宇佐美 真紀（うさみ まき）
ココロ・ボタン
第05巻評価：★★★☆（7点）
総合評価：★★★☆（7点）
ほんとの彼カノになったはずの新奈と古閑くん。しかーしなかなか甘い雰囲気にはならなくて！？相変わらず古閑くんに振り回されっぱなしの新奈がガンバル、文化祭。古閑くんから「自慢だよ」って、え！ほんと！？そして、街で偶然会った高校生作家・速水くんが古閑くんの友人だった！？お互い両思いで楽しいのになんだかハラハラする出来事が次々と。S系男子とのメロメロ恋愛ストーリー、お待たせの第5巻！
簡潔完結感想文
- スキンシップ不足。キスしたいと直接は言えないから「先回りのＳ」の古閑くんに察してもらいました。
- 本物のドＳ。初対面で「死」と書いて寄越す本物登場。古閑くんの予言では、きっと新奈を好きになる。
- スキンシップ過剰。勉強してたはずが、いつの間にかに抱き合い向かい合い、そして逃げ出していた新奈。
正式な交際が始まった感じが、やっと正式に出てくる 5巻。
この『5巻』から作品が長期連載シフトに完全に入ったのかな、と感じた。
正式交際の開始は『4巻』からだったが、
元カノ問題などが発生し、交際による しみじみとした幸せは感じにくかった。
しかし『5巻』では あからさまな邪魔者は登場せず、
学校内のイベントや、日常の生活の中における2人の交際の様子が描かれていく。
派手な事件こそ起きないが、主人公の新奈（にいな）は常に恋人・古閑（こが）くんに、
ドキドキしっぱなしなので、読者もまた その胸の高鳴りを共有できる。
褒め言葉として、本書は佳作というに相応しい作品で、
ちょっと彼氏に振り回される面もあるけど、お互い想い合い、
毎日 新しい好きが生まれる幸せな漫画だと思う。
これまでは立て続けに恋の邪魔者が入るだけの展開が多かったが、
ここからの ゆったりと幸福な空気感こそ、本書にマッチしていると思う。
長期連載にシフトしたように思えたのは、登場人物の使い方にも表れている。
『5巻』からの新キャラ・速水 学（はやみ まなぶ）は、
これまでのように短期的に2人の恋愛を邪魔をしに絡んでくる人ではなく、
古閑くんの友人として、長期的に関わってくることが予測される。
まぁ、彼の役割が どこにあるのかは明白なのだが、
ゆっくりと関わってくる分、これまで以上に深い心理描写が見られる、と思われる。
あと、旧キャラでいえば、文化祭回で特進クラスの千堂（せんどう）さんが
久々に登場して嬉しかったなぁ。使い捨てされてなかった！、と安堵しました。
このまま最後まで2人の交際を認めないキャラで いてくれないかな（笑）
交際中の物足りないスキンシップへの不満と、
そして反対に過剰なスキンシップへの不安が描かれているのが『5巻』ですね。
校内で友人カップルがキスをしているところを目撃した新奈は、
正式交際が始まった日以来、古閑くんとキスをしていないことを気にし出す…。
新奈の企みは古閑くんにはお見通しなのが基本形なので、今回も即座に見抜かれる。
自分の あさましい欲望を見抜かれたようで、新奈は赤面してしまうが…。
この回は本書の基本をちゃんと抑えた上で、交際の難しさと喜びが同居している良い回だ。
それと対を成すのが、古閑くんの家での2人きりでの勉強回だと思う。
勉強をするはずが、いつも通り古閑くんに からかわれて赤面する新奈。
軽いスキンシップのイチャイチャと仲直りだったはずが、
抱きしめられ、正面から新奈の顔を見つめる古閑くんの表情は いつになく真剣で…。
新奈は きっと古閑くんに性の匂いを感じたのではないか。
これまでは ままごとみたいな恋愛とキスで、古閑くんは古閑くんで、恋人であって男性ではなかった。
だが古閑くんの表情の中に、端的に言えば、性欲を嗅ぎ取った新奈は、
改めて自分たちが男女であり、性的な関係性を持つ間柄になったことを実感した。
そうして古閑くんを意識しすぎて、正式交際以前のように空回りする新奈。
少しだけ、ギクシャクと緊張感をはらんだ関係になったまま、
初めてのクリスマスを迎えるこのになるのだが…。
ここでも、ちゃんと「先回りのＳ」の持ち主の古閑くんは、
きちんと新奈の恐怖を感じ取って、誠心誠意の言葉で彼女を安心させてくれる。
自分の欲望さえ ちゃんと伝える古閑くんは やっぱり素敵な人ですね。
さて、古閑くんは もう一つ「先回りのＳ」を発動させて、友人・速水へ釘をさしている。
高校生小説家としてデビューした速水は、古閑の昔からの友人で、
古閑は彼に新奈のことを報告するぐらいの仲の深さであった。
新奈は本屋で見かけて以降、速水と何かと縁が出来るのだが、
速水の方は新奈のことを邪険に扱う。
邪険に扱っても、めげないのが忠犬・新奈の性格で、
速水の悪意にも素直な言葉で返事をするから、速水の調子は狂ってばかり。
速水は自分が認める古閑ともあろう人が、新奈のようなアホの子と交際しているのか疑問に思う。
「オレはわかんないな なんで あれがいいのか」
と友人らしい忌憚のない意見を放つと、古閑は
「わからなくていいよ わかったら お前 好きになるかもしれないし」と返す。
これは彼女の贔屓が激し過ぎる彼女バカの発言ではあるが、まぁ予言でもありましょう。
長期連載シフト突入なので、この三角関係の決着は、まだまだ先になりそう。
さて、この速水は正統派の少女漫画におけるドＳっぽいですね。
表面上は優しい古閑と違い、表面上冷淡で、そして口が悪い。
あくまで私の印象ですが、『オオカミ少女と黒王子』の佐田 恭也（さた きょうや）くんに外見も性格も似ていると思った。
驚くことに掲載誌は違うが、本書が2011年2月号で速水初登場で、『オオカミ～』は2011年7月号から連載開始。
同じような時期に、男性がドＳで 天パっぽい前髪の白い髪（漫画上は）に加えて、
自分の周囲を まとわりつく くじけない心の女の子に段々 心惹かれていく話が始まっている。
そして女性を犬っぽく描くところまで似ている。
偶然の一致じゃなかったら問題だが、これは偶然の一致だろう…。
ココロ・ボタン 5 (Betsucomiフラワーコミックス)
- 作者:宇佐美 真紀
- 発売日: 2011/04/26
- メディア: コミック
