ろびこ
となりの怪物くん(となりのかいぶつくん)
第2巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★★(8点)
となりの席の超問題児・吉田春(ハル)の純粋さに惹かれて逆に好きになってしまった水谷雫。しかし、告白の返事はまさかのNO! すべてが予測不能のハルの心をとらえるには? 少しずつ恋心に目覚めていく雫だけど…!?
簡潔完結感想文
- ハルの態度一つで周囲の反応は全く変わる。問題はハル自身が制御不能ということ。
- 夏休み突入。夏目とハルに振り回されながらも彼らと過ごす夏の一日を楽しみます。
- あのハルを好きな人が雫以外に登場。雫は成績不振もあって一層勉学に集中します。
100%理解はできないけど、それでも一緒に並んで歩く感じが主人公の雫とハルの関係と、本書と私の関係に似ているのではないかと思った2巻。
2巻で早くも登場人物たちに馴染んでいる一方で、本当に理解できない部分も多い。
作品自体の手触りが決して滑らかな触り心地の良い物ではなく、ゴツゴツしているという印象。
惹かれながらも、絶対的に受け入れられない部分もあったりする。
ただこれは違和感であって嫌悪感ではない。
だから面白く読めるのだけれど。
このつかず離れずは作品を通して繰り返される事象だ。
悪く言えば堂々巡り。
気持ちが通じたと思えば、一方が身を引いて離反したり、なかなか思い通りにいかない。
ましてや恋愛は理路整然としてるものじゃないから難しい。
いつか私もハルたちと分かり合える日がくるのかな、と不安の中を進んでいく。
恋愛事情はなかなか進まなくても彼らがいるのは青春のど真ん中という事実は変わらないので、そこを楽しく読むのもあり。
海に行ったり川に行ったり、散々な思いもするけれど雫は今までとは違う夏の過ごし方が出来たのではないか。
これまでは家族に思い出を作ってもらう、またはこれまで夏休みでも作れなかった思い出しかなかったが、高校生になり友達に引っ張ってもらうのも成長の一面かな。そういう意味では夏目ちゃんは適任だ。
雫も優しい所があるから彼女に頼まれたら無下には断れない。
夏目が着信拒否されたらササヤンだっている。
友達の数だけ遊びの引き出しも増える。
それは雫の人間としての「遊び」すなわち余裕になるかもしれない。
みんな好き勝手に行動するけどそんなごった煮が楽しい部分でもあります。
今巻から怪しく活動するのはハルの兄・優山。
ハルとは真逆のような人当たりだけは良さそうな人間。
ハルの家族は何かと問題を抱えているらしい。
この辺にハルの孤独で奇抜な行動の原点がありそうだ。
雫と関係を深めるためならいいが、どうにも雫にも触らせない絶対的な拒絶があって問題をややこしくさせそうだ。
もう一人の重要な登場人物の隣のクラスの学級委員長・大島さんが登場。
本書の凄い所は、主要な登場人物はあの1人ぐらいしか増えないところだ。
この人が活躍するの⁉という既に登場しているキャラが意外に活躍することはあるが、基本的に2巻で出そろった人たちで物語を回している。ハルに好意を持つ大島の登場で雫は無自覚に苛立つ。
成績不振も重なり険悪な雰囲気になったハルたちに強烈な一言を発して、場を収めたかと思いきや、雫の方は問題解決に違う手法を取る。
正直、またここに戻るかという感じです。
どちらも難しい人たちだから手を差し伸べるとその手を叩いて拒否して、思わぬ言葉に喜んで近づいてくるの繰り返しだ。
ちなみに、振るわなかった模試の結果、雫の少し上にヤマケンくんの名前がありますね。
雫が国語のテストの「この時の主人公の気持ちを50字以内で書きなさい」という類の問題が苦手というのは納得。
でもそれを言えばハルが主人公の心情を書き表せるのも想像つかないけど。
あと難しい漢字を書いてるハルも想像できない。
もっと得意分野特化の天才でも良かったのに。
全般的だとテスト対策の勉強していないと点数が取れない部分もあるような気がするなぁ。
後述の仕事バリバリ人間の雫母といい、設定が大雑把な気がする。
ただ営業スマイルを手に入れたハルが人気者になるのは納得。
元々心根は優しいという土台があって、他人には素行が問題視されていたけれど、それを笑顔で糊塗すれば残るのは優しさだけ。
ハルも人気者になった自分に戸惑ってないでコントロール出来ればいい。
友達を作る術を知ったのなら、友達を失う行為も学べばいいのに、その辺が出来ないのが「問題児」たる所以なのだろう。
便利な言葉「問題児」。
今巻でもFAXの文章での登場の雫の母。
仕事が多忙で滅多に帰ってこない彼女の不在には一体何の意味があるのだろう。
雫の価値観の形成に大きく関わっていたり、雫の我慢の象徴というのは分かる。
私は一度完読しているので、今後の展開で雫が限界に達した時に母を頼る場面も読んでいる。
それでもここまで家庭を放棄する意味は余り見い出せない。
休みが一度もないのだろうか、家に帰らずどこにいるのだろうか。
一度でも今の雫を抱きしめてくれれば物事の多くが解決するのではないかと思ってしまう。
本書の中で一番嫌悪感を覚えるのは、ハルの暴力シーンではなく、母のあまりにも無責任な姿だ。