《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

男の戦いに巻き込まれ悲恋に泣いた先祖たちに比べ、男に狂って婚約者を悲しませる 当代ヒロイン。

花になれっ! 5 (マーガレットコミックスDIGITAL)
宮城 理子(みやぎ りこ)
花になれっ!(はなになれっ!)
第05巻評価:★★(4点)
 総合評価:★☆(3点)
 

自身のブランドのショーのため、パリから蘭丸のママ・エリカが「なな」という友人を連れて帰ってきた。もしかして、彼女が捜していたもものお母さん…? そして、ななのドレスを手にしたももは、お母さんの思い出の中にとりこまれて――!?

簡潔完結感想文

  • 母の記憶を辿る回想編。もも は純系花人で最初の幸福な恋をする人になれるのか…⁉
  • 幸福な恋のはずが自分で不幸を呼び寄せる破壊神・もも。重い宿命の安っぽい展開。
  • 彼との気まずい関係から逃げるために別の男の家を渡り歩くビッチヒロインの再放送。

れだけ この恋の運命性を演出しても、ヒロイン自身の行動が台無しにする 5巻(文庫版)。

ここまで男たちに愛されながら読者に愛されないヒロインも珍しいだろう。
『1巻』ではメガネをかけて学級委員長的な真面目ヒロインだったのに、ロリ顔巨乳になってからというもの、知性も失われてしまった。プロポーズをしてくれた婚約者に女性が近づくことは許せないのに、自分は男の家を渡り歩くというダブルスタンダードを平気でやってのけるのも気になる。最後の一線こそ超えていないが、純情なヒロインどころか、ここまでで8人の男に身体を まさぐられている(下記参照)。
この『5巻』で もも の恋が、数百年 数千年続く「純系花人(じゅんけいはなびと)」の悲恋を断ち切る最初の事例になれるかという大きな問題で この恋を一生懸命に飾り立てても、肝心のヒロイン・もも の行動が刹那的で、男性に もたれかかっているだけなので応援できない。壮大なストーリーを用意しているのに、2人は些細なことで喧嘩することを繰り返す。
物語の設定は「運命の恋」なのに、作品の構造はイケメン展覧会なのが、致命的な齟齬である。後者が読者に受けることが分かったから、ヒロインが新たなイケメンに出会う必要性が生まれ、そのために運命の恋を、ただの浮気性のカップルの痴話喧嘩レベルまでに貶めてしまった。こうして純潔なビッチという訳の分からないヒロインが誕生した。

願いを託された子供が こんなにビッチに育つなんて、母や歴代純系花人たちは頭を抱えているだろう。

ヒロイン・もも の母捜し=自分のルーツ探しも一定の結論を迎えて、物語は いよいよ これ以上 掘り下げるところがなくなった。今回の話だと父親が存命である可能性は高いのだが、もも は母ほど気になっている様子はない。
また一段と話を終える準備は整ったが、その母親の話が終わった時点で ちょうど全体の半分に到達したところでしかない。そして本格的な再放送も始まり、これ以降 楽しめるのはファンしかいないだろう。人気ピーク時と連載末期では、本書の読者数は どれだけ違うのか気になるところである。

『5巻』終了時点。
イケメン枠:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ・アラジン・蜂巣・藤宮・若葉(過去編)・店長・タクロー(計13人 前巻比+3)
キス:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ・アラジン・藤宮・タクロー(計10人 前巻比+1)
裸を見られる:矢野・花音・花神・藤宮(計4人 前巻比+0)
男性からの愛撫:梅吉・花神・蘭丸・春日部・プラチナ・アラブの偉い王様・藤宮・タクロー(計8人 前巻比+1)


頭は本書の設定において割と重要な話である。これまで残された謎やピースが埋まっていく。

婚約者・蘭丸(らんまる)の母親が「なな」という友人を連れて帰国する。その なな という名前は もも の母親の名前でもある。だが なな には「はじめての子」である赤ちゃんが生まれたばかりで…。

なな が作ったドレスの中で眠ると もも は、夢の中で自分が なな になっていた。これは「純系花人」であった頃の なな の記憶で、現在の記憶喪失の なな が忘却した記憶である。なな は既に純系花人ではないようで、この回想編によって、純系花人の記憶が伝承されていくということなのだろうか。いつか現れる次の純系花人の夢には 先代として もも が出てくるのか。

なな は初潮を迎えた時から、現在の花神(かがみ)の父の妻として迎えるように花神家で幽閉に近い生活を強いられた。これは彼女の両親は承諾済みで、世界の「三大名花(さんだいめいか)」の中から花神家を選んだということらしい。彼女は花神によって それまでの記憶を消され、花神の思い通りに教育される。この記憶消去は『3巻』でアラジンが使った毒と同じだろうか。三大名花は そうやって純系花人を縛っていたのだろうか。

ここまで5年間幽閉のような生活を送り、まだ16歳にならない なな。その間に花神には身体を触られまくり調教されていた。花神は完全にロリコンである。花神(父)がその後の正妻に見向きもしなかったのは、ロリコンだからじゃなかろうか…。


