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少女漫画と小説の感想ブログです

恋愛の決着、迷惑なヒロインの特殊能力の消去方法、早くも本編終了の準備は整った!

花になれっ! 2 (マーガレットコミックスDIGITAL)
宮城 理子(みやぎ りこ)
花になれっ!(はなになれっ!)
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★☆(3点)
 

ナゾの男・梅吉に誘拐されたもも。その陰には、大きな組織が関わっているようで…? 連れ去られた先は、大財閥・花神グループの大邸宅! 後継者である百合矢から、ももは自分が人のカタチをした花…女神の香りを持つ伝説の「純系花人」であると聞かされ…!?

簡潔完結感想文

  • ヒロインを利用する悪いイケメンが登場して ようやくヒーローの良さが見える。底辺の二択。
  • 学校内の四角関係は自然消滅。恋愛に決着がついた上、特殊能力の消し方が分かり本編終了。
  • この頃は純系花人や、彼女を求める三大名花などの設定があり、話に流れがある分 まだまし。

(あご)男同士の決闘から目が離せない 2巻(文庫版)。

『1巻』の感想でも書きましたが、序盤の男性たちは顎が長い。その上、下唇がぽってり描かれているから、唇が前に突き出して見えて、イケメンが しゃくれているように見えてしまうのが気になってしまう。

そんな… うそでしょう…っ!? 首も顎も長すぎる。その尖り過ぎた顎を武器にして決闘するのかしら!?

そして『2巻』はヒロイン・もも の拉致から始まって拉致で終わる。「純系花人(じゅんけいはなびと)」という花の香りをまとう「花人」の世界でも稀な人間であるために、世界中から狙われることになる もも。特に世界で3つの家が名乗る「三大名花(さんだいめいか)」に組織的に狙われることで もも は常に巻き込まれヒロインで い続ける。

イケメン新キャラに出会う舞台が変わるだけでパターンは全て同じの本書。『2巻』でもイケメン枠が3人増え、早くも計7人となった。

『2巻』終了時点。
イケメン枠:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ(計7人 前巻比+3)
キス:蘭丸・矢野・花音・梅吉・花神・春日部・プラチナ(計7人 前巻比+3)
裸を見られる:矢野・花音・花神(計3人 前巻比+1)
男性からの愛撫:梅吉・花神・蘭丸・春日部・プラチナ(計5人 前巻比+4)

最も読者の関心が高かったであろう少女漫画の大事な要素である三角関係は突然 終了が宣言されるし、早くもマンネリを見せる本書であるが、この頃はまだまだ後半に比べれば、大きな流れがあり、そしてヒロイン・もも が父母の影を追うことが、自分のルーツを辿る旅になるので読んでいられる。スピード感もあるし、謎が謎を呼ぶ展開と言えなくもない。問題は この後である。やがて専門用語など使われなくなり、ただ同じことが繰り返される読者が頭を使う必要のない展開が用意され、読めば読むほど頭が悪くなったと感じる内容に変質していく…。

そして『2巻』では上記の通り三角関係が終わり、もも と恋人・蘭丸(らんまる)の交際に障害がなくなった上、もも の特殊能力で、世界中から狙われる「香り」の消し方まで判明する。要するに もう いつでも物語を畳める準備が整えられているのだ。実際『2巻』まで読めば、その次に最終巻を読んでも話は十分に分かるだろう。問題は知らないキャラがいたりするぐらいで、純系花人の謎などは無かったことになるんだから…(絶句)

まだ この時点では本書から面白そうな漫画の香りが漂っている。だが その香りも やがて消えてしまう。花の命は短いのだ。


吉(うめきち)に誘拐された もも だったが、梅吉は組織の飼い犬に過ぎず もも は男たちに別の場所に連れていかれてしまう…。

遊園地に連れていかれた もも だったが自力で脱出を図り、蘭丸と無事合流。離れ離れになれば仲直りをするのが2人のルーティン。蘭丸は もも に大人げない態度を謝罪し、もも の方は三角関係のライバルである咲間(さくま)先輩の件が解決していないのに「もう いいや…」と蘭丸のキスを受け入れる。本当に目の前にいる男に流されるがままのヒロインである。

だが追手が迫り、2人は再び離れ離れに。そして蘭丸がいないと新イケメンが登場するのが本書のルール。もも は新イケメンの言いなりに別の場所に連れていかれてしまい、なすがままにキスをされる…(またか)。

新キャラの名は花神 百合矢(かがみ ゆりや)。花神は日本でも有数の大財閥・花神グループの(実質上の)頂点に立つ男。
その屋敷で もも は「フローラ」。ローマ神話の花の女神の彫像を見せられる。そのモデルは もも の母親だという。
花神が語るには「むかし この世で最も美しい花が咲いた。その花は美しい乙女の姿をしていて ある時 ひとりの若者と恋に落ち、ふたりの子供たちは世界中に広がった…」。それが花人の先祖だという。

