《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

学園モノの少女漫画ですが、恋愛イベントは校外限定、プライベートな事柄は校内限定で。

ロッキン★ヘブン 7 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
酒井 まゆ(さかい まゆ)
ロッキン★ヘブン
第07巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

G組のみんなでの旅行が決まるも、妊娠中のお母さんが心配な紗和は、今回は留守番する事に。でも旅行中のハズの藍と偶然出会い、藍の家に遊びに行く事になって…?

簡潔完結感想文

  • 拒絶と理解。手を振り払われてしまったから、支えてくれる人の手を取る。
  • 学校という名の家。ヒーローを変革させるイベントは全て学校で行われる。
  • 嘆願署名。体制側の決定を覆す民意を集める生徒達。G組のGは頑張るのG。

数の分だけ、×角関係が増えているんじゃないか、の 7巻。

全8巻の作品の7巻目で、7角関係が成立しました。
それもG組のクラスメイト男6女2の8人グループの中で。
かなり人間関係が入り乱れています。

まさか最終8巻で、最後の1人までが「実は俺、お前のことが…」とか言い出して
8角関係が成立するのではないかと戦々恐々としております。

これまでの巻数と恋愛関係の一致をざっと考えてみましたが、
後半はともかく、前半は一致しているとは言えない状況です。

例えば『2巻』でも城戸(きど)→紗和(さわ)→藍(らん)の
三角関係が始まっていると言えるし。
判断基準を恣意的に採用すれば、巻数との一致も成立するかもですが。

広がる一方のグループ内恋愛ですが、主人公・紗和と藍のカップル以外は
「全員、片想い」状態ですから、それほどドロドロとした印象を受けません。
一番ドロドロしているのは この『7巻』の紗和かもしれない。

そして際立つ、1人だけ恋愛の輪から外れる小川(おがわ)の存在。
意外に読者にファンが多いのは、身持ちが固いから??


んなG組の皆で連休を使って旅行に行くはずだったが、紗和は不参加。

紗和が旅行に行かなかったのは、
藍と一緒の空間にいると切ない気持ちに支配されるからだろうか。

クラスメイトからは女性1人の参加となった晶(あきら)の気持ちは いかばかりか。
女性は小川の姉もいるが晶は人見知りするだろうし。

しかもフッた相手とフラれた相手が一緒の空間にいるのだ。
紗和以上に気まずい旅行になったと思われたが、
休み明けに紗和と会っても晶は何の文句も言わなかった。

その旅行に不参加なのは俳優の仕事で行けない晴希(はるき)と、
当日に体調不良になった藍。

この旅行の不参加で三角関係が際立ちます。


の不参加は2つの意味がある。
1つは藍なりの優しさ。
これは時間差 胸キュンの効果も生む。

そして もう1つは彼の家を舞台にすること。
その日、藍の家に居ることで起こることは2つ。

初めての藍の父親との対面。そして藍からの拒絶。

家庭の持つ温かみのない家で、紗和の手すらも振り払ってしまう藍。
父親との関係も築けない自分が、
恋人や、ましてや家族を持つ未来を持つことなど考えられなくなったのだろう。

そうして旅行の不参加は彼女の孤独の象徴となりました。
普通の日なら晶に連絡できたが、遠くで楽しい時間を過ごしている彼女を頼ることは出来ない。
自分だけで藍の抱えているものと向き合わなければならなくなった。

