渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第14巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
絆もますます強まって、葵(あおい)と柊聖(しゅうせい)の愛は鉄壁! だけど、なんだか周囲はざわついている。雄大と翔太の兄弟のことや、亘(わたる)と絵里(えり)の超・オトナのラブ同居のことも…。気になる展開から目が離せない!!描き下ろしショートも載って大充実♪ とまどい揺れる、ひとつ屋根の下・青春ラブストーリー。
簡潔完結感想文
- 実質1話の14巻。本編2話目と描き下ろしショートを読めば、あとは読まなくても問題ないかも…。
- LDKワールドを広げたい作者は作中作まで構想する。柊聖の意外なライバルは次元が違うぜッ!
- 義兄弟の友情にBLっぽさを感じるのは作者のせい? それとも読者の私の偏見のせい?
LDKワールドは広がり続け、二次元の中に二次元の世界まで誕生する 14巻。
残念ながら『14巻』には葵(あおい)と柊聖(しゅうせい)のメインのお話が一つもありません。
しかも『13巻』の内容を、順番 逆にして収録しただけなんです。
4話収録の『14巻』の1話目は『13巻』から引き続き義兄弟のお話、
2話目は葵が二次元世界へ旅立っていくお話、
3‐4話目が、柊聖の姉・絵里と三条のお話再び、という感じです。
辛うじて2話目が葵と柊聖のお話と言えなくもないのですが、完全にネタ回です。
しかも、そのネタは1話限定ではなく、その後の話でも頻出。
作者が、作中作の「まちのポリスさまっ!」の元ネタである「うたぷり」を好きかどうかは不明ですが、
ここにきてヲタク臭がするのは微妙な気持ちにさせられます。
これが主人公が腐女子の『私がモテてどうすんだ』の中での出来事だったら分かるんですが、
高校生の男女の同居というリア充の極みを描く漫画で、急に主人公をヲタク化させる展開には辟易した。
また多用されるギャグも今となっては残念な感じ。
漫画に時事ネタを入れると、漫画がそこから古びてしまう気がします。
2013年の流行語なので、2020年現在の「あったなー」とか「懐かしいー」という反応ならまだしも、
更に数年後の子たちには「何? ギャグ?」とポカンとされてしまうかもしれない。
本格的にネタに枯渇したのか、
作者が手当たり次第に取り入れたネタは、作品の価値を貶めるだけになったのではないか。
と、酷評しつつも、私は2話目が好きである。
良い話風でありながら、どこか薄っぺらい他の話に比べて、
ネタに走っているだけ作者の筆も自由に走っているように思えるからだ。
作者の持ち味は、スローで情感溢れる話よりも、
勢いに任せて描いたような話の方が活かされている気がする。


高校3年生の夏休み、葵が一番 熱をあげる物、それは柊聖でも勉強でもなくゲーム。
恋愛シミュレーションゲーム「まちのポリスさまっ!」に夢中で、
「全キャラ攻略して全スチル コンプして 特典の追加イベントまでゲット」する熱の入れよう。
(巻末の描き下ろしショートより。作者も葵たちの脇役っぷりを危惧したのか本編のカップル成分はここで補給されてます。
ちなみに、本書で一番胸キュンするのはこの描き下ろしだったりします)
その中でも一推しのキャラ、フランス人捜査官のカイン様が、
アパートの大家さんの家にやって来たから、葵は狂喜乱舞。
そのカイン様こと本名・アンドレ君はコスプレフェスに参加するために来日したらしい。
同じカイン様好きとしてコスプレの改良のお手伝いもし、
アンドレと同じ時間を共有する葵は、柊聖も勉強も目に入らない状態。
そんな葵の態度に柊聖は…。
葵自身は無自覚でしょうが、葵の暴走によって柊聖の見たことない一面を引き出されています。
