《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

他の男との宿泊を彼氏に見られた…。ぴえん。彼氏も別の女といた…。ぴえん。

なみだうさぎ~制服の片想い~(8) (フラワーコミックス)
水瀬 藍(みなせ あい)
なみだうさぎ ~制服の片想い~(  ~せいふくのかたおもい~)
第8巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

鳴海の憧れているの写真家のヒロキが、16歳の女の子だと知って動揺した桃花。気分転換にショッピングに出かけたら、空腹で倒れている女の子と遭遇!助けてあげたらなつかれちゃった!その後、鳴海に会いに行ったら鳴海の隣にさっきの女の子が…。その子が「ヒロキ」と聞いて桃花はビックリ!しかも、ヒロキを憧れの目で見る鳴海に不安と嫉妬でいっぱいになっちゃって…!?

簡潔完結感想文

  • 鳴海の好きな写真家・ヒロキが同じ年の女性と知って、内心 穏やかじゃない桃花。
  • ヒロキもまた鳴海が好きだと発覚。元カノから鳴海を盗ったんだから、次は…⁉
  • 同行を断って鳴海とヒロキの山での撮影を尾行する、意味が不明のおバカな桃花。


同じ風景をどう切り取るか、それがプロとアマチュアの写真の差。では恋をどう切り取る?の8巻。

片想いの道程こそ少女漫画家の腕が試されると思っていましたけど、両想いの描写こそ、作家性が試されるみたいです。
その意味では本書にはもっと頑張って欲しかった。
主人公・桃花(ももか)の特性が、恋人の鳴海(なるみ)にただ無条件で愛される、というものなので、鳴海側から嫌われたり距離を置かれたりするという選択肢がないため、事件という事件が起こしにくくなっている。
だからなのか本書の両想い後に描かれるのは、恋人のどちらかを好きな人が現れる、そしてその様子に嫉妬する、の繰り返ししかない。
桃花側か鳴海側かの違いだけで、今巻の描写はほぼ『7巻』と立場を逆にしただけである。
嫉妬や不安を描くにしても、もっと独自の切り取り方があったはずだ。
絵の丁寧さや綺麗さだけではなく、プロの作家としての発想力や構成力を発揮してほしかった。

そもそも、嫉妬深さが恋の深さではない、という言葉が読書中ずっと頭の中を駆け回っていた。
桃花の鳴海を好きという気持ちをもっと大切に描く方法はあったはずである。


「またもや恋の神様が いたずらを はじめちゃったみたいです」
出ました、桃花さんの名言。
鳴海の尊敬する写真家・ヒロキは16歳の女の子で、ヒロキは撮影のアシスタントとして関わった鳴海と多くの時間を過ごすようになって鳴海に好意を寄せる。
ちなみに、ヒロキが鳴海に好意を持った出来事は、突然の雨からヒロキと撮影機材を守るために鳴海が繰り出したお姫様抱っこ。
鳴海の必殺技ですね。
もうすぐ鳴海にこれをされた女の子は百発百中で恋に落ちるという噂が囁かれそうですね。

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鳴海の伝家の宝刀、お姫様抱っこ 桃花はこれを禁止するべきでした。
そしてもう一つのいたずらは、クラスメイトの男の子・天野(あまの)の桃花への恋心。
鳴海と交際を始めてもまだ桃花のことが好きだとはっきりと明言しました。
結果的に、桃花より長い巻数に亘って片想いをしていた天野の恋が叶ったら伝説の展開ですね。


「彼女がいる人を好きになっちゃいけないってルールとか あるのかな?」とヒロキに問われる桃花。
だが、桃花にはそれを否定を権利はなかった。
だって自分だって鳴海を好きだった元恋人・萌愛(もあ)から鳴海を奪ったのだから。
因果応報。奪略の恋は奪略される運命⁉
桃花は今後の人生のためにも一度失恋した方がいいかもしれない、とアンチ桃花派の意見。


鳴海の誕生日に二人の思い出の中学校の写真をアルバムにして渡そうと計画する桃花。
その途中で桃花はヒロキに出会い、なぜか二人で中学校を訪れそれぞれ写真を撮影することになった。
中高一貫校のようですが校舎は所在地まで別なんですね。
そしてわずか半年前の思い出散歩をする桃花の様子はさながら最終回のようだった。

「ヒロキさんのあとに 自分の下手な写真なんて 出せないよ」

計画を知らないヒロキが先んじて鳴海に中学校の写真を送ってしまい、そのプロの仕事と自分との差に落ち込む桃花。
確かにナイスアイデアだと悦に入っていたところに、最高品質の作品を見たらショックを受けるかも。
でも、こういうところで自分を信じないのが桃花の欠点ですよね。
彼女である桃花が「いちばん あげたいもの」が鳴海に喜ばれるもの、って天野もアドバイスでしょうに。
更に意地悪な私は、じゃあ萌愛ちゃんのあとに彼女になった自分には自信があるってことかと詰問しそうになった。


「あたしって ほんと ばかかも…」

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鳴海がヒロキに冷淡だったら満足するのだろうか…。
一緒に行くはずだった写真撮影の日を忘れていた桃花は、心とは裏腹にヒロキと鳴海を撮影に送り出してしまう。
そしてその上で二人を尾行する。
気持ち悪ーーっ。
桃花には以前からストーカーの気がありましたが、自分の嫌な場面を見に行くマゾ体質でもあります。
そして遠出した先で偶然出会う天野くん。
こいつもストーカーじゃないのか、という疑惑が一瞬頭をよぎる。

山の中で豪雨に見舞われ、天野と旅館に泊まることになった桃花。
その旅館で鉢合わせする別の異性といるカップルたちの運命やいかに…。

鉢合わせるのは一夜明けてからでも良かったかもしれませんね。
もちろん紳士的な天野だったが、どうしても鳴海の誤解は消えない。桃花も同じく。
もっとドロドロさせてた方が桃花は輝いたのではないか。だって悲劇のヒロインだから。


にしてもこの漫画、突然の雨、突然の熱(倒れる、眠る)多すぎません。
印象的な場面を作るためでしょうけど、便利すぎる。

でも突然の雨に打たれたからこそ、雨降って地固まる。

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純愛とは二人の世界を狭めていくことなのだろうか…?
「あたし以外の子に やさしくしちゃ やなの…っ」
自分の本音と共に手作りの誕生日プレゼントを渡す桃花。
「あーもう なんで そんなに かわいいかな…っ」
愛されヒロインは嘘もストーク行為も雨が洗い流してくれます。お幸せに…。