《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

同士でいるために恋愛感情を削ぎ落しす言葉のナイフで、自分も彼も傷ついていく(朱里)

思い、思われ、ふり、ふられ 6 (マーガレットコミックスDIGITAL)
咲坂 伊緒(さきさか いお)
思い、思われ、ふり、ふられ(おもい、おもわれ、ふり、ふられ)
第06巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

気持ちはお互いを向いているのに、すれ違ってしまう朱里と和臣。朱里は和臣への想いを吹っ切ろうとしますが…。一方、由奈を好きと気づいた理央。でも、我妻も由奈を好きなのではと気になってしまいます。文化祭の準備が進む中、みんなの気持ちが加速する第6巻!

簡潔完結感想文

  • 友人と同じ人を好きになってしまう男性たち。頭一つ抜け出すための努力が続く。
  • 理央のこと、元カレのこと、許容量オーバ―の和臣は抑制していた本能的行動に出る。
  • 文化祭開幕。ちょっとしたピンチでも絵本の中の王子様が目の前に現れてくれた。

愛のワチャワチャと文化祭の非日常のワチャワチャがリンクする 6巻。

同じ風景でも、画角など撮り方によって全く違う景色のように見える。
これは文化祭の予行で、学校内でカメラを構える朱里(あかり)と和臣(かずおみ)の撮った写真の違い。
和臣の写真が良く見えるのは、彼は映画撮影について勉強しており、
風景の切り取り方に知識を有しているからであろう。

ただし、そんな和臣も恋愛問題においては、自分のバイアスによって物の見方を曇らせている。
親友となった理央(りお)との関係を壊さないために、
和臣は、理央が好きだと思い込んでいる朱里への想いを鎮火させようと必死。
自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先するヒロインのような行動を取り続けることが恋愛模様をカオスにしていく。
どうしても恋愛問題となると写真撮影のように新しい視点を持てない。

修行僧のように煩悩を消滅させようと励んでいた和臣だが、
彼が悟ったのは、どうしても彼女への気持ちは消えることはない、ということ。

だから彼は正々堂々と勝負する。
例え友人であっても、どちらかが傷ついても、それでも伝えない気持ちがあることに気づく。


そして その状況は理央についても同じ。
彼もまた自分が一面的にしか見ていなかった女性・由奈(ゆな)への気持ちを明確にしていく。

理央も友人・我妻(あがつま)もまた由奈を好きになったことを知るが、
少しの逡巡の後、理央も自分に絶対 譲れない一線があることを認める。
理央と我妻の決戦は文化祭期間中に起きる。
非日常のワクワクに加え、
男性たちの静かな戦いの様子が描かれる文化祭は、少女漫画読者にとってキュンの連続である。

男性たちが奮起する『6巻』です。


盤は和臣の すれ違いコントが続く。
理央が朱里を好きだという古い情報を未だに信じている和臣が、
訳あって部屋にいる朱里と抜け駆けしていると思われないように彼女の存在を隠蔽を試みる。

この後の様子が お互いに勘違いをした上でのコントである。

和臣の自室の外、廊下の窓から和臣を呼ぶ理央。
部屋から顔を出したのは、息が上がり顔を上気させる裸の和臣。

更には理央は和臣のベッドの上に、布団にくるまれた誰かの足を発見してしまう。
これで和臣が情事の最中であると誤解した理央は、謝罪してその場を立ち去る。

和臣の不純異性交遊疑惑で明らかになったのは理央の清純さ。そっちの方が意外だよ!

和臣は何とか乗り切ったと思っているが、
この事件、なかなか理央に深い傷を負わせていた。

というのも、理央は和臣が先に「大人」になってしまったという事実に凹んでいた。
確かに状況証拠では そう思うのも仕方がない。
特に本書の男たちは相手を思い遣るあまり、事実確認をしないから…。

でも、この事件で読者にとって驚きだったのは、このラッキースケベ的なハプニングではなく、
理央が自分は まだ と白状したことだろう。

朱里に告白が出来なかった鬱憤から恋愛ヤンキーとなった理央だが、
どうやら来るもの拒まずの対応をしていた割に、純情は守り切っていたようだ。

さすが後天的な少女漫画ヒーローキャラである。
少女漫画ヒーローは数えられないほどの経験をしてから遊びが治まるが、
理央の場合は、気を紛らわすだけの交際で、
実際に遊びと割り切って行動するにはピュア過ぎたのだろう。

咲坂作品はヒロインだけでなく、ヒーローの条件も純潔なのだろうか。
『アオハライド』の洸(こう)はともかく、『ストロボ・エッジ』の蓮(れん)くん は当てはまるか微妙だけど。


臣からすれば、理央が好きな女性(と和臣が思い込んでいる)=朱里が自分の部屋にいるなんて絶対、見せられない事。
誰に対しても自分の気持ちを隠し通すという和臣の狙いからも外れる。
まさか これが別の意味で理央を凹ますとは和臣も思っていないだろう。
理央の朱里へのキス事件といい、男たちは無自覚に友人を傷つけている。

朱里は、自分の好きなことを公言できない雰囲気の和臣の家庭の事情に少し触れ、
自分と似たところのある彼と、家庭内での「演技」について、
気兼ねなく話せる関係になるために、自分の中の和臣への気持ちを消そうとする。

だが、消そうと努力するあまり、言葉は強くなり、
自分の和臣への想いが まるで軽いもの、一時的なものということが変に強調されてしまった。
これは言った朱里本人も、そして言われた和臣には傷つく。

こうして全てを なかったことにしようとする努力が空回りしてしまう。


央は朱里への気持ちを完全に手放したことを由奈に報告する。

そうして気持ちに区切りを付けて、理央は由奈に告白する態勢を整えるが、
理央も、友人・我妻と同じ人を好きになってしまう、という悩みを抱える。
これは和臣が先に抱えている悩みである(誤解だが)。
演技やライバルなど、理央と和臣は恋愛の経緯に似た部分が多い。

