師走 ゆき(しわす ゆき)
高嶺と花(たかねとはな)
第04巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★☆(7点)
夏休みも終わり、花は2学期に突入! 一方の高嶺は仕事が更に忙しくなり、中々会えなくなってしまう。少し寂しさを感じる花だが、高嶺に優秀なサポート役・霧ヶ崎が付いたお陰で時間に余裕が出来るようになった。しかし、霧ヶ崎には裏があって…⁉
簡潔完結感想文
- 偽装交際に同居に結婚など形から入って、後から中身が伴うのが少女漫画。
- 会社のこと、学校のこと、相手のことを知りたいと思う気持ち。それは恋。
- 鷹羽一族からの刺客。このピンチと切り抜けが定期的に開催されるのかな?
20代(以上)イケメンキャラが増殖中の 4巻。
以前の感想でも書いたが、本書に追加される新キャラは、社会人の高嶺(たかね・26歳)側の人間が多い。
これはヒロインの花(はな・16歳)の側に新キャラを追加しても、
高嶺との接点が持てないからだと思われる。
今回も社会人2年目の霧ヶ崎(きりがさき)や、
高嶺の血族の鷹羽(たかば)専務などイケメン ~ イケオジが追加される。
そしてイタリア人御曹司・ニコラをはじめとして誰も花を好きにならないのが本書の特徴。
ニコラは花の相談役として彼女の周囲をうろつくが、
他の者は高嶺の会社内や、彼の背景に加わっていくだけ。
この人物配置は、今後の大きな展開のための布石なのかな。
花と高嶺の恋は不器用で遅々とした進みなので、
第三者の横槍によって時計の針を進めたりするのは本意ではないのだろう。
それに もし誰かが花に好意を抱こうものなら、高嶺が全力で その人を潰しにかかるだろうし。
『2巻』から本格連載が始まり、同時に季節は春から巡ることになった。
これは予想だが、恐らく1年目は季節イベントを取り入れた通常営業で乗り切ると思われる。
折角、作品が最初に迎える季節だから、それを十分に活かした展開をすればネタに困らない。
ただし花と高嶺は、お見合いをして 最初から恋愛関係が確定している。
その上、上記の通り誰の介入も許さない関係なので、2人きりの場面が多い。
これは いくら面白い会話のラリーを考えても、ネタとしてはマンネリ気味になるのは必至。
『4巻』でようやく秋を迎えたところだが、ちょっと飽きてきた…。
1日1冊では読むペースが速すぎる。
1日1話でも多いぐらいだが、寝る前にちょっとずつ読むぐらいが丁度いい。
作者も マンネリは回避したいところだろうが、
1年目の季節イベントというネタに困らないボーナス期間を放棄するのも惜しいだろう。
そんな葛藤があったかは定かではないが1年目は変化球を抑えて、直球のイベント勝負をしている、と思われる。
なので ここはじっくり、花見と高嶺、海と高嶺、文化祭と高嶺、
それぞれの旬の高嶺をお楽しみください。
旬のものを楽しむのが高貴な者の風流な遊びではございませんか。
前巻から続く高嶺(たち)との2泊3日の旅行は、年齢差のある2人の修学旅行(仮)
初めて24時間一緒にいることで、好きな人の色々な面が見えてくるのが少女漫画における修学旅行の役割。
本書でも、高嶺が自分のことを予想以上に見えてくれていることが分かり、花は胸に高鳴りを覚える。
お見合いから始まった2人ですが、いよいよ恋が生まれそうです。
形式から入って、後から内容が伴うのは同居モノや結婚モノでは定番の展開。
ここから今更 気づいた気持ちに戸惑い、上手に近づけない もどかしさ が読みどころになるのだろう。
そして始まる2学期だが、高嶺は忙しそう。
拒否しても高嶺が馬鹿の一つ覚えのように渡してきた薔薇の花も、
新しい花が補給されないため日に日に少なくなり、ついには最後の一本も枯れてしまった。
そんな忙殺される高嶺を新キャラが補佐する。
それが高嶺のサポートに専任する霧ヶ崎 瑛二(きりがさき えいじ)。
霧ヶ崎は仕事に厳しい高嶺も認めるほど有能で、高嶺が食事に誘うほど(断られたが)。
仕事人間だが融通の利かない自分を自覚している霧ヶ崎だが、
高嶺は「俺は自分以外の人間に完璧は求めていない 期待してないから安心しろ」と彼の肩の荷を下ろす。
意外にも高嶺は上司として良い素質を持っているのかもしれない。
彼が鷹羽を継ぐのに相応しい器に成長する姿も本書で描くつもりなのかな。
だが霧ヶ崎は、鷹羽一族の者の内通者だった。
専務の弱みを握れという命令の先は、高嶺のお見合い相手へと向かう…。
いよいよ鷹羽の者が登場してきましたね。
ここからは恋愛イベント、学校イベント、そして鷹羽内のイベントの三本柱で話は進むのでしょうか。
季節は移ろい秋。学校イベント・文化祭が近づく。
その話を耳に入れた高嶺は文化祭の一般客として来校するというが…。
高嶺が文化祭に来たがったのは、彼が学校に入れる日だからだろう。
