《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

作者が『コルダ』に関わる前の金色の短編が、コルダの未来を暗示している⁉

金色のコルダ 2 (花とゆめコミックス)
呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第2巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

大人気ゲームをコミック化☆ 音楽コンクールに出場することになった素人・香穂子。不安いっぱいなうえ、音楽科の男子たちは格好いいけどクセありげ!皆との交流を兼ねて、花見をすることに!? 一方、何かと手伝ってくれる土浦の秘密が…!?

簡潔完結感想文

  • 月森をトラブルから守る際に指に怪我をした香穂子。月森はそれを借りに感じて…。
  • 通りかかった楽器店から流れるピアノの音色。その音を奏でていたのは意外な人物。
  • 土浦の技術を知って、それを世に知らしめたい香穂子だが、本人は乗り気ではなく…。


第一の召喚から 間を置かずに 第二の召喚の準備がなされる2巻。

本書を広義の異世界召喚モノと考えると土浦の立ち位置がより際立ちますね。

第二の召喚者であり、そして香穂子自身が見い出し、その世界に召喚した人。
異世界にありながら同じ境遇の者同士という共通点は恋愛に発展する重要な要素でもあるはず。
そして普通科という同じ世界の住人でありながら、確かな技術を持ちながらステージに上がらない者と、持たないまま上がる者。
今後は、香穂子の土浦への共感と、その裏で覚えるインチキな自分への罪悪感なども焦点になっていくのでしょう。

…といっても、召喚されるのは次の巻なんですけどね。


召喚の準備もあって、『2巻』は ほぼ土浦回となっています。
これまでもコンクール出場決定前後から香穂子に何かと協力してきた土浦。
知り合ってまだ日が浅いにもかかわらず、結構 仲を深めてきた二人だが、今回はそんな土浦に新たな一面が発見されます。

なんと土浦がピアノを演奏すること、それもかなりの腕前だということが発覚。
しかし彼はそれを他言されたくない様子。

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壁ドン⁉ それとも 脅迫⁉
サッカー部のエースにしてピアニストというのは文武両道というか、意外な2つの特技です。
この裏切りにも似た感覚は私たちのピアニストへの偏見、例えばスポーツは得意じゃないだろうとか、小柄な人が多そうとか、も手伝っているんでしょうね。

てっきり土浦の役割は 無骨な優しさの第三者、香穂子を通常世界から見守る側の人かと思ったら、異世界側の住人になる資格を持っていたから驚いた。


一方で無愛想な月森にある程度の従順さを生むイベントが発生。
土浦も嫌う目標の高さで全ての物事を容赦なく切り捨てていく月森の態度が人間トラブルを招く。
それを目撃した香穂子は止めようとして結果的に自分の手の指に怪我を負ってしまう。

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月森の高い意識は香穂子にも影響を及ぼす。
楽器を奏でる意識がまだまだ低い香穂子は気にしていないが、月森はその意識の高さから怪我の重要性を知っており罪悪感を覚える。
このことがキッカケで月森は自分の本意ではないことにも少しずつ参加し始める(お花見とか金澤先生のパシリとか(笑))。

この出来事が月森が香穂子を意識の端に置く一手だったのかもしれませんね。
そして月森の存在があってこそ、意識や音楽観の違いが反響して土浦の負けん気に火が付くのかもしれません。
土浦をステージに上げたのは、妖精などではなく香穂子と月森という2つの世界の人物だという点も面白い。
これは音楽的素養があれば世界を往来できるという点が本書ならではの面白さですよね。


そういえばコンクールの直前に妖精・リリが香穂子の衣装を魔法で出してくれましたけど、この衣装はコンクール後も消えてなくならないんですよね。
ならば音楽関係の出費を賄うためにも現金なり貴金属を出現させてもらうことは可能なのだろうか、と考える邪なワタシです…。


そしてどうやら登場人物の名前は太陽系の惑星が由来の一つみたいですね。
ということは名前から察すると金澤先生や天羽さんも重要なキャラなんですね。
男性の金澤先生はゲームでは攻略対象にもなるので重要なのはわかりますが、天羽さんが重要なキャラだとは思いもしませんでした。
てっきり、漫画オリジナルで用意された登場人物紹介に便利な人かと思ってました。

太陽系と人物設定には関連があるのでしょうか。
火原先輩は感情に素直な火星っぽく、月森は冷静な月っぽいなぐらいでしょうか。
女性陣が遠方の惑星に充てられているというのは何かしら意味があるのか。
でも最大の惑星・木星の柚木先輩が一番背が高いわけではないし、太陽からの距離が親密度の高低になっているわけでもなさそうですね。

しかし「セーラームーン」でもそうだけど、月って天体としてみると微妙な位置ですよね。
地球にとっての衛星であって、太陽系惑星の衛星なら他にも沢山ありますからね。
おまけのイラストで「美男子戦士セーラーコルダ」として変身した男子生徒たちを描いて欲しかったなぁ。


「あしたは きっと金色の…」…
音楽学校の特待生入学を狙う紫央(しお)は在学生でヴァイオリンの一等上手い加宮(かみや)に個人レッスンをお願いするが…。
『コルダ』連載前の短編。ヴァイオリン、金色、個人レッスンと様々な要素が共通点として見受けられる。
特に加宮に何度断られても教授をお願いする様子は、『コルダ』後半の早乙女先生に猛アタックを仕掛ける香穂子の様子と重複するし、
どうにか加宮に習うことによって、紫央に触れた加宮の演奏や性格にも影響を及ぼすさまは後半の香穂子と月森の関係性そのものだ。
加宮と月森は性格や家族背景まで似通っているけれど作者の未来や月森を幻視してたんですかね。
それともありがちな設定とか…? なんてね。