《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

作者も多分、連載終了の見えないカウントダウンと闘っている。出来ることは ひたすら全力投球。

悩殺ジャンキー 2 (花とゆめコミックス)
福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第02巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

ちょっぴり仲良くなってきたナカとウミ。しかし、合宿オーディションで知り合ったカメラマン・堤のせいで、2人はギクシャクした雰囲気に…。堤の挑発に乗り、ウミと距離を置こうとするナカ。一方、ウミは仕事で単身ロスに旅立ってしまい…!?

簡潔完結感想文

  • 乱痴気騒ぎを繰り広げたカメラマン・堤は なぜかナカのことが気に入ったようで…。
  • 堤が見限っているのはウミの方。ナカに、遠からず離れるウミを忘れるよう言うが…。
  • ナカの横にいると「男」の顔が出ることを注意されたウミ。彼も独りで戦うのだが…。

登場人物の少なさから、お話が序盤だということが判別できる2巻。

物語の展開する手法も描き方が『2巻』で既に確立されていることに気づく。
そして自分の鈍感さを棚に上げて言わせていただくと、この後10数巻に亘って同じような話が繰り返されるんだぁ、と再読して感じました。

後半と違うのは登場人物の少なさと、彼らの間に流れる距離感。
その違いがしっかり描けているので、それで面白さとしては十分だという気持ちもあります。

けれど、この巻にはこのお話が入っていた、と思い出すような際立った内容ではない(作品への興味の問題かもしれないが)。
少しずつテーマは違うのは分かるが、どこかのエピソードと混同しかねない似たり寄ったりな感じがする。


それでも作品に疾走感をもたらしているのは何か。
それが早くも確立されている時間や数字を克明に表す手法だと思う。

これは今後、多用されるパターンで、
例えば この『2巻』では、2人というユニットではなく個々に仕事が出来ることを証明するために、
ウミとナカは別の場所で個人の仕事に邁進するのですが、
その離れている日数を織り込むことによって、それが作品にビートを生んでいる。

「10、9,8」とカウントダウンを刻むことによって、
読者に緊張感をもたらし、そして反対にいつまでも問題が停滞するわけじゃないという明るい先行きを示す。

『2巻』後半は怪我したウミの全治期間を1週間と定めることによって同じ効果をもたらしている。

この後も、期限付きの問題や残り時間の戦いなど、2巻に1回は使用されるんじゃないかという手法です。
ワンパターン、と言ってしまえばその通りなのですが、
あまり物語に没入しているとは言えない私のような読者でも、
取り敢えず このカウントがゼロになるまでは読んでみようかという気になるから効果は抜群。

また嵐が来る、雷が落ちる、などと事態の深刻度を先んじて表現する手法も多用されます。
「私は知らなかった。まさか あんなことが起こるなんて」という思わせ匂わせも多いですね。

展開のゆったりした恋愛メインの漫画でやられると嫌な手法ですが、
仕事の面で本当に試練が訪れているし、ウミには抱えた爆弾があるので、
結構、気になっちゃう煽りになっています。

そして、時間や数字を刻むことはウミの女モデルとしてのリミットとも関連していて、彼の緊張感にも繋がる表現になっている。

多分、ウミは母数が幾つなのか分からないカウントダウンの中に身を置いている。
女性モデルとして残された時間は1年? 数か月?
そんな見えない数字の恐怖と闘いながらウミは もがき続ける。

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堤に急所を突かれて絶不調のウミ。ウミが海の外の国にいる時、ナカは独りで仕事をこなそうとするが…。
『2巻』を通して描かれるのは海(うみ)の気持ち。
恋をする海は、やや過剰なほどのツンデレ男になることが判明。
ナカには一番近くにいて欲しいのに、一番ぞんざいに扱ってしまう裏腹な男。

ただギャグと分かっていながらも、ナカが殴られ投げ飛ばされているのは、何だか笑えません。
暴力込みのツンデレとか俺様彼氏とか、DVと同義なんじゃないかと。

女性モデルとして活躍する男である自分が、女であるナカに恋をしている。
この状況、考えただけでメンタルをやられそうです。

特に撮影時などウミとしてキャラを演じながらナカの存在を感じて、自分の「性」が安定しないだろう。


そして今回、所属事務所の社長や、ウミが男であることに気づきつつあるカメラマン・堤(つつみ)に、
ナカの横にいるウミは女のメッキが剥がれていること、
ナカはウミと違って限界がないことを指摘されるから、
さすがの海も精神崩壊の危機(大袈裟)。

自分のバーターとして引き上げたと思っているナカが堤に認められ活躍することもまた、
ウミのプライドを苛(さいな)む出来事。
これは堤との男としての勝負もあり、構造が複雑だ。

ナカという原石をカメラマン堤に見つけられ、彼の力でナカは次のステージに持ち上げられる。
更にはウミへの依存も断ち切るように言われたナカにも別離を宣言されて踏んだり蹴ったり。


DV男と非難もしたくなるが、なんだかんだで海は薄幸でカワイイやつなんですよね。
物語の後半では特に顕著になるが、
基本的に俺様でありながら、イジり甲斐のある人なんです。

そんな器用そうで不器用な彼の恋愛模様は目が離せません。

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自覚するよりも正直に動く肉体。海として止められない気持ち。
恋愛模様としては、堤が存在感を増しています。
読了すると心の動きが不自然なような気もしますが、
(堤の本心を知ると思わせぶりな期間があまりにも長すぎる)
一筋縄ではいかないライバルキャラを演じてくれています。

海から見ても可愛いナカは、誰から見ても可愛いのでしょう。
何だかんだで、作中ずっとモテてます。

ただしナカの側は恋は一筋で、王道カップルが揺るぎないのも作品の爽快感に繋がっているのかもしれません。


作品としては、やっぱり作者の字が気になります。
絵の上達と共に字も上達しなかったんでしょうか…。
上達というか「読み易い字」を心がけてほしい。

生徒会長の海ならば「読みづらい字のくせに直筆セルフツッコミを多用してるんじゃねー!」とブチ切れるところですよ。
判読するために無駄なストレスを感じます。