《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

過剰な喧伝 そして誰かの手が伸びている事実。人はそれで釣られる。そうだね 僕の罪は恋愛教唆かな。

金色のコルダ 12 (花とゆめコミックス)
呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第12巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

選抜合宿も終わり、二学期が本格スタート!! 合宿でのハイレベルな演奏に刺激された香穂子がヴァイオリンの練習に励む中、火原がTVCMに出演!? 柚木と火原の関係もなぜかギクシャクしていて…。それぞれが将来の夢を見据えて動き出す一方、土浦は月森が海外留学することを知り…!?

簡潔完結感想文

  • 既定路線だからと言わないまま進路を決めた孤高の人たちの心の内は…。
  • 土浦だけに明かされる月森の留学。一緒に居られる時間は限られている。
  • 土浦と香穂子は自分の道を切り拓くためにコンクールに挑戦することに。


緊張と緩和、それが本書のリズム。緩和という名の日常が続いたのならば、もう一度 緊張のコンクールへ臨む 12巻。


一足先に音楽の道に進むことを決意した土浦(つちうら)、
音楽の道から外れることを既定路線とする柚木(ゆのき)先輩、
そして既定路線の留学を具体化する月森(つきもり)。

自分の大事な人にその決意を伝える土浦に対して、他の2人は…。


なるほど独断専行の月森と柚木、2人の行動は相似形を成しているんですね。

今巻の序盤で柚木の進路問題を発端としてこじれていた火原(ひはら)と柚木の仲が修復される。
火原は、進路を決める過程で柚木が当たり前のように家の要望に沿う形で既定路線を選んだ事実よりも、
その話を自分にしてくれなかったことに さみしさを感じていたと気づく。

では、なぜ柚木は火原に相談をしなかったのか、
その答えは3つあるように思われる。

1つ目は精神のコントロール能力。
長年かぶり続けた仮面はもう素顔に近い。それにストレスのはけ口だってある。

2つ目の答えを推理する手掛かりは、少し先の月森の行動。
留学を既定路線とする月森だが、なぜだかその事実をある人にだけ言い出せない。
相手と別れる現実を一番さみしくを思うのは誰よりも自分だから…。

こうなると私の中で根強く残る、柚木 火原本命説が再燃されますね。
事実を告げた時の大切な人の反応が怖くて言い出せないのだ。

そして3つ目が諦念。
望まれるままの道を邁進し続けることしか自分にはないと思っている。

柚木は『4巻』に続いて今回も将来のことで悩む自分のストレスを香穂子(かほこ)に容赦なくぶつける。
わざわざトイレ前で待ち伏せしてストレスのはけ口にしようと、酷い言葉を浴びせて彼女と音楽を切り離そうとする。
しかし中途半端な気持ちの柚木と違い、今は音楽に迷いのない香穂子にその言葉は通じない。

後半の柚木は香穂子に言い負かされ、借りを作ってばっかりですね。
自分は持てていない音楽への信仰や、火原からモテている香穂子は、柚木には「お前って本当うざい」存在ですね。


そんな火原は、ひょんなことからCM出演を果たしモテ期到来。
そして何もしていない香穂子にも、いよいよモテ期が到来している。

香穂子への好意を隠そうともしない転校生の加地(かじ)くんに、
月森まで香穂子への好意を隠し持ち始めた様子。
今の香穂子なら柚木以外は全攻略 出来るのではないでしょうか。

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手を握られたら赤面する純情青年。責任とって結婚しないと!
ただ加地くんは、本当に香穂子のことが好きなの?という感じがしますね。

音楽に魅せられたのは本当だけど、香穂子自身には惹かれていないようにも取れる。
生身の香穂子に興味はない加地くんの態度は「崇拝」という言葉がしっくりきますね。

そして音楽の妖精がリリならば、加地くんは恋愛の妖精っぽい。

自分という触媒を通じて様々な化学反応を見せる人々の恋心。
その心理的変化のエネルギーを糧とする新種の妖精。
「ねぇ、僕と契約して音楽少女になってよ」。
って、このセリフは『1巻』でリリが香穂子に言った方がしっくりきますね(魔法少女ネタです…)。

では音楽漫画らしく指揮者ではどうだろうか。

自分が率先して香穂子への好意を示すことによって、
メンバーの視線を自分に集中させ、一斉に音を鳴らし、物語を最終楽章へ誘(いざな)う。

でも焚きつけてるので先導者というよりも扇動者って感じがしますね。
いずれにせよ加地くん自身が本気の告白をする日はなさそうな気がします。


加地くんが物語をかき回す中、作中では月森の留学が正式に発表される。

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月森は留学することが判明。しかも年内。3年生よりも早い別れ。
月森の留学で反応を見せたのは土浦。
月森を語る香穂子の表情から負け戦の気配を感じた土浦は、コンクールという音楽の土俵で大勝負に出る。
果たして土浦はこの乾坤一擲の手で土俵際に止まれるか。ハッケヨーイ。
そして上記の理由から香穂子にだけは、この事実が隠されるのであった…。


そんな香穂子がコンクールに出場する契機となったのが、学校に講師として招かれた人物の存在。

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何だかバスケがしたくなる容貌の 安西 じゃなくて 早乙女先生。
かつて月森も師事していた先生ということもあり、香穂子も教わりたいと熱心にアプローチするが、不足する香穂子の実力に対し、早乙女(さおとめ)は、とあるコンクール入賞をレッスン許可の条件とする。

こうして香穂子はまたコンクールに臨むことになる…。