《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

靴擦れの手当てをしてくれても ガラスの靴を履かせてくれても 胸が痛いよ 王子様。

金色のコルダ 13 (花とゆめコミックス)
呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第13巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

月森の恩師・早乙女先生に指導してもらうため、香穂子はコンクール入賞を目指すことに! 月森が練習を見てくれることになり、お互いの気持ちに少しずつ変化が現れ始めて…☆ 一方、香穂子に留学することを切り出せない月森に対し、土浦は「俺は日野が好きだ」と告げて!?

簡潔完結感想文

  • 日が短くなってきた季節に、徐々に一緒にいる時間が長くなる香穂子と月森。
  • だが一緒にいられる時間は長くはない。月森は遂に香穂子に留学の件を告げる…。
  • 相手に本当に伝えなければならないこと伝えない二人。恋のライバルがアシスト役⁉


再び異なる世界で生きるのか、それとも同じ世界にいられるのか、選択の13巻。

月森(つきもり)の留学は、ある意味でもう一度2人の住む世界がまた分かれる危機なんですね。

何度も書いてますが私の中では、香穂子(かほこ)は普通科という現実から音楽科という異世界に召喚されしもの。
妖精・リリによって本来交わることのないはずの世界が交わって交流が始まり、
香穂子は召喚者のリリが消えてしまっても、その世界の住人になることを決めた。

だが、月森は留学によって香穂子と世界を再び異にするのではないかという恐れがあった。
香穂子が音楽を辞め、元いた普通科という現実に戻ってしまえば自分との接点は全く無くなる。
その恐怖があったからこそ月森は香穂子には留学の件を言えずにいたとも言える。

だからこそ「続けてほしい…と思うのは」「続けていれば いつかどこかで…」と祈らずにいられない。

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初めて香穂子に留学の事実を告げる月森。
そして香穂子はその答えも告げないうちに彼の留学を知り絶句してしまう。

香穂子は、この世界での目標である月森の退去と、高みという意味での異次元への飛翔に何も言えずにいた。
しかし月森もまた同じように留学を告げた後の香穂子の反応の無さにと少なからず傷ついたのではないか。
「音楽を辞めてしまうのではないか」「やっぱり世界を異にするのか」「二人の道はもう二度と交わらないのではないか」

でも、もう二人がいるのは異世界なんかじゃない。
世界を超える魔法は、音楽は、彼らと共にあるのだから。


月森が香穂子の練習を見てくれるようになって、急接近する二人。

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手に触れて 足に触れて スキンシップ激増の彼ら
『12巻』の月森に続いて今度は香穂子が手に触れられて赤面。
お手々の しわ と しわ を合わせて、幸せってか…。

前回は香穂子が、そして今回は月森が無意識の行動ってのが良いですよね。
お互い変なところで意識して、変なところで無頓着。

月森が誘って二人っきりで出掛けたサロンコンサートだって本来ならデートっぽい。
けど二人にはそんな意識はないから、色気もない。
服装だってマナーとして気を付けているだけで、相手に見せるために着飾ったわけじゃないだろう。
きっと褒めてもくれないしね、月森は。

恋の一歩を踏み出すのには、まだまだ時間がかかりそうです。


そんな恋愛不得手の二人をアシストする役割を、心ならずも果たしてしまうのが、土浦(つちうら)と柚木(ゆのき)。
土浦 → 香穂子 ← 月森、 柚木 → 火原(ひはら)→ 香穂子、恋のトライアングル説を取るならば、
土浦と柚木はお互い、恋のライバルに塩を送ったわけですね。

月森と香穂子がお互いに相手に言ってない言葉があることを土浦・柚木は察して、それを引き出すために怒りをぶつけたり、愚痴を聞いてくれたりする。
鈍感な人のために動くのは、「ノーブレスオブリージュ」という感じでしょうか。

柚木は進路を決定する際におばあ様に叩かれたのに、香穂子にストレスをぶつけないどころか、愚痴まで聞いてくれたのは、このところ香穂子には借りが幾つかあったからですかね。

土浦の場合は、咬ませ犬、お守り、お節介焼き、という損な役回りという感じですね。
土浦は同じく香穂子に好意を寄せる火原や加地(かじ)には自分の気持ちを告げずに、
月森にだけ馬鹿正直に自分の気持ちを先行して伝えたのは、ライバル意識と、多少なりとも彼への敬意があるからか。

そして親友の柚木にも、同じ体育会系気質の土浦にも影で裏切られる(?)火原に幸あれ…。


そして月森の「お坊っちゃんシリーズ」第5弾(?)は、コンビニの肉まん を初体験。
今回、購入したの香穂子ですけど、お坊っちゃん自身はコンビニには入ったことありますかね(笑)?

そういえば、お坊っちゃんが、サロンコンサートのために慣れない靴を履いてきた香穂子の靴擦れを手当てするために絆創膏を買ってきたのにはワタクシ 感涙いたしました。
種類で言えば「はじめてのおつかい」を見た時と同じ涙の成分です。

金色のコルダ 特別編」…
月森が本当にお坊っちゃんだった頃のお話。
小学校時代から変わらない月森の冷静さと、周囲の嫉妬とやっかみの連続。

雑誌掲載順で言えば、まだ香穂子に留学の話をしていない頃で、その問題に続く終わり方。
大事なものを失う瀬戸際に立って初めて「何か大切なものを なくすような気が」する坊っちゃん
端的に言えば鈍感ってことですかね。

金色のコルダ2 特別編」…
香穂子と正体不明の男子との不思議な交流のお話。
この正体不明の人物は当時の「コルダ2」最新作での追加キャラ・衛藤 桐也(えとう きりや)。
本書自体がゲームのプロモーションであって、新作が出れば宣伝するのは仕方のない面もありますが、本編が少なくなるのは勘弁。
この特別編は香穂子がメインだからいいものの、本編の最終盤で、かなりの頻度で宣伝される「コルダ3」は全員知らないキャラで泣きたくなります。