《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

エースの不在と不調で失点を重ねるのは、俺たちがチームとして弱いからだ…。

うわさの翠くん!!(5) (フラワーコミックス)
池山田 剛(いけやまだ ごう)
うわさの翠くん!!(うわさのみどりくん!!)
第05巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

司(つかさ)に認められたことが、泣きたくなるほどうれしい翠(みどり)。そんな翠の影響でプレーに柔軟さを増した司が大活躍。城生学園は余裕でベスト16選出!ところが、城生の次の相手、開鳴高校のエース・神保(じんぼ)は翠が女だということを知っていて…!?

簡潔完結感想文

  • 翠 疫病神説。彼女がいなければ司は更生しないが、インターハイ優勝の可能性は高かったはず。
  • 不必要なスキンシップ VS. 身勝手なキス。変態の司だが、カズマもキスだけは積極的にしている。
  • エースとは精神的支柱。エースが精彩を欠くと弱体化する司の高校と、フォローする翠の高校。

がままは女の罪、それを許してしまうのが男の罪、の 5巻。

ヤり捨てられた天才サッカープレイヤーに復讐するため、
男装して男子校に入学した翠(みどり・女性)。

そんな彼女のドキドキ男子サッカー部生活を描いた本書。

だが 男子的生活をするのにはあまりに無防備な翠。

巻が進む毎に、どんどんと翠の性別が公然の秘密になっていくような気がしてならない。

しかもチームメイトにバレると男子校に在学し続けることが困難になるからか、
真実を知る人は敵チームのメンバーの方が多い。

しかも この『5巻』で暗躍する、ライバル校の神保(じんぼ)が、
翠を女性だと知ったのは、上半身裸の翠を、彼女をヤり捨てた男・司(つかさ)が
ロッカールームで40分以上抱きしめていたことが原因。

しかも神保はロッカールームを覗き見るという地味な行為で真相を知る。

翠も司も不注意極まりなく、自業自得としか思えない。
神聖なスポーツ場で不埒なことしてるからだよ…。

ここでは司の悪癖が出ましたね。
40分も寝たふりをして翠の胸の感触を楽しんでたのか、この変態は…。

司も悪いが、翠も女性として司に抱かれる喜びがあったからこそ、
彼の手を振りほどけなかったのだ。

せめて彼女が服を着ていれば、性別が一目瞭然にはならなかった。

トラブルに巻き込まれ続けるのが翠の運命だが、
彼女が適切な行動を取らないことが傷口を広げているように思う。

『5巻』で翠のわがままが目に余るようになります。


もそもロッカールームで裸になっていたのは、
以前、神保とのトラブルで背中を怪我していたからであった。

翠の そもそもの間違いは怪我を正直にチームに報告しなかったこと。
適切な処置をしないから、怪我は完治せずに長引く一方。

自分はチームの一員だという自覚が足りない。

その怪我にいち早く気付いたのが司。
胸の奥底では彼女を大事に想う司は、治療の一環として服を脱がせ、
その恩恵で40分も彼女を抱きしめていただけなのだ。

司の(当初の)目的は わいせつ行為ではなく治療だった、はず。


一方、試合を観戦していただけで翠の異変に気付いた司から遅れること数日、
翠のチームメイトのカズマも、翠が練習中に肩の痛みを訴えたことで彼女の異変に気付く。

この洞察力の差は翠への愛の差なんでしょうか。

怪我のことも性別のこともチームメイトたちがポンコツ過ぎて嫌になります。

病院に付き添ったカズマは、翠は1週間の絶対安静という診断を知る。

だが、司と戦う切符を自分のは手で掴み取りたい翠は、
怪我をしていることを隠して試合に強行出場しようとする。

それは乙女の願いだが、独善的なワガママでもある。
怪我も申告しないで、怪我してても自分は他のプレイヤーより上手だという傲慢も見え隠れする。
怪我している自分がチームの足を引っ張るということは考えもしないのだろう。

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カズマは自分に惚れている、だから言うことを聞くはず、という根底は神保と同じ恐喝をする翠(嘘)

カズマに抱きついて懇願するのも、汚れた目で見ると計算が見え隠れしてくる。
男装はしているが女性であることを あんまり隠そうとしないのも、男性への媚びなのか⁉

試合もそうだが、生活全体の翠のワンマンプレーは目に余る。
一生懸命、猪突猛進、といえば何でも許される雰囲気があるが、彼女は気配りがない。

カズマもまた翠の秘密をチームに隠しごとすることに葛藤し、翠との仲も険悪になる。

だが、結局 許されるのが翠。

翠における北風と太陽の、太陽担当のカズマは翠に甘い。
可愛いは正義、なのだ。

あぁ、男性たちが苦悩すればするほど、翠が嫌いになっていく…。


して今巻で最も苦悩するのが司。

『5巻』の司は、不良の更生物語みたいですね。

一度、悪の道に入ってしまったが、最愛の女性と巡りあうことで更生を誓う司。

真っ当に生きることを証明したはずの司だったが、
自分の過去がいつでも悪の道へと踏み外すことを誘っている。

やがてロッカールームでの長時間の変態行為が覗き見られていたことが発覚し、
それを目撃したチンピラに強制的な取引に応じさせられる。

最愛の女性の秘密を守るために、司は再び堕ちていくしかなかった…。

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更生を誓った元 穢れたエース VS. 恐喝で精神的に動きを封じる小悪党のエース。

エースでありながらヒールでもあった司が、
小悪党の神保の言いなりになっている。
それを可能にしてしまうのが、司にとって翠がアキレス腱だからである。

司が実は誰よりも愛に生きる人である証拠でもある。

翠にとって北風と太陽の役割だと思っていた、司とカズマ。

しかし司に対しては、理事長が北風で、翠が太陽みたいだ。
その存在だけで司の心を温め、生き方をも変えていく翠。

しかし、世間の風は冷たく、司はまた自分の心に何枚もの服を着こんでしまう。

自分の敗北で、翠を守れるなら、と八百長に手を貸す司。

しかし司がかつて自分の異変を察したように、翠もまた彼の異変を察知する。
そこで真相を知るために駆けつけるが…。

司の過去の真相は、次巻まで引っ張る様子。


そもそも論ではあるが、翠が怪我を自己申告して完治させれば、
いや、翠が男子校に入学していなければ、と翠 害悪論を展開させたい気分である。

翠は自分のワガママで、男たちが余計な気苦労をしていることを自覚しているのだろうか。
司に関しては そもそもヤり捨てた罪があるので、同情も半減するが。

でも、翠を守るために口をつぐむカズマと司を描く対比構造は本当に上手いですよね。
司もカズマもどちらの愛も等しく深い。

そして男を無駄に悩ませる翠の罪は深い。


…にしても司の高校は司抜きだと守備力も落ちるのでしょうか。

以前(『2巻』『3巻』)の翠の高校との練習試合でも、
司が出場した前半は2-0で折り返したのに、
司が翠とロッカールームでイチャイチャしていた後半には2点取られ、
最終的には3-2というスコアになった。

今回も司の動きが封じられているためか、最終的には4-2で敗北。

司が大したことないと思うプレイヤーの神保にいい様にヤられるとは、
チームメイトのディフェンス力が弱すぎる証拠か。
それとも司を精神的支柱にし過ぎているのか。

これは司の敗北ではなく、チームの敗北なのかもしれない。

司の学校としては、チームのターニングポイントとなる敗北だろう。
まぁ、本書においては試合でいてもいなくても同じチームメイトなんだけど…(汗)