水瀬 藍(みなせ あい)
なみだうさぎ ~制服の片想い~( ~せいふくのかたおもい~)
第9巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
「あたし以外の女の子に優しくしちゃヤ」鳴海に本音でぶつかった桃花。鳴海も自分想いを話してくれて、2人の絆はさらに深まっていく…!そんなある日、皐月が恋をした!それを知った桃花たちは皐月を応援!快里の助言でオシャレした皐月は、きれいになって好きな人に会いに行くけど…!?一方、鳴海の彼女になりたいヒロキは、快里の一言でオシャレに目覚めて…!?
簡潔完結感想文
- 初めての恋に自分を変えようとする皐月、自分の恋から逃げ回ってばかりの天野。
- カメラマン・ヒロキの写真モデルとして北海道に滞在する鳴海。またも送り出す桃花。
- 鳴海不在の中、文化祭が始まる。当日には帰ってくると言っていた鳴海だったが…。
恋する女はきれいさ、の9巻。
今まで恋愛に全く関心を持たなかったクラスメイトの皐月(さつき)や プロカメラマンのヒロキが恋に目覚め、それまで袖を通さなかった ゆるふわ愛されコーデに身を包む。
本書は基本的に愛されることが女性の幸せというスタンスで話が進んでますよね。
服装にしても、女性側は基本的にフリルのついた洋服を身に着けてます。
これも愛されるためでしょうか。
皐月に関しては似合ってないように思えるけど、服装が勇気をくれることもあるんでしょうね。
皐月の顔立ちは何をしても地味になるのは作者の絵の加減が上手いからでしょうか。
冷淡かもしれませんが私は女性の親友がこぞって泣く場面があまり好きではありません。
自分がもしその場にいても泣けない側の人間だからでしょうか。
皆で泣くといい場面と錯覚して、友情が深まった描写という記号化された感じも好きじゃないです。
以前、桃花(ももか)が失恋した時に快里(かいり)が泣いて、皐月は泣いてない場面の方が非常にリアルに感じられたものです。
皐月の漫画家デビューは失恋のお手当てと、そして鳴海(なるみ)がモデル写真集発売の発表をリアルタイムで桃花が知るようにする布石でしょうね。
多分、後者の理由の方が大きいと思うが、キャラの弱かった皐月に最終盤でキャラ付けがされてます。
何だか桃花の周囲は広い意味での芸能関係者と漫画家、そしてカメラマンという特殊な職業の人ばかりになってしまいましたね。
そんな中、桃花が将来目指す夢といえば、鳴海のお嫁さん、らしい。
桃花らしい夢ですよね。高校1年生だし進路とか具体的で現実的な夢を描くのも本書の雰囲気とはマッチしないので深掘りしなくていいかな。
私の中のイメージとしては桃花の将来は保育士さんですかね。
夕凪(ゆうなぎ)ちゃんと遊んでいる場面が多いから、そこからの連想ですが。
皐月の話を挿んで、その次からは再びヒロキと鳴海が一緒に過ごす展開。
なんとヒロキは鳴海をモデルにした写真集を発売することを発表。
本人に事前告知なしでね☆ 親の許可を取ったからね☆ 未成年に人権はないからね☆
私の中ではヒロキは風景写真家だったんですが、人物もいけるんですかね。
職権乱用したかっただけだったりして。いいよー、かわいいよー、じゃあ ちょっと一枚脱いでみようか。
あと天才写真家って何?
ヒロキは成人後も活躍してるイメージがないですね。
桃花と鳴海が離れ離れになるのは、桃花を苦しめた『8巻』と全く同じ内容ですが、これは意図的にでしょう。
最悪で最高の9月末の鳴海の誕生日から1か月ぐらい経過して、桃花と鳴海の関係性が一段と深くなり、桃花が少し成長し強くなったということを表したいんだと思う。
そして桃花と同じように鳴海を好きなヒロキに撮られた鳴海の写真は、桃花にとっても、見てみたい世界そのもの。
自分にも利益があるから今度は快く送り出し、不安にも負けないよう努める桃花だった…。ちなみに写真撮影の地は、鳴海が引っ越し詐欺をかました因縁の地・北海道。
作者の中で遠距離=北海道なんですかね。まぁ南国に行ったら離れた悲壮感でませんもんね。
そしてラストの展開で雪が必要なので、晩秋(多分)でも雪が降る北海道という舞台が必要だったのでしょう。
桃花が強くなるということは、それはこれまで以上に何の事件も起きないってことなんですけどね…。
鳴海と離れて多少の不安はあるものの、今回は泣きじゃくったり、追いかけたりはしない。
鳴海が帰る予定の文化祭の日まで桃花も着々と準備をするのだが、その当日…。桃花も鳴海も精神的にも地理的にも身動きが取れないので、今巻でよく動くのが鳴海の親友・天野(あまの)。
桃花が鳴海と付き合う前から桃花に想いを寄せ、交際後は自分の気持ちに蓋をしてきた天野。
だが、自分を好いてくれる女性が目の前に現れても、思い出すのは大切なあの子の顔。
そういう自分の内面に気づかされた天野は、文化祭のイベント告白大会に参加することを決める。
「どうして いつも君ばかりが がんばらなくちゃ いけないんだよ…っ」
文化祭当日に帰ってくると言っていた鳴海が、都合で帰れなくなったと知って目に涙をためる桃花。
そんな彼女を見て天野は桃花に上記のセリフを言うのだけれど、私は胸キュンどころかポカンとしてしまった…。
えーっと、桃花ってなんか頑張りました?
愛されることを頑張ってた気はする。男の子は皆、彼女のこと好きになるし。
作者の考える桃花の魅力が読者にはちっとも伝わっていないので天野の一世一代のセリフも効果が半減してしまう…っ。
にしても「…っ」って何? 言わんとしてることは分かるのですが、作者の中で流行ってんですかね。
そういえば桃花の飼い犬・がぶ。飼い始めてから1年ぐらい経過してますけど、全く大きくなりませんね。
仔犬の1年って成長スピード凄いんですよね、確か。