福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第15巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★(6点)
ウミを追ってドイツへ飛んだナカは、自らの想いを伝え、2人は晴れて“彼氏・彼女”に! 一方、次号の『珠苑』にウミの写真が掲載されないことを知り、編集部へ抗議をしに乗り込んだ苺は、同じ理由でやってきた千洋と遭遇。出張中だった編集長を追って2人で京都に向かうが…!?
簡潔完結感想文
- 念願のブランド「碧」のモデル候補に一縷の望みが出た海。だが当人は海外で、ナカが奔走する。
- 8人で行った企画から、信用を失ったウミが外される⁉ 陳情するために苺と千洋は京都に向かう。
- ドイツで海の両親と対面。これで双方の親ともに許可が出たのでナカはいつでも嫁に行って良し。
男女がどう一泊を過ごすのか、それが問題の15巻。
業界内で女モデル・ウミが男だということが発覚し、
念願だったブランド「碧(へき)」のモデル候補からも落選した海。
候補への復活へブランド側が出した条件は、男モデルとしての仕事獲得。
海は心配を掛けまいとナカには内緒で、身も心もボロボロになりながら東奔西走して…。
何も聞かされないまま全て結果だけを知ったナカは、
海の心配をよそに、泣くことなく、見くびられていたことに怒る。
海がまだ知らない男モデルの一歩目を踏み出したオーディションの結果を自分で伝えたいと望む。
一方でナカは、「碧」オーディション参加を許可を得ようと、
デザイナー・千緒(ちお)の元を連日訪れる。
そして本来ならメイクモデルとしてナカも出場するはずだったコンテスト当日、
メイクアップアーティスト・遊佐の恋愛アシストもあってお役御免になった。
向かうは海のいる海の向こうのドイツ!
お役御免になったのは遊佐自身もですね。
ナカの奮闘を見て、海とナカの間に割って入るような隙間がないことを理解したみたいです。
両想いになってから(海が告白してから)、ちょっかいを出す無粋なことを彼も作者もしなくて安心しました。
が、遊佐は役割としては弱かったなぁ。
以前も書きましたが、堤の劣化コピーという感じでしたね。
堤なんて、好きでもないのに元カノを忘れるために約8巻もナカに付きまとっていたというのに…。
堤はナカにキスもしてるし、告白もしてるし。
なのに遊佐はツンデレのツンのまま、フェードアウトしていきましたね。
ナカには決して伝わらなかった恋心が醸造されて、遊佐が変に こじらせたりしませんように。
そうやって、ナカはドイツで海と再会する。
まだ言っていなかった言葉がある。
でも海がドイツにいるのは1週間。
千緒のもとに「毎日」陳情して、移動日を入れるとスケジュールとしてはギリギリ。
ここでは一分一秒も惜しい感じを出したかったのだろう。
そうして2人で同じ部屋で過ごす一夜。
これまでキスだって何回もしてきたのに、初めてのようなキスを交わす二人。
海様という虚勢が剥がれて裸で向き合うと(比喩)、こんなに初々しいのですね。
「両想いのキスは特別なんだよ」って『どっか』の少女漫画でそんなセリフを読んだことを思い出しました。
この一夜、割愛されているだけで2人に性行為があった可能性が否定できない場面ですが、十中八九ないでしょうね。
海は堤にツッコまれて即否定しているし、
あったら海もナカも赤面してもっとおかしなことになっていると思われる。
そしてドイツといえば、かの地在住のご両親への挨拶イベントが出来る場所。
そういえば少女漫画って結構、交際すると両親に会う・紹介するイベントがありますよね。
親への気恥ずかしさもある中で、それを克服して真摯な交際をしているという表現になるからでしょうか。
そして暗に婚約を意味しているんじゃないかという将来の約束や親の許諾や保証もありますね。
両親に会う=結婚や幸せな未来を暗示していると言ってもいいでしょう。
海の親は元ヤン夫婦らしい。
初登場の海の父・陽(よう)は大きくなった海ですね。
20歳ぐらいに見えます(ちょっと悪い意味で)。
顔が縦に伸びているので、それなりの年齢に見えるようになっているが、ちょっと顎が細すぎます。
そして海の父は海より上手の俺様キャラ。
『16巻』の人気投票の結果でもわかるように出番の少なさの割に人気を獲得した人です。
このことから女性読者の一定層に俺様キャラ好きがいることが見受けられます。
少女漫画からこの手のキャラがいなくならない訳だ…。
私は苦手です、俺様 of 俺様で、ズルいと思ってしまう。
帰国した2人を待ち受けているのは学園祭。
そのメインイベントに昨年に引き続きファッションショーが候補に挙がるが、
学校内投票の前日に、ウミの存在が露見し、一部の悪意ある生徒から海が糾弾される。
ショーを望むナカの願いは届くのか。運命の投票日を迎えるが…。
んー、この場面、緊迫感がないですよね。
海は学園の王様と化していて、
その海がモデルになってくれるなら、生徒たちは喜ぶだろう。
蛹から蝶へと変貌したナカだっているのだ。
ハラハラさせる場面としてはちょっと弱かった。
「碧」に続いて最終目標は学園祭ですかね。
海ナカがドイツでイチャラブしている頃、
好意が漏れてしまったことで気まずくなり始めている苺(いちご)と千洋(ちひろ)。
どちらともなく避けていたが、2人に共通の目的、
ウミを外して企画を掲載しようとする雑誌の編集長探しという目標のために行動を共にする。
そしてナカと同じように、こちらも陳情で京都へ向かう…。
好きが漏れていることに気づきながらも、
いつも通りに接する千洋に、苺は なぜかと問いかける。
そんな苺の心の動きや不安が、同じく切ない片想い経験者として手に取るように分かる千洋。
一夜の語らいの中で千洋の優しさ、汚さ全てを知った上で苺は翌日、千洋に告白をする。
恋は苺を成長させる。
今まで以上に力を入れて自分の服を売り込むのだった。
苺と千洋の関係を進めるための、二人の共同作業でしたね。
最終回を前に全ての物語を畳めるような前準備にも思えます。
頭の切り替えが悪いせいか、初登場は『7巻』なのに、
苺はまだまだ新キャラのように思えてしまう私にとっては、あまり興味がない恋愛です。
海とナカの関係が高値安定しているから、
恋愛に動きを出すためなのかなぁ、と冷めた視点で読んでしまった。