もも たち母娘は女神の香りを持つ伝説の「純系花人」だという。もも の価値のインフレが止まらないが、同時に これは、今後もも が男性たちに言い寄られる理由が簡単に出来たということでもある。この不自然な設定が、ヒロイン総モテへの不自然を帳消しにするのだ。


神に愛撫されながらも もも が思い出すのは蘭丸。「あんな男の どこがいい」という読者と花神の問いに対し、「蘭丸くんは あたしが ひとりぼっちの時 手をさしのべてくれた」という。運命と言えば運命なのだろうが、順番の問題、という気もする。蘭丸の良さが全く出ていないのが本書の大きな問題だろう。第一、もも が蘭丸を思い出すのはピンチの時だけで、日常では すれ違いが多い。ただし花神を冷徹な人間に描くことで、蘭丸の温かさがよく分かる。

蘭丸は花神の屋敷に到着するが、やがて花神に見つかり、2人は決闘することに。甲乙つけがたい2人の男性が自分を巡って決闘する。これは乙女の夢?

花神が狙うのは純系花人だけがもつという幻の香り。どんな男の心もとろかすという甘い媚薬が、もも が持つ「女神の香り」らしい。その香りは、清らかなカラダでいるうちだけ、男を知ったとたんに消えてしまうもの。これは本書の逆ハーレム状態は いつでも終わらせられる、ということでもあろう。物語を畳む準備が早くも整い、あとはどれだけ延命できるかが本書の目的になってしまった。

蘭丸は花神が持つ その情報を知らなかった。ということは、蘭丸は純系花人というブランドに惹かれた訳ではないという証明にもなる。やはり順番的な問題になるが蘭丸は もも が開花する前から出会った人で、純粋に彼女の素質に惚れたと言える。そういう意味では蘭丸だけが特別だと言えるか。

剣を交える決闘の最中、折れた刃先が もも へ飛ぶ。蘭丸は その刃から もも を守るために自分を犠牲にする(どうにも瞬間移動っぽいが)。その自己犠牲の精神、そして蘭丸の名を必死に呼ぶ もも の姿を見て、花神は勝負をあずける。そして世界中の者たちが もも の香りを求めて動き出していると忠告するのだった…。
こうして物語の舞台は世界になることが予言された。


校に戻った もも は蘭丸と親密さを隠さない。男性の間を行ったり来たりする もも に女性たちの悪意が向くのも当然か。もも も相当な尻軽女であることは事実なのだが、周囲を悪者にすることで、それに屈しない もも だけが綺麗な精神の持ち主かのように演出するのが狡猾だ。

そして久し振りに咲間先輩と交流し、彼女が蘭丸の恋人じゃないと知らされる。咲間が好きだった人にふられ、自殺しようとしていた時に助けてくれたのが幼なじみの蘭丸だったという。絶望の中にいた咲間は やさしくしてくれれば だれでもよかった。これは以前、咲間が もも を非難した言葉。だけど それは本人のことを語っていた。
こうして矢野(やの)も含めて四角関係にまで膨らんだ関係は全て解消する。もう少女漫画的には、何もすることがなくなる。あとは花に寄ってくるハエどもをヒーローが蹴散らすだけになる。

そして咲間の件を考えると、蘭丸は困っている女性を見過ごせなくて、これからも同じように自分を差し出して、その女性を救いそうな気がしてならない。優しいって時に残酷だ。まぁ どちらも目の前の人に夢中になるような浮気性の気質を持つから、物語は延々と続くのだけど…。


もも が次に出会うイケメンも出会った瞬間にキスをしてくるような男で、もも は その人の香りを知っていると感じる。
10代にしか見えなかった その男性だが、高校の臨時新任教師として再び もも の前に現れた。名前は春日部 花織(かすかべ かおる)28歳。例によって新キャラに急接近し、男性を拒絶しない もも だが、その理由を春日部は もも と血が繋がっているからだと説明する。

母の秘密に続いて、父親候補が現れる。そして春日部は学校に現れた花音(かのん)を見て、花音の母親の名前を呼ぶ。
かつて花音は自分が死亡した母と そっくりだから、芸能人になってメディアに出れば父は自分を見つけられるはずと言っていた。そして その仮定から言うと、もも と花音は姉弟ということになるが…⁉

春日部の自宅への呼び出しに ホイホイと従う もも。このところ新キャラの男性が血縁問題を出して、その餌に もも が食いつく流れを用意してにしているが、父母の記憶も無いような もも がそれほど知りたいかというと そうは思えない。

雨に濡れてきた もも は春日部に されるがままに服を脱がされ、そして身体を触られていく。春日部は彼女に触れながら、もも の母親の話を語る。その口ぶりから どうやら本当に彼女の母と接点はあるらしいが…。

