那波マオ（ななみ まお）
3D彼女 リアルガール（スリーディーかのじょ）
第04巻評価：★★★（6点）
総合評価：★★★（6点）
恋愛コミュ力不足ゆえに、色葉の不安も察知できないまま、綾戸さんに無自覚に優しさを振りまく、つっつん。しかも大親友の伊東はどうやら綾戸さんが気になっている模様。そんな混戦状態のまま、みんなで１泊のキャンプに行くことに。人生初のリア充イベントだし、なんだか波乱の予感だし…。俺史上、最大のピンチ到来です…!! 少女漫画界最弱ヒーロー男子×リア充美女のありえない純愛!? 新装版で登場！
簡潔完結感想文
- 彼の飾らない人柄を好きになったが飾らな過ぎて無防備なことにヤキモキする。
- キャンプ回は波乱続出。一番の罪人は空気の読めない男たちだろうか。仕方ない。
- 生まれてきた気持ちを上手に処理できない不器用な人たちが傷つけ合ってしまう。
経験値の無さが物事をややこしくする 4巻。
本書の主人公・つっつん は いつも自然体である。
その飾らない姿に色葉（いろは）は惹かれ、その飾らない言葉に嘘はない。
だが今回、そんな彼の長所の全てが、彼の弱点に反転していく。
周囲の反応に気づかないまま いつもと変わらないことが、無自覚に色葉を傷つける。
そして色葉も、彼や周囲の人間に悪意がないことを重々承知しているからこそ、
引き出される自分の黒い感情に、自己嫌悪ばかりが重なっていくという悪循環に陥る。
2人だけの意思疎通が傷つけ合いながら少しずつ出来るようになったと思ったら、
それ以上の複数人（小さな社会）の中での立ち振る舞いは まだ習っていなかった。
恋愛は両想いになったからといって全てがハッピーエンドじゃないということを強く訴える形になっている。
ここは私が提唱する「少女漫画４分類」の中の「男女交際型」の漫画特有の面白さであろう。
恋愛どころか人間関係の構築の仕方から初心者の つっつん には学ぶことが多い。
彼が成績でクラスメイトよりも優位に立っていた頃、他の人は他のことを学んでいたのだ。
主人公が高校3年生なのに勉強よりも人間関係を学んでいるのが面白い。
ちなみに、黒髪・メガネの つっつんと綾戸（あやど）さんが似すぎてて、どちらの描写なのか混同する箇所が幾つかあった。
高梨（たかなし）も高梨と言われているから高梨に思えるが、単体では特徴が無さすぎて絶対に分からない。
『3巻』は色葉の嫉妬巻と言えるだろう。
冒頭から自分の中の独占欲と静かに戦っていた色葉だが、それが最後まで続く。
一度は石野（いしの）さんに相談することで、本音を つっつん にぶつけることが出来た。
彼女の不安を直接聞いて初めて つっつん は自分の行動が裏目に出ていたことを知る。
色葉に厳しいことを言えば、つっつんは良くも悪くも何も考えてないから、
このことを経験則として、彼女も不満を溜めずに つっつんにぶつけなければいけなかった。
しかし嫉妬の対象である綾戸さんも悪い人ではないから色葉の悩みは深くなる。
綾戸さんの同級生からの仕打ち（イジメ）を知った色葉は、
彼女を助けて会話をしたことで人となりを知り、それが つっつんに通じることを発見する。
つっつん と同じで距離感を上手く取れない綾戸さんは、つっつんへの感謝の気持ちを またも野菜に変換してくる。
人に対して冷たく接することのない彼らは綾戸さんを受け入れ、石野さん そして伊東とも交流が始まる。
それにしても学校の花壇で自主的に作った物の所有権は その人の物になるのだろうか？
学校に返納するのが道義のような気もしなくもない。
ある日、母に服を買うようにと言われて お金まで渡されたが途方に暮れる つっつんは2人の人物と出会う。
服装の悩みは オタクあるある ですね。
服に回すお金があっても、服の買い方・選び方が分からないから変えないのだ。
そんな時に渡りに船で現れるのが高梨。
つっつん に冤罪を着せたにもかかわらず公式謝罪しなかった最低の男である。
この冤罪によって高梨が つっつんの要求を拒めず、従者となる展開は今後も続く。
謝らなかったことのしっぺ返しが これなのだろう。
更に つっつん はメイドカフェの呼び込みをする綾戸にも遭遇。
その綾戸に うざ絡みをしてくる男性たちから 綾戸を守ることで つっつん はいよいよヒーローになる。
綾戸はこれを優しさだと思っているだろうが、
つっつんが彼らに説教するのはメイド喫茶のマナーや、
メイド喫茶への世間への誤解を訂正しているだけであって、そこに綾戸自身を守るための言葉はない。
オタク文化を守るためだけに立ち上がったと言える。
だが、こういう彼の無自覚の行動が彼の良さを引き出してしまうのであった…。
後日、石野さんによる親戚所有の別荘への宿泊が提案される。
つっつんは皆で楽しい雰囲気を醸成しなければならないリア充イベントを敬遠するが、色葉は楽しみらしい。
色葉と伊東という世界の全てが望むなら、つっつん も従わざるを得ない。
石野の要望で高梨が呼ばれ（またも拒否権がない）、伊東は綾戸さんを招集した。
こうして個人的な打算もあって さして仲良くない人たちも呼ばれ男女6人のキャンプ回が始まる。
しかし色葉は綾戸の人となりは認めても、つっつん のとなりに来ることには抵抗がある。
そして綾戸は つっつんと色葉の仲良さそうな雰囲気に心を痛め、
伊東は そんな綾戸の心など知る由もなく 彼女に惹かれていく。
だが、伊東の初恋は誰にも知らせることなく胸にしまわれる。
伊東は綾戸が誰を好きか分かってしまったから。
つっつんが再びヒーロー的な行動を取ったことで、
綾戸の恋心は周囲に分かるぐらいに大きくなっていた。
それに気づいたのは彼女である色葉、そして綾戸を想う伊東。
関係者の中で気づかないのは つっつん ただ1人なのである。
綾戸が馬鹿正直に色葉に つっつん への好意を謝罪するのは間違いといえば間違いかもしれない。
ただ、これは複合的な理由があるだろう。
1つは彼女も自然体であろうとしていたこと、
そして微熱で頭が上手く働かず自分の都合を優先した面もあるだろう。
また、やはり彼女が人との距離感が分からないからでもある。
綾戸も、そして つっつんも人を傷つけて、そして痛みと共に学んでいくしかない。
交際だけでも手に余る案件なのに、いきなり四角関係まで問題が膨らんでしまった。
果たして つっつん に破綻することなく全てを処理することが出来るのだろうか…。
期限の半年もたずに、この交際が終わったら本書はどうなってしまうのだろう。
