渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第09巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★☆(5点)
ドキドキが止まらない、ひとつ屋根の下♪青春ラブストーリー!!ついに柊聖と両想いになり、ラブ・同居の始まり☆かと思いきや、同居していることが父親にバレてしまった葵。葵はごまかそうと必死になるけれど、柊聖はマイペースで裸のおつき合いを!?
簡潔完結感想文
前巻から怒涛の展開の連続。それが終わったらどうなるの⁉ の9巻。
『8巻』でいよいよ両想いになった2人。
これでタイトルに込められていた、ラブ(L)同(D)居(K)がいよいよ始まりました。
ここからが本編。
俺たちの闘いはこれからだッ!!
『8巻』中盤で、両想いだからこそギクシャクしたラブ同居を1話挿んでから襲来したのは葵(あおい)の父親。
このラスボスともいえる存在に、どう矛をお収めいただくかが9巻の主なミッションです。
笑いを一切挿む余地が無かった両想いまでの道のりと違い、
そこかしこに笑いの種を蒔きつつ、自分たちの愛を貫こうとする2人がいます。
このところずっと暗く生真面目だった柊聖(しゅうせい)も自然体に戻り、
いつも通り、「超マイペース」に葵父娘を翻弄しております。
実質、内容的には『9巻』までがピークでしょうか。
『9巻』の前と後では売り上げ部数が大きく違うのではないだろうか。
私は今巻で最終巻であっても何の不満もありませんでしたよ。
葵の父親に同居の事実を自ら申し出る柊聖。
この事実は予想通り、葵の父親の逆鱗に触れ、父は娘の転校手続きを始める。
何事もなく穏便に父の到来をやり過ごそうとしていた葵は戸惑うが、
これは柊聖の真摯な態度ともいえる。
私は、少女漫画内で恋人の親と顔を合わせる・挨拶をする行為は実質的な結納を意味するものだと思っている。
一足早い婚約の成立と、幸せな将来・結末=結婚を予感させる重大な行為。
だからなのか、彼女の親との初対面の時の彼氏は結構ドンど構えていることが多い。
逃げ出したり不遜な態度を取ることなく、親と向き合う姿勢を見せる。
柊聖もまた同じで、柊聖さえ黙っていれば父を騙し切ることも出来たが、それをしなかった。
それは柊聖が、危機回避を優先する葵よりもはるか未来を見据えているからかもしれない…。
もしくは、教師の振りをして葵の父親と対談した結果、
父親の扱い方を理解したからかもしれないが…。
葵本人は嫌がるでしょうが、葵と父親は性格が似ている。
自分のこと以上に人のことを思える性格で、
人から頼られると悪い気はしなくて、文句を言いつつ従ってしまう。
父親がサウナで倒れた柊聖を甲斐甲斐しく介抱する様子は葵のそれと瓜二つだ。
もしかしたら温かい家庭を作った、育った人たちに共通する空気感を柊聖は感じ取ったのかもしれない。
だからこそ、今回、柊聖が自分から葵に告白できるようになるまでの過程と同じように、
父親と逃げずに対峙することが、一番の解決法なのではないかと考えたのではないか。
これは過去と向き合った柊聖だからこそ取れる手段かもしれませんね。
もし、「ラブ同居」の前に父親と対面していたら、
柊聖の言葉は父には響かずに、少なくとも別居、最悪 別離という結末を迎えたかもしれない。
柊聖が葵との関係を真剣に考える面といい、葵と父のこれまでの思い出といい、
全てを踏まえた上で今の自分があるという描写がきちんと機能している。
巻を重ねただけの関係が描けているのではないか。
笑ったのは、冒頭の#33「裸の2人」というミスリード。
思わせぶりなタイトルだが、裸になるのは柊聖と父親の2人というオチ。
相変わらずバスタオルを巻いて入浴するのには違和感がありますが。
もう一つ笑ったのは、やはり「コンドーム芸」。
一番、見つかって欲しくない人に見つかってしまいましたね。
