《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

作者の手にかかれば、部室や私室などの限定空間もワンシチュエーションラブコメの舞台に。

GET LOVE!!(4) (フラワーコミックス)
池山田 剛(いけやまだ ごう)
GET LOVE!! ~フィールドの王子さま~
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

このごろキレイになった美樹にときめく先輩急増!?カゼで学校を休んだ美樹の所へ男達が次々押しかけて、相楽も気が気じゃない!他、史上最高にかわいいカッコの相楽くんが登場する卒業式編と、ラブラブ誕生日デート編収録。●収録作品/GETLOVE!!~フィールドの王子さま~GAME.12~16/バレンタインなんかコワくないっ!?

簡潔完結感想文

  • 相楽が格好良いシーンと同等以上に美樹の愛されヒロインシーンが満載。
  • 2人の関係は動かないから新キャラ祭りでサッカー部に新しい風を送り込む。
  • 男って ちょっと優しくするとすぐに勘違いするんだから。魔性の女・美樹。

性の夢を叶えているから支持される 4巻。

少年漫画のラブコメライトノベルに美少女キャラが わんさか出てくるように、
少女漫画もイケメンキャラが多いほど読者の承認欲求は満たされるのだろう。

本書におけるイケメンキャラは増えるばかり。
『1巻』から登場していた3年生の先輩たちは今回、学校を卒業する。
イケメンサッカー部員という肩書に加えて、卒業後は1流大学の学生になるという付加価値まで付ける。

『3巻』では3年生が引退した後の新体制でキャラが増えたし、
ヒーロー・相楽(さがら)の弟も登場して、1巻につき1人以上のキャラが増えていく。
そして今回のラストに登場するのは、様々な面で相楽のライバルとなる穂高(ほだか)という編入生。
彼の登場によって恋にも波乱が巻き起こり、物語に緊張感が生まれる。

そして この波乱、更には20名近いキャラたちに愛される唯一の女性がヒロインの美樹(みき)である。
天然で魔性の彼女の手からは誰も逃れられないらしい。
こうして20人のイケメンキャラに お気に入りを見つけ出せば、
その人が読者の分身である美樹に優しくしてくれるから読者は満足感を得られる。
本書に女性のライバルがいないのも、読者に嫌な思いをさせないためではないか。

ずっと言い続けているが美樹は「マドンナ」なのである。
彼氏がいても、部内の たった一人の女神として信奉される存在。

だから本書の中でモブ女生徒が どんなにサッカー部のマネージャーを志望しても、
その願いは叶えられないのである。
美樹の唯一性を壊すことは本書では決して許されない。

メインの読者である小中学生は気づかない、彼女たちを満足させるシステムは常に発動しているのだ。


回、相楽から風邪を口移しでもらった美樹の風邪回。

相楽をはじめ、部員たちが次々に美樹の家に見舞いにくるコメディ回となっている。
今回も、以前の部室回と同じように、ほぼワンシチュエーションコメディである。
限定された空間で ちゃんと面白くできる手腕は流石。
ハチャメチャな展開に、んなバカな、とツッコミを入れつつ楽しく読むのが正解だろう。

そして少々のエロスに加え、美樹のマドンナ性が際立つ1話。
こういうことに参加しなさそうなGKの加持(かじ)を動かす理由をちゃんと作っている点が好ましい。

舞台が限定されていると作者のコメディセンスが一層 光る。良い意味で箍が外れている。

よいよ卒業となる卒業生の「送行会」で、サッカー部はシンデレラの劇をすることになった。
キャストは、当然、美樹がシンデレラ。
王子役はキャプテンの渋谷(しぶや)で、相楽は大道具。
劇とはいえ相楽は面白くない。
劇中の台詞「愛している」は相楽が美樹に言えない言葉だから。

だが当日、美樹は重い生理痛に悩まされ、相楽が代役でシンデレラを務めることになる。
前回で風邪を引いてしまったからか生理痛を病欠の理由にするとは思わなかった。

相楽が代役をすることは美樹のピンチを王子さまが救う典型的なパターンを踏襲しつつ、
これによって相楽の女装が合法的に(?)見られるようになる一石二鳥のアイデア
しかも相楽は演技は棒で、苦手意識があるのに、主に美樹のためにサッカー部の劇を完遂する。
1つのアイデアを多面的に使っていて、作者の応用力に感心するばかり。


