《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

巻末ごとにサプライズをくれる彼。逆に言えば巻末まで動かない彼。ぴえん。

なみだうさぎ~制服の片想い~(4) (フラワーコミックス)
水瀬 藍(みなせ あい)
なみだうさぎ ~制服の片想い~(  ~せいふくのかたおもい~)
第4巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

この恋はむくわれない恋…。だから「友達やめる」って言ったのに、突然キスされた!混乱する桃花に、「明日渡り廊下で待ってる」と告げる鳴海。翌日、廊下に向かった桃花だけど、現れたのは鳴海ではなく天野。「俺のこと友達として好き?」天野にそう聞かれた桃花は…!?

簡潔完結感想文

  • 恋のソーシャルディスタンス。近づけば離れ、離れれば近づく彼の真意は?
  • 鳴海家でお泊り。熱を持ったキミの心にあるのは恋? 私も熱に悩まされちゃう。
  • 一人の女性を賭けた男たちのマラソン大会。人助けしても1位になれる謎体力。


恋の神様は天邪鬼⁉ 鳴海(なるみ)と恋を距離を置きたい時ほど彼の方から近づいてくる4巻。

少し前に自分に告白してきた桃花(ももか)に親友・天野(あまの)を恋人として薦めてくる鳴海に対し、桃花は「友達やめる」と鳴海との関わりを一切持たないよう努める。
そうだよね、自分が振った相手に恋人候補を提案するなんてデリカシーないよね、と彼に失望していた私を更に驚愕させる行動を鳴海が取る。

その場を去ろうとする桃花を引き寄せ、いきなりのキス!
自分に彼女がいるとか関係ないし、さっきまで別の相手を薦めてたのに自分が先ず唇を奪う。イケメンはやることが違いますね…。
そして『3巻』の巻末をバッチリ意識してのこの商業至上主義の行動には痺れましたね。
鳴海のこの法則は今巻でも適応されており、連載6回分遠まわりして、巻末でようやく行動に移す作者のマリオネットと化しています。
鳴海という男は果たして誠実なのか、私の中で大いに疑問が残ります。


そんな鳴海を突き放して逃げ帰ろうとする桃花を再び追って、明日の放課後に桃花との待ち合わせを一方的に伝えて自分が先に立ち去る鳴海。
桃花からしてみれば嬉しいは嬉しいが、自分の恋心を翻弄する身勝手な男とも取れる。
鳴海の本当の気持ちを知る読者としてはなぜこの場で告白しないのかという疑問も湧きますが、それは想像すれば理解できますね。
これは彼の誠実さの証しでもあります。
鳴海の目算としては幼い頃の約束で、名義上とも言える恋人の萌愛との関係を清算した上で、桃花の想いに応えようとしたのだろう。
まぁ、理性が飛んでしまい先行して桃花にキスはしてしまったけどね…。

これを物事の順序を正しく運ぶ人だと思うか、理性を失った時点で浮気と思うかは相手や読者次第ですかね。
もし桃花と鳴海が恋人となってから鳴海にこれをやられたら、桃花は幻滅すると思うけど。
少女漫画で、桃花中心となって物事が動いているから特段気にならないが、鳴海に好意を持たない私からすると浮気です。
決して「ノーカウント」なんかには出来ません。
ましてや2回も行っちゃうんじゃ、ノーカウントどころか警告2回で退場処分ですよ。

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ドアの開閉や鳴海の存在に気付かない二人だけの世界(違うか)
この後も運命のいたずらか、どんどん恋の迷子になっていく二人。
今巻の中盤は歯痒いような切ないような、それでいてご都合主義の連続のような展開で二人の距離は一向に縮まらず、一定の距離を取り続ける。

と、割愛したくなる展開の連続は、要するに二人ともお互いにお互いを信じきれないから。
最終的には友人・快里(かいり)ちゃんがまたも良いこと言ってますけど、「鳴海は好きでもない子にキスするようなやつなの?」「桃花の気持ちをもてあそぶような人なの?」と桃花が好きな鳴海を信じろ、と言われる。

これは逆もまた然りで、自分に告白してきた桃花が、それから間もないのに天野を好きだと思い込んでいる鳴海に問いたい。
鳴海が好きな桃花は、好きな人をころころ変えるような人なのか、と。
結局、恋に迷子になっているのは自分が俯いて歩いているからで、好きな人を信じて歩き続けられなかったからではないか。

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振り回す男が悪いのか、振り回される女が悪いのか。
「このままじゃ 心がこわれちゃうよ」と迷路の中で泣き崩れる桃花。
いつもならそんな彼女の自己憐憫に苛立ちすら感じる所だが、鳴海相手じゃそれも致し方ない。
違う男を紹介したと思ったらキス、寝ていると思ったら起きてキス、少女漫画としては不意打ちが胸キュン材料なのかもしれないが、桃花としては暴漢に襲われた気分すらあるだろう。

鳴海の親友で恋のライバルの天野が、これまた煮え切らない男なので桃花は鳴海への想いや純潔を守れたが、天野がチャラ男の阿久津(あくつ)ぐらいの性格ならば、天野にも唇を1,2回奪われても不思議ではなかった。
桃花が気持ちが弱っているところに天野になびいてお試し交際などしなくて本当に良かったと、天野のヘタレ具合に感謝はするけれど。

しかし現役バスケ部の天野に対抗するどころか、具合悪くて道端で休憩している桃花を助けながらのマラソン大会優勝って鳴海はどんだけ超人なんだろうか。
まぁ鳴海が長距離走が得意というのは『1巻』の時点で暗示されてましたけどね。
桃花が1年前に鳴海に想いを寄せたきっかけとなった出来事の再現というのは漫画として良い構成だ。
ちなみに鳴海は桃花を「ふわ…」と持ち上げるが、これは桃花に配慮した表現だと思った(笑)
「よいしょ」とか「んぐっ」じゃ鳴海も様になりませんもんね。

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桃花 マラソン大会仮病説、などと言ってはいけない…。
気になるのはマラソンを途中棄権するぐらいの体調で、教師から帰る準備をしろと言われているのに校内をうろつく桃花の描写。
この後のメインイベントの為とはいえ、マラソン終了後は全く体調が悪くなさそうに見えるけれど仮病ですか?と桃花に冷淡な私は思ってしまった…。