《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

君への愛のエネルギーは きっと、時空さえ歪ませることが出来るから。

きょうのキラ君(7) (別冊フレンドコミックス)
みきもと 凜(みきもと りん)
きょうのキラ君(きょうのきらくん)
第07巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

矢部(やべ)の大活躍(?)のおかげで、キラがニノのもとへ帰ってきた。愛おしむ想いも深まって、なんだかとってもイイ感じ♪……と思ったら、ニノのパパにつき合ってることがバレちゃった!! 反対されたニノとキラは──。『友達がいる。あなたがいる。愛する人とつながっていく。』なにげない日常に二人が紡ぐ、天国に一番近い恋。

簡潔完結感想文

  • 一難去ってまた一難。家出から戻ったキラ君だが交際をニノン父に反対される。
  • キラ君のしたいこと。キラ君が言い淀む願望をニノンは先回りしてみるが…。
  • 未来日記。ニノンの発案に協力者が続々。キラ君 号泣の一世一代のプレゼント。

のイベント、人生のイベントを先取りする 7巻。

余命が1年(『7巻』の段階では残り半年ちょっと?)のキラ君にとって、
1年は毎日が最後の日々である。
なので季節のイベントや学校行事を しっかりと網羅してるんですよね。


ただでさえ恋愛イベントが多い年末年始は一層違った意味を持つ。
『7巻』では岩本ナオ さん『町でうわさの天狗の子』が言うところの「冬の3大イベント」、
クリスマス、初詣、バレンタインデーが全て網羅されております。
少しずつ弱り始めた身体で このイベントを楽しむキラ君。

そしてニノンは、キラ君が願ってしまった、
決して叶うことのない願いを、先取りして実現する。

命の炎を燃やすキラ君にとって『7巻』ラストのシーンは、未来編ですかね。
そして あとがきによると『8巻』は過去編になるのかな?
(なりませんでした。最終『9巻』で少々触れられます)

彼らの来し方・行く末を見つめる喋るインコの先生(センセー)は、さながら「火の鳥」か。

そんな時間旅行も楽しめる、彼らの かけがえのない日々です。


束通り、キラ君の家出(?)から彼を連れ戻してくれた矢部(やべ)。

キラ君と矢部の友情も復活し、
ニノンとキラ君の関係も再度、一緒に生きていく意味を確認した。

…が、仲直りにイチャラブしていたら、その場面をニノン父に目撃された!

この場面、いくら、これまではニノンが一人ぼっちで生きていたからといっても、
ノックをして、一呼吸あけて扉を開けない父も悪い。

そうして行われる家族会議。

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彼の眼鏡が割れる時、封印されし邪眼の力が解放される! …なんてことは まるでない。

父親は2人の交際を知らないし、その上、交際に反対の意を表する。
なぜなら遠くない未来、2人は別れることが確定しており、
その時にニノンは世を儚むほどに悲しむことが分かっているから。

ニノン父が非情のように思える場面だが、
これは娘を幸せにする未来が見えない男に、娘を預けられない心境と同じだろう。
父からすれば、キラ君は無職や夢を追っているばかりの男と同じなのかもしれない。
娘を持つ父親の心情としては受け入れがたいものがあるはずだ。


の問題に対してのニノンの行動に感動した。

これから起こる悲しみに囚われるのではなくて、
キラ君と出会って、変わった自分を証明する、という態度が素晴らしい。

親目線で考えると、あの孤独だった娘が、
クラスメイトを家に連れてきただけで涙腺が崩壊しそうである。
それだけでキラ君に感謝したくなる。

そしてヒーローは遅れて登場する。
キラ君の髪が少し短くなりました。
ちょっと鬱陶しかったですからね。

といってもエロいからか、髪が伸びるのが早くてすぐに元通りですが…。

髪型の変更(実際に髪を切る)は少女漫画では珍しいですかね。


して、この一連の流れ自体が、『7巻』のラストに繋がっていくのかな。

ネタバレになりますが、ラストではニノンの発案で結婚式が行われます。
これはキラ君の「したいことリスト」に書いてあったこと。

もちろん この時点ではキラ君は結婚可能な年齢に達しておらず、
模擬的なものだが、これは一足飛びに行われた本書のラストシーンと考えられる。

艱難辛苦を乗り越えて辿り着いた2人の愛の到達点の一つである。
少し先の未来を先取りして、愛は永遠となる。

ここから先はキラ君の余生である。
一日千秋、キラ君の1日は他の人の何十倍の速さで過ぎていくが、
結婚までした2人だもの、あとは病める時、最期の時まで一緒にいる誓いを果たすのみ。