4月になり新学期になる。
いきなり作者が大好きな『名探偵コナン』のネタが作者の許可を取って展開される。
華やかなスタートダッシュ
出版社が同じで良かったですね。
オタク臭が酷いけど。

新入生の部活の勧誘では、女子マネージャー志望が殺到。
男子部員は永尾という男子生徒1人だけという状況。
だが彼は早くも同級生の男子生徒から目を付けられ、カツアゲの対象とされていた。

その現場に出くわした相楽は、恐喝相手のパンチをもらうが蚊が止まったぐらいのダメージで、
自分のパンチではブロック塀を壊すというパフォーマンスを見せる。

いつの間にか喧嘩でも無敵になっている相楽。
特に、今回は美樹を守るため、という無敵の発動条件もないままに強い。

例え いじめっ子でも下級生を殴らなかったのはいいが、
このブロック塀は弁償したのか、という大きな疑問が残るが…。

そして女子マネは追加されない…。


いては美樹の誕生回。そしてデート回。
相楽と会って1年。
どちらも大人への階段を上っている、という話。

相楽が格好いいことは いつも描かれているが、
美樹の方も相楽がドキッとしてしまう表情を見せるという、
相楽目線が入っているのが良いですね。

それにしても相楽は なかなかモテるテクニックを駆使している。
まさか過去に元カノがたくさんいるんでは、と疑ってしまう。


いては最後(?)の新キャラ・穂高にまつわる話。
サッカーの名門高校から編入してきた穂高をサッカー部へ勧誘しようと必死の美樹。

読了するとすっかり忘れていましたが、穂高はこんなに女性慣れしているキャラだったんですね。
サッカーの面でも男性としても お高くとまっている難攻不落のキャラを、
美樹が攻略していく、というのが また彼女のヒロイン性を高めるのだろう。

美樹が どんなに穂高に塩対応されてもめげないのは、相楽が彼と一緒にプレーしたがっているから。

サッカー部の練習を複雑な表情で見つめている穂高を見かけ、
美樹は彼を追いかけ、そして声を掛ける。

そこから美樹が引き起こした騒動が始まり、
穂高は美樹と同じ時間を過ごす内に、段々と彼女の魅力に気づいてくる。
さすが魔性である。

でも、たった一人のマネージャーが部を勝手に抜け出して、
責任を放棄しているのが気になる。
こういう時、美樹のマドンナ性がゆえに、単独行動の身勝手さが引きたってしまうのだ。
誰か1人でも後輩女子をマネージャーにすればいいのに。


高が少し美樹に心を許したように見えたが、
当の美樹は学校で相楽がやきもちを焼いてくれたことが嬉しくて、
つい相楽に本音を漏らし、陰で話を聞いていた穂高を間接的に傷つける。

穂高くんを一生懸命 勧誘してるのだってサッカー部のためっていうより
 相楽のためなの 本当はただ相楽に喜んでほしかった それだけなの」

まるでハニートラップを仕掛けた女性のような言い分。当時の読者は怒らなかったのか。

うん、なかなかに酷い言葉を悪びれる様子もなく吐いている。
これは自分が恋愛脳のバカって自白しているようなものだ。

作品としても どうして こんな言葉を言わせたのか疑問だったが、
発現に少なからず傷ついた穂高は美樹に乱暴を働く。
本書においては精神が安定しない男性は 即座に性暴力を女性に加えようとするらしい。
こういう展開も読者からの支持があるから展開されるのでしょうか…。

「バレンタインなんかコワくないっ!?」…
作者の第1長編の番外編、らしい。
設定だけ見ると、この作品でもヒロインは、多くの男性に囲まれるマドンナらしい。
本書から2作あとの作品『うわさの翠くん!!』もマドンナモノだったからなぁ・
1作あとのは どうなんだろうか。そこが気になる。