《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

成績 学年2位の名探偵。教師・警官・ホスト・着ぐるみ、どのコスプレより探偵役の君が好き。

L・DK(12) (別冊フレンドコミックス)
渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第12巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

ピンチを乗り越えた葵と柊聖。2人のココロとカラダの距離はどんどん接近中♪ だんだんとお互いを求める気持ちが高まる2人だけど、葵の父親との「卒業までの性交渉禁止!!」という約束の存在が立ちはだかり――!? ドキドキが止まらない、ひとつ屋根の下・青春ラブストーリー。

簡潔完結感想文

  • 犯人と名探偵の頭脳戦。犯人の動機は名探偵の心の中にだけ仕舞われる。探偵モードの柊聖は素敵。
  • またも胸キュン見本市 再開。彼の意外な一面を見たい! 風邪の看病をしたい! 裸で抱き合いたい!
  • 女性はサプライズが大好き、という刷り込み。ちょっと無理をして高価な物をケーキに埋め込み。

語に区切りが ついたら当然、胸キュン見本市が開催される 12巻。

友達の恋と策略に遠慮して、いつの間にか柊聖(しゅうせい)と距離が出来てしまった葵(あおい)

『12巻』はその真の決着と、後日談から幕が開き、
胸キュンシーンのオンパレードとなっている。
それはもう胸焼けするぐらいに続く。
そして、その割にはすぐに渇望感を覚える燃費の悪い物語になっております。

精神面の距離が縮まったら、次は当然、肉体面。
恋愛のハラハラと欲情のドキドキで読者を手放しません。


学生の頃からずっと柊聖のことが好きだったクラスメイト・波留(はる)。

波留は告白を決めたものの、まさかの葵に告白を妨害され続ける。
葵の頬を叩き、彼女の暴走を止めたのは柊聖。
ようやく告白した波留だったが、柊聖が選んだのは自分ではなく…。

と、波留が長年、思い留まっていた告白自体には蹴りがついたのですが、黒幕との対決が残っておりました。

その黒幕が、同じくクラスメイトの かえで。
彼女が葵たちの部屋で葵と柊聖が並んで映るプリクラを探し出し葵を脅迫したことから、
葵の行動が不自然になり、葵と柊聖との距離が広がってしまった。

なぜ かえで は葵を脅迫し、波留を優先させるのか真犯人によるもう一つの「告白」が始まる。

ここからはミステリにおける探偵と犯人による つばぜり合い となる。

学年2位の成績を誇る名探偵・柊聖は、
不自然な演出、そして葵や目撃者の証言から、黒幕が かえで だと推理し、彼女との対話を始める。

これまでの犯行は認めたものの、
葵の弱み=柊聖との交際は探偵自身の弱みでもあることを利用して、
柊聖すらも脅迫する かえで。

だが度重なる犯人からの脅迫を受けても柊聖は自身の精神力と機転で跳ね返す。
柊聖自身も少々 ひねくれたヤツなので、こういう時は心強いですよね。
また柊聖の本当の望みとしては葵と大手を振って学校を歩きたいから、その脅迫は渡りに船でもある。

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自白後も脅迫を続ける犯人K。だが名探偵・柊聖の覚悟は鋼よりも強靭だ!

この場面、犯人のかえで を詰問するのも、彼女の真意を知るのも、
名探偵の柊聖だけなのが優しい展開ですよね。

被害者役の葵が かえでの気持ちを知ってしまったら、これまでのように自然には振る舞えませんから。
かえで と波留との会話の中で事あるごとに微妙な表情を浮かべてしまいそうですもんね、葵は。

ただ、かえでの気持ちの使用法としては快く思わない。

ミステリに即して言えば、この手の問題を安易に意外な真相として使っていないか、と問いたい。
これからも ずっと かえでの気持ちをフォローするなら別だけど、
この作者の場合、そんな器用に心情を表せるとは思えない。

あと残り半分、24巻までの中で かえでメイン回があるならまだしも、
使い捨てて、真摯に扱えないのなら、デリケートな領域に踏み込むべきではなかったのではないか。


にしても柊聖は直感型の探偵ですよね。

かえで といい、かつて葵との同居を自ら認めた三条(さんじょう)然り、葵の父親 然り、
秘密を守ってくれる、話しても大丈夫そうな人を見極めるのが早すぎる。

ただ、私の中で探偵・柊聖は、どんなコスプレより、どんな創作された胸キュン場面よりも
一番、格好いいと思える役割でした。
事件に立ち向かう姿勢、脅迫にも揺るがない愛、推理力に配慮まで兼ね備わっている。

出来れば、こんなクールな柊聖のままでいて欲しかったが、
この後は、お色気シーンで葵が骨抜きにされるのと同時に、話の骨子まで抜けてしまった。
まぁ、基本に立ち返ったともいえるのですが…。


1編目はこれだけ語ることがあるのに、その後の3篇は特に語ることもありません。
なぜなら再び あからさまな創作 胸キュン場面の連続だからである。

健やかなる時も病める時も柊聖と一緒にいる、という意味を実感し始めた葵。
精神的に彼に近づけたと満たされる気持ちは、柊聖の肉体に興味津々。

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湧き上がる自然な欲求は、紙切れ一枚では抑えきれない!

今まで何でもなかったことも過敏に反応する葵。
彼との距離を限りなく近づけたいと思うのは自然なことで…。

いよいよ柊聖だけでなく、葵の方も肉欲との戦いになってきましたね。
「性交渉禁止」の横断幕と、そこに込められた父の想いだけが彼らを思い止まらせているだけの状態。
(相変わらず葵の父親は性に過敏だ。自分が一番興味ある癖に。)

いつ暴発してもおかしくない緊張感が、脱落しそうな読者を辛うじて引き留めていますね…。
今後、もし急激に人気が下降していったら、本書はお色気シーンだらけになるのだろうか。

『12巻』だって、父の刺客、葵の弟がアパートに乱入してこなければ(鍵は? 呼び鈴は?)、
もう、おっぱじまっていたでしょうからね(笑)

葵が結構、簡単に服を脱いでいてビックリだ。
そして、服の上からはブラジャーのホックを外す柊聖も、
ブラジャーだけになるとホックを外さないんですね(『2巻』の球技大会 以来?)

柊聖自身の自制心も危うい。
コンビニに逃げ込んだ1回目と違って高熱だったこともあるが2回目は柊聖も中座できなかったし。

性行為=物語の終焉ならば、しちゃえばいいのに、と思う無感情な私です。

そういえば喜怒哀楽に乏しい柊聖の、色んな顔が見てみたいと試行錯誤する葵の話は、
無表情・無感情、ロボットっぽいと読者から評判への反論だったりするのだろうか。
まさか官能の表情が見られるとは思わなかったが(笑)


ラストの葵の誕生日回は、また雑誌から拝借したような胸キュンシーンでしたね。

料理が苦手な柊聖がケーキを作って、その上でケーキに指輪を仕込むというサプライズまで用意する。
夢物語が過ぎて、現実感が希薄になっているなぁ。

私には、漫画やドラマ、雑誌の架空の投稿によって世の女性たちに繰り返し伝播し、
さもカップルの常識のように刷り込まれていく創作ロマンチックに感じられてならない。
(そこに僻みがあることも認めますが…)

まぁ、本書自体がそんな夢を叶えるための物語ではあるのですが…。