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少女漫画と小説の感想ブログです

獅子尾先生の行動が、ゆゆかちゃん ぐらい あざといと思う私の心は汚いのでしょうか。

ひるなかの流星 2 (マーガレットコミックスDIGITAL)
やまもり 三香(やまもり みか)
ひるなかの流星(ひるなかのりゅうせい)
第02巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

担任の教師・獅子尾への特別な感情に気付き始めたすずめ。とまどい、気持ちを否定するけれど、その想いは加速してゆきます。そんな時、クラスメイトの馬村がすずめに対して驚きの行動に出て!?

簡潔完結感想文

  • 2つの勉強会。意識しすぎて変になる すずめ。意識してもらいたくて行動に出る馬村。
  • 少女漫画では遠足=遭難。いつも助けてくれる獅子尾先生、少し役立たずの友達の馬村。
  • 下の名前。名前で呼ばれることに過剰反応する先生を、気軽に名前で呼ぶ女性が現れて…。

場人物 全員片想い、の配置が完了した 2巻。

ハチクロみたいに学校生活が片想いの思い出だけだったりして…。

ゆっくりと恋を自覚していったり、
唐突に思わぬ行動に出たりする彼ら、
私は嫌いじゃないです。むしろ好き。

主人公の すずめ が恋愛関連で悩んだりしなさそうなのに悩む姿が可愛らしい。
これまででも、すずめの大食いキャラが何度も出てきましたが、
今度はストレスによる過食になりそう。

スローに見せかけて展開が早い、緩急が自在な漫画です。


話は、『1巻』のラストからの続き。

すずめの担任の獅子尾(ししお)の担当する世界史のテストの点数が悪かったことが、
同居の叔父・諭吉(ゆきち)に露見して、
急遽、家庭教師として獅子尾が すずめの部屋に訪問した場面から始まる。

この少し前から、獅子尾へ特別な気持ちを持っていることを自覚した すずめ。
すずめが先生のことを意識し始めた上で、
密室に2人きりというドキドキの状況になっていた…。


ただし『2巻』での先生の言葉は予防線を引いたものが多い。

部屋での勉強も、すずめが意識しすぎて挙動不審な行動になれば
「そんな下心1つもないから安心しろよ」と言う。

また、獅子尾の下の名前が「五月(さつき)」だと発覚した際に、
思わず すずめが「五月」と読んでしまうと、

「オレは教師だし 君は生徒だから さすがにそれはダメでしょ」
「あと そういうのは特別な人が呼ぶもんだから」

と、明らかな一線を引いてくる。

獅子尾の言動が、すずめの気持ちをどこまで理解した上でのものかは分からないが、
どんな言葉であっても、自分には絶対に入り込めない領域があることを痛感させられる すずめ。

年齢や立場、経験が違うこと現実をまざまざと見せつけられている感じですね。
先生の優し過ぎて残酷な面が垣間見られた気がします。

そして、勉強会や「五月」呼びは、本書の中で違う場面でもう一度 扱われる。
『1巻』に続いて、物事が連鎖的に、または対応して起こる感じが好きです。

序盤は大まかなプロットが早い段階から出来ていたのかなと推測される。
願わくば、この良い連鎖が最後まで続きますように…。


女漫画では、山や森に行ったら男女で遭難するのがお約束。
海で溺れて人工呼吸、という一昔前のお約束よりも はるかに頻度が高いのではないか。

今回、遭難するのは すずめとクラスメイトで友達第一号の男子生徒・馬村(まむら)。

1泊2日の学校行事・親睦会での出来事である。

先生への想いに気づき始めた すずめが思考を整理しがてら散歩に行ったら、道に迷う。

が、すぐに馬村に声を掛けられ一安心。
と思ったら不注意から ちょっとした高さの崖から2人とも落ちてしまい…。

馬村が すずめを追ってきていたのは、彼が すずめの姿を目で追うようになったからだろう。
そして、すずめ が行方不明だということを知って必至で助けに向かう獅子尾先生。

何だかとても面白い展開になってきました。
この遭難騒動の中で2人の男の気持ちが交錯している。

しかも、すずめの気持ちは自覚しつつある。
ということは、恋の決着もそろそろかと予測されるが…。

すずめにとっては先生に助けてもらう、
雨に打たれ高熱が出始めて意識が遠のいていく中で浮かぶのが先生であった、
という一連の恋愛イベント。

すずめが困っている時はいつも先生が助けに来るというのも
本書の最初からお約束の形である。


だが、立場を変えればこれは馬村の恋愛イベントでもあるんですよね。
気になり始めた女性と2人きりで長時間話したり、
自分の服を彼女に着せてあげたり、
「吊り橋効果」もあって馬村の恋心は一層 募ったことでしょう。

ただ、すずめが朦朧として倒れた時に、
自分は彼女を背負ってやれるだけの力がなかった。

教師である獅子尾が すずめにしてやれることを全部してしまった。
それは馬村にとって男として完敗した苦い経験になったのかもしれない。
馬村の獅子尾への対抗意識の萌芽かもしれません。

帰宅後の馬村は筋トレに励むかもしれません。


ただ、その後の獅子尾が寝込む すずめに持っていくホタルなど、
(この出来事も馬村は見逃さない。ストーカー化してる⁉)
全体的に ちょっと胸キュンイベントが わざとらしい。

