《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

主人公の親友役という おいしいポジションだったのに出番激減。親の14光だから⁉

f:id:best_lilium222:20210302172126p:plain
山田 南平(やまだ なんぺい)
空色海岸(そらいろかいがん)
第02巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

フリーマーケットで朝たちとトラブルを起こした青年・幹夫(みきお)。実は彼は若手の人気シーボーン・アーティストだった。その後再会を果たした天人(てんと)と幹夫は、お互いの作品から刺激を受け合うように。そんな2人を見守る朝だが…⁉ 一方、長い間離れて暮らしている母親から突然の連絡を受け、実家を訪れた陸(りく)。陸・天人兄弟と母親の間に立ちふさがる悲しい過去が明らかに…!! 運命のビーチサイドLOVEストーリー、急展開の文庫版2巻。

簡潔完結感想文

  • 男同士の刺激。トラブル男・幹夫との再会で真剣にアートに向き合い始めた天人。弟子立入禁止。
  • 女同士の刺激。ライバルだけど恋の相談に乗るし、ピアスの穴も開けっこするし、一緒に寝るし。
  • 仲直り。同じ人を好きでも捉え方は違う。大人になりきれない子供みたいな父親に似ている人。

体的に、精神的に刺激を与え合う ライバルたちの 第2巻。

『2巻』は恋愛問題よりも、友情や家族の問題に焦点が当たっている感じでしょうか。

主人公の朝(とも)は、元・不登校で留年している女子生徒・ミチルとグンと距離を縮める。

今回で2年生に進級し、親友の杏梨(あんり)、
シーボーンアートの師匠・田中 天人(たなか てんと)と共にミチルも再び同じクラスになった。

朝とミチルは、同じ男性に同じ想いを抱く者同士であるが、
朝の泰然自若とした性格からか、それも2人を結ぶ絆のように共通点として歩み寄る。

ミチルもシーボーンアートに惹かれ、そして確かな審美眼を持っていることが判明。

毎朝、朝と海で漂着物を探索したり、ピアスの穴をあけあったり、お泊り会をしたり、
朝と居ることで、ミチルの眉間に寄っていた皺が少しずつほぐれていくのであった…。

f:id:best_lilium222:20210302185739p:plainf:id:best_lilium222:20210302185733p:plain
同じ釜の飯を食って、同じ布団で寝れば もう親友。杏梨さんはお役御免⁉

ただ、ミチルと朝の交友が深まるにつれて、
当初から朝の親友として存在していた杏梨が、
一層なおざりな扱いになっていることが気にかかっていたのですが、
どうやら この杏梨、作者の代表作である『紅茶王子』の流れを汲む人らしい。

なので杏梨という存在自体がファンサービスみたいなもんであって、
本書における彼女の存在が薄くても あんまり問題はないのかな?


そして男性陣は朝たちが初めて参加した
フリーマーケットで失礼な客だった幹夫(みきお)と天人の交流が始まる。

こちらも同じ、シーボーンアートが好きだという共通点から心の距離は急接近する。
同じ年の、同じ物に惹かれるライバルとして刺激を受けつつも交流していく2人。

昨日の敵は今日の友、そして朝の存在がミチルを含めた4人の繋がりを確かなものにしていく…。

f:id:best_lilium222:20210302185714p:plainf:id:best_lilium222:20210302185709p:plain
朝の見たかった化学反応が早くも始まる。男性陣も一つ屋根の下、仲良く寝泊まり。

が、眉間の皺が薄くなってきたミチルと違い、
天人には ある感情が欠落していることが判明する。

それが笑顔。

恥ずかしながら幹夫の台詞が出てくるまで全く気がつきませんでした。

天人は、どちらかというと無感情人間だな、寝てるか、不機嫌そうな顔をしているな、
とは思っていたものの、高校生の彼には1回も笑顔が浮かんでいないことは思い当たらなかった。

『2巻』では朝への率直な愛の言葉や照れの感情が頻出するので、
どんどん人間らしくなっていって、兄の陸も朝に一目置くのが分かると思っていましたが、
まだ引き出せない感情があったんですね。

その原因は、6歳の時に失った双子の姉の事故と、それによって精神が崩壊した母だろう。

今回初めて、これまでほのめかされていた事故の真相が天人の口から語られる。

悲しい事故は生き残った者たちにも傷を残していた。


れは最善の手段を講じようと思った兄・陸も同じ。

本書では事実だけが語られて、各人の思いは想像する部分が大きい。

海に入ろうとしない、やや無感情な天人は分かりやすいが、
年長で明るい陸にとって、海は、過去はどういう存在なのか分からない部分が多い。

10年前、今の朝たちと同年代だった陸が、
結果的に命の選択をしてしまったこと、家を追い出されて一人で生きてきたこと、
その海でサーフィンに興じていること、彼の心中は推し量れない。

ただ、それでも罪悪感や後悔は確実に彼の心に巣食っている。

だから不意に、心が無防備になった時に本音が出てしまう。

今回、ミチルはそんな陸の姿を見てしまい怯え、陸と距離を取ってしまう。
そして朝は 情けない陸を叱りつけ、同時に心の中で愛おしく思う。

朝にとってその姿は、かつて夫婦喧嘩をした後の父親の姿に重なる。
ずっと明るい朝だが彼女の心にも根づいている苦い思い出はあるのだ。

これはちょっと今後の恋愛問題に繋がりそうですね。


喧嘩といえば、いがみ合っている幹夫とミチルも恋仲になったりするのだろうか。
ミチルには陸よりも幹夫を選んで欲しい気もしますが、そんな伏線もないのも確か。


『1巻』の1年生の時は文化祭が学校イベントで扱われてましたが、
2年生の今回は体育祭の模様が扱われている。

海沿いの学校は他の学校に比べて1.3倍ぐらい青春度が高く感じられるのは気のせいでしょうか。

空色海岸 3 (花とゆめコミックス)

空色海岸 3 (花とゆめコミックス)

空色海岸 4 (花とゆめコミックス)

空色海岸 4 (花とゆめコミックス)