのは新キャラ祭り。4人のイケメンが登場 即セクハラという超展開。

ロインも作品も男に頼らなければ生きていけない 6巻(文庫版)。

いよいよ内容よりもイケメンが重視され、そのイケメンの登場回数を稼ぐために拙速なスピードで物語が進む。これまでは新キャラが登場してからヒロインに惹かれる過程が多少なりとも描かれていたが、この『6巻』では出会った その日からセクハラが始まる。物語が進むにつれ、ヒロイン・もも から知性が奪われていったが、イケメン側にも思考能力は必要となくなった。彼らに必要なのは顔と社会的ステータスと、そして性欲である。ここまで支持する読者にとっては、自分の分身である もも が ちょっとHな展開に巻き込まれていけば それで満足なのだろうか。何度も書いている通り、どちらかというと男性が喜ぶようなオタク的展開で、この内容のない少女漫画を喜ぶ読者層が私には想像できない。

唯一、読者を喜ばせる装置として考えられているのはヒロイン・もも が様々な現場で ある世界に接する点であろう。世界を巡った三大名花編が終わり、描くことがなくなったであろう『3巻』以降、映画撮影などの芸能界編、モデル編、そして伝統芸能編と、表舞台に立つような仕事が目立つ。色々な世界・分野で活躍するイケメン図鑑を完成させることが本書の主目的になっている感じだ。その世界をヒロインを通して垣間見させていることが読者を夢心地にする装置なのは分かる。またファミレスの店員や看護師など女性が夢みる職業に もも が就くことで、お仕事体験する感覚を味わえるのだろうか。更に自分が働いて、チヤホヤされたり、その世界のイケメンにアプローチされて一石二鳥。エロのノルマもこなして、中身はないけど人気は出る構造になっているのだろう。総じていえば、仕事や恋愛というよりもセクハラ描写がメインになっているが…。

イケメン博覧会では必ず1組いる双子枠。「白羽と黒羽と」は「素人玄人」ってこと。前者が哀れ。

作者が注力するのは、もう恋愛的には婚約までしている2人をどうやって引き離すかというアイデアの捻出であろう。大きな喧嘩をして離れ離れ、入院して離れ離れ。心理描写など ないも同然だから、いつでも即座に元の鞘に収まって話を終えられる。いよいよ本格的な虚無である。

ただ、話の繋ぎ方は素直に上手いと思った。例えば芸能人との入れ替えトリックがバレて マスコミに追われて次の家に居候の拠点が移ったり、ヒロインと離れ離れになったヒーロー・蘭丸(らんまる)が心労で入院することで次の展開にスムーズに移行したりと、伏線がしっかり用意されていて、場面転換に無理がない。1人のイケメンとの交流を短くまとめたことで読者に飽きや退屈を感じさせないようにしているのが分かる(その分、中身はないが)。そういう点ではラブコメ漫画で連載を続けていく才能が作者には あるのだろう。

『6巻』終了時点。
イケメン枠:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ・アラジン・蜂巣・藤宮・若葉(過去編)・店長・タクロー・白羽・黒羽・晴山・花形(計17人 前巻比+4)
キス:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ・アラジン・藤宮・タクロー・黒羽・花形(計12人 前巻比+2)
裸を見られる:矢野・花音・花神・藤宮(計4人 前巻比+0)
男性からの愛撫:梅吉・花神・蘭丸・春日部・プラチナ・アラブの偉い王様・藤宮・タクロー・蜂巣・黒羽・晴山(計11人 前巻比+3)


『5巻』に引き続き、もも と美少年芸能人の花音(かのん)と「とりかえばや物語」である。

人気アイドル・蜂巣(はちす)に女性であることを疑われながらの仕事で、彼から性別を確かめるため身体検査されセクハラを受ける。そして花音が この日、2件の仕事を同時にこなしていることが噂になり、花音はマスコミに追われ、もも も居候している花音の家に帰れなくなる。そこで友人・あげは の家 お世話になることに。そして家を渡り歩くと同時に、男も渡り歩くという展開になる。

あげは の家族は歌舞伎一家。家族構成は父・母・双子の兄2人・あげは の計5人。あげは の父は、もも の香りに一切 惑わされない。同じ年代であろう『3巻』のアラブの王様は性欲全開だったが、この違いは あげは父が人間的に出来ているからなのか、彼が枯れているからなのか。

