《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

奪われた主役の座を取り戻すための舞台。人格を整形しても私は勝つ!

好きっていいなよ。(8) (デザートコミックス)
葉月かなえ(はづき かなえ)
好きっていいなよ。(すきっていいなよ。)
第08巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

黒沢大和(くろさわ・やまと)と橘(たちばな)めいがつきあいはじめ、1年が過ぎた。そして迎えた文化祭。校内のアイドルを決めるコンテストにめいと大和、めぐみが出場。大和と2人でグランプリを目指して、自分磨きに初めて取り組むめいだけど、生まれ変わっためぐみに真正面から勝負を挑まれる。今までの人生が試されるような舞台で、めいは……?

簡潔完結感想文

  • ずっと文化祭回。主役の座を奪還すべく主人公の新たなる挑戦。えっ、なんで目立つの??
  • イジメ票イジリ票も含めて本戦に滑り込み。恋は盲目だけど、自分の性格を忘却してない??
  • 「めぐみさん 好きになっちゃ やだ…あっ あ…っ」。負けたので女を出して甘えてみました。

ロインの努力を見せるために強引な力技で物語を動かす 8巻。

『8巻』は丸々 文化祭回です
中でもメインの企画は「ミスコン」的な位置づけの「アイドル★グランプリ コンテスト」。

男女ともに事前推薦の上位 各5人が文化祭当日にファッションショーに参加して、
会場投票でグランプリが決まるというもの。

しかし問題なのは男女のグランプリは後日デートの特典があるということ。
大和は自分が「出ないっつっても……おそらく推薦多数で強制出場させられる」らしい。

1位になる可能性の高い大和の出場を気に病む めい に周囲の友達は めい の出場を促す。
形式だけのデートも嫌がる めい は自分もコンテストに参戦する覚悟を決める…。

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「脚 太いし、お尻でかいし」って、そんなことないよー、って言われる気満々でしょ⁉ 実は自信家か??

ーーーー、謎展開すぎる。

俯瞰的に見れば、作者はここで めい をもう一度動かす使命があったのだろう。

これまでも何度も指摘しているが、めい は既に悟りの境地にあって、
物事に動じないし、誰かを指南する役にまで達している。

そんな彼女に主体性を取り戻させて、
彼女が もう一度努力するという過程を描きたかったのだろう。

そしてそれは、主役に取って代わろうとする勢いの読モ・めぐみ との冷たい戦争でもある。

直接的な対決ではないけれど、
恋人として女性として負けられないというプライドが彼女たちを突き動かす。

物語を めい の手の中に戻すこと、彼女が努力すること、
そんな動きのある文化祭回にするために、めい の出場は作者の中で決定事項であった。


が、ちょっと その論理には ついていけない。

大和の強制出場が ほぼ決まっているのなら、
大和が他の女生徒とデートすることを阻止するのは、
お互いが1位を取るか、取らないかの2択。

で、なぜか本書では お互いに1位を取ることを目指す。

なんで??

大体、大和が1位になる前提で行動していることがおかしい。
そして大和もそれを否定しないところがナルシスティックな気持ち悪さを醸し出す。


これもまた俯瞰的に見れば、大和が手を抜くことで1位を取れない展開は
漫画として読者が読んでも面白くない展開なのは分かる。

文化祭回の目的は めい に能動性を取り戻すことだから、
めい もまた上位(というか優勝)を目指す心持ちでなければならない。

…のは、分かるのだが、彼氏のデートが嫌すぎて、
本来、目立つのが嫌いな自分を簡単に脱却するか、というのは大きな疑問として残る。


これは序盤から思っていたことだが、
そもそも めい はそんなに自分の世界を変えたいのか?という根本的な疑問がある。

大和に好意を持たれたことで、めい の世界が変わったのは分かる。

大和が大和一派の男女を次々に あてがってくれたお陰で、
嫌なことも経験したけど、世界が広がったのも分かる。

でも、めいって暗い自分を卑下している訳ではない。
そして上述した通り、既に悟りを開き、自分の確固たる意見を持つことが出来ている。

そんな人が、特典デートのためだけに、自分を晒しものにするのかが やはり分からない。

めい の整合性が(一段と)見失われていく。


校で生徒公認のイジメられっ子の めい が なぜ事前投票で勝ち残ったのかは描かれている。

大和との交際を快く思わない者たちが当日の会場で
めいを「さらし首」にしたいという画策が働いているらしい。

めい に投票した76票中65票ぐらいはそんな思惑が働いているだろうか。

めい はまだ何十人もの生徒に快く思われていないんですね。
作中で めい がイジメられる描写は少ないので、改めて嫌な気持ちになります。

ただ、めい に出場を勧める あさみ や愛子(あいこ)にも無責任さや悪意を感じる。
めい という女性がどういう性格かを全く考慮していない。
本当に友達なのか?と思わざるを得ない。

まぁ出場を決意する めい も めい だけど。
おだてたら木に登っちゃうなんて…。


ぐみ との間接的対決は お互いにヘアメイクまで付けて
本気を出したということなんだろうけど、これまた微妙な展開。

気難しい美容師と評判の大和の兄・大地(だいち)に めい は気に入られた。
何だか めい は特別な何かを持っている的な、無条件・自然体で愛される感じに辟易した。

大地の審美眼に弾かれた あさみ や、
自力でコンテストに出場する愛子が可哀想になってくる。

今回は全体的に主役優遇が過ぎる。


コンテストの舞台上で めい が自分語りを長々するのは いつものパターンである。
なんだか最終回とか卒業式の答辞のような展開だったなぁ。

コンテスト後の
「めぐみさん 好きになっちゃ やだ…あっ あ…っ」
というのも、私の中での めい には似つかわしくない台詞。

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正々堂々とした勝負に負けたので、女を振りまいてみました。ちょっと卑怯じゃない、めいさん?

時折スイッチの入る めい の「女モード」。
この時の めい は女性成分が高すぎて、私はヒいてしまう。
いつもの悟りモードはどこに行ったの?


そして大和も大和で めい のことを気遣っていない感じがする。
めい の努力が報われないことを少しも考慮しないで前に進むだけ。

自分は1位になるから、お前も頑張れ的な上からの応援。

どんな結果になっても めい の努力する姿が見たい、という包容力を感じない。

本当に大和には広い視野とか配慮もないですねぇ。

きっとラストに甘い言葉を囁けばいいと思っているんだろうなぁ…。


そういえば『2巻』で登場したっきり、
大和一派に入れてもらえなかった駆流(かける)が久々に登場してましたね。
これが最後の登場かな?

登場人物総出演もお祭り感を演出しています。