《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

1時間前「我慢したい」「汚したくない」1時間後「お前が悪いんだ」「お前が誘惑した」。

ちとせetc. 6 (マーガレットコミックスDIGITAL)
吉住 渉(よしずみ わたる)
ちとせetc.(ちとせエトセトラ)
第6巻評価:★★☆(5点)
   総合評価:★★☆(5点)
 

すれ違っていた4人の想いが通じ、辛かった四角関係も終わったと思ったのに…。新キャラ、昴と亜未伽が祭部を引っ掻き回す! そして、とうとう、昴の正体が明らかに!?

簡潔完結感想文

  • 芸能人・昴の正体は意外なあの人でした。嫌がらせと好意でちとせに近づきます。
  • 新たな四角関係かと心配しましたが穏便に治まります。でも三角関係が始まる?
  • 魅力的な女性になるためちとせが奮闘します。エロ石に続いてエロユキ登場です。


前半と後半では内容の密度が全然違う6巻。そして2回目の最終回チャンスだった6巻。

前半は『前巻』に引き続き学園の新入生で芸能人の昴の話。
これまでちとせにちょっかいを出していた昴でしたが本当の標的はその向こうにいるユキだという事が判明。
なんと彼は、数年前ユキと清綾と共に同じ病気に苦しみ、そして旅立っていった岬の弟だったのだ…。

f:id:best_lilium222:20200531002718p:plain
またも女性は取引される「商品」に
この真相に至る伏線は以前の巻の1コマの中にちゃんと張られてますね。
清綾は一人っ子だが、ユキには姉が、そして岬には兄と弟がいる描写が収められている。
ユキの姉と岬の兄は数年後に偶然再会してもお互いを認識できたが、ユキは昴が本名・夏目猛だとは分からなかったみたいだ。
兄姉とは違い成長期の数年間という理由もあるだろうが、新進気鋭の役者である昴の役作りが完璧という面もあるかもしれない。
でも本当のドラマ撮影のように子供時代と今の役者が別人じゃないんだからとも思うけど。
昴が芸能人という設定も名前を簡単に偽れるという面もあったのでしょうね。
それだけで気づかれない便利な設定です。

本書は全体的に仕掛けがちょっと大仰ですよね。
人の生き死にとか身分を隠した復讐とか、ドラマで例えると大映ドラマでしょうか(見た事ないけど)。
毎回の衝撃展開に大袈裟な効果音つけたらネタドラマとして成立しそうだ。


昴の正体から始まって、昴とユキの因縁がほどかれるまで前半はとても内容が充実している。
昴がユキや清綾と直接対話するシーンも緊張感があるし、ちとせと昴のお出かけの模様も昴の存在によって予測不可能な展開を期待してしまう。

昴がちとせに近づくのは全てがユキへの当てつけではなく、ちとせに初めて会った時に惹かれるものがあって、その人がユキの彼女だったので更に関わりを深めたという事みたい。
更にはもう一人の亜未伽の暗躍によって物語はよりややこしくないそうな予感を醸し出す。
この畳みかけるような展開は好きです。

ただ恋や昴のいたずらに悩んでいた以前のちとせもそうでしたが、登場人物みんなが「心配かけたくないから」相談しない選択肢を取って物語をややこしくする展開は飽き飽きだ。

この漫画は問題の当事者の抱え込みが多すぎですね。
これは主要な登場人物たちは親から離れて兄弟と暮らしているし(ちとせ・ユキ)、清綾の家にちとせが訪問した時も両親はいなかったのに関係があるのだろうか。
放任され好き放題に乱れているから問題が起きるのではと思ってしまう。
あと昴は学園の先輩にちとせのことを調べてもらい小説家の兄の存在を知ったらしいが、ちとせ兄が小説家という情報は学園内に出回っている描写ってあったっけ?と疑問に思った。

ちなみにちとせは何気に料理全般が得意みたいですね。
毎日のお弁当作りにカレーパンまで焼いてる。
もう少しだけでも彼女のいい所を前面に出してあげてもいいのに、と不憫に思う。


充実した前半から一転、後半は性交渉について悩むだけ。
未だにユキがちとせを求めてこない事を知った赤石は自説を繰り出しちとせを落ち込ませる。
ユキに求められるような性的な人間になろうとちとせは努力する…。

物語の前半から性をめぐる話は出てきたので驚きませんが、するしないの話を吉住漫画で複数回読まされるとは…。

エレベーターでユキの人格が変わるのには胸の高鳴りよりも、下品さに辟易しました。「
我慢したいんだ」「汚したくない」と友達に伝えた1時間後ぐらいには我慢できなくなってちとせを汚すユキの二枚舌よ…。
少女漫画なんだから王子様は最後まで王子様らしくジェントルでいて欲しかった。
一皮むけば男なんてみんな一緒という考えはタブーだろう。

f:id:best_lilium222:20200531002824p:plain
自分の性的興奮を相手に転嫁する最低男
小学館のフラワーコミックスじゃないんだからと進む方向性に違和感を覚えた。
ユキまで発情して理性が飛んでしまって本当にまともな登場人間が居なくなってしまった。

にしても、これをもって最終回にしていたら良かったのに。
ここは四角関係が終わった頃に続いて2回目の最終回チャンスだったはず。
なのにまだ続ける意向を見せている。

有終の美という言葉を教えてあげたい。
そう今巻の最後はまたまた衝撃の1ページが登場。
ユキとの交際を何でも相談できる赤石とちとせは良い関係性ですね、と微笑ましく見ていたところなのに、まさかの赤石の未練が発覚。
真の蛇足が今始まるって感じです。
この最終ページによって7巻への期待感ゼロです。