誰にも心配かけないように笑顔を絶やさぬよう努める紗和に、晴希から連絡がくる…。


和は声だけで異変を察してくれた晴希に誰にも言えなかったことを言う。

紗和の性格形成には妹の存在が影響を与えていた。
面倒見のいい姉であろうとして彼女は本音や感情を封印するようになった。

ここは実際に当日、紗和と妹が一緒に行動しているので話が理解しやすくなっている。
1話の中での話の繋ぎ方がどんどん上手くなっているなぁ。

ただ、紗和の性格が妹の存在によって形成されたというには、姉妹の年齢が少し離れすぎている気がする。

母の妊娠は彼女が12歳の頃に発覚しただろう。
となると彼女の性格は、ある程度 出来上がっているのではないか。

全てを我慢してきたというには物心が付き過ぎている。
逆に言えば12年間、甘えて愛されて育ってきたのだ。
藍が羨むほどに真っ直ぐ。

現実的に3歳~5歳差ぐらいの年齢差の方が、我慢の多い家庭環境だった気がする。
それに物語の前半では、紗和は結構ストレートな物言いだったし。

紗和が気遣いな人であることに異論はないが、
恋愛に関してワガママを言わない便利な人間にするために
紗和の性格が後付けされているように思った。


んな紗和の無理を晴希は見抜く。

これは不幸に囚われ近視眼的になっている藍には出来ない芸当ですね。
彼にとって紗和は惜しみなく愛情を与えられた羨望の人でしかないですから。

その優しさから明るく前向きを背負わされた紗和が、自分の無理を自覚する。
感情が解き放たれた彼女は自分に泣くことを許す。

そして晴希が紗和の手を取り正式参戦。
7人中6人の6角関係から、8人中7人の7角関係になりました。

何も考えられない紗和も晴希を受け入れ、キスを交わす。

紗和の心情は ちゃんと理解できるのだが、
宙ぶらりんだった彼氏に正式に別れを告げられた その日の夜(時間にして4時間ぐらい?)には、
他の男のキスを受け入れている非難必至の展開ですね。

全8巻での完結からすると7巻目で こんな展開を持ってくるのが意外。
ラスト付近で主人公が揺れ過ぎだろう。

この日、晴希が無理をしてでも紗和に会いに来たのは、
連休中に全てを終わらせるためだろう。
連休の1日目で彼女になり、最終日には彼女として晴希の仕事っぷりを見守る。

また、学校を恋愛の主戦場にしないためでもあろう。
本書において、交際やキスは学校の外で行われなければならないから。

恋愛の参加資格はクラスメイトであることなのに、
学校の中での恋愛イベントは禁じられている。
なかなかに変なルールである。


休明けには公になった紗和と晴希の交際に対して、藍は自分とは無関係と言い放つ。

その言葉に怒りを覚え、身体が動いたのは晶。

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人のために動けるようになったこと。それが淡白だった晶と藍の成長。例え暴力でも。

「どうして あなたは!! いつも傍にいる人たちの気持ちを考えないの!!」

それは気持ちを封じてしまった者たちの代弁だろう。
紗和の親友として、そして もう一人、彼を好きな人の想いを乗せて、平手を打つ。

ここで晶が動かなかったら、動いたのは城戸だろう。
ただ男同士だと暴力が洒落にならないし、言葉も乱暴になって互いを傷つける可能性がある(『2巻』
人のために人を殴ることが晶の成長にも思えた。


そんな騒動の後、椿(つばき)から藍の旅行欠席の本当の理由を知る紗和。
藍はいつも本当のことを言わないから、親友の椿経由で知ることが多い。

それでも、藍が自分を気遣っていても、
待つことに疲れ果ててしまった紗和は、晴希との交際を続ける。

個人的には紗和には他の男に なびいて欲しくなかったが、
紗和の心情は分かるし、正直に言えば藍に魅力を感じないのも確か。
幸せになれる道があるなら、そちらを進みなよ、と友人的アドバイスを送りたい。


1つであったはずのG組の仲間たちは、それぞれに次の道に進む時が来た。

高校生活も折り返し地点を過ぎており、進路の問題が持ち上がる。
これはG組崩壊の危機ですね。

紗和の進路は今のところ保育関係。
ちなみに舞台となる天羽学院はエスカレーター式の大学まで存在するらしい。
藍の父は総理事ということなので、大学の方も治めているのか。


G組崩壊因子とも考えられる新参者・晴希。
仲間たちを分裂させた彼のことを城戸(きど)は病原菌のように思ってしまう。


紗和の彼氏となった晴希は、学校でもスキンシップを取ろうとする。

多分、藍にとっては学校は父親の支配下の象徴であるから、
恋人とイチャつくことは禁忌だったが、晴希には関係ない。

だが、紗和は彼のキスを拒否。
あの夜は紗和はの方が 雰囲気に、というか絶望に流されてキスをしてしまったが、
ゆっくりと時間をかけて好きになろうとする。
身持ちの固さを証明して読者に嫌われないようにする戦法か。


