《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

家庭内でのヒエラルキーが下の方なので 学校内で最下層を加虐するんだお☆

金色のコルダ 4 (花とゆめコミックス)
呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第4巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

音楽コンクールは第2セレクションに向かって始動! 徐々にやる気が出てきた香穂子は、練習に余念がない。自分を心配してくれた優しい柚木に「頑張ろうと思う」と告げる。ところが彼の態度が豹変!? 一方第1セレクションの覇者・月森は!? 衝撃の新章開始!

簡潔完結感想文

  • コンクールに向けた練習と、参加メンバーとの交流を順調に重ねる香穂子。
  • 優等生の裏の顔。香穂子の負けん気の強さもまた彼を満足させてしまう。
  • コンクールを前に倒れる者続出。仕方なく香穂子は寄り添うことに…。


4巻のテーマを発表する。「ストレス」。それを各人で表現するように。

…ってな感じで、コンクールを担当する金澤(かなざわ)先生からお達しが出たかのような、ストレスで心身に変調をきたすコンクール参加メンバーのお話。

中でもやはり、最大の衝撃は柚木(ゆのき)先輩でしょう。
第2セクションに向けた合宿も終わり、音楽も参加者同士の交流も順調だった香穂子(かほこ)に思わぬ大敵が待ち受けていた。

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柚木はS ストレス発散のS
三者がいると紳士的な柚木は、香穂子と二人きりになると着けていた仮面を外す。
温厚な性格が多い参加者の中で、これまで香穂子にキツい言葉を投げかけていたのは月森(つきもり)ぐらいだったが、
ある意味で裏表のない月森よりも、悪意を込めた言葉で香穂子を痛めつける柚木。


これには驚きましたが、作中で天羽(あもう)さんが指摘していたように、
柚木先輩に完璧という胡散臭さが抜けて、かえって魅力が増したような気がする。
私は全く柚木に興味のない人だったので(失礼)、良いキャラに転生したことを喜ばしく思っています。

更に柚木によって、男の子たちにチヤホヤされる逆ハーレム状態の香穂子の恵まれ過ぎた境遇が中和され、
香穂子の芯の強さや悪態も出てきて、香穂子自身も八方美人なキャラから脱却できている。

まぁ、その香穂子の強さがまた柚木の加虐心に火をつけてしまうのだが…。
香穂子に与えたストレスで折れてしまえば、柚木は香穂子のことを今後 見向きもしなかっただろうが、香穂子の反応はその逆。
ある意味で、香穂子が柚木にとって特別な女の子になった瞬間ですね。

この豹変はどう見るのが正しいのでしょうかね。

・柚木の本音・本性。
実は柚木こそエリート意識の塊で、香穂子のような場違いな輩がコンクールを汚すことを許さない。
音楽科の悪意が柚木に集積して噴出している。

・ストレス回避の柚木の処世術。
家庭内では三男だが決して自由ではなく長兄の補佐が義務付けられている。
表の顔を維持するために編み出した二重人格のような裏の顔。


続いては月森のストレス。
第2セクションで月森の両親が鑑賞することが判明。
しかも彼の両親は楽器会社の社長の父と有名ピアニストの母という音楽一家。

だが自分の演奏が親のコネや贔屓と言われることを酷く嫌がる月森。
だが、彼自身は両親のことを重荷に感じてはいるものの、敬い愛している(はず)。
だからこそ親に恥をかかせたくないという思いに苛まれ、緊張が生まれ、ストレスになる。

これは音楽で至高を目指す月森にとって唯一の虚栄心だろうか。
本書では珍しい月森と柚木の2人だけのシーンで、「あの」柚木が心配している振りをして揺さぶってきた点が月森の地雷。
両親のことに加えて、同じヴァイオリンの香穂子、初参加の反りの合わない土浦もまた気になる存在か。
音楽に関して敵なしという状態の月森の心に、人々の顔がよぎり始める。
彼にとっていい変化かどうかは、まだ分からない。


やや唐突に挿まれる月森の風呂上りシーン。
海回・水着回がない『コルダ』の中では数少ないサービスシーンでしょうか。
(親からの)手紙を気にして、すぐに服を着なかったことが月森が熱を出す伏線だったりするんですかね。


学校中の人間から両親の話題を出され、ストレスを抱え身体に変調をきたす月森。
だが月森は変調をきたしてもなお、音楽に邁進する。
しかし、やがて心身ともに悲鳴を上げ、練習室で倒れ、香穂子によって発見される…。

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巻末の特別編 も含め 4巻では2回 添い寝する2人
頑なな月森の態度が巻き起こす事態に香穂子が間に入ることによって、
月森の中で香穂子の存在が少しずつ大きくなっていっている様子が見受けられます。
月森の動揺や赤面、大好物です。土浦のも火原先輩のも好きですけどね(笑)

月森には同性から嫌われる要素が詰まってるんですかね。
土浦と言い音楽科の男子といい、彼を嫌う人がわんさかいる。
そして『4巻』でも以前と同じように男子生徒の陰口から月森との衝突が発生する。

『3巻』での伴奏者の、音楽科の中の、普通科の香穂子への偏見や悪意が表されていたが、
今回は、音楽科の中の音楽科エリートへの悪意だろうか。
月森は音楽科という異世界の中でも、また更に異端児なのかな。

一見同じ優雅で高貴な貴族キャラのような柚木と月森。
柚木は処世術を生み出し万人と上手くやっているが、月森は誰とも上手くやれていない。
そんな彼らのストレスの源は家庭。
家庭内では柚木の方が上手くいかず、月森は両親が音楽界の重鎮だからこそ悩む。
彼らの意識に変革をもたらすのが、やはり異邦人・香穂子の役割なのだろうか。