これは花が高嶺の仕事を知りたいと思うのと同様、花の社会生活を知りたいという願望の表れ。
一方で夏の旅行で心境の変化を自覚した花も、高嶺の仕事の話を面白く聞けるようになった。
これは仕事の話を通じて彼のことを知れる、という乙女心だろう。
お互いの部屋に入ったり、旅行に行ったりプライベートな時間では飽き足らず、公の生活も知りたい。
2人は相手のことを少しでも把握したいのだ。
素直じゃない態度を取っていても、2人の心境の変化をしっかり描いている点は読み逃せない。
そんな頃、霧が崎が花の前に現れる。
霧ヶ崎は高嶺の調査で、女子高生の花が替え玉でお見合いしていることを推理で導き出す。
花に会いに来たのは その忠告のため。
別れなければ、鷹羽の将来を担う後継者の有力候補である高嶺に迷惑がかかる。
敵も多い彼が、少しでも弱みを見せれば他の候補者が一気に叩きに来るのは必定、だと。
霧ヶ崎は猶予期間を設ける。
この間に花が身を引けば、「上」に報告しないで済むから助かる、と。
つまりは少しも波風立てることなく、高嶺の安全は保障される。
このことを花は単独で引き受ける。
霧ヶ崎を認め、彼と上手く仕事をしている高嶺に知られる訳にはいかない。
唯一その悩みを共有してくれるのは、イタリア人御曹司・ニコラ。
彼は、花がどうしたいかが重要だと教えてくれる。
ニコラは2人の架け橋として重要な人物となる。
交際における仲人である。
花がこの悩みに直面するのは二度目。
短期連載が終了する『2巻』7話でも彼女は自分から高嶺に距離を置いていた。
だけど恋心を自覚しつつある彼女に、高嶺と距離を置くことは難しい。
作中で同じことを自覚的に繰り返しながら、
その時とは違う心境を炙り出す手法が上手い。
一方で高嶺も『2巻』に続いて今回も花の異変を察知していた。
彼なりの方法で花を元気づけ、それにより花もまた自分の道を歩もうとする…。
高嶺が花のことを、守られるのが嫌でも守り抜いてやる、といったように、
花も高嶺の意向は無視してでも自分からは逃げないことを決めた。
結果的に「大人の事情」で高嶺が お見合いの中止を決断したなら従うが、
そうでない限り、自分から この「お見合い」を辞退することはない。
事態は霧ヶ崎が「上」の存在である鷹羽専務に、
花のことを密告しなかったことで、日の目を見ることなく収束した。
専務室での会話を廊下で聞いた高嶺は、
霧ヶ崎がスパイであることも、彼が密告を止めたことも理解する。
(天下の鷹羽グループの専務室なのに壁が薄すぎることは ご都合主義)
これは霧ヶ崎が高嶺を高評価したことを意味する(高嶺は怒りそうだが)。
霧ヶ崎から見て高嶺が、ただの腰かけ御曹司ならば、花の件を話しただろう。
しかし霧ヶ崎は 高嶺が鷹羽グループにとって、そんなスキャンダルで失っていい人材ではないと判断した。
融通の利かない彼は「社の為に善処する事だけが使命」だから。
高嶺にとって霧ヶ崎が優秀なサポート役であるように、
霧ヶ崎にとって高嶺はサポートするに値する上に立つ人間だと思われた。
相思相愛ですね ♥
この2人は今後も良いコンビになりそう。
謝罪も自分の怒りも脇に置いて「謝る暇があったら働け」と
今後の行動で反省を示すことを示唆する高嶺は、やっぱり器が大きいのかもしれない。
それに彼の頭の中は花の心配で占められている。
彼女に会って、話し合うことが何よりも優先されることなのだ。
そういえば、霧ヶ崎から忠告を受け、
高嶺が身を滅ぼすのではないかと心配するあまり花が見た悪夢は、
会長をはじめとした「上」の存在に高嶺が持つ地位が剥奪される、という内容だった。
これが実は…。
最後は次巻に続く文化祭回。
少女漫画の文化祭って8割方 メイド喫茶かコスプレ喫茶だなぁ…。
文化祭回では花の学校の生徒が高嶺を見て、
彼という人が客観的に見たら どのような立ち位置なのかを改めて示す回となっている。
花とは2人きりでいることが多いので、忘れがちですが、
高嶺はイケメンキャラであることを思い出させる仕様になっている。
そうして女子高生にチヤホヤされて自己承認欲求が満たされていく高嶺。
もしや「ロリコン罪」を背負う彼にはパラダイスなのか…? 逃げてーーーー。
ラストでは、高嶺の特異体質が明らかに。
部活の先輩に高嶺のことを、お見合い相手とは言えないから、彼氏だと説明していた花。
その先輩が高嶺を見つけ花の彼氏だと読んだことで、
高嶺は学校で花が自分のことを彼氏と言いふらしていると誤解をする。
そして自意識が満たされた彼は薔薇の嵐を呼ぶ。
どうやら高嶺は有頂天に達すると、薔薇を召喚できるらしい。
まさか これまでプレゼントされてた薔薇って購入品じゃなくて、
高嶺の自意識が生み出した召喚品なのか⁉
家を出る前に鏡の前で「俺は完璧」とか呪文を詠唱して、毎回 薔薇を召喚してるのかも…。