父親は混乱のあまりか、コンドームを膨らませ風船にしてみたり、
水を入れて水風船にしてみたりと、様々な活用法を見せてくれます。
(父親がコンドームを咥えて膨らませる姿なんて子供として見たくない)。
にしても この父親、性に関する警戒心が強すぎますよね。
もちろん男女が同居していて何もないと言われても誰も信じないし、
ましてや高校生の娘が親に黙って同居していたら、
その方向に想像してしまうのは当然だろう。
だが、柊聖に対して具体的にどこまで関係が進んでいるのか聞いたり、
コンドームを発見して以降、「性活」やら「淫獣」やらセクシャル熟語を駆使しているのが気になる。
もしかして、一番 性に興味津々なのは父親自身なのかもしれない。
さすが一番下の子が1-2歳ぐらいの現役感のある父親だ…。
そんな父親が、2人の交際を認める代わりに出した条件が、
「卒業までの 性交渉禁止!! 父より」
そんな標語の書かれた横断幕(?)を窓際に貼って、帰路につく父。
父親の足音が遠ざかっていくと2人は横断幕を破り捨てて互いの身体を…。
なんてことはまるでなく、この後もずっと貼られ続ける横断幕。
これまでは恋愛とは関係なくイチャイチャしながら同居していたけど、
両想いになった途端、葵に手を出すことが出来なくなった柊聖。
ここからかなり長い間は「柊聖 お預け編・禁欲編」ともいえる展開ですね。
そして禁欲するからこそ葵が色っぽく見えるという可哀想な展開。
これまで逆セクハラすら いとわなかった葵が急に純真無垢な 天然の小悪魔になるのも お約束。
女性としての魅力に乏しいはずの身体が欲情の対象になる。
これは先日読んだ『オオカミ少女と黒王子』も同じ展開でしたね。
読者の興味が、いつ両想いになるのか、から、いつ性行為をするのか、に変わったから、先延ばしにするんですかね。
どちらのヒーローも、彼女と出会う前は それはたくさんの経験を積んでいるというのに。
男性側は禁欲は一途さの象徴なんでしょうか。
にしても、交際を認めることと同居には大きな差があると思われる。
結婚前に同棲を勧めるならともかく、高校生が同居して親が安心できるわけない。
次に父親に連絡する時は、お腹に新しい命が…、ってことだってあり得るのだ。
父親にバレても同居続行は牽強付会が過ぎる。
まぁ、本書のような内容の漫画に文句を言う行為が無駄な労力なのだが…。
あれだけ反対していた親が柊聖のことを認めたのは、
娘と彼の真摯な姿を目の当たりにしたから。
そして、娘を守る存在がもはや自分ではなく、彼であると悟ったからだった。
身体を鍛えているはずの自分が守られる、というのは中年男性の悲哀を感じます。
気になったのは本書は暴力が多用されていること。
住宅街の公園で いきなり葵がチンピラに絡まれる不自然な場面もそうだが、
(それがかつて父親が「友達」になって遊んでくれた遊具と同じことに注目)
その前に、父親が柊聖を計7発も殴っているのが気になる。
確かに父親としては殴りたいほど憎い相手だろうが、実際に殴るのはちょっと理解できない。
顔面に3発も殴って、柊聖の美しい顔に傷を作っている。
柊聖としては納得しているようだが、立派な傷害事件のように思える。
『4巻』でもプールで絡んできたチンピラを暴力で解決している柊聖だが、
この喧嘩が強いという設定は、胸キュン場面の一環なのだろうか。
私は安直な展開でゲンナリする。
まぁ、今回は葵のナイト役のバトンタッチに必要な展開なのだろう。
ずっと文句を言っているので申し訳ないが、画力に関しては注文を付けたい。
どうも背景とかデッサンとか、ちょっとずつ下手なんですよね。
物の縮尺とか そこら中に違和感が満載で集中できない。
顔も安定しないし。
それゆえ、真面目にやってるのか、笑いを取りにいっているのか不明な点も多い。
この場面も、ツッコミ待ちのシーンのか、
本当に、男性の筋力がこのぐらいだと理解しているのかが分からない。
要するに色々と信用の置けない作者なのだ。