閉状態が続く ある日、なな は庭師の孫でインターハイに出場する高跳び選手の男子高校生と出会い、一目で恋に落ちる。
彼の名は若葉(わかば)。花神の家を追い出された この家の息子。いわゆる愛人の子で花神(父)の異母弟らしい。花神の嫉妬深さや執着を知る なな は若葉を遠ざけようとするが、恋に落ちてしまった2人は止められない。すぐに身体の関係を持ち、若葉のインターハイ後に駆け落ちを約束する。
なな は弟・春日部(かすかべ・もも の叔父で花音の父親)の力を借りて、取り決めた場所に行くが、若葉は現れない。その代わりに異母兄の花神が現れ、彼が事故で高跳びできる身体ではなくなったことを知る(これは遠くに逃げるという意味の高跳びも かかっているのか?)。その辛い現実で目の前が真っ暗になった なな は崖から飛び降りる(これは『2巻』での春日部の証言とも合致する)

生死をさまよう なな の前に、純系花人の始祖である女神フローラが現れ、悲恋に終わる純系花人の恋を いつか実らせてくれる娘の誕生を願う。夢の通りであるとすると、もも は なな の子供であり、もも の恋の成就は純系花人の悲願であるのか。つまり悲しみの連鎖を終わらせる意味でも もも の恋は重要で、純系花人最新の この恋は花人史上初の大恋愛、という位置づけなのだろう。だが上記の通り、もも という人間の軽さが この恋愛から重みを消していく…。


な は新しい命がお腹に宿っていることを予感していたため、もも を生んだはずである。だが今の彼女は、もも を生んだことなどの記憶は喪失している。

長男を生んでからは香りも消えていった。「花人の香りは気持ちが満たされると消える」と蘭丸は推察する。では香りが消えた花人は ただの人なのだろうか。そして逆に人は花人になれるのだろうか。そういう世界観を少しずつ滲ませて提示できれば本書の面白さに深みが出たのに、浅い設定と同じことを繰り返すラブコメ要素が それを台無しにする。

もも は母の過去や現状を それとなく知り、母への執着を失くす。母かもしれない人が幸せそうなら、自分の疑問や願望は解消されなくてもいいという。ちなみに なな の現在の配偶者は誰だか分からないまま。息子の名前がアレクだから外国人なのだろうか。
これで もも の両親捜しも終わりでしょうか。でも父も まだ生きてはいる可能性はあるのか。身体が不自由かもしれないので、今後 そういうキャラが出ないか注目していこう。


期連載の少女漫画特有の「するする詐欺」を匂わせたところで始まる もも のバイト編。

ファミレスの店舗の正面ガラスを割ってしまった もも は1枚100万円する その弁償のために その店で働く。いつのもように些細な喧嘩して蘭丸と距離はできないが、嘘をついて ぎこちなくなる。蘭丸も何巻前かの約束であるピアスを渡せない状態が続く。今回は蘭丸が学校内の部活動の助っ人を頼まれているから、もも の傍に入れないという展開である。同じ家、同じ学校にいながら すれ違うのは こういう理由を作る必要が あるのだろう。

可愛い制服でお馴染みのファミレスで、超美少女ウェイトレス軍団がいることで有名だそうだ(モデルと なったっぽいお店のように2022年に閉店だろうか…)。ファミレスというよりもメイド喫茶っぽい雰囲気である。今回も意地の悪い同僚たちにやっかまれながら、バイトをするという話になり、前回のモデル業界の裏側と ほぼ同じ内容。テーマとしては、花音(かのん)と入れ替わった芸能界編、モデル業に続いて、容姿が端麗な女性限定の お仕事体験の流れだろうか。

自分だけの美しい花を咲かせるはずが、最近は こんな男に媚びを売るようなコスプレしかしない。

バイト仲間の1人が もも に嫌がらせをするため彼氏・タクローを刺客として送り込むが、逆に もも の色香に惑わされてしまう。もも のピンチをタクローが助けてくれたことで彼を信用して その後に裏切られるのも同じ。

もも がクラブのVIP席でタクローから愛撫されている場面を蘭丸に見られ、蘭丸はブチ切れる。「バカにすんのも いいかげんにしよろ…!!!」「もう… ももりん の言うことは信じられない」というのも納得の展開。いくら花人の香りで発情するからといって自制心が無さすぎる。これでは同じことの繰り返しだ。
タクローが慰めようとすると「バカ…っ!! あたしにとって蘭丸君は そんな軽いもんじゃないんだから…っ!!!」とタクローだけに責任を押しつけて逆ギレ。ヒロインとは自分の責任を認めない生き物のことである。


うして2人の男のもとから去った もも が向かうのは別の男。自分の叔父とイトコである花音(かのん)父子の家を頼る。モデル修行で藤宮(ふじみや)の家に寝泊まりしていたかと思ったら、次は別の男の家。蘭丸に信用してほしかったら、こういう行動こそ慎むべきなのに、男を数珠つなぎにして、家を転々とする尻軽ヒロインは、頭も相当 軽い。

芸能人である花音が もも と買い物に行くためキャンセルしようとした2本の仕事を1日で同時にこなすため、花音と もも が2人1役を演じることになる。
ここからは『3巻』に続いて芸能界編その2である。登場メンバーも同じで人気アイドル・蜂巣(はちす)が花音の正体が女であることを疑っていて、その目から上手く逃れるというもの。
完全に再放送としか思えないが、少しは話に工夫があるのだろうか…。