《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

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今一人で旅立つ君に 引き止める言葉を選べずに『月光浴』

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小玉 ユキ(こだま ゆき)
月影ベイベ(つきかげべいべ)
第7巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

夏を迎え”おわら”の熱が強さを増していく八尾町。そんな中、蛍子は光から思わぬ告白を受ける。しかも、気まずい空気を感じる最中に、男女のペアで光と踊ること。円に惹かれる気持ちは変わらないはずなのに…⁉

簡潔完結感想文

  • 告白の返事。これまでの感謝を込めて、偽りのない気持ちを伝える。
  • 男女のペアでおわらを踊る光と蛍子。偽装交際に続き、別れても踊る人。
  • 蛍子の葛藤。踊りも好きな人も母から受け継いだもの? 自分はどこ…?


一番言われたくない言葉と、一番言われたい言葉。言葉が凶器にも救済にもなる6巻。


光からの予想外の告白に戸惑う蛍子。
返答に悩む蛍子だったが、全ての事情を知る友人・里央から光が蛍子にとって大事な人だということ、大事な人には誠意を見せて自分の気持ちを伝えなきゃとアドバイスされる。
蛍子が分かりやすく自分の気持ちが外に出るタイプだからもあるけれど、里央は蛍子の良き相談相手ですね。
里央は美人だけど性格のきついお嬢さんでてっきり恋や踊りのライバルキャラかと思ったら、とっても優しい親友キャラになってます。

キャラが変わったと言えば蛍子もそう。

告白の返事はお寺の本堂の屋根の下。
奇しくも初めて会った日以来の2人での雨宿り
蛍子にしては一人で長く喋り続けた言葉の前半部分は光への感謝の言葉。
あの蛍子の言葉とは思えない素直で心からの感謝だ。
これは蛍子の光の好きな部分、惹かれる長所、とはならないかな、と光応援隊としては祈る気持ちになる。
が、蛍子の中で変わらない円への恋心。それが告白の最後に語られる。

初めて会ったあの日は、2人で並んで傘に入って帰宅したけれど。今回はどちらとも傘がない。
蛍子に気を遣わせないように精いっぱいの笑顔と軽やかさを演出した後で、一人雨に濡れて走る光。
そういう彼の気遣いも蛍子はまた知っていく…。

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もう一つの傘の下には並べない二人
一方、いつも笠があるのがおわら。
混合という男女ペアの踊りを「この世で一番気まずい相手」こと光と踊ることになった蛍子。
『3巻』での偽装交際の解消の時もそうでしたが、気まずい時も二人をおわらが結びつける。
手を握ったり肩を抱かれたりスキンシップの多い踊りに戸惑う蛍子は動きがぎこちなくなり、そんな蛍子の様子を見た光は蛍子に内密でペアの交代を男性陣に頼み込む。
この時、蛍子が聞いていない(と思っている)にもかかわらず蛍子を決して悪者にしない光がいいですね。
どんな時も優しい彼をまた知っていく蛍子は、とても不器用な言葉と態度ではあったもののペアの継続を了承する。
混合の踊りでは、今、光がどんな表情を浮かべているのか笠で見えない。
表情も感情も覗かせない彼から伝わるのは肩をぐっと抱いた彼の手の確かな温かさ。


そのせいか、とても品のない言い方ですが蛍子発情中という感じです。

久々に顔を合わせた円に勢いでデートを申し込む。
咄嗟に言い訳したものの、結果的には完全なごっつぁんデート。
車もあるしお金もある大人の、でも時には少年のような男性とのデートを楽しむ蛍子。

2人で訪れた海岸で蛍子から後ろから抱きつかれ、さすがの鈍感を50年弱も続けてきた円も何かに勘づいた様子。
その後の蛍子を傷つけた円の飾らない本心だからこそ手痛い言い回しは、常に恋愛防衛ラインを構築する人みたいだと思った。


その日以来、踊りがぎこちなくなる蛍子。
少し意外ですが蛍子の踊りは気持ちに左右されるタイプですね。
円との関係性も含め、蛍子を悩ませるのは自分を覆い隠すほどの母の存在。
蛍子としてよりも、繭子の娘として、母のコピーとして見られる。
これはちょっとした二世タレントの悩みみたいですね。
七光り問題。光が強すぎて自分の輪郭がぼやけていく。

そんな蛍子のスランプを救ったのは光。
彼の存在は蛍子にとって八つ目の光(七光りが七つの光ではないとは思うが)。
それは自分だけを照らしてくれる光。
光の言葉は彼が「おわらバカ」として生きてきたからこその見識だろう。
まるで師匠が弟子に伝える言葉みたいだ。
そしてそれだけ自分のことを見てきてくれた人の言葉だ。

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光の実直な言葉が蛍子の明日を照らす
光は失恋した直後から一段と格好良いですね。
光も身投げしたいほどの絶望を抱えたはずなのに蛍子の前では一度もその落ち込みを見せない。
読者にもあの失恋の日の雨の中の1コマ以外は悲しみを見せてません。
その姿を描かないからこそ光の器の大きさがしっかりと表れるのかも。
序盤にあったような口喧嘩や言い争いもめっきりせず、すっかり大人になっている。


流しそうめんの場面で蛍子は町の子は年少者との交流も高校生の役目だと知る。
町は狭くて閉鎖的な一面もあるだろうけれど、同年代の横の繋がりだけではなく縦の繋がりも育まれる環境には憧れます。
少しだけ年が離れたお兄さんお姉さんの所作を見習って、自分もそうなれるように努力するって大切なことだ。それが成長へと繋がるから。
25歳までの年齢制限も、進学などで町を離れた人が多く帰ってくる要素の一つかもしれないですね。
人生と同じで有限であることを意識するからこそ1回1回を大事にする。

月影ベイベ (7) (フラワーコミックスアルファ)

月影ベイベ (7) (フラワーコミックスアルファ)

  • 作者:小玉 ユキ
  • 発売日: 2016/06/10
  • メディア: コミック