《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

おまえが学園の王子様なら、俺は 赤髪のプリンスさまっ だぜ☆

L・DK(16) (別冊フレンドコミックス)
渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第16巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

幸せいっぱいの葵と柊聖の前に謎の男が現れた!! 柊聖と深い関わりがありそうなこの男、なにかと葵に難癖をつけてきて…。だけど、ここで黙ってる葵じゃない! 2人のラブ・同居に危機が―?ドキドキが止まらない、ひとつ屋根の下、青春ラブストーリー!

簡潔完結感想文

  • 最後の大物新キャラ投入。久我山一族で 柊聖にも劣らない設定を引き下げて物語を かき乱す。
  • アメリカ帰りの赤髪男は、人の彼女にケチをつける小姑のような価値観の持ち主。ガッカリだぜ!
  • まさかの男女3人同居スタート。性行為をしたら世界が終わるので、世界の崩壊を遠ざけるために。

学期が始まって あからさまな新展開 かつ 新章突入の 16巻。

2巻以上に亘った夏休みも終了し、新学期が始まった『16巻』。

高校生の夏休み明けと言えば、休み中に一体 何があったの⁉と驚く高校デビューがあったり、
新しい仲間、転校生が転入してきたりするサプライズがあったりします。

その両方を兼ね備えた驚愕の人物こそ、今巻からの登場人物・久我山 玲苑(くがやま れおん)。
そう苗字から推測できるように、本書のヒーロー久我山 柊聖(しゅうせい)の親戚です。

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アメリカ人ってガム噛んでいるイメージ。これ以降、噛んでたことあったかなぁ…?

赤髪で アメリカからやって来た玲苑(ハーフという情報あり)。
柊聖がアメリカにいた間(小学生の間だと思われる。設定自体があやふやなもんで…)、
同級生として過ごした兄弟のような親友のような存在らしい。
(日本の学校では1学年 下になるらしく、玲苑は高校2年生として転入)

『4巻』でも同じく久我山姓の いとこ・桃(もも)が登場したが、
玲苑と兄弟という訳ではなさそうですね。
柊聖は母親や母方とは疎遠でしょうから、さすがに彼が最後の親族出演ですかね。

とあるミッションを背負って日本にやって来た玲苑。
その任務を遂行するまでは、しばらく日本に滞在する。

今回は作者も長期戦となることを見越した上で、久我山一族の最終兵器を投入したのだろう。

ただ 玲苑も、葵の一回り以上 歳の離れた妹・苗(なえ)同様に後付けの設定なので、
兄弟のような親友のような間柄であっても、これまで柊聖の口から一度も出てきませんでしたけどね…。


そういえば、おそらく生まれてから16-7年間ずっとアメリカ在住だっただろう玲苑。
日本語はどこで習得したのだろうか。
「英語 ちょー ペラペラだって」と驚くよりも日本語の習熟度に驚くべきだろう。

ハーフ情報が本当なら、家庭の中では外国人の母親が会得していない日本語を使用しないだろうし。
時代劇を見てた、って情報が後から出てきたような気がするが。

ここはもう玲苑は英語しか話せない設定にしてもらって、
アパートの中、そして漫画の中でホームステイにして、留学気分を味わっても良かったかもしれませんね。

葵と読者の英語力向上も夢じゃありません。
もしそうなってたら私は、この国から出国したと思いますが…。


苑の登場で物語に活気が生まれたことは認めよう。

ただ長い。彼の日本滞在、そして部屋の滞在が長すぎる。
日本には『16巻』から『22巻』の序盤までいるのだ。
いくら後半戦の要だからといって時間を掛け過ぎている。

しかも簡単に予測がついてしまう内容そのままに物語は進むのには、ガッカリだぜ!

柊聖との絆が深い玲苑が、柊聖の彼女を理想化し、
パーフェクトな人物を求めるのまでは理解できます。

ただ、それとは正反対のガッカリな彼女・葵の良いところを見つけるために、
3人でワンルームで同居を始めるのは牽強付会が過ぎる。

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人の彼女にケチをつけるアメリカ人にはこう言ってやりな! 割れ鍋に綴じ蓋、あばたもエクボ、ってな!

