《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

オレオレ詐欺「俺がソラだよ」って言うから信じたらロマンス詐欺。ぴえん。

f:id:best_lilium222:20200503190906j:plain
水瀬 藍(みなせ あい)
なみだうさぎ ~制服の片想い~(  ~せいふくのかたおもい~)
第7巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

バイト先で久遠と再会した桃花。またイジワルされちゃうかも…と思っていたら久遠は不器用なだけでやさしい人。少しずつ仲良くなっていく桃花と久遠。そして、久遠から「ソラは俺だ」と衝撃の告白を受けた桃花。だけどそれは、桃花をからかうために久遠がついたウソだった!! なのに一晩中久遠のことを考えて寝不足で倒れちゃった桃花は…!?

簡潔完結感想文

  • 少女漫画って両想いの後は、展開の幅が狭まって同じようなことしか起きない。
  • 単純だから思考を先読みされた事に気づかず、ロマンス詐欺に引っ掛かる桃花。
  • きらわれないように涙目で生きる「なみだうさぎ」さんには何の魅力もない。


横恋慕の横入りが横行する、両想い後の少女漫画は退屈、と横柄に断じる7巻。

創意工夫のあった「片想い編」に比べて、「両想い編」になってからは手垢のついた展開が続きます。
好きという気持ちを持って一直線に走っていた前半に比べて、後半は同じ所を周回しているだけなので読者としては共感やカタルシスを得られない。
特に「鳴海(なるみ)くんに きらわれちゃうよ」と今巻で主人公の桃花(ももか)が独白するように、保守的な姿勢ばかりが目に付いてしまう。
『なみだうさぎ』が、桃花の性格が両想い編に不向きである理由は『6巻』の感想文を参照してください。
努力なしに愛される桃花に読者の反感が集まってしまったのは長編化の弊害だと思う。


今巻のテーマは誤解ですかね。
海のペンションで出会ったイジワルな久遠斗真(くおんとうま・どちらも名字でどちらも名前っぽい)と新しく始めたバイト先で再会した桃花。
だが仕事仲間としてはよく気が回り、彼が親切なことに気づいた桃花は口の悪い人だと思った彼の第一印象が誤解だと知る。

彼の飼い犬がソラという桃花のネットの相談相手と名前が一緒のことから、彼こそがソラなのではいかと考えた桃花は久遠に問いただすが一度は否定される。
が、後日、彼の方から「俺がソラだよ」と言われ世間の狭さに驚愕する桃花だったが、実はそれは久遠が意図的に与えた誤解(というか嘘)だった…。

f:id:best_lilium222:20200603014138p:plainf:id:best_lilium222:20200603014204p:plain
ミスリーディング(誤誘導)という名のページ稼ぎ?
この場面、というか今巻は全体的に桃花の頭の回転の悪さが原因で誤解ばかり生みだされていきます。
「友達の話なんだけど…」とバレバレの前提で自分のネット友達のことを話し出すし、桃花よりは知性が高い久遠によって先回りされたことも気づかず、久遠=ソラ説を信じてしまう。
そして久遠がソラだと名乗っても、それをソラ本人には確かめようとしない。
更には彼女である自分が男の家に上がり込むことがどういう意味を持つかも考えなかった。
結局は久遠の存在によって鳴海の嫉妬を引き出すためとはいえ、桃花のおバカばかりが目立つ構成になってしまっている。
あと以前もあったが自分の悩みに囚われて一晩眠れなかったという場面が多すぎ。
以前は屋上で寝て授業をサボっていたが、今回はバイトという仕事に迷惑を掛けている(そして怒られたりしない)。


久遠もまた様々なことを誤って理解している。
まずは自分の心。イジワルばかり言ってしまう桃花への気持ちが恋情だと遅れて知る。
だからこそソラになりすましたり、桃花の彼氏である鳴海の存在に苛立つのだが、彼の鳴海像は実像ではなく噂に振り回されている。
元カノがモデルだからさぞやモテるとか類推し、桃花のメールを盗み見た際のギャル男のような文章は鳴海が作成してないと久遠は知らない。
じゃあ鳴海の実像って何?と問われると読者としても答えにくいが…。

再会のためとはいえ久遠の性格からいってスイーツ感あふれるクレープ屋は絶対バイト先に選ばないと思った。


鳴海はどんどん無個性になってますよね。
もはや時々、甘い言葉を吐くだけの存在になってしまっている。
両想い編ではよくある嫉妬やすれ違いからの仲直りではなくて、二人ならではのカップル像や空気感を醸成してほしかったなぁ。


鳴海がソラだと桃花に伝える場面ももっと劇的に出来なかったのかと残念に思う。
一応『1巻』からの伏線が回収されたわけだし。
こういう静かな場面じゃなくて、久遠宅での言い争いの中で露見する方が劇的だったんじゃないかなぁ。
桃花の反応も嬉しさとか「運命」感じているだけで終わっているのも残念。
鳴海への悩みを鳴海に逐一報告していた恥ずかしさや、奇妙な構図についてもっと掘り下げて欲しかった。

そしてその前に桃花が鳴海のためにソラを切り捨てるような発言をしているのも気になる。
桃花にとっては「ソラさん」という人格もまた大事な人だったと思うんだけどなぁ。

嫉妬の炎が燃える前に、自分の大事なものも含めて全てを焼き野原にしてしまおうという独占欲の強さには辟易します。
桃花がわがままを言わないことを悩みに思っていた鳴海だけど、この桃花は鳴海に地雷女と思われても仕方がない。
別れる時や別れた後、苦労するぞぉ、とお節介な心配をしています。

f:id:best_lilium222:20200603014620p:plain
恋人のためなら「ソラ」を速攻で切り捨てる薄情者
しかし鳴海が桃花のブログを見つけた理由は何なんですかね。
運命の一言で片づけないで、鳴海側のことが知りたかった。
真相は、モテなかったキモオタ時代の鳴海が、女子中学生のブログを読み漁っていたとか?
鳴海のソラとしてのコメント活動は他にも30のブログで継続中だったりして(笑)


今巻の後半は長ーーい一日のお話。
最終的に鳴海は初めて桃花の家に上がり込むことになる。
そんな中、これまた手垢のついた展開でジュースをこぼしてお風呂に入ることになった鳴海。
そんな時、浴室のドアが開いて入ってきたのは裸の…⁉

交際相手の彼女の父親が、自分の入浴中にお風呂に闖入してくるなんてセクハラでパワハラだ。
作画の問題もあって若作りして描かれている桃花父だが、推定40代のおじさんと狭い風呂場に身体を寄せ合うなんて高校生からしてみたら色々な意味で恥辱でしかないだろう。

ちなみにこの場面で鳴海が語る桃花の美点が語られるのだが、桃花はその存在が奇跡らしく、具体的な指摘は何もないに等しい…。