池山田 剛(いけやまだ ごう)
うわさの翠くん!!(うわさのみどりくん!!)
第04巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
思うだけなら、許されるのだろうか…?たとえ、言葉で伝えられなくても…。…好きだ!秘めた思いを物語る悲しそうな司(つかさ)の瞳に翠(みどり)の涙は止まらない。司が何かに苦しんでいると知った翠はどうしても司のことが気になって…。そして、二人の姿を見てしまったカズマは!?
簡潔完結感想文
- 合宿。司の合宿地に翠あり。海辺が2人を大胆にし、無警戒が秘密を筒抜けにする。
- 合コン。1年生メンバーの紹介と恋物語。でも彼らの試合での活躍描写は一切ありません。
- 試合。ロッカールームでイチャつくのが2人の お約束。ほら、服も着ないで寝るから…。
チームメイトの恋愛模様は描くが、彼らのサッカーでの活躍は描いてくれない 4巻。
本書を読んでいて一番残念なのは、サッカーの試合描写。
試合の様子を、三角関係の恋愛バトルぐらい
詳細に描いてくれれば本書は もっと面白くなっただろう。
繰り返しになるが、私の推測では作者はサッカーという競技に興味がないようだ。
ただサッカーをしている登場人物たちが描きたいだけなのだ。
なので、本書における試合の様子はサッカーって個人競技でしたっけ?
というぐらい、1人(翠(みどり)の場合はカズマと2人)でボールを持ち続けシュートをするだけ。
サッカーが大好きで競技の魅力を描きたい、という思いさえあれば、
男女ともに もっと人気が出たかもしれないのに。
男性が読んでも楽しい漫画になる可能性を秘めていたのに。
折角、チームメイトの顔ぶれもポジションも決めているのに残念過ぎる展開。
スタメンの選手たちは自然に覚えるぐらいに個性を付加して登場させているのに勿体ない。
中でも翠やカズマなど1年生は繰り返し登場している。
これは1~2年後彼らの代になった時、
試合での連携や、同じ苦難を共にした連帯感の演出に役に立つのかな、
と淡い期待を持ちましたが、最後まで そんなことはありませんでした。
本書における試合のシーンには11人も必要ない。
部活モノとしての比重をもう2割多めにおいていれば読み応えが増したのに…。
まぁ、多くの読者にとって読みたいのは恋愛の描写なのだから仕方がない。
『3巻』で、すでに肉体関係のある翠と司(つかさ)に割って入るべく、
正々堂々と勝負を挑んだはずのカズマだが、
翠と司の間にある特別な絆を感じずにはいられない。
カズマの頭には早くも諦念が浮かび始める、というのが『4巻』冒頭のカズマの心境。
そんなカズマの様子を見かねて相談に乗るのが、
翠のことを女性だと見抜いている唯一のチームメイト品川(しながわ)先輩。
品川先輩は翠に少なからぬ好意を抱いているはずですが、
カズマの熱意に負けて直接的な行動は取りませんでしたね。
しかし、この場面、
合宿所の お風呂で品川先輩との「器量」の大きさに愕然とした後に挿まれるが、
これも彼我に大きな差があっても男として乗り越えるべき壁という意味でしょうか…。


私は常々、男子寮や温泉などにおける男風呂で、
男性がタオルを巻いたまま(しかもバスタオル大のもの)の描写に、
みんな恥ずかしがり屋さん☆なんだから、と思っておりましたが、本書は違いました。
ここでは気の置けないチームメイト同士が裸の付き合いをしておりました。
…が、実際にタオルを巻かれないと、
こんなにも下品になるのかと身をもって知った次第。
作者って、ちょっと頭のネジが壊れてますよね(良くも悪くも)。
『4巻』の最大の見どころはこの場面でしょう。
本書に、どこか少年漫画のノリを感じるのは こういう場面です。
やっぱり恥じらいの中に淫靡さというものはあると思うのです。
三角関係の構図も明確になったからか、描写は翠のチームメイトたちに移る。
(だが、それがサッカーの試合の描写に活かされないのは上記の通り)
合宿の最終夜には肝試しが実施される。
ここでも翠たちの同級生・1年生の紹介が続く。
いや、一人完全に翠の胸に顔をうずめておりますが…。
明らかに膨らみとして描写される胸、
一人だけチームメイトとは入浴しないなど、
推理の条件は揃っているけれど、誰も指摘しない。漫画だからね☆
ただし、バレる時は簡単にバレるようで…。
その相手がライバル校の汚れたエース・神保(じんぼ)。
合宿を終えて挑むのはインターハイの都予選。
神保との出会いは、初戦で完勝したあとの、翠のバイト仲間とのカラオケ合コン編。
ここではチームメンバーの恋の伏線が張られ、次の試合への布石が打たれる。
機嫌の悪い神保にぶつかってしまったバイト仲間の女性。
その彼女を階段から突き落とそうとする神保。
翠は彼女を庇うために身を挺し怪我を負い、そして神保に怒り心頭に発するが…。
対して神保は、完全に間合いの外から蹴りを仕掛ける。
あれっ、急に足が伸びたようにしか見えないぞ…。


そんな因縁が生まれた神保だが、
予選の会場のなったロッカールームで
翠が司(つかさ)と抱き合っている場面を覗かれたしまう…。
なぜだが、チームメイトより先に敵チームに性別が発覚し続けるのであった。
司と翠はロッカー室が密会場所なのかと思うほど遭遇率が高い。
まぁ、司の方が翠がいるからと侵入してくるんだけど。
もしや、翠が服を脱ぐ場所だから選んでいる変態なのか⁉
いやいや、司は本書のヒロインですから(笑)
翠を一目見ようと彼女の試合を見学していただけなのに、
ロッカールームで彼女に再会すると すぐに寝ちゃうドジっ子ヒロイン・司。
そんな都合よく寝る人はいないぞ、と読者にはツッコまれること請け合い。
もしかして翠の試合を観戦する時に精神をすり減らしたのかも。
(『5巻』でタヌキ寝入りなことが発覚。しかも40分(笑))
そして、そんなヒロインの寝姿にドキドキするのは男の子(翠)の役割。
更には司のヒロイン度は、自己憐憫にも表れる。
一気には話せないけど、小出しにする暗い過去があって、
翠くんには私なんか、私みたいな過去を持つ人は相応しくないんだわ!
と心中で嘆いている司。
そして可哀想な自分を糊塗するように、翠に冷たく当たってしまうツンデレヒロインなのです。
なんだか、司とカズマは、旅人・翠に対する北風と太陽みたいな関係ですね。
氷野がその名の通り氷のような冷血漢。
カズマの苗字は、山手線の駅名という縛りがなければ新橋ではなく
同音異句の火野、または日野だったのかな。
焔・炎(ほむら)とかも格好いいな。
カズマは笑顔を振りまく太陽として翠を笑わせ続けることを誓う。
気になるのは、ぶつかった時など衝撃を表す演出で、
血しぶきみたいな染みの効果を付けること。
今回のコップを手で割ったライバル校の神保(じんぼ)も、
自分で割って、自分で手を怪我したみたいに思える。

集中線だけでいいのに、血しぶきのような染みが誤読を招いているように思う。