作者としては前代未聞の男女3人同居を何とかして実現させたかったのだろう。
3人の同居が作品にとってのカンフル剤になることを作者が一番痛感しているはずだ。
同居がないままでは卒業まで読者の興味と自分の発想が先細るばかり。

だから多少の無理や非難を承知で何とか同居まで こぎつける道筋を立てた。

思えば、今となっては自然に受け入れている葵と柊聖の同居だって不自然さは半端なかった。
ただ、あの時は葵に非があって、同居をしなければ学校の転校が待ち受けていた。

それに比べて今回は、動機が弱い。

柊聖としては、どちらも気心が知れた仲だろうが、葵にとっては出会って数日の見知らぬ赤猿。
今回は身の危険に加えて、恋人との間の闖入者に猛反対するのが普通だろう。

売り言葉に買い言葉、負けず嫌いの葵の性格を利用して、
何ら抵抗なく玲苑を家に招き入れているが、
誰も彼もがストレスを抱えることは必至。


う、今回の同居には夢がないのだ。
柊聖の場合は学園の王子様との同居という夢があったが、
今回は、狭い部屋での3人暮らしという貧乏臭さが抜けない。

転校早々、女子生徒たちが続々と骨抜きになっている様子を描くことで
玲苑もまた学園の王子様に匹敵する地位を確立したことを示しているが、
葵にとっては、玲苑の価値なんて今は無いに等しい。

なのに狭い部屋に3人押し込められる。
パーソナルスペースすら失う同居など夢が無さすぎる。
一気に苦学生になってしまった。

また、お世話になっているからって、柊聖が伯父さんに彼女の存在まで伝えているのも不自然。
玲苑も柊聖の彼女を格付けするなんて、小姑みたいなことしていて残念な人だ。
一番、器が小さいのは玲苑だったという初登場からガッカリのオチだ。


柊聖にとっては玲苑との同居は良い意味で、目の上のたんこぶという感じなんでしょうか。
葵と2人きりでは早々に理性を失いかねない自分だから、「性交渉禁止」お横断幕に加えて玲苑を配置。
そりゃ柊聖にとっては、ここが我慢のしどころだからウェルカムかもしれないが…。

葵にとってみれば新婚旅行に同行者がいる、といった気分なのではないか。
玲苑が家に居ることより、玲苑を家に招き入れた柊聖に不信感が増しそう。

持ち前の負けん気で玲苑を家に招き入れたからには、
今後スキンシップが足りないとか不平不満は一切言わないでもらいたいですね。

しかしこの時の葵は、玲苑に理解してもらう自分の長所をどこだと考えているんですかね。
家事全般ですかね?
それは「偉大なる柊聖の彼女」という玲苑の中の理想像の前だと霞むような気がするし。
家政婦としては有能かもしれないが、それだけだ!と一喝されそう。


『16巻』のラストで、葵が柊聖の彼女ではないかという疑惑が持ち出されますが、
玲苑が葵を庇い、葵は自分の彼女だと申告する。

出ました、偽装交際宣言。
そこからのー、本気で好きになっちゃうパターンだ、と予想したら、
本当にその通りの展開になっていく最悪のパターンでしたね…。
会話が面白くなってコメディ度は高くなりましたが、ラブ度はそれほど高くない。

にしても、柊聖という王子様に加えて、玲苑という新しいプリンスさまっ!も同居するワンルーム

『1巻』では柊聖ファンの女生徒が、アパートの部屋まで特定していたけど、
2人の王子の住居は特定されないんですかね。
ご都合主義というやつですかね。


『16巻』ではフラグが幾つか立ってましたね。

まずは玲苑には、柊聖をアメリカに連れ戻すという彼の父親と共通の願いがあり、
それによって、葵と柊聖がいつか遠距離になってしまうのではという不安フラグ。

そしてクラスメイトの波留(はる)と雄大(ゆうだい)の恋愛フラグも。
あれは回収されたのでしょうか。
全部、読んでいるのに忘れるという。
そのぐらいの内容です。


あと余談ですが、少女漫画で女性の体型イジり止めませんか。
細ければ女性としての価値が高いという価値観の押し付けです。
特に10代はコントロールが難しいところがあるでしょうし。

柊聖も葵のイジり方が一辺倒で つまらない男ですね。
30年後、中年太りしだした柊聖に復讐してやりなさい >葵。