んな折、学校に三者面談に来ていた妊娠中の紗和の母が腹痛を訴え倒れ込んでいた。
それを発見した藍は保健室に連れて行き、彼女と話す機会を得る。

藍と同じぐらい数奇な人生を歩んできた彼女だからこそ実体験をもって伝えられる言葉の数々。
幸福にしか見えない人も悲しい過去を持っている。
それは藍の視野を広げる契機となった。

そして この話を幸福な雰囲気の紗和の家ではなく、
自分を縛る学校内で聞けたことが藍にとって意味を持つ、はず。

冒頭の藍の家での一幕といい、
今回も自然に藍と紗和母を学校内で会話させる機会を作っているところが凄い。
(事件を起こすための貧血やら腹痛やら母の体調は心配だが)

中学2年生の3学期に進路を父親に決められた藍にとって苦い思い出しかない進学の話題。
あれから3年。
あの時はいなかった紗和と、
これまでとは違う未来を選ぶ時がやって来た。
ここもまた構成の盤石具合に舌を巻く。


こへ持ち上がる晴希の退学騒動。

学校の校門前でファンが暴走し暴力事件に発展。
それがPTA会長の耳に入り、理事長と校長に晴希の退学を要求する。

…にしても紗和母が倒れ養護教諭を探し出す間に、
話し合いと一定の結論が出されるとは、この学校の意思決定の迅速さは凄い。


プロである晴希は学校の退学を甘んじて受け入れる。
仕事に支障をきたしてまで、学校に固執するわけにはいかない。

だが学校側の一方的な提案に、学校に不信感を持っているG組生徒たちは反発。
そして彼らは理事長の息子・藍を通せば提案を撤回できるルートを持っている。

だが、藍と その父である理事長には不和があり、
更に藍と晴希は、紗和の元カレと今カレという関係性である。
この事態に藍は…。


が動き始める。
彼が誰かを助けたいと思ったことが、成長の証。

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もしかしたら中2の3学期、いや母の存命中 以来の親子の会話量。理事長の理事長による親子面談。

理事長への直談判。
晴希の退学処分を撤回すべく、
天羽学院と、姉妹校の英華女子の生徒の嘆願署名を制作する。

この場面、揉めたのが この2校の生徒だから、という理由なのだろうが、
ファンの子が英華女子だったという台詞は一切ない。
制服が英華女子のものだから(これも推測)、作者の頭の中では そういうことなのだろう。
もうちょっと状況を整理できれば良かった。


退学阻止のため、翌日の日曜日の朝一までに できるだけたくさんの署名を集める、
それがG組の目標となる。

どうやら この日は土曜日らしい。
だとすると、この話に登場する生徒たちは何しに学校にいたのだろうか。
全員が この日 三者面談というには数が多すぎるような。
謎である。

そして欲張りなことを言えば、この退学騒動の前に、
藍と晴希の間に流れる奇妙な友情を描いていて欲しかった。
意外な共通点があったとか、
紗和以外の生徒との交流も少しずつ欲しかったところ。

この署名は『1巻』で紗和が無茶ブリされて見事に達成したゼッケンの縫い付けと鏡写しになっているのだろう。

以前は一方的に紗和に要求をのませた藍が、
今回は主にG組の生徒に頭を下げて協力を要請する。

これまで登場して退場した結李(ゆり)や城戸の妹・彩加(あやか)にも一コマだけ出番が回ってくる。
最終回間際に相応しい同窓会の雰囲気があります。

ただただ大人・学校に反発するのではなく、
ルールの中で正攻法で戦おうとする姿勢に彼らの成長をみる。


名を集めも最終盤となった その日の夜、藍は自分と父との関係を皆に話す。
母の死の原因、そして残された父子の冷え切った関係。

紗和は初めて藍の孤独の意味を知った。
藍の次は、紗和が行動する番である。

親友の椿すら藍の母の死について詳しく知らないのは ちょっと違和感があるなぁ。

そして、藍が自分のことを話す舞台は学校じゃなきゃダメなのは分かるが、
学校や教室に夜間まで自由に出入りしているのも気になる。

恋愛は外で、プライベートは学校で、という舞台の限定は素晴らしいんだけど。


そういえば藍の三者面談の時は担任と理事長と その息子になるのか。
担任の胃が痛みだしそうなほど慎重に言葉を選ぶ面談になりそうだ(笑)