《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

電車で身体を触られても、お風呂で身体を洗われてもイケメン無罪の少女漫画的 価値観。

花になれっ! 4 (マーガレットコミックスDIGITAL)
宮城 理子(みやぎ りこ)
花になれっ!(はなになれっ!)
第04巻評価:★☆(3点)
 総合評価:★☆(3点)
 

花音になりすまし、映画に出演する事になったもも。先輩アイドルの蜂巣にちょっかいを出されたり、共演女優のあげはに恋されたり、トラブル続出! しかも、酒に酔って蜂巣の前で服を脱いでしまったももは「花音が女」だと勘違いされて大ピンチに…!?

簡潔完結感想文

  • 恋愛で新展開は望めないから、エロ描写で作品の価値を維持する間違った方向性に進む。
  • 映画撮影の次はモデルデビュー。女の子の憧れの職業に就けるしイケメンからモテモテ☆
  • 婚約中でありながら他の男性とキスするヒロインは、彼氏のキスは許さないダブスタ女。

ロインと作者の暴走に理解が及ばなくなる 4巻(文庫版)。

酷い。
痴漢プレイにエステプレイ、恋人でもない男から一方的に凌辱される(そして快感を覚える)展開が跋扈(ばっこ)している。
これまでは どうにか理由をつけてヒロインが新キャラのイケメンと知り合うようにさせてきたが、この『4巻』からは、ヒロインはプロポーズを受けて婚約中なのに、他の男性になびく尻軽女に成り果てた。
加えてエピソード的に同じことの繰り返しであることを隠すように、エロ描写に力を入れていく。やることないから、エロに注力する。これは本書と並んで私が最低評価にしている水波風南さん『レンアイ至上主義』と全く同じ構造である。前半で2人は交際し、本来の少女漫画的には描くべき内容は終わっているにもかかわらず、人気が出たので連載が延長し、そのせいでヒロインが男性から下半身を触れられまくるという、男性誌かと見紛うような展開が続く。特に本書では、ヒロインが その快楽に身を委ねるような描写があり、淫乱な印象を与え、前半で描いてきたヒーローとの恋愛に疑問符が出始める。
そして最も最悪なのが、ヒーローとの距離のの させ方。些細なことで距離が生まれるようにして、ヒーローの元を去ったかと思ったら、一定数の連載回数が稼げたと作者が判断したら、あっという間に元通りにする展開には唖然とした。あれだけヒーローを拒絶していたヒロインが、簡単に「いやなこと をナシにして」しまうのだ。今回の仲直りの方法を読んで、いよいよ本書の茶番が極まった感じがした。恋をしているから些細なことが気になっていたはずなのに、最後にヒロイン自身がリセット機能を駆使して、自分の不快な気持ちを勝手に忘却し始めたら終わりである。ヒーローとの喧嘩も彼らの交際のマンネリ化を防ぐためのプレイの一種のように見えてくる。
これだけ作品を作品自体が貶めるような展開だが、まだ全体の半分も進んでいない。次はどんなイケメンが、どんなプレイで魅せてくれるのか、そういう作者の悪い方向での努力を見届けるぐらいしか楽しみがなくなった。

今回は新キャライケメンは1人だけ。それだけ話が無駄に長く、そしてエロい描写に力を入れる一方で中身の無かった話だということが分かる。

『4巻』終了時点。
イケメン枠:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ・アラジン・蜂巣・藤宮(計10人 前巻比+1)
キス:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ・アラジン・藤宮(計9人 前巻比+1)
裸を見られる:矢野・花音・花神・藤宮(計4人 前巻比+1)
男性からの愛撫:梅吉・花神・蘭丸・春日部・プラチナ・アラブの偉い王様・藤宮(計7人 前巻比+1)

ヒロインが嫌がっていたら ただの性的暴行だし、嫌がらなければ ただの淫乱に見える二律背反。

初は美少年芸能人の花音(かのん)と入れ替わっての映画撮影編後半から。
お酒を飲んだ花音(もも)は自分で服を脱いで女性だとバレてしまったり、女性の部屋に入って その気にさせてしまったり自分で自分の首を絞める。そしてピンチになって恋人兼マネージャー役の蘭丸(らんまる)が登場するだけ。

この撮影で知り合った あげは が蘭丸から「とりかえばや」の真相を聞いても怒らないのは、彼女が嫌な人間にならないようにして、今後 もも の友人役でいられるようにするためか。もも の男装がバレるピンチの切り抜け方は、想像通り。

作中時間としては『4巻』で蘭丸と出会ってから4か月~半年弱が経過したみたいだ。
ここから夏休み中に知り合った すみれ と あげは が友人枠として登場する。女友達は恋バナが大好きで、もも たちカップルの相談に乗る振りをして不安にさせる。あらぬ疑惑を吹き込まれた もも は、自分に手を出さない蘭丸が浮気していると勘繰って、彼女たちの間に隙間が生まれることが次の章が始まる合図となる。
ちなみに蘭丸が手を出さないのは、結婚まで手を出さないという彼の信念と、結局、手を出した時点で もも の特殊性が失われて、作品が終了してしまうからに他ならないだろう。


能界での映画撮影の次は、パリでモデルとしてデビューする お話。
数多くのイケメン逆ハーレム状態に加えて、世界旅行、女性(というより少女未満の子)が憧れる職業体験と「りぼん」掲載漫画みたいだ(あちらでは性的描写は一切できないだろうけど)。