それが実は負けず嫌いで嫉妬深い柊聖の顔。


姉の絵里(えり)に協力してもらって自分もゲーム内キャラのコスプレを仕上げてきた柊聖。
フランス語は、ある程度 喋れる設定の絵里に教えてもらったのだろうか。
結局、最後はいつも通り、柊聖がおいしい場面をかっさらう水戸黄門的な終わり方も含めて、
これはこれ1話の内に綺麗にまとまった構成のお話だと思います。
柊聖の葵に与える刑罰も良いですよね。
求刑という名の求婚です。そして一生一緒にいるという約束です。
この二次元キャラと現実の彼氏、どちらを採るかという問題は、前述の『私モテ』でも扱われた問題ですね。
大事なのは自分好みの外見ではなくて、互いに想い合える関係の彼氏だと主人公は理解する。
ただ本書の場合、柊聖までもコスプレをしてゲーム内キャラになってしまっている。
柊聖がゲーム内キャラ「タクヤ様」に似ているから葵が胸を撃ち抜かれたようにも読めてしまうのが難点である。
(一応、フォローはされているが。)
『13巻』に引き続き、興味がないのが雄大(ゆうだい)と翔太(しょうた)の義兄弟の話と、
姉の絵里と三条(さんじょう)の肉体関係から始まる恋愛の話。
なんと『13巻』で繰り広げられた話の続きが『14巻』でも読めちゃうんです。
誰も望んでないのに。
雄大たちの話は、柊聖が複雑な感情を持つ「家族」のお話、
そして姉である絵里は柊聖の大切な家族であるという共通点は見いだせますが、
同じキャストでの話が2巻続けて繰り返されるのは、葵たちカップルの存在を薄めすぎている。
雄大と翔太のお話は、やっぱりBLっぽい感じがします(腐フフ)
雄大は日記なんて付けちゃって、しかも大半が弟の話題なんて。
2人だけで過ごして、いっぱい思い出を作った夏。
最後は満点の空の下、2人は手を繋いで互いへの気持ちを告白する…。
絵里と三条の話は、柊聖と葵では描けない肉体関係、一線を越えてからの関係を重視しているように思う。
それが大人の恋や関係なのか分からないが、ちょっと上の年齢の読者層を狙ったのかな。
ただやはり、絵里に思い入れはないし、
彼女の性格を作者自身も把握しているとも思えないし、
一連の話は全部なくても作品としては問題ないので、評価としては微妙です。
しかし三条は、家を出るほど嫌がっていた「姉」という存在でもある絵里に惹かれるんですね。
三条が葵に恋するのは分かるんです。
姉たちと違って年下の女性は、天使かもしれない、という幻想を抱けるから。
もう1年経って、大学に後輩が出来たら三条は目移りしそうな気もするなぁ、なんて不吉な予言をしてみたり。
そして絵里と三条の姉たちは絶対に水と油のような存在だろうなぁ。
小姑たちの干渉で、彼らの未来は暗くなってしまうかもしれませんね。
最終のページに本書の悪魔まで再降臨。
葵と同じく、出来れば顔も見たくないですが、彼もまた「家族」だからなぁ…。
にしても、ここまでダラダラとお話が続くと、
作者は初期設定を間違えましたね、という感じが色濃く出てしまいます。
なぜなら今は高校3年生の夏だから。
柊聖にとっては「性交渉解禁」までの日数が短いから良いかもしれませんが、
作品やリアリティにとっては重大問題。
勉強の息抜きのはずのゲームは完全攻略しているし、
塾に通っている様子もないけど、自宅で勉強している様子もない。
これは設定を1年早めて、今が高校2年生の夏にした方が良かったですね。
やはり少女漫画は高校3年生が鬼門です。
リアルに描くと勉強三昧だし、恋愛要素強めると遊び惚けているように見えるからバランスが難しい。
まぁ、それもこれも短期連載のはずの作品が、ここまで伸びたという結果なんですけどね。
もし全24巻になるなら、作者だってもっとペース配分を考えたでしょう。