血の繋がりのある同士のスキンシップに嫌悪を感じた もも は春日部のもとから逃げ出すが、その帰路で花音に会う。花音は春日部の香りを漂わす もも を前に、いつもより乱暴にキスをし、そして泣く。彼の心を痛めるのは、自分が心から好きになった もも が姉かもしれないという現実だった…。

芸能界で輝く彼は自分の実の弟!? 世間に秘密の恋が禁断の恋になる話で長編が描けそうだ。

もも を助けに来た蘭丸、そして春日部のもとに事実を確かめに来た もも と花音は春日部から事実を聞く。

もも の母親は春日部の姉。つまり春日部は もも の叔父で、花音は従兄弟となる。春日部は自分の姉を姉以上に想っていたが、花神の父親と彼女の婚約が決まってしまった。その婚約を前に、純系花人を求める3人の求婚者が競ったという。ネタ元は かぐや姫か。

純系花人は もも の母親や春日部の家計の女性だけが持つ資質。しかも一族では女性はレアな存在で もも の母親も300年ぶりの女性。純系花人は数百年に一度しか現れない貴重な存在。もも は それだけ価値が高いという。

春日部と姉は、花神からの婚約から逃げ、その途中で姉だけが崖から落ちたという。春日部は姉を失い、その生死すら分からなかったが、この逃避行後に姉は もも を生んでいることから彼女が生きていた証拠になる。

ちなみに春日部が花音の母と知り合うのは、姉弟の逃亡の前らしい。花音の母が妊娠していることを知らせないまま春日部の前から姿を消したという。ってか、現在28歳の春日部が花音の父親になったのって何歳なんだよ。色々と計算が合わない気がしてならない。

花音の父親捜しは終わり、彼は春日部と同居を始める。叔父である春日部は戦線を離脱したが、従兄弟である花音は法的にも問題なく もも へのアタックを止めない。


もなく、花神から母親に会わせるという内容の手紙とロンドン行きの航空券が送られる。
そこで もも は蘭丸に黙って、花神の招待を受ける。動機としては母を知ることが、自分という存在を知ることに繋がると考えるから。序盤は もも の自分探しの物語とも言えなくもない。

花神が もも をロンドンへ呼んだのは、10年に一度の花人たちのパーティーがあるから。そこに もも の母親が現れる、かもしれないという。最初から随分と可能性が低いことを示唆する物言いである。

その主催者は「三大名花」の一つで、三代目いかとは、イギリス、日本、そしてアラブの3つの家柄で、花人の中でも富と実力 香りの高貴さ特に優れているという。先の春日部の話に出てきた、もも の母親の3人の求婚者とは、この三大名花であろう。

花神がパーティーで もも を大々的に宣伝したため、もも の その香りと蜜は招待客に狙われることになる。
そのピンチに現れるのが プラチナというイケメン。彼は花神に扇動される招待客の気持ちを一瞬にして削ぎ、もも の窮地を救う。I・Q200の超天才だが大の女ギライで変人だという。そしてイギリスの三大名花の後継者で、花神と同格の人間。


ンドンに来たが母には会えず、寂しさの募る もも は蘭丸に会いに日本に戻る決意をする。屋敷から出る際に再び出会うのがプラチナ。印象的な出会い方と その後の再会は、花音の時から続く全く同じ手法である。

噴水の中で意識を失くし、体温が下がり、呼吸が停止している(!)プラチナに もも は人工呼吸を施す。人工呼吸とはいえ もも が唇を自分から近づけたのはプラチナが初めてか。そして この仮死状態も花人の特徴なのだろう。彼らならロミオとジュリエットごっこも実際に出来るかもしれない(そういうパロディがあっても楽しかったかも)。
意識が戻ったプラチナは純系花人の蜜を欲し、そして もも はプラチナの放つ香りに気持ちが高揚し、人工呼吸は熱いキスとなる。これまでのイケメン枠7人に対して7人とキスする100%キスをするヒロイン。本書におけるキスの価値は限りなく低い。

ロンドンに来て分かったのは、花神と蘭丸の明確な違い。花神は純系花人として もも を利用しようとするだけ。プラチナは花神を快く思わない彼女の思いを汲み取り、もも を日本に帰国させようとしてくれる。

ちょっとした親切で もも は その人へのガードが緩くなるのも特徴。その緩んだ空気を察したのか、プラチナは本当に もも が自分の苦手な女性かを確かめるために身体検査という名のセクハラを始める。

その魔の手から逃げ出して、もも は蘭丸に助けを求めるが、もも を追いかけて蘭丸が乗る飛行機は ハイジャックされてしまい…⁉

そして もも もプラチナの趣味に付き合っている最中に拉致されて…。『1巻』ラストでも拉致、『2巻』ラストも拉致。ネタ枯渇の予兆がはやくも見えるようだ。