まず出会うのが蘭丸の元カノ・ダリア。もも はダリアのことを異様に気にする。元カノ問題は、通常の恋愛なら根深い問題だが、本書の場合、もも が不安になる。ダリアもまた「花人(はなびと)」で、スタイルは抜群だが、全身を整形している設定で、この時点で少女漫画的には敵ではないだろう。

案の定、蘭丸と距離が出来て、新イケメンと お近づきになるだけなのだ。
もも の前に現れるのは新イケメン枠・デザイナーの藤宮 水人(ふじみや みなと)。花人でもある彼の香りに ももはキスをして、モデル修行を通して距離を縮める。この話から、もうエロでしか読者を釣れないと観念したのか、もも が一層 敏感で淫乱な女性として描かれる。

藤宮と近づいて、蘭丸とダリアが かけおち したという話を聞き、もも の蘭丸への不信感は上昇。更に藤宮へ傾倒していく。どれだけ試練を乗り越えても蘭丸を簡単に信じられなくなるのは いつものパターン。プロポーズされても不安は消えない。

もも もダリアが蘭丸に近づくことを拒否しないから自分を苦しめる。自分を苦しめる要素を受け入れれば心が広く見えるし、それに耐えることで悲劇のヒロインになって読者の人気も失わない。さらにライバルに対して非戦を貫くことによって自分だけは純潔でいられる。精神的苦痛が自分を輝かせることを もも は知っている。


ただし あげは に そそのかされて、いい男を つかまえにいくのは自分の品格を貶める行動である。蘭丸側はともかく、もも は本当に蘭丸が好きで結婚したいと思っているのか疑うばかりである。
結局もも は蘭丸を見返すのではなくダイアに勝つために藤宮を頼る。こうやって努力をすることで間接的にライバルに痛手を与える。それがヒロインの正統な戦い方だ。

しかし藤宮は「足さばきを美しくするレッスン」と称してミニスカート + ノーパンで もも を街に繰り出させる。彼女は満員電車に乗せられ、痴漢に遭う。藤宮が助けてくれるが、今度は藤宮が痴漢まがいのことをして もも を困らせる。
エステと称して身体を まさぐらされるし、いつの間にか一緒に お風呂に入り風俗まがいの洗体マッサージをされるという謎展開。女性側は性的な快楽を受ける一方、男性はデニムを穿いて お風呂に入っているという謎の規制がある。

少女漫画のエロいイケメンが、中年オヤジ的な発想で女性に性的行為(主に電車内での痴漢など周囲の目がある中での恥辱)をするのは なぜなんだろう。そして これは世間の女性が根絶を願うようなことを少女漫画が美化して描いているようにも見える。カップルが電車内で発情するのも眉を顰めるが、彼氏でもない男性(イケメン限定)に身体を辱められる展開を美化しいることは理解できない。

蘭丸は もも を見つけるが、彼女が藤宮と腕を組んで歩き、そしてキスをしている場面を目撃してしまう。もも の方から見れば、この行動には理由があるのだが、完全に浮気にしか見えないし、行動に理由があるのは蘭丸側のダリアへの行動も同じだろう。

長い時間を共にすることで、どうやら藤宮は昔ダリアをモデルとして大切に育てていたが、蘭丸に横取りされる形になり、彼への復讐のために もも に近づいたということが分かる。彼らのゴタゴタに、もも たちカップルが巻き込まれた形になっている。


デルの集まりの席で、もも は蘭丸と再会するが、まだ自分に自信が足りないと思っている もも は彼を拒絶。藤宮のもとで自信をつけるのだが、彼に従順な様子を見せるために、蘭丸の前で藤宮とのキスを受け入れる。
一方で蘭丸が即席のショーの中でダリアとキスするのは見たくない。こういうダブルスタンダードの中で生きるのが少女漫画ヒロインなのだ。

ヒロインの価値を作品が下げる展開が続く。ヒロインの顔をロリ系したのは思考能力が低下した表現??

蘭丸だけは恋人に一途で、ショーの最中なのにダリアを拒み、もも のもとに駆け寄り、奪い去る。蘭丸の方は決して浮気をしないが、もも は藤宮を拒まないというビッチな展開である。熱心に読んでいた読者は蘭丸が格好良ければいいのだろうか(その割に読者人気はパッとしないらしいからなぁ…)。

藤宮は再び、自分が水を注ぎ育ててきた「花」を蘭丸に横取りされた形になった。
これで2組のカップルのゴタゴタは終わるかと思いきや、まだ話は続き、もも は「ほかの女のひととキスした くちびるで… あたしに さわらないで…」と蘭丸の愛を受け入れない。ほかの男とキスしまくっている もも には その台詞を言う権利はないと思うが…。

もも は藤宮にも別れを告げ、新しい恋に歩き出す自信を持つ。蘭丸のもとに戻らないのなら何のための藤宮だったのか、彼の存在意義が意味不明になる。
だが蘭丸の家に戻る訳にはいかない もも は行く当てがない(学校はどうしたんだよ)。
その窮地を救うのは やっぱり蘭丸。出会った場所で もも を見つけ、彼女に口付けをして その眠りを覚まし、悲しみを払拭する。そして もう一度 出会い直す2人は「いやなこと みんな ナシにして まっ白な気持ちで この恋をはじめ」る…。

これぞ茶番劇!!
もも の考えが ちっとも分からない。
少女漫画特有のリセット機能を活用してなにもなかったように力技を使った。もう この漫画には何も期待できないだろう。

そうして、このところ忘れ去られていた もも の母親問題を再び匂わす。これも どうなることやら…。