しばらく あげは の家でもメイドというか女中のようなことをして過ごす もも(学校 行けよと思っていたら後でその話題が出て驚いた)。もも は あげは の兄が双子だと知らず、1人に迷惑をかけられ、1人を人違いで迷惑をかける。名前は前者が白羽(しろう)、後者が黒羽(くろう)という。もも が距離を縮めるのは黒羽の方。髪色こそ違うが長髪で女を敬遠する性格は三大名花・プラチナと似通っているなぁ。

もも は勘違いから役者の顔である黒羽の顔に怪我をさせてしまい、それが彼の父の逆鱗に触れ、舞台に上がれなくなってしまった。黒羽は怪我は もも が原因だということを話さずに沈黙を貫き、この行動が もも の罪悪感となり、黒羽に謝罪、そして お約束のセクハラを甘んじて受け入れるというパターンへと繋がる。

黒羽は花人ではないため、もも が彼に惹かれるのは純粋な好意でしかない。香りを言い訳に出来ない分、ただの浮気である。どうして蘭丸と喧嘩になったか考えるが良い…。


一方、蘭丸は もも を「信用できない」と言った自分の発言を気にしていて、この時点で2人の問題は解決している。だが、すれ違いさせることで問題を継続させ、そして もも を ますます尻軽ヒロインにしていく。

歌舞伎座巡りをしたり、女性ながら舞台に上がったりと一通りのイベントをこなした後、もも は自分が あげは の家族から黒羽の嫁として扱われていることを知る。事態がそこまで進んで もも は好きな人がいる、と蘭丸を思い出す。要するに浮気はするけど本気には なれません、ということか。

もも を匿うのが、あげは から すみれ へとバトンタッチする寸前で、蘭丸と再会。あっという間に仲直りするから余計、全てが茶番に思える。
だが蘭丸は心労で身体が弱り、病気を招き倒れてしまう。蘭丸は心を疲弊させていたが、もも は図太く浮気を楽しんでいた、という対比が少女漫画として正しいのか疑問である。

ちなみに この話の一区切りでタクローが『4巻』登場の藤宮(ふじみや)の弟だと言うことが判明する。兄は自分の名前を、弟は自分の名字を明かさなかった兄弟である。


のところ全く学校に行っていなかった もも に留年の危機が迫る。色に狂って、男と遊び歩いていたなんてビッチそのもの。
だが もも はまだ学校内では成績優秀者として扱われているらしく補習で進学が可能という条件を出される。ロリ顔になって知性を失ったようにしか見えませんが…。

補習仲間として登場するのが新キャラ・晴山 大樹(はるやま だいき)。バスケ部の1年生という、元気系キャラ。これまで体型や顔つきが大人っぽい男性が多かった本書において珍しい立ち位置。背の低い感じは花音と似ているが、花音はもっと美形で精神年齢が高いタイプだろう。蘭丸も同学年だが1年生ながら18歳という設定だし、同じ年で、現在の もも と同じような知的レベルの人間で共通点が多そうに見える。

晴山は もも が借金返済のためにしているキャバクラ的ファミレスでのピンチを助けてくれた。これで もも が心を許す準備とセクハラを受け入れる前置きが整う。更に晴山に蘭丸との同棲がバレてしまい弱みも握られて…。

sかし晴山が もも に惹かれる場面が全くといっていいほどないから、彼が単なる色情狂に見える。晴山の雰囲気は健全で全然そんな風に見えないのに急に もも の服を脱がし出して唖然とした。エロければ それでいいのだろうか。

そして蘭丸と看護師の危ない関係を疑った もも が夜の病院に行く際に、晴山と遭遇し、彼を帯同させるという謎展開が続く。こういう態度だから もも が甘んじてセクハラを受けて喜んでいるような認識を生み出してしまう(これは次の新イケメンが病院で登場するから出番の少ない晴山の救済の意味もあるのか?)

晴山は無邪気な おバカキャラから豹変。読者に新キャラを好きになってもらう前に嫌われるばかり。

入した病院で看護師の制服を見つけ、お仕事体験・看護師編の始まりである。この際のカラーページが気持ち悪い(印刷は白黒だけど)。素人の男性が作ったような低クオリティと欲望まみれの濁った雰囲気を感じる。

看護師たちは蘭丸のお世話に忙しく、無資格の もも が夜勤の看護師業を一手に引き受ける(逮捕されろ)。もも がその夜に遭遇するのが花人であり、この病院の外科医でもある花形 光(はながた ひかる)。

もも のコスプレが他の看護師にバレる所を花形が助け、彼もセクハラの権利を手に入れるのだが…(逮捕されろ)。