からこそ、前半に親から交際の許諾が必要だったのかなと思う。

これは私見ではあるが、少女漫画のカップルが お互いの両親に挨拶する場面は、
結婚承諾や結納の意味があると思っている。

実際に物語のラストで結婚するカップルの多くが、
本編中に両親と会うエピソードが挿入されていることが多い。

なので、ニノン父の反対と承諾は、模擬結婚式への前振りでもあるのではないか。

親が認めてくれた交際相手となったニノンとキラ君。
その前段階があるから、結婚式の実行もそれほど奇異に映らない。


作品を通じて、ニノンからのプレゼントは彼女の労力を使ったものが多い。
最初はキラ君への想いを描いた手作り絵本だろうか。
そして次が この結婚式である。

今回はお金も それなりに掛かっているが、それよりも心がこもっている。

バイトもして友人たちにも頼って、
半年前のニノンでは考えられないような変化が起きている。

愛は人の成長の速度を加速させる魔法なのかもしれない。

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レイの名字は矢作なので「親友のやりたいことはなるべくやらせてやりたいと思っている」©おぎやはぎ

らの結婚式準備を手伝ったのが、
彼らのことを好きで仕方がない矢部とレイの2人だというのも素敵な配置だ。

矢部は言わずもがな ニノンもキラ君も大好きキャラ。
そしてレイはニノンを気に入り、唯一無二の親友となった。
キラ君に対しては同じ病気と闘う戦友で会った仲である。

協力者の2人がそれぞれにニノンたちを想う心があり、
それが しっかりと描かれているから読んでいて心が温かくなる。

これは学園祭準備(『2巻』)の時に協力者が不足していたのとは対照的な描写である。

時間にすれば5か月足らずの経過だが、
その間に、それ以前から育んでいた関係性が ここに実を結んでいる。

今度は計画が成功したことに、胸が熱くなります。
これもニノンの成長の証でしょう。


だし、本書に僅かに不満があるとしたら、
ニノンとレイの関係をもう少し描いて欲しかったという点である。

矢部に比べて、ニノンがレイを理解していく様子が乏しい。
レイもいたずらっ子という理由だけで一瞬で敵ではなく、味方になっているし。

元クラスメイトで握手を交わした生駒(いこま)さんと百田(ももた)さん(『3巻』
に比べて、エピソードや苦労に乏しいというか、すんなりと親友ポジションに収まり過ぎている。
(生駒さん・百田さんは連載当時(2013年前後)のトップアイドルの名前だろうか)


矢部との(一応の)カップリングも、ちょっと展開が早過ぎる。
脇役の恋に興味のない私だが、あまりの急展開に彼らが可哀想になるぐらい。

これは本編は残り2巻で、脇役エピソードを挿入する場面がないから、
(キラ君が死にそうな時にカップルになられても読者は白けるし)
ここでのカップル成立になったのだろう。

全9巻という適正な長さの本書だが、ここだけは もう少しページを割いて欲しかった。

ニノンたちカップルを丁寧に描いていただけに、
最初から出された結論に飛びついたような粗雑さが見えてしまった。

矢部に関しては、前巻で男前度が上がって、
これからニノンに対してもキラ君に対しても当て馬で協力者という
面白いポジションで活躍してくれると思っていただけに使い方と
彼の心境の変化に落胆した。

まぁ、自分を認めてくれる人に惚れやすい性格なのは、ずっと描かれていましたが…。
結局、矢部は自己愛と承認欲求が強いということなのだろうが…。