師走 ゆき(しわす ゆき)
高嶺と花(たかねとはな)
第03巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★☆(7点)
実力テストの結果が散々だった花。高嶺に骨抜きにされてると思われたくなくて必死で勉強しているところに押しかけ家庭教師・高嶺が乱入!?さらに風邪で寝込んだ高嶺を看病、高嶺&ルチアーノに同級生たちまで参加しての夏のリゾート!等、ハプニングとイベント満載の第3巻!!
簡潔完結感想文
- 勉強回、風邪回、お泊り回。少女漫画の定番イベントに へそ曲がりたちが挑む。
- 「お見合い」でのデメリットを無くそうと互いに努力する2人が健気で可愛い。
- 3巻は三角関係の3。おかモン が高嶺に宣戦布告し、男たちの戦いが幕を開ける。
直球勝負のイベントにも高嶺という変化球のキレが光る 3巻。
今回、本編や作者のコメントで明らかになったことが2つ。
1つはヒロインの花(はな・16歳)の学年。
今回、彼女は高校1年生だということが確定した。
そして もう1つは本格連載開始から「四季が移り変わるように」なったこと。
(読み切りの時は掲載時の季節で描いていた という)
『2巻』は春で、『3巻』は夏休みに突入している。
ここで気になるのは大きな矛盾。
まぁ連載の形態上仕方ないことなのは分かるが、気になったので羅列します。
まずは『2巻』の花見の季節に もう2人が出会っていること。
一体 いつお見合いしたのか。
まさか つい先日まで中学生だった花と見合いをして見初めたというのか。
見合い相手・高嶺(たかね・26歳)の「ロリコン罪」は重度である。
これは花が高校1年生だと判明した時から逃れられない疑惑だが。
高校1年生と2年生では意味合いが大きく違う(と思うのは私だけかな…?)
そして花の年齢設定にも矛盾が出る。
お見合いの時に既に16歳になっていたので、4月上旬生まれでないと お見合いも花見も間に合わない。
だが『16巻』における花の17歳の誕生日回では、彼女は射手座で、射手座の月の頭が誕生日だという。
ということは12月上旬生まれである。
なので高校1年生の春も夏も彼女はまだ15歳なのだ。
16歳という現時点(2022年04月まで)の女性の結婚可能年齢に達していることが、
お見合いに 最低限のリアリティを生んでいたが、それもないことが判明した。
26歳の男性が夢中になるのは16歳ではなく15歳。
この1年も大きい。
高嶺に迫るロリコン警察の捜査の手!
高校1年生の15歳を連れ回して、振り回される26歳かぁ…。
初めて高嶺に対して退(ひ)いています。
まぁ、年齢や設定に関しては大らかに許容しなければならない矛盾でしょう。
そして この矛盾が故に、花の高校1年生での誕生日は やってこない。
彼女が誕生日を迎えるのは『16巻』まで待たなくてはならない、という事態が発生してしまった。
あとは高校1年生の夏は1度しか来ないのか、それともループするのかが気になるところ。
ちなみに『16巻』の内容を記しているのは、1度完読しているからである。
でも、時間のループに関しては全く覚えていない…。
それぐらい本編が面白すぎた、ってことで☆
冒頭は、高嶺の数少ない親友との仲直りから。
本書の もう一人の御曹司でイタリア人のニコラ主催のパーティーに高嶺を呼び出すことに成功した花。
2人に わだかまりが出来てしまったのは、1人の女性を巡る問題だった。
高嶺の彼女を、ニコラは 高嶺の経済力や肩書に惹かれた女性だと見抜き、
彼女にちょっかいを出すふりをして高嶺の目を覚まさせたかった。
それがニコラ側の真実。
だが、その女性は高嶺に 付きまとっていただけで彼女では何でもなかった。
高嶺がニコラを快く思わなくなった原因は、
ニコラが高嶺に黙って留学を終え、イタリアへ帰国してしまったからだった。
彼の帰国を人づてに聞いて、恥をかいたことを怒っている。
高嶺という男は、そのぐらいに小さい。
真相が分かり仲直りしたのは良かったが、高嶺に彼女がいた事実も消滅してしまった。
まぁ 彼女いない歴=年齢の男性が虚勢を張っている姿の方が滑稽で笑えるんだけど。
帰国日にニコラが、花に連絡先を渡す。
高嶺の一族・鷹羽(たかば)とはコネがあるから、困ったことがあったら連絡してくれれば
お見合いの継続に尽力するという。
結局 そんな事態にはならなかったと思うが、
もしかしたら作者の中では、高嶺(と花)が築いた人脈が高嶺を助ける、という展開を用意していたのだろうか。
このままニコラのような各国のイケメン御曹司と知り合い、
最終的に彼らが一堂に会して、鷹羽一族の中での高嶺を応援するという展開も面白かったかも。
お国柄を体現したイケメンたちとの交流。
乙女ゲームみたいで、違う方面からも人気が出そう。
ただし 本書の場合は、ニコラ同様、誰も花には好意を持つことは許されないだろうが。
ここからは少女漫画の定番イベント3連発。
まずは勉強回、そして風邪回と続く。
この2話は、花が高嶺に付き合うことで起こる弊害、
そして高嶺が花に付き合うことで起こる弊害が描かれ、その弊害を もう一方が除去しようとしている。
花は一部科目でテストの成績が不振。
