《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

主演の相手役オーディションに勝ち残ったのに、俺の出番、少なくね⁉

f:id:best_lilium222:20200229150522j:plain
吉住 渉(よしずみ わたる)
ちとせetc.(ちとせエトセトラ)
第5巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

幸翔と清綾がお互いを縛っていた過去から解放され、別れを決心。とうとう4人、それぞれの想いが通じた! 辛かった四角関係もこれで無事解決と思っていたら、祭部に謎の男子が…。嵐の予感??

簡潔完結感想文

  • この巻で本編としては終わり。ちとせの恋は実ったし、全てに決着つきました。
  • 新進の芸能人の新キャラ投入で芸能科のある高校という設定を活かしてます。
  • 新キャラ・昴にちとせが悩みます。でも本当は昴はユキと因縁があるようです。


恋愛漫画としては山頂を越えたのであとは目的地までの下り坂をとぼとぼ歩く5巻。

恋愛問題が解決してからも物語が続く事も初期構想に入っていたのでしょうか。
登場人物たちから恋愛エキスは十分に抽出したように思うが、出がらしとなった彼らに何が出来るのか。

f:id:best_lilium222:20200531000957p:plain
魅力のない相手役を言葉でフォローしてみる
…と思っていたところに新キャラクターが登場して物語を引っ掻き回すみたい。

校内のバレンタインイベント当日、学校内で助けてもらった可愛い男の子に名前も聞かず別れてしまったちとせ。
だがちとせは彼と思わぬ場所で再会する。
それは鑑賞中のテレビの中で、彼はなんと月9ドラマにも出演する芸能人だったのだ。
その後、再び校内で出会ったその男の子・昴にユキからの誕生日プレゼントの指輪を取られてしまったちとせ。学校中を探すが、そんな人物この高校には在籍せず…⁉

ちとせの沖縄出身の設定と同じぐらい、高校芸能科の設定が学校の絞り込みぐらいにしか活かされていなかった灰澤学園。
だが今巻で3流芸能人の清綾とは違う1流芸能人を登場させることでその設定がようやく活用さた。
これは芸能界という華やかで憧れの世界を持ち出して死に体となった物語をよみがえらせる目的もあるだろう。


5巻ではその芸能人・昴が大活躍する。
ちとせと初対面を果たした時は親切だったのに、2回目3回目と会うごとにちとせに嫌がらせをしてくる謎のキャラクタ。
ちとせから奪った指輪をようやく返す際に指輪を口に含み口移しなら返すと宣言する昴。
この口移しシーンはこの漫画の特徴である1話分の最終ページの衝撃展開として使われている。

f:id:best_lilium222:20200531001037p:plain
テコ入れのための新キャラと衝撃展開
だが全巻を読了して昴の目的を知ると、指輪の口移しシーンは全く必要がない事が分かる。
彼の目的の人物が見ている前で行うなら効果がありそうだが、ドラマの撮影現場でする意味はない。
むしろリスクばかり。
当初はちとせに会って彼女に一目惚れしたという「ちとせハーレム」の構築のためのキャラだとも考えましたが、どうも目的は別にあるようです。
それが本書の最終ページで暗示され次巻へ続く。
本当に次回に繋げる術は上手な漫画です。

当初は身分を偽って学園に侵入していた昴だが、新学期新学年が始まると本当に1年生として入学してくる。
更には忙しいのになぜだか祭部に入部して、祭部のメンバーの前ではしおらしく振舞う昴。
そんな悪魔のような面と二面性のあるキャラクタは顔だけのあの人よりは惹きつけられるのも事実。


本当にヒーローであるはずのユキは影が薄いですね。
今巻では特に幸せそうにしてるだけだし。両想いになった際にちとせが言い訳のようにユキだけに胸がしめつけられると言ってるけれど具体的な内容はない。

読者もそれと同じ気持ちで、彼の良さって何だろうと疑問に思う。
例えば清綾との交際期間中に彼だけは頑なに浮気をしなかった、という設定が加わっていれば一途さの表現になったのにと残念に思う(ちとせを好きになってからはしてない真摯さはあるみたいですが)。
高校生のライトな恋愛を描きたいのなら、ユキと清綾の過去のヘビーな縛りは不必要で、物語の設定とちとせのキャラが噛み合ってないのが最後まで気になる。

赤石にお礼を言って握手して別れるちとせ。
新恋人のユキがいるにもかかわらず、ちゃんと赤石にも配慮できているちとせの行動は好きです。
赤石にとってのちとせは清綾たちに波風を立てるための手近な相手ようです。

倫理観がまるでない本書ですが、赤石からユキに恋人が替わったちとせにはさすがの祭部のメンバーも他の女子生徒からの反感を心配していた。
恋人が交替したにもかかわらず赤石と並んで歩くちとせに陰口が囁かれる描写がある。
しかし1週間で収まったらしい。
この状況で反感描写が全くないのも不自然だし、また反対にイジメのようにエスカレートしても不快なので、このぐらいが丁度いいかな。


あとがきのフリートークによるとこの漫画は月2刊行の「マーガレット」の連載で当初は連載6回描いたら1回休みという約束だったのに、3回描いて1回休みになったらしい。
大ベストセラーを生んだベテラン作家だから許される事なのかな。

その休載のペースもあって本書は吉住漫画らしく1ページ1コマ全てにわたって整然としている。
誤魔化すような線の迷いが見られない著者の漫画はいつも綺麗で好ましい。

だけど全てにおいて既視感を覚えるのも事実。
同じ作家だから顔が似ているのは当たり前だが、それにしてももっと表情や構図に工夫があればといつも残念に思う。
私には作者なりの新たな挑戦やアイデアを感じられず、もしデジタルで漫画制作してたら過去のコマから人物を切り貼りするだけで漫画が出来てしまうのではないか、と思ってしまう。