連載の各回で胸キュンを創出しなければならない苦労は いかばかりかとは思うが、
単行本派としては、それらが少しずつ物語から浮いているような気がしてならない。


頭での獅子尾との勉強会に続き、期末テスト対策として
クラスメイト達との勉強会が開催される@叔父さんのカフェ。

男女7人で行われた勉強会。
すずめの世界が広がったなぁ、と開催したことに感動を覚えてしまう。

この会は結局 勉強はほとんど捗らなかったが、
クラスメイトの仲が一層深まる会となった。

まず、性格に裏表がある ゆゆか が不真面目な すずめの勉強態度にキレ、
彼女の二面性が、その場にいた全員にバレることに。

好意を寄せる馬村の前で本性を表してしまったことに動揺する ゆゆかを見かねた すずめが、
今度は勝手に自分だけが知る馬村の秘密・女性への免疫ゼロ をバラしてしまう。

馬村は完全に巻き込まれ事故でしたね。
そして、馬村のは唐突な展開的にも反応的にも ちょっと分かりにくいかな。
最初、どういう意味⁉と考えなければならなかった。

この馬村の習性を中学校からの連れ合いである、
犬飼(いぬかい)と猿丸(さるまる)も知らない設定はどうなんだろう。
まぁ、馬村が鉄壁の防御をしていれば知らないままか…。


馬村は、自分の秘密が すずめにバレた時(『1巻』2話)に、
「誰かに言ったらぶっ殺すからな!」と頭の悪い脅しをしていた。

その秘密を勝手にバラしてしまったお詫びに、
馬村から殴られることを覚悟した すずめ。

だが、馬村は意外な行動に…⁉

これでまた面白い展開になってきました。

崖から落ちてきた時に乗じてのハプニングなどではなく、
馬村が自分から能動的に動いた、というのがポイントですね。

後で、この行動の理由を聞いた すずめに対して、
馬村は「自分から触れた女(ヤツ)はお前が初めてなんだけど」と答える。

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ちょっと 純粋な おのこ心を茶化すなんて、最低なことなんだからねッ!

いいですね、この癖のお陰で、
馬村には他の女性に走る可能性も低いんですから。
ってことは、ゆゆかも可能性が限りなく低い訳だが…。

そして誰かさんと違って元カノ問題とは無縁の馬村なのです。

段々と獅子尾と馬村の対比構造が明確になってきた感じですね。

これによって、今のところ一方通行の4つの恋(ゆゆか → 馬村 → すずめ → 獅子尾)が確認されました。
この図式がどう変わるのか。
どの矢印が両方から線が結ばれるのか。

そして恋か友情か。
恋愛初心者のすずめにとって難題ばかりが待ち受ける。

そんな複雑な人間関係に悩むすずめは「することリスト」作成。

頭の中がバレバレである。
こんなことして叔父さんにバレるのも時間の問題だが、
今回のリストには直接的なことは書いてないか。今回は。


て、もう一つ同じ話題が繰り返されるのは獅子尾先生の名前問題。

『2巻』のラストでは獅子尾のことを「五月」と呼ぶ女性が登場。
その直前に、過去のお付き合いのことなど言っている分かりやすい展開です。

にしても獅子尾って過去の恋愛を引きずるタイプみたいですね。
長ーく心にとどめておくんですね。
一見、軽薄そうに見えるが性格的には粘着質のウジウジ君か。

その女性は獅子尾と諭吉(すずめの叔父)との共通の友人でもある・つぼみさん。
そして想像通り、獅子尾の元カノです。

ベリーショートの髪型が大人感を引き立てている。
というか獅子尾や馬村よりも髪が短い。

髪型で言えば獅子尾の長い髪はあまり好きではない。
結んでいる姿など、こういう人って自分の容姿に自信があるから結ぶんだよねー、と偏見を丸出しにする私でした。


この元カノ登場で発覚するのは獅子尾は鈍感だということ。
そして元カノ・つぼみ は敏感。

獅子尾は すずめの乙女心をちっとも理解していないらしい。
名前の件で すずめに一線を引いたのも、自分の過去の痛手を思い出したからだし。
割と自己中な、視野の狭い男なのかもしれません。


初登場以来、頻繁に現れる元カノ。
そこに対抗意識や嫉妬心を見せるすずめ。
恋は綺麗事だけじゃないということを示しているのか。

これによって恋の輪郭がより際立ったのではないか。
こればかりは、過去がクリーンすぎる馬村には出来ない。
先生が大人だからこそ引き立されるビターな感情なのだ。

そうして、すずめ は保健室で熟睡する獅子尾を見つけ、
出会った日に発見したうなじのホクロに触り、
想いを発してしまうのであった…(以下、続刊)。

良いところで終わりますね、ホントに。
ずっと展開が早いところが好きです。

しかし獅子尾は寝言で すずめを呼ぶとかワザとらしいですよね。
(その直後、目を覚ましていることから、
 ホクロを触った時点で起きていたんじゃないかという疑惑を持ってしまう。
 獅子尾はそういうズルいことをしそうだもの)。

→ その真相は『3巻』で語られていました。

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髪を結んだり、眼鏡をかけたり、寝言を言ったり、ぜーんぶ獅子尾の計算なんだぞッ!

そういう意味では胸キュン担当の獅子尾は、
素で行動している馬村に比べて損な役回りですよね。頑張れ。

そして先生、タイバニネタを引っ張りすぎる。
アニメの放送前後の連載で、作者の熱が入っていたのだろう。


一方で馬村は最近、欲望に正直すぎるところがある。

ゆゆか に夏休みに遊ぼうと誘われると
「あいつがいるなら 行ってもいい」と答える。

これは馬村らしからぬ発言ですね。
そして、馬村も自分の気持ち以外は気づかない天然鈍感野郎なのかもしれない。
女性ばかりに気苦労が多い漫画ですね。

そして、ゆゆかは何かに感づいているはず。
ややこしいことに なんなきゃいいけど。


巻末に収録されている ふろく漫画は大層面白そう。
特に一匹狼設定の獅子尾を好きになる過程が見たいかも。

狼なんだか獅子なんだか、動物混ざりすぎてますけどね。