そのことで教師に呼び出される。
高嶺の外車による校門前での待ち伏せは教師の間でも有名な事案みたい。
花は成績の不振と高嶺との関連が全くないことを証明するために勉強をする。
これは高嶺の名誉を守るための戦いでもある。
勉強をするため高嶺に訪問禁止を告げるが、彼が花の命令を聞くはずがない。
花の部屋にまで闖入して、勉強を教えようとしてくる。
いよいよ相手のプライベートな空間にまで顔を出すようになりました。
(この後の話では立場が逆)
これは かなりの心理的接近と言える。
高嶺は留学経験のある英語はともかく、
高校数学は教えるまでの知識のストックがない。
だが元来 努力家の高嶺は1日で知識を掘り返し、教師としての務めを果たそうとする。
双方の真面目さが よく出ている回である。
花の方は高嶺に迷惑をかけたくないが、高嶺は迷惑を迷惑と思っていない、という関係性が良い。
平均点以上の点を取れたテストの結果が出た日、高嶺は いつになっても現れない。
それを心配した花は、素直になれないので親に嘘をついて彼の会社に行く。
そこで会社の同僚の人から高嶺が風邪を引いていることを知る。
高嶺の勤務態度が至って真面目で、御曹司としてではなく1人の人間として仕事に邁進していることも知る。
その同僚から情報を得て高嶺の住むタワマンに初潜入。
中から、セットしていない髪で部屋着の高嶺が出てくる。
高熱の高嶺は酔った時と同じく、本音が出やすいらしい。
花が作った 失敗作の お粥も、彼女の成績も素直に褒める。
そして忙殺される毎日の中でも、勉強を教えるなど花と交流することは、生活に潤いを与えるという。
高嶺が花を褒めれば褒めるほど、大人と子供の立場の明確が違いになるのが花の辛いところ。
やっぱり いつも花と張り合う高嶺は、花に年齢差を感じさせないようにしているのかもしれない。
相手に付け入る隙を見せて、相手と気兼ねなく会話をする。
イジられ芸をするコメディアンみたいな精神で花と交流しているのかもしれない。
夏休みは 2泊3日のお泊り回。
ニコラの会社はリゾートホテルを保養所にしている。
タダに釣られて女子高生3人は行くことを決め、高嶺は花に同行し、
高嶺が行くことで おかモン もライバル意識から参加を決める。
いよいよ おかモン の立ち位置が分かり始めてきましたね。
夏の お泊り回は水着回でもあって、男女6人の水着姿が拝める。
高嶺は脱ぎキャラではないが、何だかんだで この後も均整の取れた肉体を披露する機会が多い。
ん、それを脱ぎキャラというのか?
高嶺は集団行動が苦手。
というか あまりしたことがないので分からないらしい。
だが花たちと過ごす1日で その殻を破って、花とのバカンスを心行くまで楽しむ。
こういう遅れてきた青春を味わえるのも年齢差カップルの効用の一つか。
花(と その一行)と過ごすことは、普通に生き直すことなのかもしれない。
高嶺は おかモン の花への気持ちを察しているらしく、接近を許さない。
そんな2人が真剣勝負するのがテニス対決。
経験者の高嶺と、ほぼ素人で身体能力頼みの おかモン。
おかモン が大きく左右に揺さぶられる展開の中、花だけが彼の脚の異変に気づく。
これって通常なら、本命の人の異変にはすぐ気づく、というヤツですよね。
お決まりのパターンから逸脱している。
そして最も逸脱しているのは、
その おかモン を医務室に連れて行くために、高嶺は彼を お姫さま抱っこすること。
高嶺の中で人を運ぶのは お姫さま抱っこが基本形態なのか。
確かに おんぶ は、この俺が人に上から乗っかられている感覚が許せない、とか言って嫌いそうですもんね。
おかモン が お姫さま抱っこで胸キュンするはずもなく、むしろ彼は落ち込んだのではないか。
サッカー部で1年生ながらレギュラー、
将来はプロ入りも有力視されている おかモンですが、
現時点で肉体的な優位は高嶺にあることが、かなりの屈辱なのではないだろうか。
水着回は、ヒロインが同性のスタイルの良さに引け目を感じる、というのが定番ですが、
おかモン は頭脳派エリートの高嶺の肉体に、年齢差や体格差など、
引け目を感じている部分が少なからずあった旅行だったのではないか(顔に出ないけど)。
そして包容力という点においても、高嶺は大人の視点を持っている。
「おっさん」と揶揄することは簡単だが、相手は日本一の おっさん で重度のロリコンなのだ。
恋愛的にも定番イベントを盛り込んだ『3巻』。
これから到来する秋・冬も一通りのイベントを経験するのだろうか。
特別編の2編は、今後も何度か出てくる本書の設定の お話。
1つ目は花の野々村(ののむら)家のカレー。
この庶民カレーは今後も高嶺が黙って食す一品となる。
2つ目は高嶺が飼うことになった金魚。
この金魚すくい の金魚は、同じ水槽にいたどの金魚より過保護に育てられることになる。
ちなみに2編目は夏祭り回、花火大回でもある。
高嶺のマニュアル君の様子が垣間見られる話。
仕事もデートも理想と目標をもって挑むのはいいが、
デートの場合、それに縛られて、応用が利かないのが高嶺の欠点。
こういう事前の計画が、花以外の女性に底の浅さを見抜かれ飽きられてしまう点だろう。