《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

どこかで見たような展開。どこかで見たような構図。純然たる偶然だ バーカ。

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八田 鮎子(はった あゆこ)
オオカミ少女と黒王子(おおかみしょうじょとくろおうじ)
第12巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

佐田くんとケンカをしてしまったエリカ。エリカはその愚痴を寺崎にぶつけていたら、まさか彼から告白を受けてしまった! 佐田くんとは無事に仲直りできたものの自分のせいで招いた結果だったため佐田くんにそのことは言えなかった。エリカひとりで寺崎に断りを入れるものの「もっと考えろ」と受け入れてもらえない。それでもエリカは「佐田くんを裏切れない」と強く言うと、寺崎の態度がまさかの豹変! エリカは大ピンチに…!? どうする佐田くん! 修学旅行まであと少しだというのに、佐田くんとエリカ、一体どうなっちゃうの!?

簡潔完結感想文

  • 独占欲と嫉妬から恭也と喧嘩してしまうエリカ。どっちもどっちの意地の張り合いから膠着状態。
  • 予想通り寺崎から好意を示されたエリカ。だがエリカが頭の中には恭也しかいないと告げると…。
  • 修学旅行。偶然、他校の健と行き先も宿泊先も同じことが判明し、皆で北海道を満喫することに。

1話完結の場合のキレはどこへやら、長編では既視感を覚える 12巻。

『11巻』に引き続き、W(ダブル)嫉妬・W浮気疑惑の お話。

予想通りにお話は進んで、予想通りに元の鞘に収まったという感想です。
予想外だったのは、お話の長さと そのオチでしょうか。
まさか恭也の「お預け」がこんなところでも使われるとは…。そして その理由もねぇ…。


編になるとエリカのウザさが倍増されますね。
1話完結の場合は、事件の発端としてバカやドジを やらかすだけで済んでいるが、
長編の場合は、ずーーーーっと間違った方向に進んでいるから目も当てられない。

お話的に恭也が間違えることは ほぼ無いので、
エリカは損な役回りを させられているなぁ、と同情する部分もありますが、
それにしても今回は誰彼 構わず当たり散らしているので自業自得の部分が大きい。

恭也との喧嘩で頭に血が上って冷静になれない部分もそうだが、
何といっても一番は、恭也に急接近していると嫉妬の対象であるクラスメイトの河西(かさい)さんへの態度。

クラスメイトの男子に本人としては自然に会話しているだけで彼女(エリカ)からの嫉妬を買うのだから大変だ。
面と向かって恭也への好意は全くないと言っても、ちょっかいをかけている、と言われる始末。

そりゃあ、河西さんだって ちょっと意地悪を言ってみたくなりますよ。
そして振り回されたり、勝手に恭也に蔑(さげす)まされたりしたら、
自分の見聞きしたことを恭也に伝えて、彼の惑乱させてやろうという気持ちにもなるだろう。

そんな河西さんの思考は かつての恭也なんですね。
って、女性と浅く広く付き合っていた神谷くん初登場の時も同じこと書いた気がしますが…。

自分以外の価値観を認めないし、
その価値観から外れた行動をする人を どこかバカにしている。
誰かと恋人になるなんて、恭也が嫌うことの上位にあったことだろう。

価値観が相反する2人。
「もっと合う人がいいって思っちゃう」河西と、「この人以外にはいない」と思っている恭也。
もちろん、恭也は自分から そんなエリカが喜びそうなことを口にすることはありませんが。

ただ、河西の思考から かつての恭也の考えが類推されて、そして今の恭也に変わっていく様が分かる手掛かりとなる。
なぜ 腹黒思考だった恭也が恋人を必要とするのか。

変わっていく自分を楽しめる自分でいられること。
それが恭也の変化した価値観だろう。
だから読者も、当初とは大きく変わった作品を楽しんで、ということだろうか…。


浮気疑惑のもう一方の相手、エリカの中学時代の同級生・寺崎(てらさき)。

エリカの逆恨み嫉妬なだけで、具体的な行動を最後まで起こさなかった河西さんと違って、
寺崎(通称・テラぽん)は大方の予想通り、エリカへの好意を、少し強引に示した。

驚くほど 横恋慕のテンプレート街道を突っ走るテラぽん なのでした。

テラぽんのキス と 台詞で連想したのが、この漫画。

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好意を示すための強引な行為。キスから逆ギレの「バーカ」にデジャブを覚えたので記憶を懸命にたどったら…。
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コチラでした。いくえみ綾さん『プリンシパル 7巻』より。似すぎー。

ちなみに、いくえみさんの『プリンシパル』は2013年発売、本書は2015年発売です。
別に何が言いたいわけではないですよ。

テラぽん は いくえみさん の漫画の読者だったのかな。
プリンシパル』屈指の名場面だから、男なのに女性主人公・糸真(しま)ちゃん の真似をしたのかな。
糸真ちゃんの1/100も可愛くないぞッ!


巻では間違え続けているエリカだが、恭也との別れを選んだり、
好意を露わにしたテラぽんに なびいたりせずに恭也への愛を貫き通したのが良かったですね。

テラぽん登場の意味は、ちゃんと交際した後に初めてエリカに告白した男性。
しかしどんなに恭也との仲が悪くなろうとも、エリカは恭也を想い続けた。
そして恭也との仲が どういう風に他者に映ってもエリカは幸せだという宣言だろうか。

テラぽん の告白を断る際にエリカが描いた円グラフ。
20%ぐらいが友達とか家族とか ごはん とかオシャレとかで占めているが、
残りの80%は全部 恭也くんだと言っているが、これは決して愛を誇張しているでもなく彼女の本心だろう。

でなきゃ あんなに四六時中一緒にいようと思わない。
そして何より、勉強や将来のことが少しも頭にないのがエリカの本心の証拠だろう(笑)

にしても本書の男の人(特に1回きりの登場)は逆ギレする男が多いですね。
『1巻』木村くん、さんちゃんのストーカー男、そしてテラぽん。

これは、お話の結末が作りやすいからでしょうかねぇ…。
暴力や恐怖から女性を助けることがヒーローの条件だから恭也が勝手に引き立つのだ。
まぁ、お話の構造がワンパターンとも言えますが…。

(元)ドSではあるけれど、女性に手をあげたりしない恭也は比較的 優良物件に見えてくる。

そういえば、この『12巻』の表紙(一番上の画像)は、
エリカに手をあげたテラぽんを踏んづけている時の、テラぽん視点の構図ですかね。

表紙としては暴力性を感じさせるけれど、ナイトとして駆けつけた様子だと思うと好きになっちゃいますね。


らく準備期間だった修学旅行の始まり。

エリカと恭也のお話をずっとお送りしてきたこともあり、修学旅行のメインは、
エリカの親友・三田(さんだ)さん と恭也の中学時代の同級生・健(たける)のお話ですかね。
(完読して結末を知っている身としては、匂わせ + 話を伸ばしただけ な気もするが…)

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色々ありましたが修学旅行を 何の わだかまりもなく迎えられたエリカと恭也。

学校イベントで複数回お送りするのは初ですかね。
文化祭も当日の様子は一回限りで終わってしまってるし。

全16巻という長編にもかかわらず、
学校での青春感に欠けるのは本書の欠点の一つかな、と思います。
後半、学校イベントや友情のお話を描いても、
前半での描き込み不足が響いて、いまいち心に刺さらないんですよね。
感動や思い入れが右肩上がりにならなかったのが残念です。

そういえば『1巻』で登場の悪役・木村くん は修学旅行では また新しい彼女が出来たみたいですね。
本書で一番モテているのは彼かもしれない…。