だが、何事も真摯に対応したい理央は、
由奈に告白する前に、友人に自分の想いを伝える。
ライバルがいるから、その人に負けない自分になりたいという成長意識が芽生えるのだ。


朱里の方は、文化祭に前の学校の友人と元カレが来ることになり混戦模様。

だが朱里は、文化祭への姿勢においても、恋愛においても、
和臣の前で、テキトーキャラを演じてしまう。

そうすることが彼の心の負担を軽くすると信じての行動であるが、
かえって想いを抱えたまま身動きが取れない和臣に取り残された感じを増させるだけ。
気遣いがかえって傷口に塩を塗っている。

そうしてメタメタになった和臣のメンタルは、彼らしくない行動に走らせる。

これもまた理央と二重写しの行動だろう。
あの雨の日、理央のストレスが限界になって暴走してキスをしてしまったように(『3巻』)、
和臣もまた、自分の恋愛だけが辛いという思い込みがストレスになって、行動に出てしまった。

由奈と朱里は性格的に似てないけれど友人になったが、
理央と和臣は精神的に似た部分が多いように思う。
この男性2人が本当にライバルになったら、
お互いをとことん傷つけて、友情は修復不可能だったかもしれない。
少女漫画の男性キャラは女性よりも純情で、気持ちの切り替えが苦手ですからね。


の行動について、文化祭準備中、和臣は朱里に謝罪する。

朱里にとって「全然 嬉しいキスじゃなかった…」が、悲しみや怒りを覚えるものでもなかった。

朱里の方も自分が あまりにも自分の気持ちを軽んじるような発言が多かったことを謝罪し、
あの夏祭りの告白も「ちゃんと本当に好きだった」ということを初めて言葉にする。
その上で、友達として これからも話していきたいという希望を伝える。

和臣にとっては、「本当に好きだった」という言葉は意外。

確かに、そのぐらい夏祭りの朱里の告白は卑怯だった。
自分の気持ちを伝えずに、状況証拠を固めて、相手から動くように仕向けた。

でも朱里の言葉は過去形であり、理央のこともあるから、自分は身を引くのが適当だと和臣は考える。
だが、その時の彼は「鼻をこすって」いる…。

由奈が下を向いて生きていたように、
和臣はずっと鼻をこすって生きてきたのだろう。
朱里との出会い、理央への想いで由奈が変われたように、
和臣が自分の思いを素直に言える日は訪れるのだろうか。

一番 老成しているようで、一番 成長が遅い大器晩成型の和臣。
まだまだ成長の機会はある、はず。


化祭当日(2日間の1日目)、由奈は朱里に髪を巻いてもらう。

本書において髪を巻いた由奈はある意味で無敵。
由奈にこれっぽちも興味のない和臣を除き、大半の男が褒めてくれるから。

由奈は理央のクラスの出し物、コスプレ生徒探しに参加するが、
理央は自分のコスプレを見られたくなくて息を潜めている。
だが、由奈がちょっとした怪我をして声を出すことで、ヒーローは顔を出す。

さすがヒーロー。
しかも理央のコスプレは王子様。
由奈がずっと夢見てきた絵本の中の、初恋の王子様が急に目の前に現れた!

由奈のためなら自分の恥辱など宇宙へポーイ! 由奈が褒めれば進んで裸の王様にもなるだろう。

理央は恥ずかしがるが、由奈にとっては どストライクな格好。
由奈が王子様・理央を見とれるように、理央も由奈の髪型を褒めてくれる。
この髪型の勝率10割じゃないでしょうか。

好きな人の言葉は、どんな逆境も はね返す。
理央も王子様コスプレに恥ずかしがる自分を捨て、何を言われても堂々と出来るようになった。


して文化祭2日目。
この学校の後夜祭には、
「男子が好きな女子のとこ行って フォークダンスのパートナーに誘う」「告白イベント的なのがある」らしい。
理央と我妻にとって、そこがライバルとの対決時間のタイムリミット。

1日目には由奈と理央との交流があったが、
2日目には由奈と我妻の交流が始まる。

いわゆる由奈のモテ期到来だが、
今の由奈は男性からモテても全く不思議ではない。
そういう彼女の変化をしっかりと描いてきたから説得力がある。

とはいえ由奈にとっては不意打ちの男性たちからの好意。
彼女にとって初めてであろう他者からの好意に、由奈はどう対応するのだろうか。


朱里は持ち前の生真面目さを発揮して、クラス内での自分の担当をこなす。
そんな姿が和臣の興味を惹く。
和臣は朝から煩悩を削ぎ落とすランニングに励むが、
ランニングをしても やっぱり朱里への好意は消えることがない。

そんな自分に気づいたから、無造作に朱里に触れる前に、自分の気持ちに正直になろうとする。
理央を呼び出して、自分の気持ちを正直に伝える。
読者からすれば、ようやく誤解が解ける、と安堵する場面だが、
和臣にとっては友人にライバル宣言をするための緊張の一瞬だったに違いない。

これが和臣が自身の力で動いた第一歩となるだろう。
アオハライド』の双葉(ふたば)の言葉ではないが、
いつだって新しいことを始める時には、それまで以上の勇気がいる。

でもきっと一歩を踏み出せば、人間の身体は歩き続けられるように出来ているはずだ。
変わり始めた和臣から、ますます目が離せないよ!

誤解は解け、ここで初めて、男性たちの間でお互い誰が好きかが分かるようになった。
これからは由奈と朱里のように、男性同士の恋バナが始まると思うと、ワクワクが止まらない!