池山田 剛（いけやまだ ごう）
うわさの翠くん!!（うわさのみどりくん!!）
第03巻評価：★★★（6点）
総合評価：★★☆（5点）
サッカーで司（つかさ）を倒す！翠（みどり）の決意は変わらない！！……なのに！いきなりキスするなんて司はいったい何を考えているの…？そのうえ、カズマに司との関係を知られちゃった。動揺する翠にカズマがマジ告白！カズマを男の子として意識しちゃってサッカーに集中できない翠だけど…！？
簡潔完結感想文
- キス対決。寝入っている隙にキスするカズマ VS. ここぞという機会に執拗に何度も求める司。
- ラッキースケベ対決。女性の裸に遭遇したら どうするか。焦って逃げ惑う？ 追い求める？
- 告白対決。アイツが好きだと言ったのに、このオレが言わないまま3巻を終われると思うか？
諦めなければ それまでは試合終了ではない 3巻。
この3巻において、いよいよ物語の基本構造が完成しました。
本書で提示される貞操観念や倫理観は決して私の好みではないですが、
なぜだか目が離せない魅力を持っている。
そんなヒール役・司のような性格を持つ本書。
翠を巡る 氷のような男と 炎のような男の2人の男の戦いの火蓋が切って落とされた…。
『1巻』では主人公・翠（みどり）と司の（色んな意味での）交わり、
『2巻』ではカズマが翠に惹かれる様子が描かれていたが、
『3巻』では いよいよ その3人が自分の立場を明確にし、試合開始のホイッスルが鳴り響く。
その試合開始の前に大事なのが、
3人の関係においては隠しごとのないフェアな戦いをするということ。
自分たちの過去と、そして現在の気持ちを表明して試合は始まる。
そこで一番重要なのが、翠と司の間には既に肉体関係があることだろう。
普通なら、こういう時に一番ショックを受けるのは被害者で女性の翠のはずなのだが、
本書ではヒロイン役は どちらかというと カズマなので（笑）、
彼の衝撃度が一番大きい。
翠のことを好きだと自覚したばかりなのに、
これまでの翠が司のことを 単純な憎しみだけではなく、
愛しさも込めて視線を送っていたことを理解してしまう。
翠の愛憎のこもった態度も、彼らの過去を知ればカズマにも合点がいくのであった…。
まるでアウェイでの戦いに単騎で乗り込むような状況のカズマだが、
彼は怯（ひる）むどころか、自分の気持ちを翠に初告白する。
翠が司を好きでも、そして既に身体を許していても、それでも好きだというカズマ。
司に抱かれたままの翠にキスをするシーンは本書を代表する1コマじゃないでしょうか。
ということで、最初の司の復讐の機会は、
三角関係が成立した、恋愛における試合開始の号砲と共に幕を閉じた。
今回は高校同士の練習試合。
次に相まみえるのは公式試合だろうか。
それまでに彼らの関係性（特に翠の心境）がどう変わるのかが見ものだ。
…と予想していたのに『3巻』の後半で早くも再開してましたね。
サッカーの合宿地が近いらしく、翠と司がイチャイチャしていました。
司の高校は合宿地が何個もある設定なんだろうけど、
東京から船で数時間の翠の育った島に合宿する意味はあまり見い出せませんね。
当たり前ですが、彼らの再会のための設定なんだろう。
でも、なんで乗りなれない船に乗って移動するのか。
司は積極的なスキンシップ、そしてカズマはラッキースケベが持ち味か。
そして、一番 裸の場面が多いのが翠という、やっぱり少女漫画らしくない展開。
何度も言うけど、少年誌よりも大胆な女性の裸がある少女漫画である。
そしていよいよ、翠が性別関係なく愛され過ぎていることが気になり始めました。
あからさまな逆ハーレム漫画ではないが、翠の過保護漫画には違いない。
1年生でスタメンで出場した試合の後半に行方をくらましたことも お咎めなし。
合宿でも単独行動してるし、サッカーが上手くて顔が良ければ何しても良いという特権は、
どこぞの学校の司くんに通じるものがある。
もしかしたら天然のワガママ同士で気が合っているのかもしれない。
カズマが自分の気持ちを公にしたことで、翠は人生初の愛の攻めを体験する。
これは本書ならではの逆転現象だろう。
既に性体験はしているが、その相手からは（この時点では）告白はされていない。
男性からストレートな好意の言葉を投げかけられるのに慣れていない翠。
これまで奥手だと思っていたカズマが、
実は翠に女性として愛される喜びを与えてくれる人になるのは予想外で、そして絶妙な構図である。
愛を語ることは司が使えない禁じ手である。
ドＳではあるけれど、愛は囁かない司、優しいがストレートに愛を表現するカズマ。
その逆転の構図が とても面白い。
これは、カズマにも勝機が見えてきたかもと思ったら、
翠がカズマを意識しすぎるために、カズマの気持ちを早くも拒絶。
しかし一度動き出したカズマは止まらない。
自分が翠を好きであることは止めない。
自分が成長することも止めない。
カズマの恋愛暴走機関車が、彼をただただ前に進ませていく。
そして一度キスをしたら止まらないカズマ。
『3巻』だけでも3回、『2巻』でバスの中と合わせたら4回目だ。
付き合ってもないのに、もう望みがほぼ無いのに4回。
これも少女漫画としてはありえない回数ではないか。
性行為をしたら捨てられ、振ったはずの相手から4回のキス。
色々と ぶっ壊れている漫画です…。
そんな中、物語の小休止的に使われるのが 少女漫画あるある の風邪の看病回。
これは下宿先の1年生たちの紹介を兼ねる意味合いもあるみたい。
まぁ、1年生と翠との絆、というよりも、翠への下心が育っただけといえますが…。
他方、司の学校の内部事情として出てくるのが後輩の久里浜（くりはま）くん。
彼は司の数少ない理解者の役割なのだろうが、最後までそれほど活躍がない。
司が心を許す数少ない相手の明（あきら）と統合しても良かったのではないか。
この際、久里浜くん もまた男装していたら面白かったが（笑）
さて『3巻』はカズマの告白で幕を開けた。
それを逆転、少なくとも同点に持ち込むのが司の流儀。
ということで最後には…。
物語の作り方は本当に上手いですね。
司もサッカーのプレイはともかく、恋愛においてはフェアプレイだし。
続きや結末が気になって仕方がない。
ただ、気になるのは裸の描写の下品さ。
『1巻』でも翠のサッカーのユニフォームが脱げたが、
今回はカズマのズボンが下がって大変なことになる。
なぜだが両方の場面で下着の存在がないことになっている。
これは読者サービスのため？
作者が女性で少女誌だからか女性の裸に抵抗がなくて、
そこに少年誌のような乗りで裸のトラブルを描くから恥じらいというものが感じられない。
男性兄弟に挟まれた作者、そして作者の読書遍歴的には普通の感覚なのだろうけど、
少女漫画としては やっぱり品がない。
あと、前々から気になっていたが、
3年前の夏休みに初めて出会った翠と司の体型や言動が幼過ぎる。
3年前でも司は もう中学2年生。
なのに翠の膨らみ始めた胸を見てのリアクションが、幼稚園生のそれである。
3年間で変わってしまった司ではなく、
逆に3年前までの幼過ぎる司の方が気になる。
